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2012-03-31

icon_45_b.gif『豊臣蒼天録(二)恩讐の関ヶ原』読了。


今月の積読本消化2冊目。
新刊が来月に発売ということを聞いて慌てて読んだ次第です。

副題の通り、「恩讐の関ヶ原」でした。
秀頼&忠輝はギスギスですが、秀頼&吉治、忠輝&幸村のコンビは案外しっくりですな。


智本 光隆(著)『豊臣蒼天録(二)恩讐の関ヶ原』

秀頼成長物語2巻。
吉治や幸村らに助けられながら、
秀頼は少しずつ城の外の世界を学んでいきます。
ところが、なんでも順序良くいかないのが世の中ってもんです。
関ヶ原以前より変わらず豊臣に仕えた者たちこそ報いたいと思う秀頼。
かつて徳川についた者たちに遺恨を抱くことが、取り返しのつかない事態を招きます。

とりあえず、公式あらすじを以下に。

慶長十六年。打倒徳川の兵を挙げた豊臣秀頼はわずか一日で洛南の地を平定。
さらに真田幸村や大谷吉治の働きにより朝廷から「徳川家康追討」の令旨を得た。
これにより池田輝政ら西国の大名が味方となり、秀頼の軍勢は大きなものへとなっていく。
勢いにのる豊臣軍は家康を追い彦根へ進攻。苦戦するも城を落とし近江を手中に収めた。
一方、家康は彦根城から尾張・清州城まで後退。
本多正信とともに老獪なる逆襲策を発動させる。
しかし、そこには招かれざる客、伊達政宗の姿があった―
大将として戦いに身を投じた秀頼に、群雄割拠の戦国時代を生き抜いた強者達が襲いかかる。
(新書帯より引用)


というのが中盤までの展開です。
メジャー大名の退場が相次いだ前巻ほどではないにせよ、退場大名がちらほら。
そして相変わらず物分り良すぎる淀殿と頭弱すぎる千姫。

以下、ネタバレてるので畳みます。
posted by まるひげ at 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-03-30

icon_45_b.gif『遠い勝鬨』読了。


またしても図書館レンタ本。

知恵伊豆が養った切支丹の少年が南蛮医師となったところで
天草島原の乱が起こり…というあらすじを見るだけでも悲劇しか想像できません。
実際、その通りでござった。やや鬱ENDですな。

“知恵伊豆”この賢者なくして「徳川の平和(パクス・トクガワーナ)」はなかった! 老臣たちの権謀を抑え、江戸城下の建設に腐心する松平信綱に最大の試練「島原の乱」が迫る。松本清張賞作家が為政者の真の勇気を問う意欲作(単行本帯より引用)
村木 嵐(著)『遠い勝鬨』

天草島原の乱だけでなく、
江戸幕府草創期、土地拡張が進む江戸の喧騒、肥後加藤家の改易、
さらに土井家や酒井家との水面下の政争などを織り交ぜたお話でした。
あらすじをもうちょっと詳しく紹介すると以下のような展開となります。

ある時、一人の少年が信綱のもとを訪れる。
南蛮医術を学ぶため、つてを頼ってやってきたこの少年・小太郎は
実母が切支丹であり、自身も幼児洗礼を受けたという秘密を抱えていた。
やがて九州の地で医術を学ぶかたわら切支丹たちと接するうちに自身の信仰心に気づき…。

信綱というより、信綱が養育した少年・小太郎(=健之丞)が主役ですねこれ。
信綱に対する親愛と信仰との間で揺れ動く健之丞と、
政とは無縁の世界に生きたかもしれない
「もうひとりの自分」として健之丞を見ていた信綱。
物語はこのふたりを中心に進んでいきます。

面白かったのは、信綱の親友でありその耳目となる火天丸や源心といった脇役たち。
彼らが全力で信綱を支え、命をも投げ出す姿が印象的でした。
そんな彼らに同心していた健之丞ですが、
結果的には耶蘇教を選んでしまったのがなんとなく納得できない。
やるせない、というよりは納得いかないモヤッと感が残ります。
信綱が大事であったが故、
信綱の立場を危うくしかねる自身の存在を抹殺したというのはわかるのですが。
物語の最初の方から、
健之丞が耶蘇教と切支丹に心を奪われる姿が描かれている一方で
己の信仰心に関してはさらりと否定(無自覚?)してるんですよね。
そのくせ最後の最後で切支丹サイドに立ってしまうのがなんとも…。
耶蘇教の教えも知らずにいながら、
その精神だけは切支丹であった実母から確実に受け継いでいた健之丞。
結局はこの母の存在が大きなものだったんでしょうなぁ。

気になったのは、人物描写やネタが中途半端な点。
作中の信綱暗殺未遂事件の真犯人とかね。
結局、その人物との最終決着も描かれてないんです。
そもそも、この人物が途中で性格豹変するところなんかも
もう少し工夫の仕様があったと思うのですがね…。
posted by まるひげ at 23:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-03-25

icon_45_b.gif『無双の花』読了。


図書館レンタ本もういっちょ。

落ち着いた筆致で描かれた物語でございました。
結局、宗茂とその生き方が「無双の花」だった、ちゅーことですな。

秀吉の九州攻めで勇名を馳せ、関ケ原で西軍に属して改易となり、のち旧領に戻れた唯ひとりの武将、筑後柳川の立花宗茂。その生涯を描いた歴史小説。新直木賞作家誕生、受賞第1作(「日版MARC」より引用)。
葉室 麟(著)『無双の花』

舞台は関ヶ原の戦い直後 〜 天草島原の乱後ですが、メインは浪人時代です。
西軍の敗戦を知って領地へと戻る途中、
宗茂が別居している正室・ァ千代のもとを訪れるところから物語が始まります。
「立花は決して裏切らない」という「立花の義」。
宗茂が自らの生きる道として生涯掲げることとなるこの信念が
「天下泰平を守るためにあった」と実感する終盤が読みどころですね。
人を裏切らずに生き抜くことの困難さと厳しさ、
あてのない浪人暮らしに家臣を巻き込むことに苦悩しながらも
自らの生き方を貫き続けた宗茂の、潔く愚直な姿が印象的でした。

