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2010-07-13

icon_45_b.gif『神将 大坂の陣』読了。


宇佐美作品はこれが初なのですが。
う〜ん、これって序章の直後終章で良いんじゃないか?
そして終章で、確実に読者置いてかれるかと。
あのラストは無いでしょ…。


宇佐美 浩然(著)『神将 大坂の陣』

なんだろう、キャラは結構良いのにオチがひど…ごほん。
ところどころ飛ばし読みをしてしまったわい。
又兵衛と重成の師弟っぷりは良いですね。
重成くんが反吐が出るほどに真っ白な純粋培養美青年です。(なんで反吐が出るんだお前)
そしてそんな心根まっすぐな重成に、自分の軍略をすべて伝えようとする
またべが面倒見の良い素敵なオッサンでした。
それはそうと。
いつもの公式あらすじを載せておきます。

慶長十九(一六一四)年暮れ。
豊臣氏は、二十万を超える徳川軍の圧倒的な包囲、攻勢を受け、やむなく和睦を結んだ。
しかし、徳川軍の総帥・家康は、天下への野望を隠さず、
新たな大戦の予感に大坂の地は震撼する。
一方、豊臣方は、大坂城防衛のため、麾下の武将の中から
五常の徳―仁、義、礼、智、信に秀でた武将に、中央と四方の城兵の指揮を執らせる。
それが、木村重成、塙団右衛門、真田幸村、速水守久、大野治長の五人だった。
そして翌二十年五月、ついに戦機は満ち、最後の決戦の火蓋が切って落とされたとき、
五将は、それぞれ獅子奮迅の戦いぶりを見せる。
だが、戦力の差はいかんともしがたく、一人、二人と斃れ、大坂城は落城寸前に。
と、そのとき、亡き太閤秀吉が遺した秘策中の秘策が発動するのだった…。
(新書帯より引用)


…という話です。
もう、本当にこのあらすじが作品全体のあらすじであることよ。
これに付け加えるとしたら、
家康のもとで、崇伝と本多父子の勢力争いがあったり、
大坂城内では大野兄弟の喧嘩があったり、
エンジンかかるまで一冊かかった薄田さんのgdgdな生活っぷりがあったり…
と言ったところ。

あ、幸村は後半になってからじゃないと登場しません。
そしてあんまり目立ってないですね。
まぁ、目立つ目立たないで言えば、大坂五人衆のうち
勝永と盛親の扱いが…あってないようなものというか…居て居ないようなもん。

話のメインは、
大坂城に危機が迫った場合に備え、故太閤が四神相応に基づく伝承に託し、
五常の徳(仁・義・礼・智・信)に秀でた5人の武将を
「五岳神将」に任じて大坂城とその周辺を固める、という設定でしょうか。
これには、東西南北+中央(=大坂城)に四神相応それぞれの
水(=川)やら木(=柵、葦原)やら火(=火薬)やら土(=石垣)
の加護がついてくるのですが、
唯一、西の「金と鳥」の加護の意味するところがわからないまま、話が進んでいきます。
果たしてそれは一体何なのか、
そしてこれこそがあらすじで言うところの
「亡き太閤秀吉が遺した秘策中の秘策」というやつなのです。

…これは想像出来ないと思うのでネタバレしちゃうとガレオン船なわけですよ。
と書いてもまだ??だと思いますがこれ以上は内緒です(笑)。
まぁ、そう書いたらこの作品のラストがどんなもんかわかるかと。
posted by まるひげ at 00:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-07-09

icon_45_b.gif『剣豪の城 北畠具教』読了。


そろそろ読了本の感想文書かねば…!

タイトルから具教が主役かと思って読み進めたら、なんか違う。
具教の息子の具房が主人公っぽい位置でした。
そして作品の内容は
北畠一族の衰亡、とか没落、とかいう話でした。

将軍義輝と「竜虎」と呼ばれた具教の守る南伊勢の大河内城に、天下布武を目ざす信長の7万の大軍が押し寄せた。攻防5ヶ月。信長は遂に糧道断ちを仕掛けてくる。「斬り死にこそ本望」と怒号する具教だが…(アマゾン・レビューより引用)。
深水 聡之(著)『剣豪の城 北畠具教』

尾張・美濃を平定し、上洛を目指す信長が次に目を向けたのが伊勢ということで、
時代的には信長の伊勢攻略を背景とし、これに対抗する北畠一族を描いたものです。

メインの登場人物は、
名門の誇りにかけて織田に伏することを認めない具教、
彼我の兵力の差を鑑み、抵抗することの無駄を痛感し、
「徒に犠牲を出すべきではない」と恭順を唱える息子・具房。

脇役として、具房の弟で長野家当主となった具藤。
具教の実弟で、確執により具教を裏切ることとなる木造具政。
後の滝川雄利と名乗る木造木玄、などが登場します。
あと具房に関係する重臣たち数名。

対する織田側は、というと。
常に調略でしか戦功を得ることができないことをコンプレックスとする秀吉。
そんな秀吉を「アナタはそれでいいんですよ」とやさしーく見守る半兵衛。
秘かに秀吉がライバル視してる文武両道の光秀。
秀吉いぢめに精を出す勝家のとっつぁん。
ですが、織田勢の描写はあくまでおまけです。

これらやや複雑な人間関係を織り交ぜながら、話が進展していきます。
家臣の裏切りや織田勢の巧みな攻撃により、
次々と支城が落とされ、ついには大河内城で籠城を余儀なくされる北畠家。

クライマックスはこの大河内城の開城です。
具教・具房父子の大喧嘩の後、
具教が具房の覚悟を認め織田に降ることになるのですが、
開城の際、北畠父子が大暴れするところが唯一華々しいシーンとなります。

問題はその後です。
淡々と欝展開に突入。
北畠を手中に収めた信長ですが、
その後起こった伊勢の一向一揆に、北畠家家臣が関わっていたことが発覚。
これにより、北畠を危険視した信長は、
北畠一族に関わる主要な人物を消すことを命じます。
具教、具藤をはじめ、家臣たちが次々に討ち取られていくなか、唯一生き残ったのが具房。
自分だけが殺されなかった理由、
それを具房は「殺すにも値しない、無価値な存在」であるからと結論づけ、絶望します。
実は、具房が見逃されたのは、ある理由(しかもちょっとイイ話)があったのですが、
本人はそれを知らず、失意のまま廃人のような余生を送ることになるので、
これは非常に皮肉な、遣り切れない思いが致しますね…。

滅入るわー。
欝だわー。

ということで、後味悪いラストでした。

最後に、どうでも良いことをおひとつ。
北畠家家臣で、支城である阿坂城の城主・大宮含忍斎の息子・大之丞が、
以前読んだ『忍びの国』の日置大膳とものすごーくカブりました(苦笑)。
いや、大膳が大之丞に似てる、と言った方が正確なのかな。
posted by まるひげ at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-28

icon_45_b.gif『関ヶ原群雄伝(3)小早川秀秋の決断』読了。


この本の感想文を忘れていました。

物語は、豊臣を守り日の本の行く末を見届ける覚悟を新たにした
吉勝の「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わってます。
正直、もちっと先まで読みたかった気もしますが、キリが良いっちゃー良いところですね。
ところどころ若人たちの青春っぽい描写があり、いささか恥ずかしくなったり。
いやさ、みんな若いもんね!


智本 光隆(著)『関ヶ原群雄伝(3)小早川秀秋の決断』

はい、ではいつものあらすじから。

織田秀信の討死の傷も癒えぬまま、西軍は清州城を占領、宇喜多秀家も伊勢方面を平定した。
そしてついに矢矧川を挟んで東西両軍が対峙する。
矢矧川に一夜城を築く石田三成、そして父・大谷吉隆ら奉行衆の力に驚きつつも、
大谷吉勝、真田幸村たち豊臣の子はそれぞれ、家康との決戦に向けて準備を進めていく。
そのなかで、ひとり小早川秀秋だけが不可解な動きをしていた…。
(新書帯より引用)


序盤から西軍有利で、東軍は清洲城から三河に撤退し、清洲城は西軍の主城となります。
西軍の清洲城 VS 東軍の岡崎城という図式です。
吉勝らは、この矢矧川流域で、此度の戦で徳川を見限った鳥居一族の協力を得、
奉行連中(主に刑部)は矢矧川の北野に一夜城「矢矧新城」を造築。
ここで造るか一夜城!という感じですね。
刑部の張り切り具合に、
息子さん呆れてモノも言えなくなっとる(笑)。

この作品では決戦地が関ヶ原ではなく、矢矧川一帯となります。
ということで「矢矧川の決戦」ですね。
戦闘は、仏狼機+新型銃が大活躍。
ついでに一刀斎も大活躍。
武将は有名どころの人死にがぽろぽろありました。
…ほぼ東軍の方なんだけど。

東軍といえば、ちょっと気になった人を挙げると、サドです。正信です。
出番はちょびっとしかないくせして、
大局的に重大な場面での発言で家康をミスリードしてます。
いっそこの人、西軍の息かかってるんじゃないかってくらい見事なハズしっぷりでした。

以下、ネタバレたいんだか隠したいんだかよくわからない感想文です。



posted by まるひげ at 13:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-25

icon_45_b.gif『槍弾正の逆襲』読了。


本当はこれより先に書かねばならぬ読了本がありますが、
お先に書いちゃいます。
いえね、この本今日が図書館への返却日ということなのでね…。

天正年間、戦乱の続くなか、出陣中の嫡男の留守を狙い、老将保科正俊の守る高遠城に、小笠原・上杉軍が攻め寄せる。かつて武田信玄の下で槍弾正の異名をとった正俊も、すでに齢七十五の隠居の身。だが、圧倒的に不利な状況下、城を棄てる意見を一喝し、正俊は奇策を練る―表題作「槍弾正の逆襲」をはじめ、関ケ原合戦における小早川秀秋の“楯裏の裏切り”に抗した武将を描いた「松野主馬は動かず」など、独自の気概をもって生きた人間像を、あざやかに描く傑作歴史小説集(文庫より引用)。
中村 彰彦(著)『槍弾正の逆襲』

短編5本が収録されてます。
個人的には「槍弾正の逆襲」と「醜女の敵討」が好きです。
前回の中村作品の感想文では無駄に長くなりましたが、
今回もやっぱり長くなりました。
お時間ある方だけ、お付き合いくださいまし…。


以下、ややネタバレ気味の感想文です。


posted by まるひげ at 01:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-17

icon_45_b.gif『虚けの舞―織田信雄と北条氏規』読了。


韮山城の戦いにて、戦評定の場でとっくみあいの喧嘩をおっぱじめる正則&忠興。
この諍いを一喝してビシッと止めたい名ばかり総大将・信雄。
ところが、そもそも一喝する勇気もないけど
何より一喝したところで無視されるのが怖くて何も言えない信雄
なんて不憫な…(ホロリ)。
まぁ、九分九厘そうなるでしょうけど!

朝鮮出兵最前線の肥前名護屋の陣で、落魄の身となった宿命の2人の男が出会った。彼らの使命は血脈を伝えること。信雄が歩んだ悲喜劇と天才氏規の苦渋の日々の回想を通して、本能寺の変から国盗り最後の小田原合戦までを描く。(アマゾン・レビューより引用)。
伊東 潤(著)『虚けの舞―織田信雄と北条氏規』

ということで、気になっていた伊東作品を読んでみました。
時は朝鮮出兵真っ只中、舞台は肥前名護屋、主人公は織田信雄と北条氏規。
時代の波に巻き込まれ、衰退していった家の生き残りの2人を描いた作品です。

名護屋陣内にいる秀吉に拝謁するためにやって来た信雄と氏規がバッタリ出会うのです。
信雄、と書きましたが、既に出家して「常真」と名乗っている頃です。
この2人は、かつて小田原の役・韮山城攻防戦で敵同士で戦ったという過去があります。
しかし、両者が出会ったからといっても、
その後はそれぞれの行動が別々に描写されるので、
物語冒頭の出会いはほんの顔見せ程度。
再び出会うのは物語の終盤になります。

ちなみに、この作品の“現在”は1592年なのですが、
信雄&氏規の過去の描写に頁が多く割かれておりました。
そして信雄の方にスポット多めに当たってます。

そんな信雄はやっぱり、やることなすこと裏目に出てばかり。
自虐と秀吉に対する嫌悪で、内心毒ばっかり吐いてます。
基本的に小心で優柔不断、ネガティブ思考なので、
読んでるこっちも残念な気持ちになります。

それに対して、氏規。
信雄よりは描写が少なめですが、非常によく出来た人です。
小田原の役の際、強硬路線の兄・氏照と氏邦を抑え、
秀吉との和睦に奔走した己の行動は果たして正しかったのか、と省みます。
その後の北条氏の趨勢を見、沈鬱な思いを抱えて生きる日々です。

そうしてそれぞれの過去を振り返っていくうち、
すべてに絶望した信雄が自刃しようとするのですが、
そこへ氏規が止めに入り、2人は語り合うことになります。
…まぁ、語り合うって言ってももっぱら氏規が信雄諭してるんですがね。
天運を枡に、才覚を酒にたとえ、
「しょせん、人は酒量に合った枡を望むことはできない」
それならば「家と血筋を守るために生き残れ」と言う氏規。

運がありながらも才能がない信雄、
才能はありながらも運がない氏規、
両者の生き様には、運命の皮肉さというものを感じずにはいられません。
でもなぁ…
どちらにも恵まれた秀吉だって晩年はあんなことになってしまいましたし、
しかも家も血筋も、結局は守れなかったわけですよ。
それを考えるとなんとも虚しくなります。

ちょっと気になったことは、
視点の切替えが早いという点ですかね。
信雄(現在)→信雄(過去)→氏規(現在)→氏規(過去)
という流れであれば単純なのですが、
信(現)→氏(過)→信(過)→氏(現)
というようなランダムな切替えもあります。
しかもその視点が、
4〜5ページ毎に切り替わる時もあるのでせわしない印象を受けました。
と言っても、回想シーンへの移行の描写はなめらかなので、
場面転換がわかりにくい、というのではなく、落ち着かないという感じ。
posted by まるひげ at 02:07 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-12

icon_45_b.gif『戦国の風』読了。


ひさびさにこにたん本を読みました。
舞台のほとんどが海上とマラッカなので、正直if小説だよねこれは!
まだ小西が魚屋にも養子に出されてない頃のお話。

信長の密命をおびて大海原をゆく若き日の小西行長。決戦の時近し。自由賀易都市・堺の思惑をひめて虚々実々の駆け引きを展開!書下ろし戦国ロマン(アマゾン・レビューより引用)。
谷 恒生(著)『戦国の風』

基本的に白石氏の『海将』と同じ系統の海の男・小西行長ですね。
でもこっちの小西の方がちと黒い(笑)。
命をかけて大海原を渡り、異国の武器商人を
手のひらでころころ転がすくらいのやり手の商人ですけん!
すごく読みやすいかつわかりやすい展開で楽しめました。

浅井長政の遺児・万福丸(10)と長政の妹・右京(17)が信長の追求をかいくぐり、
自由都市・堺へ逃げ込んでくるところから物語が始まります。

が、この話のメインはそこではなく。
あらすじをバラしてしまえば、
信長から密命を帯びた行長が、3千丁の最新式鉄砲の買い付けにマラッカへ行き、
その結果、日本に届けられた鉄砲が長篠の戦いに使用され、武田勢を壊滅させた、
という展開です。
…嗚呼、ミもフタもないあらすじになってしまった。

まぁ、言ってしまえばそれだけ、なんですが(苦笑)。
とにかくもう、こにたんがおっとこまえでかっこよいのです。
なにこの小西素敵小説!

妖しげな雰囲気の自由都市・堺の魔都っぷりも良いですね。
そんな堺へは、
如清ンとこに転がり込んでは信長マンセーと謳い、光秀の悪口くっちゃべる秀吉。
他方、宗椿ンとこにやってきては信長が怖いと愚痴を言い、悲観主義に浸る光秀。
なシーンがちょろちょろ挿入されてます。
あんたらヒマなのか!