いやそれにしても、慕われっぷりがものすごい宗茂。
宗茂は周囲の人々にとっての希望の星、夢であるとまで言われます。
妻に、家臣に、友にと様々な人たちに支えられ、
ついに悲願の旧領・柳川城へ帰参するシーンは目頭熱くなりますね。

ちなみに題名の「無双の花」というのはふたつの意味があります。
ひとつは、ァ千代が宗茂に願った大名として返り咲くこと、
もうひとつは、宗茂にとってのァ千代そのものであった、ということ。
特に後者は終盤で宗茂が悟るのです。
読んでいるとこの2人は完璧に相思相愛なのですが、もうどうにもならんのが切ない。
あ、忘れちゃいけない。
ァ千代だけでなく、側室の八千子もこらまた素敵な人でした。
この作品は宗茂とふたりの女性の物語と言えるかもしれません。

その他脇役を見てみると…。
小野和泉、由布雪下、十時摂津といった家臣たちも多く登場します。
なかでは道雪時代からの古株家臣である雪下が良い味出してますね。
時に師のように、父のように厳しく暖かく宗茂を見守る姿が頼もしい。

東の無双・本多忠勝ともちらりと友誼っぽいものが。
宗茂の干飯エピソード、実は忠勝の助言によるものとなってます。
そして、一歩退いたものの見方をしている癖に闘志激しい幸村、
じじぃになっても血の気の多い政宗なんかが物騒で楽しい(笑)。
幸村も政宗も家康も、それぞれの生きる道というものがあり、
宗茂のそれとは異なっていながらも淡々と語られているのが良いですな。
その他、家康と宗茂の共通項とか正信が本音を零してしまうのがなんか新鮮。

基本的に悪役がいないのですが、残念なお方が1名。
長●我部盛親さんです( ← 意味のない伏字)
宗茂に対する嫉妬、自らの境遇に対する不満といった鬱屈した想いが凝り固まり
切羽詰って暴走しちゃった感がすごいキャラでした。
posted by まるひげ at 01:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-03-17

icon_45_b.gif『知恵伊豆に聞け』読了。


今月の積読本消化1冊目。

もうほんと、タイトルの通りです。

徳川安泰の基礎を固めた家光の陰には、機知に富んだひとりの老中がいた。松平伊豆守信綱、通称「知恵伊豆」は、徳川家に持ち込まれた無理難題を次々に解決する。島原の乱の鎮圧を始め、由井正雪謀叛を未然に防ぎ、川越藩主として野火止用水を完成させるなど、機知と行動力をいかんなく発揮した男の「逆転の発想」(文庫より引用)。
中村 彰彦(著)『知恵伊豆に聞け』

江戸時代の黎明期、3代将軍家光を支えた老中・松平伊豆守信綱が主人公。
本文が543ページと、なかなかのボリューム。
ですが、
文芸誌に掲載されていた作品をまとめたものなので
基本的には一話完結という形式となっており、読みやすいです。

まだ江戸城に上がる前の幼少期からスタートし、
老中となった晩年までのエピソードがどっさり綴られています。
手軽に知恵伊豆の生涯を知るには良い1冊かと。
小説という形をとってはいるものの、
実際には「逸話集」というのが適切な内容でしょうか。

ということで、
養子先でのちょっとした騒動から小姓仲間の困り事、
家光の無理難題から庶民の訴え、
さらには天草島原の乱、由井正雪の乱といった幕府の危機など
知恵伊豆が関わった事件は多岐に渡っております。
数々の厄介事をあざやかな手腕でさらりと解決してしまう知恵伊豆。
その様子があまりに順調なので、ちょっとうまくいきすぎな感もあります(苦笑)。
特に、
前に挙げた、幕府を揺るがしかねないふたつの大きな騒乱。
これらについては、
実際は政の暗部や渦巻く権謀術数があったに違いないのですが
そこらへんはもう全くと言っていいほど触れられておらず、
とにかく将軍家と政、他者に対して誠実・清冽な知恵伊豆の姿がありました。

そこのところは、あとがきにて
かれが「徳川の平和(パックス・トクガワーナ)」実現のために歩んだ道のりを
なるべく明るい色調で描き出すことに努めました(p.544〜545)

とあるので、作者様の狙い通りなのですけれど。
でも正直なところ、全体的に物語としてあまり印象に残らなかったなぁ…。
個人的には、老獪な部分を読んでみたかった気持ちが大きかったので
ちょっと拍子抜けした感じです。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-03-12

icon_45_b.gif『くるすの残光 月の聖槍』読了。


今作の読みどころは間違いなく敵方。
なにより魅力的だったのが西の無双・立花宗茂。

時は寛永二十(一六四三)年二月。家光を頂点とする幕府はいまだ切支丹の影におびえ続けていた。一方、島原の乱の生き残りで、天草四郎から力を分け与えられた“聖騎士”であり、江戸市中に潜伏している寅太郎たちは、授かった力を鍛えつつ、四郎復活のため、奪われた聖遺物の行方を捜していた。幕府と切支丹の果てなき激突―その末に待つものは!?(アマゾン・レビューより抜粋)
仁木 英之(著)『くるすの残光 月の聖槍』

敵方描写の厚みが増した分、
前巻とはやや雰囲気が変わったような印象を受けました。
結論としては、より面白く読めましたです。

具体的に敵方と言えば。
まずは冒頭、天海の正体があの人ということがさらりと判明してます。
そして切支丹討伐隊“閻羅衆”サイドも新キャラちらほら。
新人の佐橋くんが頑張り屋さんで、これからの活躍に期待です。
また、その他脇役では
元“南部隠”の一人が予想外な設定で再登場したり、
山の民が寅太郎に協力してくれたりと、なかなか楽しい展開になってきてます。
庄吉とたま夫婦の登場はさほどでもありませんでした。
いちや佐七らといった“聖騎士”仲間も登場シーンは少なめ。

いやそれにしても。
宗茂がね…裏の主人公でした。
この時期、すでに死人であった宗茂は、
切支丹狩りのために天海が行った秘術によって再び魂を与えられます。
死から甦ってまで宗茂が希求していたもの、彼の真意は終盤で明らかとなっております。
そのときのバトルでは、いろんな伝奇要素がてんこ盛りです(笑)。
かつての臣下であった木下大蔵との問答が面白いですね。
信仰に対する宗茂の主張は、異教の教えに対して非常に誠実なものでした。
(正直、ちょっと現代的過ぎるかなと思わないわけでもなかったり…)

切支丹を全否定せず、領内で生きる道を与えてくれた宗茂。
宗教観とか統治論とか出されると、どうやっても敵方が正論のように思えてならんわ。
切支丹側、視点が狭すぎてちょっと閉口してしまう。

気になったところと言えば。
物語の視点が寅太郎だったり、宗茂だったり、閻羅衆だったり、
視点チェンジのタイミングがちょっと悪かったように感じました。

ちなみに7つの聖遺物のうち前巻で奪還したのは荊冠でしたが、
今作はタイトルにあるように槍です。
ロンギヌスの槍があんなことになっちゃってまぁ…。
それはそうと、今回は七つの罪のどれに対応してたんでしょうか? 傲慢??

この調子でお次は3つ目の聖遺物回収ですね。
どのアイテムなのか、敵はどんな手を打ってくるのか注目です。
また、四郎から授けられた能力を寅太郎たちが
完全に活かしきれていないところが今後の課題にもなってきました。
寅太郎ときよの淡いラブも気になります。
荘介…元気出せ。
posted by まるひげ at 00:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-03-08

icon_45_b.gif『金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康』読了。


図書館レンタ本。

色々ツッコミどころがありますが…むしろツッコミどころしかありませんが、
個人的には
信長の本陣トンズラが発覚した時の家康&光秀&秀吉の本音が一番のツボでした。

信長、人生最大の危機、浅井長政の突然の裏切りで敵地、金ヶ崎城に孤立!後に天下を狙う四人の若き日の思考錯誤、七転八倒ぶりをユーモラスに描く歴史小説(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『金ヶ崎の四人 信長、秀吉、光秀、家康』

基本的にキャラ小説です( ← ここ大事)。
基本的に会話文中心です。
まさに七転八倒のドタバタな「金ヶ崎の退き口」でした。
一応、家康が主人公的位置づけです。

物語は
越前朝倉攻めが開始&人物描写の前半、
殿軍の総大将を任された秀吉を家康&光秀が補佐する後半に分かれます。
長政に裏切られるとは夢にも思わなかった信長の動揺、
金ヶ崎城に残された家康、光秀、秀吉の運命や如何に―!?
といった展開で、残され組がいい具合に壊れていく後半が楽しいです。

生き残れるかどうかも危うい極限状況において、
4人の性格の違いがこれでもかと曝け出されているのが読みどころでしょう。
ちなみに4人は以下のような性格です。

零か十か、白か黒かしかねぇのかよ!
何事に対しても極端すぎ、「ほどほど」を知らない魔王信長

信長通訳機上等、下々に情が厚いのも結構、それよか練兵ちゃんとやって!
外交交渉は天才的、戦闘に関しては絶望的な才能を持つ秀吉

いい歳して落ち着こうね爺さん!
穏やかな学者面してる癖に、死地に自ら飛び込んでいく勝負事大好きな光秀

勝っても負けても骨折り損…とりあえず三河に無事に帰らせてあげて!
徳川家家中での立場がまだ堅固なものではない家康

…改めて読み返してみると
信長と秀吉のキャラ設定はあまり違和感ありませんが、
家康と光秀が楽しいことになってました。
家康はちょっと短気な武辺者国主。
指一本で床板に穴あけたシーンのドヤ顔はきっと劇画調だと信じてる。
光秀は前作『信長と信忠』でのキャラ造形と似てます。それをさらにこじらせた感じ。

この4人組で他の歴史ネタも読みたいなぁ、という気になりますね。
…と言っても、4人が一緒の戦場なのは後にも先にもこれだけだったわけですが…。
posted by まるひげ at 01:30 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-02-29

icon_45_b.gif『忍びの森』読了。


今月の積読本消化4冊目。
実は昨日の日記で挙げた本より先に読了してたり。

いやぁ、面白かったです。
ニンジャのサバイバルアクション………ホラーではないです。伝奇モノです。
この血湧き肉踊る感、良いですな。

時は戦国。織田の軍に妻子を殺された若き上忍・影正は、信長への復讐を誓い紀州をめざす。付き従うは右腕の朽麿呂、くノ一の詩音ら、一騎当千の七人。だが山中の荒れ寺に辿りついた彼らを異変が襲う。寺の空間が不自然にひき伸ばされ、どうしても脱出できないのだ!さらに一人が、姿の見えない敵によって一瞬で屠られる。それはこの寺に棲む五体の妖怪が仕掛けた、死の五番勝負だった―(文庫より抜粋)。
武内 涼(著)『忍びの森』

キャラが立っていて人間味が滲み出る伊賀忍びの皆様。
戦闘時には冷酷な観察眼、生き残るための戦略が瞬時に組み立てられるところなど、
平時とのギャップがたまりませんです。

あらすじをちょこっと補足。
天正伊賀の乱が背景です。
戦場から逃れた影正ら伊賀の8人の忍びのうち、阿保(あお)党が6人。
残り2人は紀州へ落ちる途中に合流することとなった田屋党の姫とその守護忍。
あやかしの手により封印された空間のなかでの死闘、
一人また一人と殺されていく忍びたち。果たして生き残るのは誰か?