その他、信長の動きを封じようとする
今は亡き信玄の軍師・快川や、その手先となって働く忍びが暗躍するのですが
あまりパッとしない働きです。

で、冒頭の万福丸&右京は行長の導きによって
マラッカで新たな人生を歩むことになります。
それも実は信長の指示であったという、
「信長って実は優しいんだぜー!」的なお話でもありました。
posted by まるひげ at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-10

icon_45_b.gif『五左衛門坂の敵討』読了。


この作者さまの『知恵伊豆に聞け』を読んでみたいなぁと思って
何気なく調べてみたら、
なんと宇喜多関連の短編を書かれているということで早速飛びついてみました。
短編4本が収録されています。
これが絶版というのは酷いですな。

幕末という激動する時代の大波の陰に秘められた会津藩士の敵討を描いた表題作をはじめ、歴史に埋もれようとする志ある男たちの生き方を掘り起こした歴史小説集(アマゾン・レビューより引用)。
中村 彰彦(著)『五左衛門坂の敵討』

短編4本が収録されてます。
4つの作品すべてに共通しているのは、
主人公がある目的のために己のすべてを捧げて成し遂げた行状について
描かれているという点です。

一番最後の「伊吹山の忠臣」を除くと、
物語は、主人公の行動の時系列に沿う形で展開していきます。
(ちなみに「伊吹山〜」は、回想シーンが事件の真相を語っているという点で
他3作品と異なっています)

前半2作品は幕末が背景でテーマは「敵討」、
後半2作品は戦国が背景で、テーマは「忠君」ですかね。
どの作品も、
「落とし前のつけ方」…と書くとどうにも任侠モノっぽくなるので…えーと
これだ、「筋の通し方」「人が本来とるべき道理」について
説教臭くなく、端整な文体で語られております。
背筋がぴしっと伸びるような、
気持ちが引き締まるような読了感でございました。

以下、かなりネタバレ注意のものっそい長い感想文です。
真面目な感想文を目指したんですが、マジメなのはあらすじだけになりました…。


posted by まるひげ at 23:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-06-04

icon_45_b.gif『関ヶ原群雄伝(2)織田秀信の覚悟』読了。


帯には、「東西激突 木曽川決戦!」とあり、
これだけだと何のことだかわからないのですが。
…これはですね、いよいよ戦が始まった2巻において三成挙兵の知らせを受け上杉征伐から上方へ引き返してきた東軍が織田秀信の守る岐阜城を攻めることになりその陣立てがこの木曽川一帯の云々…
あ、後から言います。

ということで、ストーリー的にはこの「木曽川決戦」が読みどころ。
良いシーンいっぱいでした。

キャラ的MVP…むしろM V 珍はこの方、ヤンギレ忠興さま。
陣所ウロついては「うちのタマ知りませんか?」を連呼。
ガラシャとはいつでも連絡取れるようにしてないと、
この人の周りに迷惑がかかるので、奥さん早く連絡してあげて。
…せっかく前巻の大坂人質事件の際、ガラシャの危機を救ったというのに、
熱烈に逆恨みされてる吉勝でした。
ま、忠興だからね!


智本 光隆(著)『関ヶ原群雄伝(2)織田秀信の覚悟』

1巻の比較的ゆっくりした、史実に沿ったペースから一転して、
展開が早くif色が濃くなって参りました2巻でございます。

まずは長いあらすじでも載せておきます。

慶長五年七月。ついに石田三成が起つ。
大谷吉勝も父・吉隆(吉継)とともに大坂城へと入る。
しかし、この報は真田昌幸配下の忍びや楠木党らの活動により、すぐには家康に届かなかった。
伏見城を陥とした吉勝は、
かつて三法師と呼ばれた「豊臣の子」織田秀信が守る岐阜城へと向かい、
東軍を迎え撃つ準備を始める。
一方、家康は上杉との戦線を開いてしまい、
革籠原で四天王のひとり榊原康政が討死。
そこへ、ようやく三成決起、伏見城落城の報せが入る。家康は急ぎ軍を西へと向けた―。
(帯より引用)


つーことで、サブタイにもあるように、キーパーソンは三法師さまですぞ。
花のように笑う、とか形容されてる時点でこれはフラグだと気づくべきだった。

そしてやっぱり会話が楽しいです。
景久が登場するとお笑いモードになりますね。
しょんぼりしてる小次郎を励ます、という
兄弟子らしさも持ち合わせている良いアニキ・景久。
この巻はシリアスな展開なので、緊張の合間に先の忠興といい景久といい、
笑いどころが挿入されるのが救いになってます。


以下、ネタバレあります。


posted by まるひげ at 00:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-05-21

icon_45_b.gif『狂気の父を敬え』読了。


最初から最後までとにかく信雄が可哀想な仕様になってます。
でも、とばっちり受けて本能寺に突入せざるを得なくなる
「どうしてこうなった」的光秀も可哀想というか…被害者でした。

この世の良識と教養を嗤い、血をわけた子を子と思わぬ、わが父、織田信長―。かくも大きな父に認められかくも大きな存在を越えようと、次男、信雄はひとり煩悶し、ひそかに伊賀忍びに戦いを挑み、初めて心を許せる大人に出会った。その名は明智光秀―。父と子であることの狂気と病、血と血が斬り結ぶ、相剋のドラマ(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『狂気の父を敬え』

時代的には、三瀬の変〜本能寺の変です。
主人公は、ボンクラに描かれていない信長の次男・信雄。
ちょっと暗いけど(ちょっとか?)冷静で実は優しく、そこそこ頭良い信雄です。

そしてこの作品、父と子のつながりが作品のテーマです。
「父とはなにか」を考えた結果、
子を子とも思わぬ信長を「あれは父ではない」と否定するに至ります。

…それでも最初は頑張ってるんですよ、信雄。
兄・信忠に負けじと一生懸命、信長に感心されるような策を考えます。
(やることなすこと裏目に出てるけどね!)
配下たちは頼りにならず、悩みを共有できる友もおらず、兄弟仲もよろしくない。
ひたすら信長を怖れる孤独な日々です。
具体的に信雄さんの生活を見てみますと、
ひとり部屋に引き籠って、昼夜問わず燭台相手にぶつくさ話しかけて
(しかも燭台さん、返答してくださる!)いるという有様。

孤独です。
苦悩です。
痛いです。

そんな信雄ですが、
養父・北畠具教のもとで能や狂言、漢籍などの教養を教え込まれたため、
貴族趣味な傾向があり、その影響もあって文化人の光秀を慕うようになります。

まだ信雄が父との関係に苦悩している折に、
光秀は信雄に「父を越えるには2つの方策がある」と語ります。
ひとつは、父に認められること。
もうひとつは、父を殺すこと

はい、なんだか嫌ァな予感が致しますよね?
ということで、信雄、そちらの道を秘かに考えるのですが…。

なんつかな、自分のなかで信雄さんのイメージとしては
信長の死後、世間の荒波にもまれまくった結果、
開き直った常真入道時代の印象のが強いので
こんなに真剣に身の施し方に悩んでる信雄を見るのは非常に新鮮でした。

個人的には最初のシーンが好きです。
北畠具教の信雄に対する真意はどこにあるのかは描かれていませんが、
信長の命により己を殺しに来た信雄に対し、
実の息子のように信雄の身を案じ、抗うことなく命を差し出す、という
嘘みたいな具教がいます。

伊賀攻めのその後も、本能寺の変の背景と絡んでいて…
おっとコレは面白いところなので秘密にしときます。
長野左京大夫の描かれ方は、ちょっとビックリしたけどね!

ラストがどうしようもない絶望感。
信雄、あんなに悩んだのに!
が、史実を考えると、この後から信雄の本領が発揮される展開になるんですよね。
「三介殿のなさることよwww」と散々馬鹿にされた信雄でありますが、
なんだかんだ言っても信長の息子たちのなかで
最終的に一番世渡り上手かったのがこの人なわけですから。

ということで、信雄本を他にも漁ってみたいと思います。
posted by まるひげ at 00:51 | Comment(4) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-05-11

icon_45_b.gif『刺客 柳生十兵衛』読了。


やっぱり、兵庫助最強。


徳川三代将軍家光の下、御三家筆頭尾張大納言松平義直の幕府転覆の陰謀が! 裏で動く新陰流正統柳生兵庫助利厳に利はあるか。幕府隠密・裏柳生の存亡をかけて、十兵衛の殺人剣が尾張柳生に挑む(アマゾン・レビューより引用)。
鳥羽 亮(著)『刺客柳生十兵衛』

簡単に言えば

徳川家光 VS 徳川義直
柳生十兵衛 VS 柳生兵庫助
この2組の対決の結末やいかに―!?

という感じです。

とても読みやすかったです。
…まぁ面白いんですが、ねぇ…。
問題は、どっちの対決も尻すぼみというか妥当というか…
むしろ決着ついてない、という(汗)。
表面的に読めば、勝者は家光と兵庫助なのですが、
もちろんそんな単純なものではありません。

あ、最初に「家光 VS 義直」と書きましたが、
家光は事情を全く知らされておらず、のほほんとしてるので、
苦労するのはもっぱら知恵伊豆さんと宗矩さんです。
なので正確には「松平信綱&柳生宗矩 VS 徳川義直&成瀬隼人正」ですね。

尾張徳川の義直と付家老成瀬隼人正が
家光の京都上洛を機に家光を暗殺し、義直が将軍につくという目的のため
アレコレ謀を巡らすというお話です。
下手をすると駿府徳川家の忠直の二の舞となるのは必定ですので、
城下に道場を構える尾張柳生・兵庫助の手を借りて極秘裏に事を進めようとします。

なんだか厄介事に巻き込まれた感のある兵庫助ですが、
それがそうでもなかったり。
祖父・石舟斎から授かった新陰流の真髄はあくまで「活人剣」であり、
宗矩&十兵衛ら裏柳生の「殺人剣」は決して認めない、という信念から、この戦いに参加します。

それにしても、
「裏で動く新陰流正統柳生兵庫助利厳」(あらすじ)ってなんか違和感。
実際読んでみたら、確かに裏で動いてはいるものの、
さらにもっと裏っぽいのが尾張の殿様と付家老でした。
この義直と隼人正の会話が、まるで

義「越後屋、おぬしも悪よのぅ…」
隼「いえいえ、お代官さまには敵いませぬ…」

という、ベタなシーンが結構あります。

ストーリーは、基本的に江戸柳生の視点です。
尾張徳川家が企み事をしていることを確信しつつも、
どんな罠をしかけているのかなかなかつかめず焦る、という展開。
途中、甲賀忍びと伊賀忍びの戦いもちょくちょく挿入されておりました。
ここんところも地味に読みどころですね。


あ、十兵衛忘れた。(主役なのに!)
タイトルに「刺客」とあるくらいなので、裏な役割なわけです。
宗矩から「尾張の陰謀を阻止するうえで、邪魔になるだろう兵庫助を斬れ」との命を受けます。
が、この作品においては、
兵庫助に勝つために、日々修行を重ねる姿がなによりも印象的でした。
黒い人物ではなかったです。
posted by まるひげ at 00:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-05-05

icon_45_b.gif『七人の十兵衛』読了。


GWも今日でおしまいですね。
そういえば5月5日は左近の誕生日(新暦だと6月9日)だそうですね!

それはまぁ置いておいて。
GW最終日の今日、
とりあえず目標にしてたゲーム+感想文はクリアできました。
ギリギリだ…。

柳生新陰流は、石舟斎宗厳にはじまり、但馬守宗矩をへて、その長男・十兵衛三厳へと受け継がれると思いきや、宗矩が大目付となり政治に近づきすぎたという判断から、石舟斎の長子の次男・兵庫助利厳へと引き継がれた。このため十兵衛は一時、柳生に戻るが、寛永十四年、再び幕府に出仕。慶安三年、44歳の生涯を終える。数奇なる運命を生きた、隻眼の剣豪を描く、七篇の秀作(文庫より引用)。
松本 清張、隆 慶一郎ほか(著)『七人の十兵衛』

いやそれにしてもカバーの十兵衛は渋カッコ良いですな。けしからん。
格好良いけど、家族とか親戚は全力で御免被りたい人物ですね!(笑顔)

そんな我らが十兵衛が主役のアンソロ本を(数ヶ月前に)読んでみました。
最初から最後まで十兵衛ぎっしり。
前回の柳生アンソロでは感想文が長くなってしまったので
今回は手抜きあっさりめを心がけましたが
あくまで心がけただけになりました。

まずはラインナップです。

・「柳生一族」/松本清張
・「秘し刀 霞落し」/五味康祐
・「柳生の鬼」/隆慶一郎
・「柳生十兵衛の眼」/新宮正春
・「鬼人の弱点は何処に」/笹沢左保
・「百万両呪縛」/高木彬光
・「十兵衛の最期」/大隈敏


以下、ネタバレ気味の感想文です。

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2010-04-24

icon_45_b.gif『関ヶ原群雄伝(1)大谷吉勝の決意』読了。


主役は、大谷吉継の息子・吉勝
時々出てくるのが、左近の息子・信勝
さらに終盤顔を出したのが「勝吉」時代の本多の次男・政重。
…コレは眠いときに読んだらいけない本ですね。

というのは冗談として。

主役が刑部の息子さんということでもわかるように、
西軍スキーのためのif小説ですな。


智本 光隆(著)『関ヶ原群雄伝(1)大谷吉勝の決意』

いつものことですが、歴史群像○書の公式あらすじが非常に長いです。

大谷吉勝、義兄・真田幸村と家康を討つ!
慶長四年。大谷吉勝は、父・吉継の反対を押し切り、
福島正則らに襲撃された石田三成を救うために伏見へと向かった。
間一髪で三成親子を救ったものの、吉勝の胸には豊臣の天下に対する不安が広がっていた。
翌慶長五年。徳川家康は秀頼の名の下に上杉討伐を命令。
これに憤る吉勝は、独断で蟄居中の三成のもとを訪ねる。
そこで、家康を討つための三段構えの策を聞く。
しかし一抹の不安を抱いた吉勝は、その足で姉の嫁ぎ先である信濃・上田へと向かった。
稀代の謀略家・真田昌幸に策の成功を聞きに行くためであった…。
大谷吉勝、真田幸村、宇喜多秀家ら、太閤・秀吉の息子たちが、
家康の野心から豊臣家を護るために結束する!
第14回歴史群像大賞優秀賞受賞作家デビュー作。
(新書帯より引用)


…という話です。

以下、ネタバレありの感想文です。


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2010-04-22

icon_45_b.gif『柳生武芸帳七番勝負』読了。


ここ最近、ちょろちょろ読んでる柳生モノをおひとつ。
柳生にハマったきっかけは、去年読んだ荒山さんの『十兵衛両断』だったんですが、
何にハマるにせよ荒山作品を入門にするのは
取り返しがつかない致命的な傷になると思うので
まずはまっとうな時代小説から再出発した次第です。
つーことで、荒山作品は後日再読決定。


剣の一族柳生を襲う豪剣、魔剣。ひらめく柳生新陰流の秘剣。凄絶な剣の死闘と人間ドラマを鮮やかな筆致で描く、異色の作品集。「無刀取りへの道」「幻の九番斬り」「小太刀崩し」他四編(アマゾン・レビューより引用)。
綱淵 謙錠ほか(著)『柳生武芸帳七番勝負 (時代小説セレクト) 』

まずはいつものラインナップから。
全部で7編収録の短編集です。

・「無刀取りへの道 ― 柳生石舟斎」綱淵謙錠
・「幻の九番斬り ― 柳生宗矩」滝口康彦
・「小太刀崩し ― 柳生十兵衛」新宮正春
・「柳枝の剣 ― 柳生友矩」隆慶一郎
・「一つ岩柳陰の太刀 ― 柳生宗冬」中村彰彦
・「秘太刀“放心の位”― 柳生兵庫助」戸部新十郎
・「影像なし ― 柳生連也」津本陽


個人的な好みだけを申し上げますと、
滝口作品と戸部作品が特にお気に入りです。
読了感が切ないモノが好きなのですよ。


以下、あらすじ+ネタバレありの感想文です。
結構長くなってしまいましたので、お時間ある方、どうぞ。



posted by まるひげ at 02:37 | Comment(4) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-04-19

icon_45_b.gif『小説 徳川秀忠』読了。


甘損さんにて、「側近の方がキャラが立っている」
というレビューに釣られて秀忠本なんかを借りて読んでみた。
側近云々は後で述べますが、
一番参考になったのは、紫衣事件前後の朝廷と幕府の関係ですかね。
自分、朝廷周りが本当に疎いのでここでちょっと知識を頂きました。

江戸と駿府の二元政治解消に腐心し、独自の政策と人材活用で、初代家康の覇業を確固たるものにした二代将軍秀忠を再評価する歴史長編。(アマゾン・レビューより引用)。
童門 冬二(著)『小説 徳川秀忠』

まずは手っ取り早く結論から。

「やっぱり、この本読んでも秀忠好きになる人はいないだろうなぁ」

という感じです。

著者の狙いとしては、
秀忠につきまとう「不肖の二代目」「凡愚」のレッテルを剥がし、
この地味な二代将軍様の功績を讃えることらしいのですが、
書いてあることをまとめてみると…

関ヶ原の遅参も生真面目な性格も父親絶対服従も実は全部計算なんだよ!
とか
家康と家光を繋ぐ役割として秀忠は重要なのだ!
とか
春風のような秀忠(p.165)
とか。

どうにもー…褒めてんだかそうでないのかよくわからない
秀忠像が形成されておりました。
…特に違和感は3番目ですね。えぇ、誰が言おうと3番目ですよ。春風…春風?