…という展開です。
冒頭から妖怪登場まで時間がかかるのですが、
それ以降は先が気になりスイスイ読み進められます。
面白いのはいわずもがなのメインパート「忍者 VS 妖怪の死闘」。
…妖怪っていうか化物っていうか怪獣っていうか。
鍛え抜かれた忍びの技(たまに超能力)を駆使した肉体戦はもちろん、
時には知略を尽くした頭脳戦も繰り広げられます。
スピーディーな緊迫感があるので、手に汗握るハラハラ感満載。
戦闘がトーナメント形式となっているのが面白いです。律儀な妖怪さんだなぁ。
ちなみに戦闘は、なんでもアリ、というわけではなく
それぞれの妖怪との戦いで忍びたちに課せられる制限が様々あり、
そのことが戦闘シーンにリアリティを与えております。
山風的「忍法」じゃなくてあくまで「忍術」ね。
結構真面目にバトルしてました。

気になるところは、過剰とも言える情景描写。
紀伊の植物についての緻密な記述、その膨大な情報量には圧倒されます。
しかし、あまりに説明が長いせいで、
読むテンポが一時中断されてしまうきらいがあるんですよね。
あと、仇敵の織田信長、そして伊賀攻めを先導した甲賀忍びの頭領・山中竹宗。
彼らの描写がラスト少ししかないのがやや残念。
例えば冒頭にこの2人(特に山中の方)に関わる物語があれば
もっと忍びたちとの繋がりが出来たかな、という感じです。

間違いなくB級エンターテインメント作品でありながら、
状況描写と物語を支える設定がしっかりしているので軽い印象は受けませんでした。
次回作も読んでみようと思います。

以下、どうでも良いネタバレ感想文。
影正、なにげにモテるな(笑)。
女性キャラに嫌味がないのは良いですね。詩音も鵺も可愛いよ!

振り返ってみると、忍びの皆様、死亡フラグ回収してるわー。
なんつーか、草姫戦が迫力で…朽麻呂の死に様も「これだけは勘弁して」って感じ。
痛い痛いこれは痛いぞ。
個人的には3番目の妖怪・蛇苦鷺が好きです。
あの怪鳥が律儀に果たし状である多羅葉の葉っぱを届けにきたのがね。
わざわざ石化させてるところ想像すると非常に愛しくなってくる不思議。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-02-28

icon_45_b.gif『忍び外伝』読了。


今月の積読消化本3冊目。

何気に真相がえげつない…よね?
読者が溜息つくところは、
つまるところ文吾の実の親は○○と××で、
その両親から●●されてたってとこだと思うんだがどうだろうか。

伊賀の上忍・百地丹波によって一流の忍者に育てられた文吾は、何ゆえ忍びを目指すのか思い悩む。やがて北畠(織田)信雄率いる大軍が伊賀に迫る―(単行本帯より引用)。
乾 緑郎(著)『忍び外伝』

SF要素ありの伝奇時代劇小説。
主人公は伊賀国石川村の生まれの下忍・文吾衛門。
舞台は現在と過去が頻繁に入れ替わる設定なので説明が難しいのですが、
簡単に言ってしまえば第一次天正伊賀の乱〜第二次〜伊賀の乱後日。
さらにこれに時空が…とか並行世界が…とかいうオマケがつきます。ややこしや!

その後のあらすじをちょと補足。
織田軍の伊賀への侵攻が開始される頃、文吾は百地の命により百地の後妻を殺した。
かねてより怪しい噂が囁かれていたその女の謎に迫るうち、
文吾は百地丹波の企み、伊賀の秘密、さらに大きな歴史の闇に触れることとなる―。


…補足つーか端折りすぎ(苦笑)。
後半部分がどっと伏線回収パートになっているのでちょっと戸惑う感じです。
南北朝の政変あたりで置いてかれそうになったよ…。
主人公の文吾もそうですけれど、
重要キャラの果心居士の正体、これは想定外なことになってました。

ファンタジー色の強いアイテムが物語のキーとなっていて、
それが天正伊賀の乱と本能寺の変の真相とつながっている点などは伝奇モノらしいなぁと感じます。
あと、宿敵として設定されてる人外の男女の関係なんかも良いですね。
光瀬作品を彷彿とさせます。
しかし。
読んでる最中、いまいち作品に没頭できませんでした。
設定を追って淡々と読み進めるのみで。
読み終わってみると、なんというか…バランスが悪い気がする。
文吾の女弟子・お鈴との修行の日々と歴史の裏に関わる部分の転換が
不自然というか唐突というか。
これが作者の意図したところかもしれませんけれど。

ちなみに、第2回朝日時代小説大賞受賞作ということで
「児玉清、縄田一男、山本一力各選考委員、激賞!」以下、
派手派手しいまでの煽り文句が並んでますが…ちょっと大袈裟なような。
posted by まるひげ at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-02-26

icon_45_b.gif『茶坊主漫遊記』読了。


三成にいいようにあしらわれる十兵衛が人間味溢れる好人物でした。
ちなみに、ここの三成はへいくゎい成分ゼロの好々爺です。

関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首されたはずの石田三成であった。行く先々で起こる奇ッ怪な事件をズバッと解決、高笑いを響かせながらの諸国漫遊だが、どうやら秘めたる目的があるらしい。一方、三成存命を知った将軍家光は、一行の始末を隠密・柳生十兵衛に命じるが―。ミステリ仕立ての痛快時代小説(文庫より引用)。
田中 啓文(著)『茶坊主漫遊記』

1話分が70ページ前後の短編で、全5話収録。
あらすじは公式にある通りなのですが、ちと補足します。
主人公サイドは三成おじいちゃんこと「長音上人」とお供の大男「腐乱坊」、
そして、道中、仲間となる口達者な優男「彦七」。
この三人が旅の途中で出会う事件に首を突っ込みながら、
出羽 → 近江 → 瀬戸内 → 肥後 → 薩摩と舞台を移していきます。
京都六条河原で斬首を免れ、密かに出羽国・久保田で隠れ住んでいた三成が
何故諸国を旅するのか、旅の目的地である薩摩に何があるのか…。
最終話ですべての謎が明かされます。