さらに、自分が期待していた側近の描写ですが、
こらまたツッコンだ様子でなくてね…。
秀忠よりはイメージがしっかり固定されておりましたが。

そして、この本自体の位置づけも微妙です。
童門節が炸裂しているため、
ビジネス的比喩が非常に多いのはいつものことですが、
小説という形式にしてはフィクション性、物語的面白さがほとんどないので
歴史小説であって歴史小説ではないような…うーん…(グルグル)。

まぁ、
凡愚な二代目とか言われても親があの大権現様ですからね。
カミサマと比べられたらたまったもんじゃないよこどもは。
あ、親子といえば、家康と秀忠については多くページを割かれていたのに対し、
家光との冷えた関係にはほとんど触れられていなかったです。


最後にどうでも良いけど噴いたところをおひとつ。

途中、本多正信が著したとされる『治国家根元』を紹介するくだりがあるのですが、
この政治家の心得を記した書物が現代にも通じる名言があると讃えた表現が、コレです。

「相当にナウイ書物だ」(p.153)

ナ ウ イ !!

ここを読んで「…これは80年代出版かなぁ」とか思って奥付見たら1999年だった。

童門せんせい…っ!!

「ナウイ」じゃなくて「ナウい」だと思うよ!(←そこじゃない)
posted by まるひげ at 02:35 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-04-09

icon_45_b.gif『哄う合戦屋』読了。


いつぞやの書店パトで「気になる」と載せた単行本、
図書館に遊びに行ったら置いてあったのでウッカリ借りてしまいましたそのA


軍師はどれほど天才であっても所詮は軍師に過ぎず、
戦の勝敗を決めるのは指揮官という現実を描いております。
一言でいえば、
「千里の馬は常にあれども、伯楽は常にはあらず」といったところ。

天文十八年。甲斐、武田と越後、長尾に挟まれた緩衝地帯、中信濃に孤高の合戦屋がいた。領主を担ぎ勢力を広げる一方で、不幸なまでの才能と抑えきれぬ天下への大望が、それぞれの運命の前に立ちはだかる―。史実を基にした壮大な人間ドラマ(アマゾン・レビューより抜粋)。
北沢 秋(著)『哄う合戦屋』

信玄の信濃攻略の時期、弱小大名がちょまちょま点在している頃の物語です。

ストーリーは渋くて良いです。
…ちょっと寂しいけど。

天才的な頭脳を持ちながらも主君に恵まれず
“合戦屋”として長く放浪してきた浪人・石堂一徹。
彼が中信濃の弱小領主・遠藤吉弘のもとを訪れたことからこのお話が始まります。

近隣の豪族の間でも“戦上手”と誉れ高い一徹を召し抱えたことにより、
遠藤家は一気に領地を広げることに成功する。
しかし、そこには一徹の内に秘める野望があった。
「一徹の野望のために己が利用されている」と感じた吉弘は
徐々に一徹を疎ましく思うようになり…

という雲行き怪しくなる天海です。うん?展開です。

軍師としては一流なのに、人との付き合いが全くできない不器用で無骨な一徹は
遠藤家のなかで敬遠され孤立しますが、
そんな一徹の唯一の理解者が吉弘の娘・若菜。
天衣無縫で誰からも愛される聡明な姫が、恐れることなく一徹と向き合うシーンが
この暗いストーリーに彩を添えております。
や、「天衣無縫」なこの若菜姫、実は計算だったんですけどね…(小声)。

一徹が領地を増やし、若菜が内政をまとめる(殿出番なし)という点では、
この2人はとても良いコンビですが、周りがそれを認めません。
若菜がかなり積極的に一徹に懐き(あくまで「懐く」)、
作中、一徹の嫁に若菜を、という話も持ち上がります。
しかし、読んだ限りこの2人、夫婦という関係は似合わないですね。

実際の二人は、
人当たりは全く正反対なのに、心の内にはお互い相通じるものを持っていて、
しかもそのことを知っているのは当人だけ、という関係です。
秘密を共有しているというか共犯的関係というか。
一徹と若菜の交流が読みどころでもあり、
そしてその後の展開に致命的に関わってきます。

この作品については、
「『のぼうの城』を面白いと思った人なら楽しく読める」
というフレコミをよく見かけますが…。
うーん、どうでしょう?
共通してるのは、どちらも“ライトな時代小説”っていうことくらいかと。
物語全体の雰囲気も読了感も異なるので簡単に比較はできませんが、
正直、好みだけで言ったら自分は『のぼう〜』の方が好きです。
あの少年マムガのような勢いが楽しい(笑)。
落ち着いて主人公の孤独を味わうなら、『哄う〜』の方ですね。
posted by まるひげ at 23:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-04-06

icon_45_b.gif『謎斬り右近』読了。


いつぞやの書店パトで「気になる」と載せた単行本、
図書館に遊びに行ったら置いてあったのでウッカリ借りてしまいました。


うん、悪くはないんだけどさ…
単行本裏の紹介文に載ってた“隆○一郎の再来”というのは…無いでしょ。

豊臣滅亡から十年。激しい角逐を続ける黒幕たちが、大御所秀忠と三代将軍家光の対立を好機と見て一つの“宝”を狙っていた。幕府転覆すら招く“豊国神宝”―在処も形も定かでない謎に包まれた豊臣の遺宝。呪誼で人を殺める妖僧・天海、隠密集団を駆使する柳生宗矩、再びの動乱を期する伊達政宗らの腐り切った争いは、愛する人を奪われた木下右近を巻き込み、ついに最終局面へ。そこで右近が出会ったのは、自らが知らずに受け継いでいた衝撃の事実!(アマゾン・レビューより抜粋)。
中路 啓太(著)『謎斬り右近』

お話はすごく分かりやすい展開です。
ヒーローがアレやコレやの困難を乗り越えてヒロインを救い出し、
ついでに自身の出生にまつわる謎までも…おっとこれ以上言ったら面白くない!

あ、遅くなりましたが、主人公は木下右近俊基。
…と言っても、いまいちピンと来ませんな。
彼の父は秀吉の正妻・ねねの甥・木下延俊。
…と付け足しても、まだピンと来ない感じがしますがまぁそれは置いておいて。
この右近、とある事情により、幼少の頃からねねのもとで育てられたお坊ちゃんです。
ということで、
右近は想い人である豪を救い出すため、
そして「豊国神宝」の正体を突き止めるために東奔西走するのです。

あらすじにもありますが、
登場人物みなが皆、天下が転覆しかねない「豊国神宝」を狙って
チャンバラリンな展開になるので、人死にも結構なものです。
「豊国神宝」なるものの正体は、中盤あたりで薄々分かるんじゃないでしょうか。
分かるまでが、右近も読者も結構振り回されるんですけどね(苦笑)。

ストーリーの本筋が王道な分、それを彩る脇役のみなさまが個性豊かです。
有名どころからいきますと、
三代将軍・家光は、大御所となって権力を握っている父・秀忠と、
弟・忠長を可愛がってばかりいる母・お江を厭うあまり、天海に「呪い殺せ」と催促します。
そんな家光の側にはもちろん天海とその手下である陰働き集団「山王御供衆」、
さらに酒井雅楽頭と柳生宗矩がちょろりと登場。
正直「まだ生きてたんだっけ!」な伊達政宗は老いてなお天下への野望を秘め、
自らの剣を天下に認めさせることを切望する宮本武蔵を仲間に引き入れることに。
武蔵は将軍の剣術指南役である宗矩を敵視し、暴走することもしばしば。
そんな武蔵のストッパー的存在としてのオリキャラ・燕藤十郎。
多分、作者はこの藤十郎が好きなんでしょうね。
初登場時から、敵方でありながら憎めない人柄が滲み出ております。

…そういえば、この作者さん、以前読んだ『裏切り涼山』でも、敵方の描写がすごく濃かったなぁ。

味方サイドだと…
ヒロイン的キャラ・お豪さんは基本的に可哀想な目にしか遭ってないです。
家の事情で右近との許婚の間柄を解消され、
それが嫌で駆け落ちしようとしたところをかどわかされ、
殴る蹴るの暴行を受け、牢に閉じ込められ…もう散々であります。

個人的には、右近の強力な助っ人となる八条宮智仁親王が良いですね。
…命の危機的状況でも雅を忘れない肝太な方だなぁ。

という具合に有名人もっさり出てきますが、
正直、「ちょっと風呂敷広げすぎ…」という感があります。
読了感はコレとカブりました。
あくまで読了感が。
posted by まるひげ at 02:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-02-20

icon_45_b.gif『三国志異聞 我、独り清めり―郭嘉物語』読了。


あぁ、なんてこと!
今日のお休みはフィギュア見てツ●ヤ行ったら終わってしまったことよ。
これからちょみっと本読んで寝るつもりですが
その前に感想文ひとーつ。
先日行った図書館で、以前から気になってた絶版モノを借りてきました。

先見の明を備えた才気煥発の軍師の面に、プレイボーイといった面も有名な郭嘉。謹厳実直な実務家として、真面目一徹に仕えた陳群。ふたりの対照的な人生を背景に、実はここに『三国志演義』からも忘れ去られた、ひとつの哀切な物語があった―(アマゾン・レビューより引用)。
氏家 琴子(著)『三国志異聞 我、独り清めり―郭嘉物語』

いやぁ…
甘損さんのレビューの一番上の方の感想文がものすごーく的を射てらっしゃるので
そちらをご覧頂ければ、自分としては申し上げることは何もございません…。

という感じです。

いやいや、丸投げはいかん!

以下、珍しく辛口な感想文です。

posted by まるひげ at 00:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-02-18

icon_45_b.gif『孤島物語』読了。


先月放送された歴史ヒスト●アの宇喜多夫婦の回を見た後に
「読まねば…」と思った短編「鳥もかよわぬ」を目当てに図書館に借りに行きました。
…絶版なんですもの。

江戸の科人が佐渡金山の人足をすることになった。傷だらけでいかつい顔の勇作は彼らの監督に任命された。実はいたって気の優しい勇作。無宿者たちと勇作の交流を描く「江戸山狼」。博多湾志賀島で百姓甚兵衛は田圃で金色に光るものを見つけた。博多の町の庄屋、学者、奉行入り乱れての大騒動を心温まる筆致で描く「金印」等。様々な島を舞台に展開する白石歴史文学白眉の人情譚七編(文庫より引用)。
白石 一郎(著)『孤島物語』

ということで(?)、
誠に勝手ながら「鳥もかよわぬ」のみの感想文になります。
その前に、さらりと他作品の紹介をしておきます。

タイトルの通り、孤島を舞台に繰り広げられる人情話メインの短編集です。
どのお話も、後ろ暗い過去をかかえた人間と
彼らを助ける人たちの交流がメインに据えられております。
収録作品は以下の通り。

・「江戸山狼」佐渡島
・「鳥もかよわぬ」八丈島
・「三年奉公」五島列島
・「金印」志賀島
・「悪童」能島
・「倭館」対馬
・「入墨」隠岐島


佐渡島、八丈島、五島列島、隠岐島はいわゆる「流人の島」なのですが、
佐渡島、五島列島、隠岐島のお話の筋はどれも、
最終的には「島に住む人物が流人を助ける」という内容でした。
…ゆえに、読了感が似たり寄ったり、という印象が…(汗)。

作品中、「悪童」が異質ですね。
ここだけ幻想的な雰囲気漂う作風に仕上がってます。
いじめっこのガキ大将が庄屋さんの娘っこに淡い恋心を抱く、
なんだかほわんとしたお話でした。
「金印」は志賀島で出土した漢倭奴国王印をめぐる、
出土当時の騒動が描かれた作品。
「倭館」は地理的条件から、朝鮮に食糧を依存せざるを得ない
対馬藩の立場の難しさを描いた作品。

こんな感じ。
以下に、本命「鳥もかよわぬ」の感想文になります。


posted by まるひげ at 02:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-02-06

icon_45_b.gif『生きて候(下)』読了。


徳川の害となる存在(政重)を取り除こうと
ちょろちょろ政重の邪魔をしにやってくるお兄さん(正純)がものすごく素敵でした。
ところで、最終章の駆け足っぷりはどうしたことでしょう…。

慶長の役における蔚山城の戦いや露梁津の海戦での武功により、政重の名は全国に鳴り響いていた。美しく己の命を使い切れ―養父・長右衛門の遺した言葉を胸に、政重は数多の召し抱えの誘いを断り、「徳川どのに戦を挑み、武辺者の意地をまっとうしたい」と、宇喜多秀家の新座衆として天下分け目の合戦に臨むことを決意する!武辺に生き、義に殉じた男の波瀾万丈の半生を描く戦国巨編(文庫より引用)。
安部 龍太郎(著)『生きて候(下)』

上巻からなかなかに宇喜多贔屓ですごく美味しかったのですが、
下巻も大層美味しく頂きましたです、ハイ。
あ、島津家も格好良いです。

下巻のあらすじを乱暴に書きますと、

関ヶ原合戦の前夜、内紛により兵力不足となった宇喜多家へ
新たに召し抱えられた政重。
関ヶ原合戦当日では、奮戦むなしく敗走の憂き目に遭う。
敗戦により宇喜多家を辞した後は、前田家に召し抱えられることになるが―。

という内容です。

そういえば去年の大河では、ちょろっと出てた政重が
兼続に目をつけられて婿養子としてもらわれてったところも描かれてましたが、
その時期はこのあたりなんですよね。
徳川と島津の和議のあたり。

ということで、
文庫のあらすじを読む限りだと
下巻の最大の読みどころは関ヶ原だと思うのですが、
個人的にはその後の展開の方が印象に残りました。

なんつったってラストで宇喜多の坊がifってたー!!
もしかしたら、実際、薩摩でこんなことがあったのかもしれませんが…
いや、なってないな。
なってたら、秀家、確実に八丈島どころじゃないから。

いやいやすみません。
順を追って説明致します。

ネタバレ注意!の感想文です。長いです。


posted by まるひげ at 01:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-01-29

icon_45_b.gif『将軍家の刺客』読了。


そろそろ本腰入れて読了本の感想文書かねば…!
ということで、約2ヶ月ぶりの感想文です。

去年の10月頃にやってきた正純熱に浮かされ、
甘損さんで適当に検索かけてみて引っかかったモノを読んでみました。

前幕閣最高責任者・本多正純の首を獲れ!徳川幕府の草創期、家康と共に体制を作り上げた功労者は、幕府を揺るがす存在でもあった…(アマゾン・レビューより引用)。
南原 幹雄(著)『将軍家の刺客』

うん、自分、南原さん苦手なんだけどね!(それ前も言っただろ)

まずは簡単にあらすじでも。

大御所・家康の死により駿府政治が消滅した江戸幕府。
秀忠の直臣・土井利勝は、正純が長く政権に居座ることを恐れるあまり、
正純を失脚させ自分が執政の座につく、という野望を抱く。
利勝は、正純によって宇都宮から転封された恨みを持つ秀忠の姉・加納殿と結託し、
釣天井事件により正純の追い落としに成功する。

一方、出羽国に流罪となった正純。
幕府の仕様に憤った正純は、政情の裏側を綴った日誌をしたため始める。
幕府を転覆しかねないこの「本多日誌」を奪取し、
いまや幕府にとって目障りな存在となった正純を亡き者にするために、刺客が放たれる―

という内容です。

以下、軽くネタバレ…というよりも単に長くなったので畳みます。

posted by まるひげ at 02:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-11-30

icon_45_b.gif『柳生の剣、八番勝負』読了。


そういや、来年正月のテレ東7時間耐久時代劇SPは「柳生武芸帳」なんでしたっけ。
さっき公式覗きに行ったら、キャストにおりんさん(青山倫子)が!
しかも女忍者役(笑)。
ついでに宮本武蔵役の宅真伸まで発見。
…これは笑っても良いですよね。

ちょっと気になるのがお珠さんですよ。
「兵庫助の妻」という表記は良いのですが、
わざわざ「島左近の娘」と書いてるってことは何かあるのかなないのかな!

上泉秀綱に新陰流を学んで奥義を極め、柳生新陰流の祖となった柳生宗厳。徳川将軍家の兵法指南に登りつめた次男、宗矩。宗厳に息子の中で最もその才を認められ、「地摺の逆斬り」を編み出した五郎右衛門。そして兵庫助、連也斎、宗冬、友矩、十兵衛など、柳生一族の剣客たち。その生きざまと死にざまを柴田錬三郎、五味康祐、白井喬二、羽山信樹、戸部新十郎、新宮正春、山岡荘八、隆慶一郎の八人の名手が描いた傑作アンソロジー(文庫より引用)。
縄田 一男(編)『柳生の剣、八番勝負』

それはそうと感想文。
先月購入した八編収録の柳生モノ短編集。
収録作品は↓の通りです。

・「柳生五郎右衛門」柴田錬三郎
・「殺人鬼」五味康祐
・「柳生の宿」白井喬二
・「砂塵」羽山信樹
・「柳生連也斎」戸部新十郎
・「柳生友矩の歯」新宮正春
・「柳生の金魚」山岡荘八
・「柳枝の剣」隆慶一郎


ほんとに作家陣豪華だなぁ…。

以下に、不平等な感想文でも。
posted by まるひげ at 23:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-11-20

icon_45_b.gif『関ヶ原(上篇)〜(下篇)』読了。


以前から図書館の隅っこに置かれていて気になっていた本を借りました。
再販が96年だそうですが、もとは昭和13年に刊行された作品とのことです。
昭和13年て…えーと1938年?