テンポが良くとても読みやすい作品でした。
通説、俗説、講談、時代劇をごちゃまぜたユーモア小説で
各話のタイトルはミステリ作家のチェスタトン、
諸国漫遊&三成のキャラ造形は水戸黄門のパロディとなっております。
巻末の日下氏の解説にある通り、
「皆さまお馴染みの素材を使ってこんな料理を作ってみました」というスタイル。
主役の石田三成以下、柳生宗矩・十兵衛父子、宮本武蔵、天草四郎…
その他、あんな人やこんな人も顔を出します。
作品の構成としては、ミステリ要素がちらほらと。
特に最終話は、とある人物の正体を匂わせつつも
もうひとつひねった仕掛けが施されております。
その仕掛けが解かれることにより、重要脇役キャラの苦悩が解消され
その後の身の振り方を決定づける展開となっているのが、心憎いですな。

気になるところは最終話の島津家についての記述に間違いが…。
まぁそれはともかく、簡単に各話のあらすじでも書いておきます。

第一話「茶坊主の知恵」
洞窟の奥に安置された祠。そこから真っ直ぐに飛び出した矢が祠の正面にいた男を殺した。
果たしてこれは神罰か?

第二話「茶坊主の童心」
とある道場に通う一人の男と出会った三成一行。
ひょんなことから道場の敵討ち騒動に関わることになってしまったのだが…。

第三話「茶坊主の醜聞」
瀬戸内の孤島に、伝説の盗賊が隠したと伝えられる財宝のありかとは?

第四話「茶坊主の不信」
天草の地で、三成はかつてのキリシタン大名・小西家の旧臣と出会う手はずになっていた。
キリシタンへの弾圧が激化する地で三成が企むこととは?

第五話「茶坊主の秘密」
薩摩で三成を待つ人物、そして十兵衛に下される新たな密命。三成と十兵衛、最終対決。
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2012-02-22

icon_45_b.gif『関ヶ原疾風伝(三)天下泰平の器』読了。


読了感がモヤッとする。
秀家の下した結論が、理解はできるけど納得できないものだったからかなぁ。
それと、この作品で一番美味しい思いをしたのが秀忠ってのがね…。なんという棚ボタ。
…にしても全登の黒幕っぷりよ。


尾山 晴紀(著)『関ヶ原疾風伝(三)天下泰平の器』

戦況の描写がシリーズで一番多かったです…まぁ、決戦だし。
主人公である秀家の苦悩は前巻までとはまた異なったものとなり、
この戦いの目的、そして戦後の世のあり方を再認識させられるものとなってます。

とりあえずいつもの公式あらすじをペタリと。

小早川軍の壊滅は東西両軍にとって大きな影響を与えた。
寝返りを未然に防いだ西軍は、混乱することなく関ヶ原に着陣。
さらに日和見を決め込んでいた吉川広家ら毛利勢も、ついに西軍として動くことを決断した。
東軍にとって関ヶ原進攻策は小早川の寝返りありきのものであった。
大前提が崩れた家康は作戦の中止も考えたが、
井伊直政や藤堂高虎の意見具申により、現状の軍勢でも勝利できると確信し、進攻を続けた。
―慶長五年十一月十五日関ヶ原。
雌雄を決する戦いの火蓋が切って落とされる!
(新書帯より引用)


これは序盤の話ですね。大変なのはあの人の死以降。
以下、ひどいネタバレな感想文です。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-01-31

icon_45_b.gif『神出鬼没!戦国忍者伝』読了。


今月の積読消化本3冊目。
積読してるうちに絶版になってもうた…。

乱世の闇を跋扈した忍者は、戦国時代の裏面を彩る主役だ!本書は、忍びの者を主人公とする短篇小説の傑作を集めた一冊である。通説を大胆に改変した五味康祐の「猿飛佐助の死」、武田信玄、上杉謙信を暗殺し、織田信長をも謀殺した忍びを描いた柴田錬三郎の「百々地三太夫」、“くノ一”望月千代、加藤段蔵、服部半蔵と有名な三人が登場する光瀬龍の「女忍小袖始末」など、八篇を収録(文庫より引用)。
細谷 正充(編)/五味 康祐、滝口 康彦ほか(著)『神出鬼没!戦国忍者伝』

今は絶版の多い作家さんの忍者を主役にすえたアンソロジー本。
収録作品は一つひとつが個性的でどれも面白かったです。
あとがきで編者の細谷氏が自信をもってオススメするだけのことはある。
個人的には五味作品とシバレン作品と戸部作品がお気に入り。
五味&シバレン作品の佐助が可愛ゆげでたまらんです佐助。

とりあえずラインナップは以下の通りです。
・「猿飛佐助の死」五味 康祐
・「決死の伊賀越え―忍者頭目服部半蔵」滝口 康彦
・「最後の忍者―天正伊賀の乱」神坂 次郎
・「叛」綱淵 謙錠
・「女忍小袖始末」光瀬 龍
・「関ヶ原忍び風」徳永 真一郎
・「百々地三太夫」柴田 錬三郎
・「半蔵門外の変」戸部 新十郎


ネタバレ気味…というか長いので畳みますー。
相変わらずあらすじ紹介文の形式は統一できてません…。

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2012-01-30

icon_45_b.gif『火の国の城(下)』読了。


今月の積読消化本2冊目。
上巻読んで「大介、前作より拒否反応無いな…」って思いましたが
下巻読んだら…すいません、やっぱりだめでした。ぬるいわ、こやつ。
甲賀&伊賀の忍びと異なり、
熱い血をもって生きるのが杉谷忍びだというのはわかるんだけど、
それでも於蝶や道半の姿勢と大介のそれとは決定的な違いがあると感じる…。

月も星もない闇夜であった。あきらかに、多数の敵が自分を包囲しつつある。(しまった…。)忍びの風上にもおけぬ、大介は自分をののしりつつ走りつづけた。―太閤亡き後も豊臣家に衷心をつくす加藤清正を、家康は陰に陽に追いつめる。家康の魔手に立向かう、大介、於蝶ら名忍びたちの活躍を描いた忍者小説第二弾(文庫より引用)。
池波 正太郎(著)『火の国の城(下)』