『関ヶ原(上篇)』 『関ヶ原(下篇)』
鷲尾 雨工(著)『関ヶ原(上篇)〜(下篇)』

町人たちの芝居がかった言い回しがちょっと苦手。
落語で聞くのは気にならないんですが、文字になるとどうにも読みづらい。

あらすじは上下巻それぞれ以下の通りです。

「上巻」
絢爛豪華な醍醐の花見当日、豊臣家滅亡を予言する怪僧が現われた。
やがて太閤は病いに臥し、悪夢にうなされながら息をひきとる…。
幼君秀頼の運命やいかに?
御台所と淀殿との閨閥争いにからませながら、決戦に至る経緯を丹念にたどる。

「下巻」
不利な戦に立ち上がる三成のもとに、義侠の壮士が集う。
武士の本分が問われるなか、西軍方には裏切る者、静観する者あり。
これに対する東軍は、戦鋒を競い、組み討ちするほどの勇壮さ。
知謀・策略渦巻く天下の大激戦を、鮮やかに再現する。
(アマゾン・レビューより引用)


ちなみに、
上巻は醍醐の花見〜三成の佐和山蟄居まで、
下巻は関ヶ原後の各大名の処遇まで、となっておりました。

登場人物のなかでは、
ある時には僧侶、またある時には淀殿お気に入りの小姓として暗躍する
美貌の若衆・縫丸が非常にうさんくさいです。
どうやら天海のパシリ的存在なのですが、
その天海の目的がいまいちはっきりしないのです。
途中半端な介入の仕方をしているのでよくわかりませんでした。

そしてここの天海の正体はあの人であることが
ガラシャによってほのめかされています。
ガラシャといえば、この作品の女性陣がウスラ怖かったです…。

見所…というか笑いどころは
大野治長と歌舞伎役者・名古屋山三の取っ組み合いの喧嘩。
淀殿の寵愛をかけて…いえむしろ大野さんの悋気が爆発して起こった珍事件です。
おやめなさい、いい男がはしたない!
そしてそれを陰で見ていた刑部(笑)。

決起について三成・兼続・昌幸が佐和山で密会しているシーンが好きです。

家康と正信の描写がしっくりきました。
「(中略)家康が、佐渡の智慧を、かりたか借りなかったかは、
家康と佐渡、ふたり意外にはわからぬことだ。
家康は借りたような顔をしたし、佐渡は貸したらしい様子を見せた。
そのほうが、都合がよかったからである。」(p.358)



と、ここまでが上巻の感想です。

…正直、下巻は東西両軍の内情が詳細に延べられていたんですが、
読んでいてあんまり印象に残りませんでした…(汗)。

終盤は、
「東軍に寝返った大名たちの末路を見よ!
関ヶ原で散っていたほうがどんだけマシかわかんねぇべさ!!」
という、作者の力説が聞こえてきそうなラストでした。

いや、それにしても天海は何がしたかったんだ…。
posted by まるひげ at 16:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-11-07

icon_45_b.gif『武士くずれ』読了。


どれも読了感がやるせないです。
…まぁ、松本清張だしね。

人心把握に長けた老将・家康に絡めて人間心理の内奥を描く「武将不信」「転変」「二すじの道」。浪人のかなしみを描く「武士くずれ」。歴史小説でデビューを飾った松本清張による、傑作時代短篇四篇(文庫より引用)。
松本 清張(著)『武士くずれ』

帯には、「家康の老獪な政治に翻弄される武将たち」とありますが、
全4編通して見ると、「家康に」というよりは「時代に」と言った方が正確かなぁと。
とりあえず、簡単なあらすじを以下に。

・「転変」
関ヶ原後の福島家の処遇、そしてお家断絶まで。

・「武将不信」
豊臣の天下時代から、家康に接近し恩を売っていた最上義光。
気づけばいつの間にか家康の手立てに翻弄され、言いなりになっていく。

・「二すじの道」
将軍家の旗本を些細なことから殺してしまった松平忠輝家臣。
その後糾問を受け、手を下した者を幕府に差し出さねばならなくなったが、
当事者が逃亡してしまい―。

・「武士くずれ」
城中で刃傷沙汰を起こした同僚を庇い、藩から追放され浪人になった男。
身を立てるために江戸へ向かうが、途中、世話になった旅籠の厄介事に巻き込まれる。



以下、ほんのちょろりとネタバレしてるので一応畳みます。

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2009-10-24

icon_45_b.gif『生きて候(上)』読了。


安部氏の正純はやっぱり良いですね。
今回は悪役で描かれてますけども。

倉橋長五郎政重は、徳川家御先手組にあって、無敵の大業“鬼落とし”で知られた槍の名手。家康の名参謀・本多正信の次子にして槍奉行・倉橋長右衛門の養子だが、故あって秀忠公の近習を斬り捨て徳川家を出奔。意地と野心を胸に秘め、慶長の役に身を投じる。前田利家の密命を帯び朝鮮半島に渡った政重だが、そこは人心を捨てねば生き延びられない修羅場であった(文庫より引用)。
安部 龍太郎(著)『生きて候(上)』

こちら、宇喜多スキーにとっても大層美味しい本でした。
坊はどこからも怨まれないひとだなぁ、とひどく感心した次第にございます。
父親があんなんなのになぁ…。
で、意外に重要な脇役が明石全登です。
とりあえず全登がおかあさんですよ!(え)
ものっそ長身でごつい馬面のおかあさん…でも彼のつくるおにぎりが絶品だそうです。

あ、すいませんいきなり話が脇道に逸れました。
上巻は
主人公の本多政重が
養父である倉橋長右衛門の死から程なくして徳川家を出奔、
縁のある前田家のもとへ一時身を寄せ、
利家の密偵として慶長の役真っ只中の朝鮮へ渡ることとなる。
朝鮮では悲惨な戦場を目の当たりにし、衝撃を受けた政重は、
無益な戦を終わらせるため三成、秀家らと図り朝鮮からの撤退をどうにか成功させる。
そして秀吉の死後、にわかに家康は天下取りに向け動き出すのだが…。

というあらすじです。

何といっても文武両道の政重の魅力が弾けてる本書。
不正により貶められた友人を助け、
権力者に媚びず、戦を憎み、弱きを助ける清廉潔白な武人といった趣です。

そして安部氏の描く人物は、みんな個性豊かなので脇役もすごく魅力的です。
登場人物の相関関係も重要なのです。
たとえば…
政重と同い年の豪姫へ密かに寄せる恋心、
そして利家の次男・利政から寄せられる淡い恋心、といった三角関係です。
・・・・・
ごめんなさい、三角関係は嘘です。
でも利政に惚れられてるのは本当です。
豪姫は特に政重のことは特別視してないですね(笑)。
ちなみに、政重の唇は百合の匂いがする(!)そうですよ。
利政はけっこう乙女でした。

上巻は政重が宇喜多騒動を収束させたところまで。
政重が、兄・正純の思惑を台無しにしたラストが結構楽しいです。
この正純、とても愉快で可哀想な人なんですが、見てる分にはすごく面白い人です。
だってこの人の思考、ひとり突っ走ってるんですもの。
傍に止めてくれる人がいないと、人間孤立するばっかりだな、という見本のような人です。
正純から「じわじわと締め上げてなぶり殺しにしてやる」(p.345)という告白と
ひたむきな憎悪を受け、政重は一時的に帰参した徳川家を再び後にします。
で、下巻は関ヶ原になるわけですね。

それにしても、ここのお兄さんは『風の如く水の如く』よりも素直ですね。
やっぱりね、相手が身内だから!

そして政重・正純といえば正信。
ちょろちょろ政重を陰から助けては「本多の家に戻って来い」と催促しにきます。
正純とはうまくいってないようで、
ことある毎にぼやきに来るところも、なんだか普通の親父で微笑ましいですね。
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2009-10-03

icon_45_b.gif『義槍鬼九郎』読了。


今日は仕事お休みだったんで、ちょちょいと部屋を片付けてみたりしました。
でも片付けの最中、マムガ手に取ったらおしまいなんですよね…。
読み耽って作業中断、つかそこで片付け終了。
今日はむげにんの23巻を再読してしまいました。
統主がはっちゃける巻です。江戸城斬り込み時の…。
いやー…統主カコ良いわー。


それはともかく。
部屋片付けついでに本の整理してたら出てきたこの本。
そういえば読み終わったこと忘れてた…。
というわけで、早速感想文でも。

美濃の国樽井(現岐阜県垂井町)に生まれ、斉藤道三に槍術・軍略・政略を学び、竹馬の友、大軍師竹中半兵衛の志を継ぎ、朋友大谷刑部吉隆と共に「武将の第一義は民の幸せをはかるにあり」と、志を一つに乱世を疾駆―。本多平八郎忠勝との勝負は(単行本帯より引用)。
朝霧 圭梧(著)『義槍鬼九郎』

何故だか読み終えるのにすごく時間がかかった本でした。
5月に読み始めて、読了が9月…4ヶ月もかかっとる…。
まぁ、本編だけで746ページもあるからなぁ。

刑部の寄騎・平塚為廣が主役という珍しい本です。
為廣のモテっぷりが尋常じゃありゃせんぜ!!
この本を読むまでは、平塚為廣といえば関ヶ原でちょろりと名前を見る程度だったんですが、
なかなか面白い経歴を持った人物であることがわかりました。
基本、史実に沿って描かれていますが、
自分の勉強不足ゆえ、どこからが創作パートなのかがイマイチよくわかってなかったりします…。

美濃にて道三に師事し、半兵衛と友誼を結んでいた青春時代の描写が非常に鮮やかでした。
そして道三の死後、先に秀吉の配下となった半兵衛に続き、
馬廻りとして秀吉に仕えるも、すぐに出奔。
流離の旅を経て、秀吉の下へ帰参することになります。

為廣の故郷は国境に領地を持つ樽井なのですが、
奔放な兄の変わりに城代を勤める弟・為景も、
地味ながら非常に好感の持てる人物として描かれていました。
この作品、為廣の近辺の人たちもみんな良い人でね…!
女性キャラも為廣とつかず離れずな位置を保って描かれているので、邪魔にならないし。

ただひとつ、難点が…。
為廣単体の描き方には文句はありませんが、
「〜と献策したのは為廣であった」「為廣の働きにより云々…」等、
陰の手柄はすべて為廣!
天下人の後ろに為廣あり!!という感があるので、
為廣マンセーぶりがちょっと鼻につく感がありますね。

で。
気になるみったんと言えば。
長浜時代の三成がそらもう…後頭部はたきたくなるぐらいかっわいくなくてね!
まぁ、可愛げがないところがこの人の可愛いところなんですがねー(デレ)。
長じてからも、刑部と仲の良い為廣と三成は対立しっぱなしです。
大変なのは板挟み状態の刑部ですよ…。

ある時、秀吉へ対する自分の献策を悉く退ける為廣に対してついにブチ切れた三成、
為廣の胸倉掴んで「俺に恨みでもあるのか」から始まり、
「お前は豊臣の疫病神だ」と散々為廣に食ってかかるんですよ。
その途中、「俺から友を奪っ」たことも何気なく紛れ込んでます。
みったん、どさくさに紛れて論点ズラすな…(笑)。
なかなか酷い扱いをされてますが、やっぱり面白いわこの人。

という感じでした。
関ヶ原の最後(=為廣の最期)まで、しっかり丁寧に描かれておりました。
為廣の直接の死にも繋がった内応組の武将についても、
単純に悪役扱いしていないところが良かったです。
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2009-09-19

icon_45_b.gif『魔岩伝説』読了。


ほんとにさ…
荒山作品は「どれ、読んでみるか」で読み始めたが最後、ノンストップですな。

折しも朝鮮通信史が五十年ぶりに来日する直前、対馬藩の江戸屋敷に曲者が侵入した。幕閣が放つ剣客柳生卍兵衛の魔手から若き遠山景元が救ったのは、なんと朝鮮の女忍者だった。彼女が仄めかす徳川幕府二百年の泰平を震撼させる、李氏朝鮮と家康の密約とは?国禁を犯し、朝鮮に渡る景元とその追っ手たち!史実の裏で繰り広げられる壮大無比な傑作時代伝奇!(文庫より引用)
荒山 徹(著)『魔岩伝説』

「前2作に比べるとやや地味」という評価をどこぞで聞いたのでどんなもんかと思ってたんですが。
やぁ、大丈夫大丈夫。
以下、ビミョーにネタバレしてるんですが、
多分読んだ方にしかわからないと思うのでこのまま載せちゃいます。

このお話、非常に乱暴に言ってしまえば、
「若かりし頃の遠山の金さんが徳川家と朝鮮通信使との間に隠された秘事を暴く」というものです。

最初の方は、
朝鮮通信使の廃絶を訴えた新井白石の意志を継ぎ、極秘裏に活動していた者と
それを阻止しようとする幕府との攻防、という形なんですが、
徐々に話が大きくなり、
そもそも「朝鮮通信使って何?」という謎へ迫っていきます。

渡海に際しては総て日本側が負担し、莫大な費用をもって迎えられた朝鮮通信使。
その対応の様は、まるで朝鮮が日本の主であるかのような扱いであったと言います。
何故、日本がそれほどまでに遜って朝鮮からの公人を迎えなければならなかったのか、
李氏朝鮮と徳川幕府の間に交わされたという密約、
それに絡んで徳川幕府が200年も続いた理由、
それらの謎が徐々に明かされていきます。
さらには、クライマックスで明かされる日光東照宮の謎、
家康の思惑のさらに上を行く天海の陰謀など、これでもか!と伝奇ネタてんこもりです。

舞台は日本だけでなく、朝鮮にも移ります。
荒山センセの十八番・朝鮮の人民の困窮と現地でのドタバタも…って、
おっと、忘れちゃいけない妖術合戦もありまっせ!
さらっと何気なく突然アリエナイ事象が発生するので油断していられません。
読み進むうち、
ほんと「どうしてこんなこと思いつくんだ!」と声を大にして言いたい気分になりました。

で、この作品、ラストが良いんです。
こういうほわんと幸せ感のある余韻を持った〆は前2作ではなかったですね。

登場人物も活き活きと描かれ、楽しい方々ばっかりです。
特筆すべきは、オリキャラの柳生卍兵衛。
非常に魅力的な人物でした。
ほぼ全編通して、景元のストーカーと化してますがね…。
ばんべーカコ良いよ!!
未来の南町奉行である林燿蔵も、滑稽ながら憎めない小者っぷりを発揮しています。
終始、「朝鮮マンセー!」な燿蔵と、朝鮮嫌いな卍兵衛とのどつき漫才も読みどころです。
そして極終盤に登場する景元の強力な助っ人、法親王。
一撃必殺のはずの仏の御光ビーム、
あんな大事な場面で外してしまう法親王が素敵すぎであります。
法親王さま、おーちつーいてー!!