はい、下巻です。
清正のもとへは於蝶が加藤家奥付きの女中として潜入、
大介、道半その他杉谷忍びが外で動いているという図は変わりません。

下巻のクライマックスは慶長十六年の秀頼&家康の面会。
そこまでがじりじりと話が進むので、じれったい気がしないでもない。
しかしその後の展開は淡々と駆け足で進みます。
大坂の陣でさえも2〜3ページで終わってしまいます。
そして家康の死後、大介の、最後にして最大の忍び働きが描かれて終わり。
…う〜ん、なんだか下巻、期待したほど盛り上がらなかったような?
個人的には梅春のその後が読めたのが楽しかったです。
『真田太平記』では清正の死後、行方くらましたっきりだったので。

ちなみに、登場する場面はさほどありませんが
「戦さをするための城」である熊本城の存在感が大きい。
豊臣への忠誠がため、これまで徳川に忍従してきた清正の覚悟が形となったものだけに
正直、舞台としてもう少し多く描かれたところを読みたかったです。

さて、下巻も於蝶さんは好き放題です。
まず大介がまんまと於蝶さんの毒牙にかかり、R指定なことになってます。
豊臣と徳川との和解の障害となっている淀殿のことは
「手出し無用」と雇い主に言われたにもかかわらず、
「チャンスがあったら殺ったるし」と言い放つ於蝶さん。俺ルール上等。
じっと堪えてばかりの地味ッ気な潜入活動より
「戦場にて縦横無尽に暴れ回る方がずっと面白い」とのたまう血の気の多いバァさんでした。

そして主人公・大介。
ラストの大介と梅春の会話を読むにあたり、
この人は本当の意味での「忍び」ではないんだなぁとわかった気になりました。
大介の本分はどうあっても人なんですね。忍びじゃないんです。
「人として」亡き清正のを無念を晴らすと言う大介と、
あくまで「忍びとして」の本分にて清正を暗殺した梅春。
梅春は悪くないんですね、コレ。
ある意味、正しい忍びの姿なのではないかと。

ということで、好き勝手なこと書いて参りましたが、
『夜の戦士』から始まった池波忍者シリーズ5連作(?)、とりあえず完結です。
池波作品は真田モノ短編を読み進めたいと思ってるので
今後ちまちま消化していくつもりです。
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2012-01-25

icon_45_b.gif『火の国の城(上)』再読了。


道半爺さんが凄腕で頼もしいです。

風呂の客のたくましい躰には傷痕がきざまれていた。(この客どの…もとは武士や)湯女の乳房が、客のあたまの上でおもたげにゆれている。後から入ってきた客がうかべたおどろきの表情に、二人とも気づかなかったようだ。伊那忍びの丹波大介は生きていた―。関ヶ原の戦から五年、きなくさい京で、忍びの血が呼びさまされた(文庫より引用)。
池波 正太郎(著)『火の国の城(上)』

今月の積読消化本1冊目。
…再読だけど下巻が未読だからまとめて積読本ということにしたい。
池波忍者シリーズ最終巻です。

前作『忍者丹波大介』から5年後。
忍びの世界から離れ、生まれ故郷の丹波村で妻を娶って静かに暮らしていた大介。
ところが、あるとき真田忍びの弥五兵衛と再会したことをきっかけに
忍び働きをすることになった大介は、再び忍びの世界へ身を投じることになり―。

という展開です。

物語の舞台が関ヶ原の戦の5年後〜大坂の陣前夜ということで、
これまでの池波忍者シリーズのような表立った戦のシーンはありません。
潜伏、追跡、探索といった諜報活動が多め。
「何気ない情景が実は…」という忍び働きのシーンが多いなか、
戦と言えば、あくまで闇のなかでの忍び同士の戦いです。
ちなみに大介に協力するのは杉谷忍び数名。
天下を掌握しつつある徳川配下の甲賀&伊賀忍びに対し、
十にも満たぬ人数で挑もうというのですから、
読んでる方としてはそらテンション上がります。

作中、大介は豊臣家存続に心を砕く加藤清正の為に働くことになります。
豊臣と徳川の間で気苦労が絶えない清正は出番少なめですが
落ち着いた物腰で情勢を見極める智謀家といった趣があります。
清正といえば、この時期は「火の国の城」こと熊本城の築城の真っ最中。

上巻はまだ徳川方も豊臣方も…正確にはそれぞれの陣営の忍びたちの、
「やがて来るだろう大戦のための地道な下準備」といった状況でした。

前作での登場人物はもちろん、
忍者シリーズや真田もの作品常連のキャラがもろもろ出てくるので
ファンとしては懐かしいやら嬉しいやらたまに忘れてるやら(!)でとても楽しいです。

以下蛇足。
どうでも良いことですが、大介の嫁「もよ」。
この名前って向井佐平次の嫁と同じ名前ですよね。
さらに大介の命を狙う甲賀忍びの「小たま」。
名前が『忍びの女』の主人公と同じなので同一人物か? と思ったら違うようです。
(本書の小たまは山中忍びで『忍びの女』の小たまは伴忍び)
紛らわしいな…。

下巻に続く!
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2011-12-14

icon_45_b.gif『関ヶ原疾風伝(二)逆襲する家康の鬼謀!』読了。


秀家の成長物語でもあるこの作品、明石全登と本多政重の支えが頼もしいです。
いやそれにしても全登フットワーク軽い。陰で色々動いてますこの人。


尾山 晴紀(著)『関ヶ原疾風伝(二)逆襲する家康の鬼謀!』

「えっ、ここで退場?」という武将が多かったような…。

とりあえず公式あらすじを以下に。

東西激突の緒戦に勝った宇喜多秀家ら西軍。
これに対し家康は大垣に一夜城を築き西軍の勢いを止める。
福島勢の守る東軍の陣地を攻めあぐねて膠着する戦況に、
ついに秀家は大垣から関ヶ原への転進を決意する。
しかし、これに反対する三成との間で主導権争いが再燃。
転進か残留か―紛糾する軍議の最中に、家康の「水攻め」が大垣城を襲う!
秀吉を彷彿とさせる策を打ち出し西軍を追い詰める東軍―家康の奇策、
さらに小早川秀秋の謀反疑惑もあいまって
混乱を極める西軍に、果たして勝利の道はあるのか!?
(新書帯より引用)