…という感じでした(何がなにやら)。

ちなみに、先日発売されたばっかりのこれも↓


徳川家康 トクチョンカガン(上) 徳川家康 トクチョンカガン(下)

荒山 徹(著)『徳川家康 トクチョンカガン(上・下)』

時代的に、そして徳川的に(徳川的て)カブってるので、すごく気になるわけですよ!!
posted by まるひげ at 01:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-09-10

icon_45_b.gif『嶋左近』読了。


やっぱり、左近の主君を見る目はどこかおかしいんじゃないだろうか。

筒井順慶に仕えていた嶋左近は、宿敵松永久秀との闘いの日々を過ごしていた。新当主定次の横暴を諫めるも叶わず筒井家を退去する。その左近のもとに石田三成が大いなる禄高をもって迎えたいと訪れる…。秀吉亡きあと、天下を目指す家康に対し、毅然と立ち向かい、武人の美学と矜持をもって生きた激闘の生涯を描く(文庫より引用)。
山元 泰生(著)『嶋左近』

作品の前半が筒井時代、後半が三成に召抱えられてから関ヶ原までとなっております。
所々、史料を挿入しながら、左近の生涯が丁寧に描かれていました。
読みやすくて大人しい本なので、
「ページをめくる手がとまらない!」という興奮があるわけではないのですが、
謎の多いこの武将の生涯について知るには、よくまとまっているのではないかと思います。

前半の順慶時代の描写が鮮やかで、いかに左近が苦労してきたのかが忍ばれます。
いやぁ、ほんとに凄い苦労人だわ…(しみじみ)。
この作品では、軍師というより面よりは、頼り甲斐がある武人・家老としての姿が印象的。
素直に「左近、格好良いなぁ…」という感想が出てくる作品でした。
欲を言うなら、
後半、石田家の家老になってから関ヶ原までがちょっと駆け足なので、
自分としてはもっと深く踏み込んだ主従のアレコレを読みたかった気分ですね。

そして気になるここでの三成は、
召抱えた後も左近を「軍師殿」と呼び慕い、師や兄に対するような態度で接します。
なかなか可愛ゆげな風情でございました。
イラッとするとぞんざいな口調になってましたが(←こども・笑)。

作中でもあとがきでも述べられていましたが、

左近の軍才と経験を誰よりも高く評価し信頼していたのは三成だったが、
関ヶ原の決戦にて左近の献策をことごとく退け、潰してしまったのもまた三成。

という事実がなんともやるせないです。

そのことを想うと「限りなく空しい(p.316)」と左近も感じていますが、
その空しさを乗り越えて最期まで三成に尽くした左近の姿にまた心打たれるわけです。

格好良いなぁ…(2回目)。

とりあえず、今月に出る同作者の刑部本も気になるので購入してみたいと思います。
posted by まるひげ at 01:28 | Comment(3) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-08-25

icon_45_b.gif『大谷刑部戦記(1)関ヶ原に義神立つ!』読了。


ど、どうもです…。
先週一週間がまさかの最凶繁忙期で、なんだか酷い有様でした。
シフトがまずありえないんですが、
「もうこんな会社で働いていけない」と辞める正社員が数名、
かと思いきや新型インフルにかかる人も出てしまいました。

…すいません、お休みももちろん欲しいんですが、
その前にお昼休みと夜ご飯食べる時間をください…(ぱたり)。

とまぁ、みっともない近況というか愚痴をこぼしたところで、
かなり前に読了した本の感想文でもいってみたいと思います。



みったんの扱いがなかなか酷い件について。

慶長十五年九月十五日、関ヶ原に激震が走る。徳川家康が仕掛けた完璧な調略に嵌り、小早川秀秋率いる毛利勢が西軍を裏切ったのだ。だが、駆け下る小早川軍を眼下に、松尾山に陣取る一人の男がいた。その知将こそ、大谷吉継であった。今、天命を受け、吉継が関ヶ原で不死鳥の如く蘇る。東か西か。義と欲の何れが真か!?乱れくる天下を前に、石田三成と共に、己が命を懸けた百計が開かれる。同時に、上杉の知将、直江兼続が江戸に未曾有の軍略を仕掛けた。震撼する家康を余所に、無法者の伊達政宗が不気味な蠢動を始める(新書より抜粋)。竹中 亮(著)『大谷刑部戦記(1)関ヶ原に義神立つ!』

なんだか「あらすじだけ読めば本編読まなくても良いです」ってなくらい見事な紹介文だこと。
もっと手短に言うと、
“実は病完治してたんだぜ!な刑部が戦場をはっちゃけるif小説”です。

冒頭は良いんですよ。

家康の脅しを受け、東軍に寝返った小早川勢が大谷勢目掛けて襲い掛かる。
それを待ち構えるのは、秀秋の裏切りを予期し、輿上で戦況を見据える大谷吉継。
その手立てに翻弄される小早川勢だが、これに脇坂・小川・赤座・朽木の軍勢が加勢したことで、
徐々に劣勢になっていく大谷勢。
しかし、小早川勢が引き払った松尾山の頂にひとりの武将が佇んでいた。
兜の前立てには番い蝶、
端正な顔立ちの所々に瘡の痕が残るこの武将こそ、大谷吉継その人であった―!

ここでジャジャーン!!と派手にOPが始まりそうで、そらもうわくわく感満載です。

物語はここから時間軸が遡り、秀吉の死→七将襲撃→宇喜多家騒動→上杉挙兵…
というように進んでいきます(超おおざっぱ)。
で、この合間にちょこちょこ刑部の暗躍…もとい手回しがあるわけですよ。
そして再び関ヶ原に戻るのは終盤です。
東軍有利に運んでいた戦況を、本物の刑部の介入(影武者は土屋守四郎)で
西軍優勢へと導いた直後、悲劇が…という流れです。

…という、流れ、なん、です、が…。


以下、ネタバレですので畳みます。

posted by まるひげ at 02:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-08-15

icon_45_b.gif『本能寺六夜物語』読了。


あぁ、お盆休みがじりじり残り少なくなっていく…。
30枚以上はあると思われる報告書仕上げなきゃいけないというのに、
ニコ動行ったり甘損行ったり楽●でお買い物したり、
ネットライフ満喫してる場合じゃないのだよ。
明日あたりに尻に火がつくな…。

でもまぁ、とりあえず夜も更けてきたのでそろそろ寝ようと思います(…おま)。
おやすみなさーい。





…はっ!
そもそもなんのために更新しようと思ったのか忘れてた。
感想文感想文(あたふた)。


一番印象に残るのは、確実に尼さんの話だな…お蘭さんてば、うっかりカニバ!!

「本能寺の変」の裏に隠された、恐るべき物語―。信長が本能寺で死んだのは、真実だったのか―!?事変より三十年余、山寺に集められた六人の男女。彼等は一体、何に関わり何を知ってしまったのか!第21回小説推理新人賞受賞作家が放つ、衝撃の第一作(アマゾン・レビューより引用)。
岡田 秀文(著)『本能寺六夜物語』

前から読んでみたかった岡田さんの連作短編ミステリー。
いいなぁ、こういう話は大好きだ。

山寺に集められた6人の男女。
武士、乞食、商人、武士…と身分も異なる彼らが、
本能寺の変に関わった自らの過去を顧み、一夜につき一話ずつ語っていくというものです。
本能寺の変は、事実だけを見てみれば、
「家臣の明智光秀の謀叛により織田信長が自刃する」というものですが、
ここでは、この事件に関わった者たちそれぞれの視点から
本能寺の変の裏側が述べられています。

短編集なだけあって、各作品はちょうど良い長さでさらりと読み進められます。
惜しいのは、せっかく連作という形を取っているんですから、
もう少し作品同士の繋がりというか伏線を張ってあってもよかったかなぁ、という点です。
第三夜と第四夜なんて特にそう…。

ちなみに、各話の大雑把過ぎるあらすじは以下の通りです。

・「第一夜 最後の姿」
信長の茶坊主として仕えていた僧が見た、信長と秀吉の姿。
・「第二夜 ふたつの道」
武田家を裏切った穴山信君のもとで仕える侍が語る、家康の謀略。
・「第三夜 酒屋」
信長の馬廻りと親しくなった京の酒屋の丁稚との触れ合い。
・「第四夜 黒衣の鬼」
京の治安維持に努めていた男が見た、悪魔の存在を信じる修道士の裏の姿。
・「第五夜 近くで見ていた女」
安土城の女中だった尼僧の狂気に似た森蘭丸への懸想。
・「第六夜 本能寺の夜」
明智光秀の家臣が語る、本能寺の「真相」。


確かに、魔王・信長の死因があんなんじゃ隠したくもなるよね…。
多分、真相を聞いた人たちは一様にそう思ったんじゃないでしょうか。

ラストはなんだか謎が残りました。
結局6人は、何事もなく生きて山寺を去ることになるんですが、
彼らが語り合う場所となった山寺のまわりを厳重に兵で包囲し、
おそらくは本能寺の変の裏を知る人間を消すつもりで集めたであろう
南光坊天海の意図がよくわからないんですよね。
はっきりしないところが不完全燃焼でもあり、
余韻を残す演出でもあるという…どっちつかずなやきもき感を味わってしまいました。
posted by まるひげ at 02:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-07-09

icon_45_b.gif『戦国もぐら組』 読了。


そういえば、先週発表になってたらしいですが、
BAS●RAの3が来年発売になるんですってね(←情報遅いよ!)
今回の舞台は「関ヶ原」ということだそうですが。
ということは、アレかい?
狸さんはあのちまい姿でもう登場済みだから、
新キャラは狐さんということでしょうか。
…まぁ、このゲームは遊ばないと思うのですが、地味に気になります。

本題いきましょう。
結構前に読み終わってたよ感想文B

図書館ブラついてたら目に留まった作品。
ぱらっと開いたらみったんとキヨが仲悪げに会話してるところに魅かれて借りてきました。
我ながら、どうしようもない動機でございますよって。


土の龍と書いても所詮はもぐら。だがいつの日か雲を呼び風を起こして真の龍とならん。武士の世を終わらせ、技能者の世に―。信玄の遺志を継ぎ、土龍組の旗印に結集した金掘り衆が、雇われて城を陥してゆく(アマゾン・レビューより引用)。
えとう乱星(著)『戦国もぐら組』

元金掘り衆が、流れの城陥とし集団「もぐら組」として歴史の裏で働くさまを描いた連作短編です。
このもぐら組の創始者である爺さんが、なんとびっくり武田軍のあの人なんですよ。
武田軍の武将もちらほら回想シーンで出てきますが、
ビジュアルはしっかり一昨年の大河バージョン(笑)。
まぁそれはともかく。
もぐら組の戦術的な城陥としの仕掛けや
“仕掛けの獅子丸”“けむりの五右衛門”“水の弥々”“不動の重蔵”“さえずりの弥介”
など、キャラのそれぞれの持つ異能にちなんでつけられた呼び名通りの活躍には、
読んでいてわくわくさせてもらいました。

が。
後半からがね…。
話が、車輪眼やら全知全能やら、
なにやらスーパーナチュラルな展開になってしまってからが
なんとなく置いてかれ感を感じてしまいました。
そんな話になると思わなかったよ!
あくまで専門の技能・知識を以って有力武将のもとを渡り歩く城陥とし集団、
という中盤までのストーリーを期待していたので…。
で、終盤がさらに駆け足、というか唐突な終わりでしてね…。
これ、おそらく掲載雑誌で打ち切りか何かになったんでしょうね。

「身分にとらわれず、技能者を重く用いてくれる武将を天下人にしたい」
「道々の者が誇りをもって生きていける世をつくる」
というもぐら組の理想に、ふっと隆慶一郎作品を思い出してしまいました。
posted by まるひげ at 01:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-07-05

icon_45_b.gif『士、意気に感ず―小説・竹中半兵衛』読了。


結構前に読み終わってたよ感想文。
いつぞや購入した半兵衛本を読了致しました。
ネト書店で購入したんですが、届いたものが初版本で(95年)、良ーい具合に日焼けしてました。
あと微妙に古本臭が…中古じゃないのに(苦笑)。
まぁそれはともかく。
臣下としてはこれ以上の理想があるか、というような感じです。
そして敵に回したらこれ以上恐ろしい人はいないなぁ、と…(ブルリ)。

豊臣秀吉の天下獲りを陰で支えた軍師、“智謀の人”竹中半兵衛を描く歴史時代長編作(文庫より抜粋)。
郡 順史(著)『士、意気に感ず―小説・竹中半兵衛』

これは半兵衛入門書としてはすごく良いですね。
半兵衛の稲葉山城乗っ取りからその死までが描かれています。
ページ数が少ない上、淡々と進むのでさら〜っと読めます。

ほとんど会う度に半兵衛の体調を気遣う秀吉、
達観した態度で常に穏やかな微笑を浮かべる半兵衛、という画が基本でございました。
こちらの半兵衛、知略に関しては秀吉の師として基本優しいんですが、
時折、秀吉ビビるくらいの冷徹さも持ってます。

そして半兵衛といえば、(自分が)気になるのは官兵衛ですが、
こちらは、秀吉の下へやってきたと思ったらすぐに幽閉されてしまうので、
あまり半兵衛との絡みはなかったです。
それでも、官兵衛は半兵衛を「兄者!」と慕っています。
「まァ、微笑ましい…w」と頬を緩ませる間もなく、

「(中略)、あえて無理して半兵衛を超えようとしなくても、病弱な半兵衛はいつか消える。
その時になっておのれの力を存分に発揮すればよいという計算があったのかもしれない」(p.255)


という腹黒部分を読んでしまうことに(苦笑)。

どうでも良いですが、
この文庫の表紙の半兵衛がなんとなく藤田ま●と似で…。
つーか、こんな老けるほどはんべ生きてないでしょ…!
と、思わずツッコミたくなりました。
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2009-06-01

icon_45_b.gif『剣酢黎草の乱舞 備前宇喜多直家の生涯』読了。


もひとつ直家さま本どーん。
絶版なので、図書館から借りました。

お福さまが優しかったです…。
いや、優しいのがスタンダードなんですが、
この前に読んだ黒部版お福さまが怖かったもので(笑)、これ読んで安心しました。


備前の梟雄宇喜多直家(家紋・剣酢黎草)の生涯を描いた歴史小説。巻末に毛利側の史料などにより、『備前軍記』などの諸史料の問題点について考証を加えた「戦国史料批判」を収録(単行本より引用)。
森本 繁(著)『剣酢黎草の乱舞 備前宇喜多直家の生涯』

剣酢黎草(ケンカタバミ)、というか「酢黎草」と言われると
高橋作品の冒頭をふっと思い出してしまいます。
「何度踏まれても起き上がってくるその力強さを俺にもくれ」
みたいな冒頭じゃなかったでしたっけ(←うろ覚えかよ)。

ちなみにこちら、
史料をもとに、宇喜多直家の生涯を書き起こした作品となっておりました。
ゆえに(?)、小説的な面白さはさほどありません。
そんな点からすると、黒部作品とやや似てますね。
でも、こちらの作品の方が直家の思考や苦悩が描かれているので、
直家さまに優しい仕様になってるかと…。
少なくとも、作者は直家さま嫌いじゃないんだろうね!
という印象を受けました。

どうでも良いことですが、
自分、島村観阿弥謀殺と三村家親暗殺のエピソードが何故だか好きです。
前者はシチュエーションが好きで、後者は遠藤兄弟の機転に感心してしまいます。
火縄銃の火種が消え、焚き火の火の粉を火種として利用した、アレです。
直家さま本を読む時は、いつもこの時点でテンション上がります(笑)。
posted by まるひげ at 01:31 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-05-31

icon_45_b.gif『宇喜多直家 秀吉が恐れた希代の謀将』読了。


旅行後の宇喜多熱に便乗して、以前挫折した直家さま本を消化しました。
いやぁ、勢いって大事ですね!
つぅかこれ、挫折してるうちにいつの間にか販売停止になっとる…。

この本で、直家さまの「美少年をつかって敵を諜略」の如何がわかりました。
剛介…やりおるわ。
ここの描写、作品のなかでもヤケに詳しいんですが、それは気のせい…かの。


斎藤道三、松永久秀と並び戦国の梟雄と称される宇喜多直家。子の秀家は、のちに秀吉に寵され西国を代表する大名に成長する。その礎を築いたのが直家である。備前の守護代浦上氏の重臣であった祖父が同僚の裏切りに遭い、不遇の少年時代を強いられた直家。やがてお家再興を果たした彼が、策謀渦巻く備前・美作の地を制するまでの数奇な生涯を、人間味溢れる筆致で描く力作(文庫より引用)。
黒部 亨(著)『宇喜多直家 秀吉が恐れた希代の謀将』

副題に「秀吉が恐れた」ってありますが、別に恐れてはいなかったですよ…。
むしろ小馬鹿にしてたような…?

読みながら思ったこと。
「作者は直家さまのこと好きじゃないんだろうな!」
以前に読んだ東郷作品高橋作品での直家さまと比較すると、
この作品では、直家さまの魅力がイマイチ伝わってこないんです…。
(まぁ、この2作品はキャラ作品なんですがね)

「騙したり裏切ったり卑怯な手段ばっかり使う非情な武将」
であるところが直家の最大の魅力なんだよ!
っていうことを主張するのでしたら、
作者はそれを余すところなく描いておるかと思います。
戦いやその背景については、非常に丁寧に描かれておりました。

それにしても、
調略が成った後の達成感というか充実感みたいなものが全くないので、
感情移入する余地がないのです。
あったとしてもほとんど無味か後味悪い感じです。
舅を謀殺し、妻と娘を死に追いやり…となるとまぁ仕方ないか…。

脇役キャラでは、
「お福はもう直家の手綱では御しきれぬ奔馬になっていた」(p.442)
という姦婦なお福さま。
春家と伊賀久隆の毒殺犯となっておりましたよ。
さらに、間男なこにたん(笑)など、
あまり他では見られないので珍しかったです。
そして寂しいことに坊がこれっぽっちも出てきてない…。

オリキャラの「大島小竜」が良い味出してます。
八郎時代からの直家のお付きの者で、
直家が城持ちとなってからは、諸国を回る間者のような設定となってるキャラです。
直家の信頼厚いこの人の正体が実は…なことになってました。
ラストは直家の死を匂わせる寂しげな描写で終わってます。
ここだけ妙に小説っぽい(いや、小説なんですが)描写なのでなんとなく雰囲気違いますね。

実は寂しがり(微笑ましい…w)な直家さまの孤独を癒せるのは
良家の娘でも絶世の美女でもなく、
幼い頃に身を挺して自分を庇おうとした素朴な田舎娘だったんだよ、というお話でした。
posted by まるひげ at 21:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-05-22

icon_45_b.gif『忍者丹波大介』読了。


久々の池波作品忍びシリーズ。
左近がそれはもうカコ良くて
ちょろっとしか出てこない刑部が可憐でした(可憐、て)。
そして本当に池波センセは真田家好きですね!
ちょこちょこ昌幸おとんや幸村が登場してます。

豊臣秀吉没後、諸国大名の勢力は二つに分かれ、関ヶ原の合戦で徳川方が勝利をおさめる。激変する時代の波のなかで、信義をモットーにしていた甲賀忍者のありかたも変質していく。丹波大介は甲賀の立場をすて一匹狼となり、自分が信ずるものにだけ従い、黒い刃風をくぐって活躍する。さまざまの武将の去就と歴史の裏側で暗躍する忍びの者の裸形を痛快に描く長編時代小説(文庫より引用)。
池波 正太郎(著)『忍者丹波大介』

時代的には、秀吉の死後〜関ヶ原直後になります。
関ヶ原の戦いまでの緊迫感のある情勢のなか、暗躍する忍びの姿が描かれております。
ラストは、悲劇的な…というかやるせない結果となってました。

…ここでの主人公・大介。
まるひげ的には今までの忍びシリーズのなかで一番嫌いな主人公だ(苦笑)。

忍びらしくないんですよ。
彼の最大の魅力は「情が厚い」というところでしょう。
人としては大層良いことなんですが、そもそもそれって忍びに向いてないんじゃ…。
要するに、優しすぎるんです。
敵方ながら惚れてしまった女のことばっかり考えてたような。

大介は甲賀忍びに属しているため、序盤では頭領の山中俊房の指示で動きます。
ところが、時代のせいとはいえ、信義のない甲賀忍びの仕様に嫌気が差し、
途中からは自分の心に従って、単独での自由な忍び働きをすることになります。

自由奔放と言えば、『諜の戦記』『忍びの風』の主人公・於蝶さん。
この人も情は厚い方(というか多情…?)ですけど、
最後にはその情を殺すことができる気がするんですよね。
なにより、強い。怖いほどに強いんですよ…。
忍びはこうでなければ!
…まぁ、文句はこのぐらいにして…。

一番多く危険な目に遭ってるのは、もちろん大介なんですが、
正直、それ以上に気になるのが
左近の配下に徳川方の間者が紛れ込んでいたり
左近と幸村が甲賀忍びに命を狙われ窮地に陥っていたり…
といったところが特にハラハラでございました。

佐和山主従も面白いです。
七将襲撃の報を聞き、正継に嗜められるくらい心配する左近、
左近を「宝物」呼ばわりするみったん。
どっちもどっちだ(笑)。
機密保持のためとはいえ、
深夜に二人きりで風呂に入るのはどうなんだろうこの主従。

以前のシリーズから、ちょろちょろ顔を覗かせていた脇役の忍びたちも再登場してます。
代表的なのが、杉谷忍びの岩根小五郎。
『忍びの女(上)』では、左近の下で働いてましたが、今作も同様です。
てーか、この作品で一番活躍してます。この人。
そしてやっぱり出てきた、真田の伊那忍びの奥村弥五兵衛と佐助(!)。
佐助なんて『真田太平記』以来じゃないの!
この人は「向井佐助」てフルネームで呼びたくなります。なんとなく。

次はとうとう忍びシリーズ最終巻の『火の国の城』ですよ。
大介がどう成長してるのか見せてもらおうじゃないの!
と、読む前からケンカ腰です。
posted by まるひげ at 23:51 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-05-19

icon_45_b.gif『爆撃聖徳太子』読了。


『魔風海峡』読んだ後取り掛かったのがコレ、ということは
「ははぁん、おぬしあの説に釣られたな…?」と思われそうですがその通りです。
でも読むべき本はこれじゃない。
わかってる。
つぅかこれは厩戸ツンデレでよろしかったでしょうか。

「日出ずるところの天子、日没するところの天子に書を致す」―大業三年(六〇七)、遣隋使として隋国皇帝・煬帝に謁見した小野妹子は我が目を疑った。中国を支配し絶対的勢力を誇る王に対し、このような物言いで国書を送るとは。日本中火の海にされても文句は言えないではないか。こんなことをしたのは、あいつ、厩戸皇子すなわち聖徳太子だ。一体どういうつもりなのか?…大帝国の長として権勢並ぶ者なき煬帝に、聖徳太子が戦いを挑む!(新書より抜粋)。
町井 登志夫(著)『爆撃聖徳太子』

発売当時(2004年)に、書店で見かけて噴いた記憶があるんですが、
まさか本当に読む日が来るとは思いませんでした。

だってタイトルに「爆撃」て!

なんで爆撃なんだろうと思って読み進めていったら、終盤でほんとに爆撃してた。

しゅりゅうだん で ばくげき してたよ !!


「日出づる処の天子、日没する処の天子に書を致す、恙無しや」
という書き出しから始まる、倭国から隋に送られた国書(by 厩戸皇子)。
これに隋の煬帝が激怒した、というのは有名な話ですが、
辺境の田舎国なんかの戯言に腹を立てたと言っても、
高句麗遠征を目前に控えた当時の世情からして、即倭国遠征ということにはならんわけですよ。
まぁ、煬帝の頭ン中は、
「高句麗片づいたら次は倭国だ覚えてろよ」という気持ちだったんでしょう。
高句麗遠征が成功していたら、その可能性もあったかもしれませんが、
これは言っても仕方ないこと。
そこらへんの微妙な外交関係に厩戸と妹子が絡んでくる話です。

ありえない感満載かと思いきや、
割ときちんと史実との折り合いが取れているので、これもありじゃね?と思ってしまいます。不思議。
恐れていたより、まともな歴史小説でした。
ただ1点を除いて。
他の何よりも印象づけられるのその1点は、
強烈な個性を撒き散らす人間災害・聖徳太子こと厩戸皇子の存在です。

なにしろ発言が

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」

こんな感じなんです。

10人の話を一度に聞けた、という伝説がありますが、ここでは10人どころではなく。
異能と言える「聡耳」で人の弱みを握り、それをネタに操るという腹黒い厩戸ステキ。
物事の本質を突く発言をしたかと思えば、
次の瞬間奇声を発しフザケた物言い・行動を起こす厩戸。
自らとは「厩」つながりでキリストの発言を多用してます。
まぁ、あんな特異体質でおかしくならない方が異常なんですが、
それにしても随分と躁です(笑)。
きゃあきゃあ言ってます。
様子がじゃなくて、実際ほんとに「きゃあきゃあ」言ってました(汗)。

その姿は、鬱気質な


山岸 涼子(画)『日出処の天子』

での厩戸とは正反対です。
まぁ、こっちの厩戸もある意味怖いのですけどね…。

そんな厩戸の愛を一身に受ける非常に不幸な被害者・小野妹子。
この人、すごい苦労人です…(涙)。
忍耐値が半端無い。
下級貴族の生まれで性格は極めて実直、温厚、慎ましくも平穏な生活を望みながらも、
上司がそれを許しません。
さらに蘇我一族までが厄介者(厩戸)の世話をしないと命はないよ?と脅す始末。
お上には逆らえません。

中盤、やや中弛みの感じを受けますがそのまま終盤に繋がる展開なので、
これからお読みになる方はくじけないで下さい。
posted by まるひげ at 22:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-05-17

icon_45_b.gif『魔風海峡(下)血戦!高麗七忍衆』読了。


またしても、続きモノの感想文ほったらかしにしてしもうたわい。

下巻スタート早々、死霊戦争になってますよ。
ちょ、無茶してるなぁwww
もう大好きです、こういうの。
どんどん持ってきて!!

真田幸村主従を待ち受けていたのは、王子・臨海君率いる高麗忍者の想像を絶する妖術戦だった。霧隠才蔵、筧十蔵が倒され、さらに根津甚八にも危機が……。明からの独立を勝ち取るため欽明帝の隠し財産を求める臨海君。彼を利用しようとする服部半蔵。そして豊臣家再興を策すため財宝を希求する幸村、猿飛佐助らが剣と頭脳と忍術の限りを尽くす大作、堂々の完結!(文庫より引用)
荒山 徹(著)『魔風海峡(下)血戦!高麗七忍衆』

ぬお!
下巻のあらすじで上巻のネタバレしちょる!
こういう紹介文はやめて欲しいんだよなぁ…。
はい、ということで上巻ラストにて退場したのは才蔵と十蔵でした。

上巻でも感じたことですが、
この作品での幸村はけっこう普通の人ですね。
いや、普通というか…配下の皆様がdでもない人たちなので
それと比較すると霞んで見えるんだろうな幸村…。

そしてやっぱり、心配した通り半蔵がヘマやらかしてます(笑)。
ほら、言わんこっちゃない!
でも半蔵、ラストでは無事、転職に成功したみたいなので良かったです。

以下、ややネタバレ+長いので畳みます。

posted by まるひげ at 00:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-04-23

icon_45_b.gif『風の如く水の如く』読了。


前から気になってたこの作品、
「そのうち読もう…」と思ってるうちにいつの間にか販売停止になってました。
ということで、図書館から借りました。


主君・家康と父・正信に翻弄されて、身も心も限界間近な正純が可哀想なんですが、
一番哀れなのは紛れも無く三成です。正純も同情するほどです。
みったん…!!(涙)

関ケ原合戦後の論功行賞に苦悩する徳川家康は、本多正純にその調査を命じた。大名たちが出してきた膨大な訴状の中に、黒田如水が天下を狙って策謀をめぐらしていたとの訴えがあったからだ。調査に着手した正純は、如水の意を受けて暗躍していた者たちがいたことを突き止める。仕掛ける如水、切り返す家康。刻々と変わる戦況の中での二人の動きを軸に、戦国武将の親子の情を織り交ぜながら、関ケ原合戦の新解釈に挑む(アマゾン・レビューより引用)。
安部 龍太郎(著)『風の如く水の如く』

関ヶ原にて東西両軍が争っている隙を衝いて、
第三勢力として兵を挙げ、天下を狙おうとした如水。
その証拠となる一通の書状の真偽を確かめることを家康から命じられた正純は、
如水の謀に加担したと思われる者たちに対して聞き込み調査を行い、
さらに忍びから集められる情報を整理し、真相に近づいていくのだが…。

といった展開です。

あら、いやだわ。
ほとんど公式のあらすじと変わんないじゃないの!

疑惑の武将に正純が問いかけ、相手はそれに応対しながら、
場面は回想シーンに移行していく、という形式となってます。

ということで、正純に尋問される気の毒な人は
黒田長政、竹中重門、後藤又兵衛、細川忠興…といった面々です。

面白いのは徐々に真相が明らかになってくる過程ですね。
息詰まる会話の緊張感と心理の攻防戦の描写が見事でした。

そして、あらすじにある「戦国武将の親子の情を織り交ぜながら」という点、実は重要なんです。
「親子の情」と言われてもピンと来ませんが、
確かに微妙な距離感がある父子ばかりです。
官兵衛と長政、半兵衛と重門、家康と秀忠(あるいは秀康)、正信と正純、幽斎と忠興…
このような父子の確執のほか、武将同士の利害関係や競争心、信仰など、
背景設定も複雑に絡み合ってるので読み応えは十分です。


以下、ネタバレ注意!の感想文です。



posted by まるひげ at 01:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-04-09

icon_45_b.gif『魔風海峡(上)死闘!真田忍法団』読了。


4月はあんまり本買わない予定なので、
この機に、溜め込んだ読了本の感想文の消化を…!
という意気込みです。


なんだかね、敵方ながら服部半蔵(二代目)がえらい可哀想で…。
ことある毎に、お目付役に偉大な先代と比べられては小言をいわれ溜息つかれてます。
やることなすことしくじってばっかりだもんなぁ…(憐)。
果ては三成にまで斬りつけられる始末です。
朝鮮に渡って現地の忍びとちゃんとタメ張れるのか、非常に心配であります。
そしてちょろっとしか出てこないくせにみったんカッコ良くてね!!

慶長の朝鮮征伐は泥沼と化し、秀吉も死の床に伏していた。徳川家康を牽制するためにも、豊臣家にとって財政の立て直しが急務だった。「一千年前、欽明帝が朝鮮半島の任那日本府に遺した隠し財宝を探せ!」密命を受けた真田幸村は、真田忍団とともに釜山に渡る。一方、その動きを察知した家康は服部半蔵に追跡させる。日朝の忍者が威信をかけて戦う圧倒的時代巨編!(文庫より引用)
荒山 徹(著)『魔風海峡(上)死闘!真田忍法団』

荒山氏の想像力と筆力に脱帽です。
それを支えているのが、著者の膨大な知識と文献調査なんでしょうね。
朝鮮の知識ゼロに等しい自分だったら
しっかり読んでも半分読み飛ばしても理解度はあんま変わらんくらい(それはどうなの)、
朝鮮半島の歴史と文化が書かれてます。覚えらんね…。
でもまぁ、カテゴリとしては物語性溢れるエンターテインメント作品なのです。
そんな特性を前面に出していながらも、
ただ上辺だけ滅茶苦茶に派手なストーリーが繰り広げられるわけではなく、
基礎となる骨格がしっかり構築されていることが随所に伺えます。
いや、それにしても面白いな荒山作品…。


あらすじは…まぁ、紹介文にある通りなんですが、
だらりと付け加えると以下のような感じです。


財政難な豊臣家、朝鮮半島に眠る隠しお宝求め、
三成の依頼を受けて幸村と十勇士が朝鮮へ渡ります。
一方、秘宝が豊臣の手に入るくらいならいっそ朝鮮にくれてやれ、
敵の敵は味方だ、ということで家康は服部半蔵を朝鮮に送り、幸村たちを妨害します。

メイン舞台となる朝鮮はこらまた朝鮮で事情がありまして。
朝鮮王国内で、弟との後継者争いに敗れた王子・臨海君。
権力を握る一部の文官が民衆を虐げている朝鮮の体制を変えようとする伝説の僧侶・檀月。
檀月のもとに、高麗秘術を操る7人の忍びが集結し、
臨海君を主として仰ぎ、理想国家の建設を目指します。
そしてその臨海君サイドに組み込まれるのが、家康の命で日本からやってきた半蔵。
かくして日朝両国の忍びの、秘宝を巡る死闘が始まる―
という流れになります。


読む姿勢としては、基本、幸村サイドから読み始めるんですが、
臨海君サイドも非常に魅力的なので、もう読者板挟みです。ばっちーん!と。
特に臨海君は、心根の真っ直ぐな好青年です。

前作の『高麗秘帖』とカブるところがちらほらあります。
設定はほとんど一緒ですね。
印象が違うのが、清正。
こちらでは、王朝を追われた臨海君に剣術や日本語を教え、丁重にもてなしてます。
前作での残忍悪役キャラとは正反対です。
…まぁ、「オノレ沙也可!」な態度は変わってませんがね…。
そして、清正といえばアイトン(愛豚)の鼻丸。
まさかこのペットまで再登場だとは思いませんでしたよ。
おまけに、この作品ではただのペットではなく、清正軍の“守護神”にランクアップしてます。

幸村側は…十勇士が個性的です。
十勇士をまとめる海野六郎爺、
野性美あふれる猿飛佐助、
元黒人奴隷身分の百合鎌之助、
家康の正妻・築山殿の縁者な霧隠才蔵、
頭巾被りっぱなしの剣豪・筧十蔵、
中国式エステで男も惚れるほどの超絶美形になった根津甚八、
あとは…臓器移動・着脱可能な人外・海野小六郎、
この7名です。
あ、穴山小助と三好入道兄弟は日本でお留守番なので登場シーンはありません。

上巻の終盤でいよいよ忍術バトルが始まるのですが、
上巻終了時点で真田側の損失は2名。
朝鮮側の損失は1名です。
posted by まるひげ at 02:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-04-04

icon_45_b.gif『本多正純異聞』読了。


最近、戦国絢爛ナントカにうつつをぬかしておったため、
すっかりめっきり読書感想文がおろそかに!