以下、ネタバレ注意の感想文です。


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2011-10-03

icon_45_b.gif『求めて候 幕末牢人譚 弐』読了。


殺伐度、さらに倍増。
なんつったって題名の「求めて候」、
何を求めてるのかといえば「死に場所」なんですもの。

勤王か佐幕か―安政期、政権は大きく揺らぎ始める。時代の荒波に揉まれながら死に場所を求める牢人や若者たち。何のために生きているのか。一刀流の極意を体得するも人斬りへと身を落とした針谷清蔵や、捨てきれない過去に苦悩する南部権十郎も、その答えを命がけで知ろうとしていた。その間も政情の荒廃は進み、ついに桜田門外の変が勃発する(文庫より抜粋)。
鳴海 章(著)『求めて候 幕末牢人譚 弐』

なんつーか、状況が新展開に進むたびに人死にがある話だな。
とりわけ清蔵に関しては、これでもかという負のスパイラル生き地獄でございますよ。
「一度でも人を殺めた者は後戻りできない道を歩んでいくことになるんだよ!」
というメッセージが痛いです。

舞台は前作のラストより1年後の江戸。
「念仏斬り」と噂される人斬りの正体を追い、清蔵の行方を捜す南部とジン。
一方、辻斬りやら美人局やらで糊口をしのぐ清蔵。
前作でつながりを持った清河八郎に再び声を掛けられ、
心を入れ替えて新しい一歩を踏み出そうとした矢先、とてつもない悲劇に見舞われます。
すべてを失った清蔵は、雲水となりひっそりと生きていくつもり…のはずが、
幕政に不満を持つ水戸藩の有志に剣の腕を見込まれ、彼らに利用されてしまいます。
そして物語は桜田門外の変へ…。

ちなみに今作では、南部の過去も判明してます。
判明してますが…いまだに過去との折り合いがつかず、苦しんでます。
あの山田浅右衛門との絡みが良い感じでした。
同類ゆえに共感できる苦悩ですな。
さらに、全てに対して無関心な南部がなぜ清蔵を気にかけるのか、
その理由も終盤に明かされておりました。
いいかげん男と見えて実は非常に真面目で情が深い南部さんです。

ちなみに勝海舟や坂本龍馬、清河八郎あたりは人生の輝き真っ盛り。
ところがその清河もまた―という雲行き怪しくなったところで次巻に続く。
ラストがこらまた気になる終わり方で先が気になります。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-09-23

icon_45_b.gif『神君家康の密書』読了。


既刊作品を順序良く読む前に新刊に手を出してしまったわい。
いえね、図書館行ったら「借りれ!」とばかりに置いてあったんでつい…。

加藤作品はほんと発想勝ちだよなぁ、といつも思います。

女房の尻の威光に縋る蛍大名と異名を取った京極高次。しかし関ヶ原の勝敗は彼の籠城によって逆転した。雲の動きが災いし、宿敵・秀吉軍が迫る北ノ庄城。信長下賜の井戸茶碗でお市と茶席を設けた柴田勝家の最期の戦術とは。東軍最強を誇る猛将・福島正則。強すぎるが故に家康に警戒された彼は、ある賭けに出た。取引は呆気なく成功したが…。戦国覇道の大逆転劇に与った三武将。歴史を変えた三つの落城秘話(アマゾン・レビューより引用)。
加藤 廣(著)『神君家康の密書』

短編(中編?)が3本収録されてます。
一番面白かったのはやはり表題作です。
そしてこれほど次回作への布石となる終わり方になってるのも珍しい(表題作のみ)。
1作まるまる序章みたいなもんです。
地味にわくわくするラストとなっていて、期待が高まります。
ちなみに次回作は『外様潰し忍法帖』だそうです。
それってどんな山風w

・「蛍大名の変身」
タイトルの通り、京極高次が主人公。
幼馴染の茶々にひそかに恋心を抱いていた高次は、公家衆とのつきあいで耳にした
「茶々が生んだ二人の子(鶴松、秀頼)の父親は本当に秀吉なのか」
という疑惑をめぐり、情報を集めやがて真相にたどり着きます。
ちょうどその頃は関ヶ原前夜。
幼い頃と異なってしまった茶々の執念を目の当たりにし、高次の心は急速に豊臣から離れていき―。
という話。
父親は前作の通りでした。
この世継ぎ問題については、
今作では秀吉が後陽成天皇へ養子縁組を願い出たこと、
それを知った茶々の焦りゆえの行動としてとらえており、
いわば「女の戦い」という点から解釈されてます。
欲を言えば、弟・高知との絡みが欲しかったところ。


・「冥土の茶席 井戸茶碗「柴田」由来記」
堺や博多の大商人たちが、茶道具を用いて戦国大名を評しております。
茶の湯に造詣が深いわけでもない勝家が信長より賜った高麗茶碗。
北の庄落城の夜、死を前にして市と二人だけの茶席を設け、この茶碗で茶を喫することになります。
市と勝家の形見の品となった茶碗は、城落ちする茶々とともに運ばれその後…。
ということでありまして、
のちに「柴田」の名で日本の歴史上最高額をつけられることとなる
この高麗茶碗が主人公の話と言っても差し支えない感じです。


・「神君家康の密書」
上杉討伐に赴いた東軍勢、そのなかで一番の兵力をかかえる福島正則。
豊臣恩顧の正則をなんとしてでも東軍に留めておきたい家康は、正則とひとつの密約を結びます。
家康のその言葉を信じ、正則は関ヶ原にて東軍を勝利へと導くことになります。
ところがその後、家康がとった行動は密約を反故にするものばかりで…。