ということで、ダブりの政宗が出たこの隙に久々の感想文です。
なにやら絶版なので、図書館から借りました。


「おまえにくちづけしたよヨカナーン」

のシーンには思わず仰け反ってしまいました。

いやぁ、まさかこんなところでサロメを見ることになろうとは…!
しかもまさず…千穂ちゃんだしなぁ(あえての幼名表記)。
あ、ちなみにサロメが千穂ちゃんでヨカナーンは信康でした、よ。


徳川家康の絶対的な信頼を得て、徳川幕府初期の政界で、隠然たる勢力を誇った一人の智将、本多正純。千穂と名のる、眉目秀麗な少年時代、正純は岡崎の城主、徳川家康に救われる。その数奇な運命を新たな視点から描く(アマゾン・レビューより引用)。
齋藤 吉見(著)『本多正純異聞』

正純の少年時代からその死までが描かれてます。
あらすじにもありますが、これは新たな視点(というか設定)から描かれておりました。
いっそifで良いんじゃなかろうか。
この作品のレビュー書いてる方をあまり見かけないので、
どんなものかと恐る恐る読んでみたんですが。

えぇえええええ!?と思わず声を上げた箇所もちらほらと…。

以下、ネタバレ注意!の感想文です。



posted by まるひげ at 01:16 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-03-24

icon_45_b.gif『城塞(下)』読了。


いい加減、感想文書かないとなー…とか思って
ふと何の本をネタに書こうか考えてたんですけど。

そういや今日、朝ごはん食べながら見た番組で出てた
電化製品店の店員さんの苗字が「幸村」さんでした。
あれ「ゆきむら」なのかなぁ「こうむら」なのかなぁ。
いや「さちむら」かもしれん…(悩)。


いきなり話が脱線してすいません。
そして。
すっっっかり綺麗さっっっぱり忘れてました、下巻のこと…!

外濠も内濠も埋められて裸城となった大坂城に対して、家康は最後の戦いをしかける。夏ノ陣を前にして、大坂方には、もはやいかなる勝機も残されてはいなかった。数十万の東軍を相手に、真田幸村、毛利勝永らは、家康の本営にまで斬り込む働きをするが、後続の部隊がなく、いずれも城を墳墓に討死してゆく。秀頼・淀殿は自刃し、巨城の炎上をフィナーレに戦国時代はその幕を閉じる(文庫より引用)。
司馬 遼太郎(著)『城塞(下)』

いよいよ夏の陣開始です。
中巻の終盤、冬の陣の和議のため設けられた会見の場にて、大野さんをベタ褒めした家康。
それにより、有頂天になった大野さんは大坂城内で幅を利かせ、
牢人たちの言うことなんか一蹴です。
家康の「治長を増長させることで幸村や又兵衛の台頭を阻止する」という目論見が見事に当たり、
まさしく狸さんの思うツボです。
豊臣を滅ぼすまでの家康の布石が、
そこまでしないと駄目なの!と半泣きになるほど執拗です。
シバリョ曰く「家康の智恵のきわどさはほとんど犯罪的」(p.17)

やはり下巻でも、大筋では歴史の概観を辿る形で進んでいきますが、
ちょこちょこ脱線というか余談が挿入されております。

主人公のはずの勘兵衛はと言えば。
上巻からずっと、
「俺が大坂方につけば形勢を逆転できる。
いやもしかしたら俺ってば天下取れんじゃね?」
などと、誇大妄想も甚だしかった勘兵衛ですが、
結局はその夢を諦め、失意のうちに大坂城を去り、
徳川の諜者としての役割を終えることになります。
終盤なんて、ただの雑魚キャラに成り果ててます。

城内では相変わらず淀君がのさばり、
阿呆疑惑が囁かれていた秀頼も、実は聡明であったことが判明しますが、
すべては遅すぎた、といったところでしょうか。

内濠まで埋められてしまったからには籠城は不可能、
城外で戦うべしと主張する幸村&又兵衛。
稀代の軍略家が2人も揃っていながら、
そのどちらをも活かせない上層部には、やきもきするというより
諦めの感情しか湧いてきませんでした…(溜息)。

終盤の決戦は、非常に淡々と描かれてます。
特に武将の死に際なんて、この上なく簡素です。
池波作品と比べたらすごい差。


以下、どうでも良い読みどころチェック+α。

posted by まるひげ at 01:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-02-26

icon_45_b.gif『片桐且元』読了。


ちょっと待て2月てあと2日で終わりですか。
予定では今月も正純強化月間だったわけですが、
仕事の繁忙期と、読む予定だった本がなかなか届かなかったことにより、
思った以上に消化できませんでした…しょんぼり。
ま、仕方ないのでとりあえず読了本の感想文です。


正純読むなら、正純の被害者の側からも読まなくちゃね!
ということで、大坂の陣における被害者、片桐さんです。
片桐さんといえば、戦国末期(?)における魯粛、という印象しかなかったんですよね。
彼の「淀君さま〜、徳川どの〜(オロオロ)」の姿が、
魯粛の「周瑜どの〜、孔明どの〜(オロオロ)」となんとなくカブりまして。

大坂落城。豊臣存続に命を賭けた男の生きざま。裏切り者と呼ばれた秀頼の傅役、且元の晩節を描き、「国家安康・君臣豊楽」史上有名な方広寺鐘銘事件の真相に迫る傑作歴史小説(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『片桐且元』

いや、面白かったです。
まぁ、作者が鈴木さんだもんで、
ハズレはないだろうという打算もあったんですけどね!

片桐且元といえば、文官のイメージの方が強いですが、
この作品では文官というよりもむしろ、
戦国という動乱の時代でしか生きられない、無骨な武人として描かれており、
そこがまた魅力の爺さんとなっております。

ちなみに、本編で作者自身が暴露してますが、
片桐さんが「七本槍」の一人に数えられているのは、

「員数と語呂を会わせるために、一緒に呼ばれたにすぎない」(p.26)

皆が思っていながらも、口に出せないでいたことをよくぞ…!

まぁ、それはともかく。
片桐さんに協力するのは、はぐれ忍びの五郎太。
この子は結構ズケズケものをいう子なのですが、
その率直さが悲壮になりがちな作品の雰囲気を明るくしてくれてます。
そして、脇役の大野さんはちょくちょく刺客送るは、
幸村はなんとなくうっそりしてて不気味だはでイメージ悪いです(苦笑)。

ストーリーの展開としては、
一番胃が痛かったであろう、大坂の陣直前までの苦労の時期がメインとなってます。
具体的に言えば、方広寺鐘銘事件を中心にした、その前後。
家康からのイチャモンに弁明するために駿河に向かったのですが、
その後、結果的に淀君からは「徳川になびいた裏切者」扱いされて、大坂より撤去するまでです。

ポイントは信雄です。
この時代だと、毒にも薬にもならないすっかり風流人の常真入道な身分です。
大概の小説でボンクラとして登場する彼ですが、
ここでは一癖ありつつも決して無能ではない人物となっております。
飄々としてるところも良いです。
のぶおすてき!

こんな感じでしょうか。


・・・・・


あ!
正純忘れてた!
正純、崇伝和尚とセットで、とても素敵な悪役で描かれています。

突然、こめかみ一寸手前に刀突きつけられたのに(竹光ですが)、
まばたきひとつしないで相手に「どういうつもりだ」と
静かに問う姿が非常にカコ良いのですよ。
これより前に、正純と同様、片桐さんに脅された某大野さんの態度とはやっぱり違うわけですね。

いや!でも!しかし!
ここの場面の正純、内心どうだったかは、
大野さんの時みたいに脱がしてみないとわかんないよ片桐さん!!
(誤解を生む言い方だな…)
posted by まるひげ at 00:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-02-19

icon_45_b.gif『汚名』読了。


正純のイメージは、例えて言うなら「冬の早朝、白く凍った刃物」。
…いまいちピンと来ないな。
もう少し身近なもので表すと、「ぬれた指先にくっついて離れない冷凍庫の氷」。
…しまった!
なんだかヤケにみみっちぃ感じだ!!
要は、「冷たくて痛い」というイメージですよ!

家康に信頼されて重用されて、幕府草創期に辣腕を振った能吏本多上野介正純。二代秀忠の世になり、“宇都宮釣り天井事件”の嫌疑で失脚、奥州に無惨な幽閉の身となる。権力の非情と冷酷、汚名に甘んじる自己犠牲。一切を黙して配所に赴く正純の潔い人間像を、隠密の目を通して骨太に描き出す、傑作歴史長編(アマゾン・レビューより引用)。
杉本 苑子(著)『汚名』

前から読みたかったのですが、2/19現在、販売停止状態です(絶版ではないようですが)。
ということで、図書館から借りました。

こっちの方↓(中公文庫版)が断然画的に良いなぁと思うのですよ。


杉本 苑子(著)『汚名―本多正純の悲劇』

…まぁそれはどうでもいいや。

主人公、「隠密」と紹介されてますが、
そう言われてイメージするような「忍び」の者ではありません。
「諜者」というのが良いのかな。

なんだかあらすじが詳しく書かれてないので、
以下にちょろりと紹介をば。

本多家と大久保忠隣の政権争いの巻き添えを食い、
奥平家にお預かりの身となった堀伊賀守利重と、
正純により所領の宇都宮から古河へ移された秀忠の実姉・加納殿。

これら両者が結託し、怨みに思う正純を失脚させるために
正純の居城・宇都宮城に諜者を送り込み、ついには正純を失脚へと追い込んでしまう。

というのが粗筋というか大筋です。

でもメインはそこではなく。

主・堀伊賀守の命により、
宇都宮城の台所の下働きとして潜入した越ヶ谷謙作の視点から物語が展開していきます。
賄場での同僚たちとの日常の何気ないやりとり、
ちょっとした事件なんかが情感たっぷりに描かれてました。

最初は、正純の過失をあら捜しすることに意欲を燃やしていた謙作も、
宇都宮城下で暮らすうちに、徐々に正純の毅然たる姿勢に惹かれていきます。
主により課された「正純を失脚させる」という自らの使命と
本多家の清廉潔白さを目の当たりにし、守りたいという自身の本音との間で苦悩する謙作の姿、
ここが物語のメインですよね!(誰に聞いてる)

なんつったって、
最後には謙作、配流になった本多父子追って出羽へ行っちゃうんですもの!
惚れたね、謙さん…。
まぁ、謙作の主・堀伊賀守の描かれ方がアレだからなぁ…。

肝心の正純本人が登場するシーンは多くないのですが、
登場するところでは、すごく場の雰囲気が引き締まってました。
いやぁ、カッコ良いです正純。
近くにはいて欲しくないけど…(←小声)

ちょっと気になるところは…
奥仕えの下女・お津万の扱いですかね。
謙作と関係を持つようになるのですが、
この人も、「どうやら隠密っぽいようだ」で終わってるんですよね。
別にそれでも良いじゃないか、て言われたらまぁそれまでなんですが、
自分としては、怪しさぷんぷん匂わせておいて匂いだけ残してそれでおしまい、
というのはどうにも居心地が悪くて。
もしかしたら、
堀の腰元「いち」がお津万なんじゃないかと
いらん勘繰りまでしてしまいましたよ。

あ、ちょっとだけ政重も出てきましたが、
それはそれは嫌ァな奴でした…。
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2009-02-12

icon_45_b.gif『天駆け地徂く―服部三蔵と本多正純』読了。


2がつも正純強化月間ー!!
なんてことはない、先月中に正純本読みきれなかっただけ。

徳川家康をめぐり相反する二人の男の信念とは?孤高の忍者・服部三蔵は、自在に繰り出す剣と忍術をもって、単身、家康の打倒をめざす。一方、家康の懐刀・本多正純は、主君の胸中を自明のこととして読み、己の信念に従い迎え撃つ。波乱万丈の戦国の世を切り結ぶ、男の友情と別離を活写した忍者小説(アマゾン・レビューより引用)。
嶋津 義忠(著)『天駆け地徂く―服部三蔵と本多正純』

絶版なので図書館から借りました。
「権力者の右腕と一匹狼の忍びの交流」という設定は
氏の三成本とカブッてんじゃ(ry

若き日の正純と三蔵の邂逅を描く冒頭が、とても鮮やかです。
うららかな春の日、
些細な言い争いから大久保一門と剣での果たし合いを宣言してしまった正純。
偶然にそのことを知った服部半蔵の配下・三蔵が正純の命を助けたことから、
2人の付き合いが始まります。
つーか、正純が「果たし合い」て…!

忍びの技においては師・半蔵をも凌ぐと言われる三蔵は、
自由を愛するが故、抜け忍となって
家康による窮屈な支配体制を嫌って家康に対抗します。
実は三蔵の出自には秘密があるのですが、
そこんとこはあまり重要じゃないですね(苦笑)。

一方の正純は、幼少の頃の苦い経験から家康に憎しみを抱きます。
家康の心中を正確に読み取り、その望みを遂行していくことで
やがては家康を操り、それにより復讐を果たそうとします。

まぁそんな2人のまわりで歴史の表裏問わず
いろいろな事件が起こったりするんですが(超割愛)、
なんといっても読みどころは、
三蔵と正純の奇妙な友情関係ですね。
端から見ると、家康の命を狙う側と守る側、
自らの強みも異なり、信念も異なっている2人なんですが、
どちらも家康に敵対心を抱いているという点で一致してます。
余人には知られずに数十年も続いた、両者のつかず離れずの関係が絶妙でした。


最後にちょろっと私見。
正直に言って、素直に「すごく面白い!」と言えないんですよね嶋津作品。
まぁまぁ面白い…かな。
以前読んだみったん主役の『乱世光芒』よりは、
こちらの作品の方が、息詰まる忍び同士の闘争があったせいか、面白く読めました。

ついでに。
本作でヒロイン的役割を果たした甲賀忍者・お藍が主役になった、
外伝っぽいモノもあるらしいです↓


嶋津 義忠(著)『甲賀忍者お藍』

でもこっちも絶版…。
posted by まるひげ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-02-04

icon_45_b.gif『幻の城―慶長十九年の凶気』読了。


戦国にハマってから割と初期の頃に買ったのですが、
今まで読むのが勿体無くて、ぬくぬくと暖めておいた作品を消化しました。

宇喜多の坊、テライケメン。わかってたけどー!
たとえばこんな↓感じです。

「それにしても美貌だ。(中略)美というものを目指して勢ぞろいしたような造作が、
ここしかないという位置におさまっている」(p.230)


ウヒョー!!
この顔で奇声・奇行の数々やらかしてくれるとなると、さぞかし迫力あるだろうなぁ…。
流石の十勇士の皆様も、ドン引きでした。


慶長19年(1614)、大坂城へ続々と武将たちが入城していた。大坂の陣の幕開けである。だが真田幸村は、武将たちを束ねる大野治長を目にして一抹の不安を覚えた。大坂城には総大将にふさわしい器がいないのだ。「あの方しかいない」幸村は密かに根津甚八らを流人の島・八丈島に向かわせた!狂気の総大将を描く、もう一つの「大坂の陣」(文庫より引用)。
風野 真知雄(著)『幻の城―慶長十九年の凶気』

あらすじは紹介文の通りです。
とても読みやすかったです。
基本的に、派手な立ち回りはほとんどなく、
局地的な戦闘はもちろん、冬の陣や夏の陣までもあっさりと記述されてます。
奇抜な設定を活かした、予測不能な展開が引き込ませてくれるうえ、
冷静な筆致で描かれる秀家の精神状態の逸脱っぷりが見事でした。
とにかく先が気になるので読み進めていったのですが、
中盤でふと「あぁ、ここが一番面白いところなんだな」と我に返ってしまいました(苦笑)。

ということで、
一番面白いのは、秀家を迎えるために八丈島へやってきた甚八たちが、
秀家の奇行は、果たして本物なのか否かを見定めるために、
秀家の様子を観察しながら八丈島に滞在するところです。
終盤はうん…まぁ…そうなるよね…。

でもまぁ、宇喜多の坊好きなら買っておかないと!な一冊ではあります。
笑いながら毒盛ったり人斬ったりする秀家、
鳥とひとしきり戯れた後、焼き鳥にして食っちまう秀家など
他では見られない姿がてんこ盛りです。

そしてこの作品、以前から
「十勇士の犬死にっぷりが半端無い」と聞いてはいたんですよ。
でも、ほんとに半端無ぇですのな!!

最初の犠牲者が佐助、というところからしてもう先行き不安であります。
十勇士筆頭が!!
セリフなんてたった一言じゃないの!
でも、一番寂しかったのが為三入道です。
登場シーンの次のページでもう死体。

まぁ、それはともかく。

このストーリーのキモは
「秀家は本当に気が触れたのか」という点なわけです。
本編でもあるキャラが言ってますが、
気が触れた触れないとか、そういうのは先代・直家さまの前例がありますからね!

ところが、老若男女、様々に姿を変える忍びでさえ、
「狂人の真似はできない」と言います。
狂人の目つきや物言い、振る舞いには常人にはできない得体の知れない凄みがあるそうで。
そんな忍びから見ると、
秀家の様子は「狂人の真似をしているようには見えない」(つまり、秀家は狂人)
と判断するのですが…。

一方、当の秀家は、自分で自分を「狂っている」と言ってみたり、
冷静に理論詰めで会話をしてみたり…。

正気と狂気を繰り返す秀家の様子に、
キャラだけでなく読者をもやきもきさせてくれること請け合いです。

ねぇ、どっち?!
どっちなの、坊!!

と柱の陰から叫びたくなります(←怖いから近づきたくない)。

その真相は是非、読んで確かめてください!と言いたいところですが、
2/4現在、品切れなお店が多いみたいです。
再販されるみたいですが…?
posted by まるひげ at 02:06 | Comment(3) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-27

icon_45_b.gif『本多の狐―徳川家康の秘宝』読了。


「いちがつは正純強化月間ー!!」
とか思ってこれ読み始めたら、正純より政重出張っておったわー!!

正信・正純に比べたら、
政重はアクの少ない方ではあるんでしょうが(三男は情報少なすぎて…)、
「あぁ、この人も本多の家の人だなぁ…」と実感しました。
宗矩をじりじりネチネチ追い詰めるところなんて、真性


日光東照宮に隠された徳川家康の遺産とは何か?その争奪をめぐって、史上最強の忍者集団「本多の狐」が登場。対するは伊賀忍軍と柳生新陰流。その攻防は痛快無比の展開をみせる。坂崎出羽守の遺児を芯に据え、天海僧正や柳生十兵衛、本多正純などが活躍するスペクタクル雄篇!第2回時代小説大賞受賞(アマゾン・レビューより引用)。
羽太 雄平(著)『本多の狐―徳川家康の秘宝』


日光東照宮に眠る家康の遺産をめぐって、
さまざまな立場の人が斬ったり忍んだり謀略したりする話です。
主人公は坂崎出羽守の遺児、浮田平四郎。
ということで、詮家の息子です。
女の人に振り回される姿は、先日読んだ『水の砦』での主人公とカブります(笑)。

脇役には天海、柳生宗矩、服部半蔵、沢庵禅師、天草四郎…ともう豪華豪華。
忍びは柳生忍び、伊賀忍び、そしてタイトルにもなっている忍び集団「本多の狐」の三つ巴。

さらに小西の嫁(電波)と孫娘、
なぁんと大坂五人衆のうちの一人が爺バージョンで登場します。
誰だろう…?という間もなく、本編にヒントが出ます。
(幸村、又兵衛、勝永、盛親…さぁ残りは?みたいな)
この老人こそ、旧主に会いに八丈島まで 泳 い で ま い っ ちゃいそうな、
矍鑠としたじじぃでした。イ、イメージが…!!(汗)
あ、舞台は加賀なので、豪姫もちょろっと出てきます。
それにしても、重要キャラがアッサリ退場するのが拍子抜けでした。

まぁ面白いんですが、何かが「惜しい」という印象を拭えません。
家康の遺産が、朝鮮の役で行長が持ち帰った金属活版「李朝活字」であり、
そしてそれが、天草の乱への布石になったという
裏の歴史っぽい設定は素晴らしいんですが、
どうにも、風呂敷広げすぎてごちゃごちゃしているような…。

甘損さんのレビューにも載ってましたが、
せっかく登場人物が大物ばっかりなので、
キャラにもう少しクセがあっても良いと思う。

ちなみに、続編があるようですよ。


羽太 雄平(著)『竜の見た夢』

そのうち読んでみようかな。


そうそう、家康の遺産ネタでは、
以前コレ↓読んだことがあったのですが


高田 崇史(著)『QED 東照宮の怨』

スッカリサッパリ忘れてました…。
posted by まるひげ at 01:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-21

icon_45_b.gif『水の砦 福島正則最後の闘い』読了。


最近「反則」という字を見ると確実に「正則」て読んでしまいます。
あ、そうそう、正則といえば。
正則ってコーラ好きそうだよなー、とかコンビニでぼんやり思いました。
あと、ガリガ○君とか。
・・・・・
それは全く以てどうでも良いことなので、
とっとと感想文いきましょう。

実はこの文庫じゃなくて単行本で読んだんですが、
今、甘損さんに画像もらいに行ったら
どうやらこっちの紹介文の方がわかりやすいかつ画像データもあったので
文庫版にて紹介させて頂きます。

改易配流された福島正則は捨身の闘いに立ちあがった。相手は徳川幕府の重臣・本多正純。執拗な攻撃に、正則は陣屋の周辺な流水要塞をめぐらし、水の砦を築いて防戦する。大久保党と闇の宰領から二重三重に仕掛けられた恐しい罠。幕府に挑んだ最後の武将の悲哀と不条理を描ききる第五回時代小説大賞受賞作(アマゾン・レビューより引用)。
大久保 智弘(著)『水の砦 福島正則最後の闘い』

「伝奇小説」と呼ぶには少々奇抜さが足りないような気もしますが。
ところどころに現代語が飛び出すのでちょいと困りました。
「正純迎撃のための実働部隊を派遣(p.64)」
「時代はいま、統制にむけて急速に転換してござる(p.326)」
には
どうしても違和感を感じてしまいます。

広島から改易され、信濃の川中島へと移り住んだ福島正則と少数の家臣団。
物語は、正則の実子・忠勝の突然の死という衝撃的な場面から始まります。
巧妙に自然死に見せかけられた忠勝の死は、
実は上野介正純の手の者による暗殺であるという情報がもたらされます。
福島家と同じく、正純によって失脚させられた大久保党と密かに協力し、
正純に対抗していくことを決意する福島家家臣団。

政道とは何のかかわりも無く行われたこの卑劣な暗殺は、
いわば正純から正則に仕掛けてきた私事、すなわち喧嘩であり、
「売られた喧嘩は買う、それだけだ」と言い切る正則です。

喧嘩の相手は幕府一の権勢者。
狙うはその失脚、修繕中の宇都宮城、仕掛けは釣天井―
という何とも美味しい展開になるわけです。

気になるのは、「果たして釣天井の仕掛けは作動したのか」
ということかと思うのですが…。

これは作動しようがしまいが、関係無いんです。
「釣天井の仕掛けの位置が描かれた設計図」という存在そのものが
将軍弑逆計画の証拠であり、
それだけでも正純失脚には十分な物証となります。
この事件の黒幕の用意周到さが伺える設定ですね。
設計図を突きつけられ、
完璧に整えられた包囲網が誰を狙ったものか、
自分を陥れたのが誰であるかを知った後の
正純の行動がひどく潔くて印象に残りました。


登場人物も様々です。
忠勝の近習・高月彦四郎と、大久保党からの協力者・大蔵伝内と雪乃介、
福島家の陣屋を隠密裏に守る陰衆、正則の影武者、
さらに道々の者や根来衆、正純が雇った襲撃者の元締め・鬼堂玄蕃、
『城崩し』と呼ばれる番匠…など。

どうやら一番主人公っぽい彦四郎は、
美少年の雪乃介に翻弄される姿がかなり大変そうです。
雪乃介の描写がちょっと不自然なので、
あぁ、これはああいう展開か…?と思ったらそういう展開でした(何)。

終盤でこの事件の真相が明かされるんですが、
なんとも虚しいものですね。
真相が明らかになった後、この出来事のケジメとして
正則は「正純と会わねばならない」と言い、ラストで二人が語り合うことになります。
それにしても、正則ておっさん時代の方が格好良いなぁ…。

そしてこの作品中、一番の被害者は確実に正純
本編中、正純の悪口でいっぱいです。
「傲慢で陰険な破廉恥漢(p.70)」て(爆笑)。

は れ ん ち か ん !!
posted by まるひげ at 02:32 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-17

icon_45_b.gif『城塞(中)』読了。


中巻、ようやくアップ。
もっと早く感想文書きたかったんですけど、
この本1ヶ月近く行方不明になっていて、大掃除した時にやっと発掘したもので。
見っかったー♪て思ってたらこの繁忙期ですよ。
えぇい、忌々しい…。

真田幸村、後藤又兵衛ら、関ヶ原ノ合戦でむなしく敗れた豪将たちを迎えて籠城作戦をとる大坂方。みずから四十万の兵をひきいて包囲する徳川家康。かくて大坂冬ノ陣の激戦の火蓋は切られた。真田丸にたてこもる幸村の神技を思わせる戦闘指揮にもかかわらず、天守閣に大筒を打ち込まれた淀殿は、家康の調略にのって和議に応じ、さらには城の外濠ばかりか内濠まで埋められてしまう(文庫より引用)。
司馬 遼太郎(著)『城塞(中)』

冒頭から、大坂方の武将の紹介が続きます。
真田幸村、明石全澄、後藤又兵衛、毛利勝永、長曾我部盛親…という感じに。
で、その合間にこの作品の一応の主人公である
小幡勘兵衛と大蔵卿局の孫娘・お夏の絡みがあります。
勘兵衛は相変わらず徳川の間者という形で大坂城に出入りしていますが、
上巻よりも徳川方への出入りが多くなってます。

豊臣方は、上層部がもうどうしようもない感じですね。
秀頼を守ることだけしか考えていないばかりか、
果ては「牢人たちに秀頼を取られる」と恐れる淀君と大野修理。
上巻では結構見所があった大野さんも、家康に踊らされてもう腑抜けです。
まぁ、相手が家康じゃあ手も足も出ないか…。
稀代の将が入城しているにもかかわらず、
彼らの献策を聞き入れないため、
結局は粗末な戦をすることになってしまいます。

一方、徳川方はといえば。
高虎の世渡りの上手さが随所に光ってます。
なにあの心くばりの細やかさ!
家康と秀忠どちらにも気を遣うさまが尋常じゃありませんよ。
でも、細心という点では家康に敵わないですね。
ほんとに化け物みたいな爺だな、家康…。
さらに狸さん、ふてぶてしさも全開です。
和議の場での、重成の「血判少しく薄く候」のシーンの振る舞いなんてどうだろう。

ということで、中巻は大坂冬の陣〜豊臣と徳川の上辺だけの和議まででございます。
「自分が豊臣方につけば、もしかしたら勝ち戦になるんじゃないか」と思ってきた勘兵衛は、
ついに豊臣に見切りをつけ、大坂城から立ち退くことを決心します。
次巻はいよいよ夏の陣です。


以下、蛇足ながら読みどころチェック。

posted by まるひげ at 01:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-09

icon_45_b.gif『高麗秘帖―朝鮮出兵異聞』読了。


いま思えば、12月はこにたん強化月間だったなぁ、と。
それにしても、この作品は本を開いてすぐの「登場人物紹介」ページで損してると思われ。
なんたって、日本サイド・朝鮮サイド合わせて総勢35名分の名前がバァンと載ってるんですよ。
…読む気・・・無くしますよね?
この人物表なくても、読み進めるのに支障はなかったです。


文禄元年(一五九二)、太閤秀吉は二十万の大軍を朝鮮出兵させ首都漢城、平壌を占領した。が、朝鮮水軍を率いるたった一人の将軍によって撤退を余儀なくされた。その名は李舜臣。五年後、雪辱に燃えて際出兵した藤堂高虎は、瞬臣を暗殺すべく忍びの者を派遣。一方、無益な戦を憎む小西行長は瞬臣を救うべく使者を送った!(文庫より抜粋)
荒山 徹(著)『高麗秘帖―朝鮮出兵異聞』

すごく面白かったです。
結構なボリュームはあるのに、読み進む手が止まらない、という感覚は久しぶりでした。
どう転ぶかわからないスピード感溢れる展開はまさに伝奇モノ特有。

テーマは、藤堂高虎VS小西行長の謀略バトルin 慶長の役。
第一次朝鮮出兵(文禄の役)で、
李瞬臣率いる水軍に大敗し、その雪辱を果たそうとする高虎と
無益な戦争を終結させるため、
この戦の重要人物である李瞬臣を守ろうとする行長。
…でも実際戦ってるのはそれぞれの配下の忍び(というか異能者)です。

基本的には、
李瞬臣と彼を守る者たちが行動するパートと、
それを狙う暗殺者のパートが交互に展開していく構成になっています。

李瞬臣を守る方も、命を狙う方も日本人で、
かつては味方同士であったという因縁つきです。
さらに彼らが「壮絶な過去持ち」な設定とくれば、
これはもう、面白くないはずがありません。

そしてこの他にも、
文禄の役で兄を殺された大名・来島通総が放った海女さん軍団が李舜臣を狙い、
朝鮮側に寝返った沙也可が行長に協力する、といった様に、
李舜臣をめぐる登場人物の事情は様々で、一筋縄ではいかない様相を呈しています。
一方、李舜臣その人には、さほど動きがありません(笑)。

敵味方どちらも魅力的なのですが、
暗殺者組が変態さん多めなせいか、
李瞬臣組のみなさんがやけに穏和で常識人に見えます。
いえ、それでなくても、良い人ばっかりなはずです、李瞬臣組。

それにしても、こにたんが格好良過ぎてきもちわるいたまりませんよ。

罪の無い人々が殺されていく戦をやめさせるために行動を起こした行長。
南蛮製の白いマントを靡かせて白い歯を見せて男臭く笑う行長。
腰をしぼった瀟洒な軍服が自身の美丈夫っぷりを際立たせてる行長。
怯える女児に対し、慈父のように静かに微笑む行長。
おま、どんだけ…!
こにたん出るたびに、「カピトーン(司令官)キター!」と無駄にテンション上がる自分がいました。

行長と対照的なのが、ペットが人喰いブタの清正。
ちょこっとしか出てないのに、笑っちゃうくらいの悪役っぷりでした。

ラストは決してハッピーエンドではないのですが、
続編を匂わせる終わり方になってます。
ということで、
そのうち、こちらも読んでみようと思います。





荒山 徹(著)『魔風海峡(上・下)』
posted by まるひげ at 02:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-03

icon_45_b.gif『燃ゆる想ひを』読了。


以前から気になっていた、落ち武者こにたん本を消化しました。
鈴木作品なので、読みやすさは折り紙つきです。

時は関ヶ原の合戦。薬問屋の女主人「とき」は、傷だらけの落ち武者を介抱する。運命的な恋の行方は?キリシタンである落ち武者の正体とは?戦乱の凄まじさを背景に、許されぬ恋と純愛の形を哀切に描く感動の長篇大作(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『燃ゆる想ひを』

聞いてはいたんですが、純愛小説ですねこれは。
言葉に出すことはなく、まして体を重ねたわけでもないのに、
二人の間に流れる空気の密度が濃いんですよ。
普段、恋愛小説なんか読まない自分は
ちょっとこの雰囲気に当てられられちまった感があります。

主人公は、かなーり冷めたアラサー世代の薬問屋の女主人・とき。
彼女の毒舌っぷりというかツッコミが的確過ぎて笑えます。

夫は居るけど留守がちで子供はできない…って思ってたら隠し子ってか、アァン?
なに、その子、いま十五歳だって?
逆算すると、ひー、ふー、みー…
てめぇ、あたしと所帯持って早々、他所で女つくりやがったな!?

という冒頭です。
…おっかねぇです、とき姐さん・・・(ブルリ)。

では、ここであらすじを少々。
息吹山でひとり暮らしていたときは、
ある日、家の近くで傷を負った落ち武者を発見する。
介抱していくうちに、自らを「晏牛頭天王」と名乗るその武者に惹かれていく―。
という話です。
ラストで、自分が助けた「晏牛頭天王」の正体がわかるんですが…。
正体って言っても、
こっちとしてはそれがわかってて読んでるわけですから、
終盤で行長が自らの身分を明かすシーンでは
「やっと名乗ったか!」と胸のつかえがとれる感覚を味わってしまいました。
婦女の危機に、颯爽と駆けつけるこにたん。
カッコ良く決めた直後、雷光が走るという演出つきです。
落ち武者なのにヒーローだったよ!

それにしても、
食切り鋏で自分の指をばっちんする描写がやけに痛そうなんですが!!
自虐的に自らを語るこにたんを、ときがひっぱたくシーンが可愛いです。
思わずびっくりしちゃいます。

どうでも良いんですが、行長のキャラ設定が
氏の短編、「あとひとつ」でのこにたんとは全く違いますね。
『燃ゆる〜』は、流暢にラテン語で経典を読むナイスミドルな紳士でした。
こんなに分別のある大人の男な行長には、
ついぞお目にかかったことがございませんよ。
でも自分としては、行長は毒があった方がらしいと思います。
posted by まるひげ at 23:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2009-01-01

icon_45_b.gif『御家の狗』読了。


徳川の懐刀、という表現はほんとに本多父子にふさわしいかと。
「右腕」じゃなくて「懐刀」ね。
この作品、目当ては正純が主役の「花ざかりの杏の木」です。

幕府の金山経営を一手に握り、家康さえも恐れた異能の男・大久保長安。三河一向一揆を指揮し、家康を滅亡の寸前まで追い詰めた本多正信。ひと睨みで二百余の諸侯を震え上がらせた、家康の懐刀・本多正純と豊臣家の股肱の臣・福島正則との仄かな友情。家臣の枠を超えた巨才と御されることを拒む奔放不覊な精神、敢えて数奇な運命を選択した、誇り高き男たちを描く群像歴史小説(アマゾン・レビューより引用)。
岳 宏一郎(著)『御家の狗』

全部で3編収録されてます。
徳川幕府創成期の、権力に活かされ、権力に棄てられた3人の重臣の運命を描いたものです。
それぞれの話の主人公が違うんですが、
関わってくる人物や出来事が重複しているため、
ほとんど途切れなくすらすらっと読めます。
主人公は大久保長安→本多正信→本多正純、という順で。

以下、一部長くなったので、畳みます。

posted by まるひげ at 22:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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