広島城明け渡しの際の辣腕ぶりで有名な福島丹波守がサブ主人公。
…というか、前半は正則、後半は丹波守が主人公という形です。
徳川の世になり、正則ら豊臣恩顧の大名たちへの仕打ちが苛烈さを帯びるなか、
丹波守が仕掛けた「密書」が…おぉっとここが面白いところなので詳細は読んで頂くとして。
(まぁ正直、「引き」がうまいという言い方もある)
正則と家康の密約とは何か、
丹波守の仕掛けた密書とはどのようなものか、
この2つが物語のキーポイントであります。

ここでの正則像がちょっと変わってます。
なんと、落ち着きのある正則です。オチツキノアルマサノリ。
例えば関ヶ原の戦いの口火を切ることになった直政&忠吉の抜け駆けに対して動揺することなく
「よいではないか」と笑い、あまつさえ後方から援護射撃してあげちゃうくらい余裕ぶっこいてます。
そして叔父と甥という関係の丹波守と正則の絆が良いです。特に後半。
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2011-09-16

icon_45_b.gif『豊臣蒼天録(一)二条城の変』


淀殿がヒスってないと話がややこしくならなくて良いですなぁ。
そして千姫がほわんとしてます。
大丈夫なのあの娘? 状況分かって…ないよなぁ…。


智本 光隆(著)『豊臣蒼天録(一)二条城の変』

智本さんは吉治(大谷大学助)お好きなんですね。
今作では、秀頼を導く役どころとして登場。
設定の差はあれど前々作より約10年後ということで、落ち着いた印象を受けました。
皮肉っぽい幸村はあんまり変わらないような(笑)。

あ、とりあえず公式あらすじを以下に。

慶長十六年春。十二年ぶりに大坂城を出て二条城へ向かう豊臣秀頼には秘めた決意があった。
それは―「家康暗殺」。織田有楽斎にそそのかされたこの計画はしかし、
すべて豊臣家を潰すための家康の策略だった。
暗殺は失敗。大罪人として追われる身となった秀頼は、
大野治長の身を挺した護衛で二条城から脱出。
さらに加藤清正が命を懸けて徳川勢を食い止めなんとか淀城へと逃げ込む。
過酷な現実を直視することを拒否する秀頼だったが、
大坂からの援軍として到着した福島正則や真田幸村、
父を憎み豊臣方についた松平忠輝らに支えられ、ついに豊臣の二代目としての覚悟を決める。
(新書帯より引用)


…あらどうしましょう。
公式あらすじがうまくまとまりすぎてもうあたし書くことない。
付け足すとしたら
直孝かわいそう…ってところですかね。

秀頼と忠輝のW主人公です。
おそらくメインストーリーは秀頼の成長物語になるのでしょう。
秀頼が年相応の姿で描かれているのが良いです。
外の世界を何も知らずに育った超御曹司が
いきなり死の恐怖を目の当たりにするわけですから、
怯え逃げ惑い刀も満足に振るえないっていうのが現実かと。
当初、泣いて絶望するばかりの秀頼が
物語が進むにつれ、少しずつ総大将としての信念を抱くようになります。
ちなみに忠輝に対してはなんとなく確執めいたものを感じている模様。

対する忠輝は、己を疎んじてきた父・家康を嫌悪し、
自らが大坂方につくことで父を見返し、さらには秀頼を利用して天下を望む…という設定。
この2人、からかい上手な忠輝の性格のせいか
それほどギクシャクした間柄ではなかったです。

ストーリー展開としては、序盤からメジャー大名の退場が続きます。
前半は生まれて初めて命の危機的状況にさらされる秀頼の逃避行にハラハラし、
後半には今後の活躍が期待される豊臣方の武将さまたち…
いわゆる「関ヶ原の亡霊」の登場にテンション上がる仕様となっております。
話のテンポが遅くもなく早くもなく。ちょうど良い具合です。

家康の策謀に嵌ってしまった豊臣方ですが、徳川方も問題を抱えています。
豊臣との戦が始まっても様子見の姿勢を通す黒田長政や細川忠興、
さらに頼りない二代目大名たち(井伊直孝・榊原康勝・本多忠政)が家康を苛立たせておりました。
個人的には忠輝に味方する土屋藤十郎こと大久保長安の暗躍が気になります。
本多父子ぎゃふんな展開があるんだろうか。

とりあえず次巻に続く!

どうでも良いんだが読書メーター、if小説の管理ちゃんと頼むわー。
この作品、『慶長回天録』という名前で登録されてるんですが
これって多分仮タイトルのまんま修正されてないってことだよな…。
posted by まるひげ at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-09-10

icon_45_b.gif『幕末牢人譚 秘剣 念仏斬り』読了。


念仏斬り…うん、確かに念仏斬りだわこりゃ。
読みやすさにだまされそうですが、結構殺伐とした話です。
剣以外で己の生きる道を知らない男たちの話…
いわばこれは幕末ハードボイルドですな。

嘉永六年、品川宿。何とかなるの一念で江戸に出た針谷清蔵。侍を気取っているが実は貧農の三男で、剣の腕はからっきし、かたや南部権十郎。剣の腕はたしかだが、その日の食にも難儀している牢人者。折しも黒船来航で視察に来ていた佐久間象山、供侍の勝麟太郎との邂逅が、ふたりの運命を大きく変えていく―。(文庫より抜粋)
鳴海 章(著)『幕末牢人譚 秘剣 念仏斬り』

面白いのですよ、基本的には。
さらりとテンポ良く読み進められるのですが、読み終わってみると
登場人物がどこを目指して走っていってるのか正直わからなかった…。
主人公が激動の時代を迷走してる印象を受けます。
まだシリーズ1巻だからかなぁ。
場面転換がそれまでの話の流れをぶった切ってるようで
ちょっと読みづらいのが気になるといえば気になるところ。
あ、あと往年のチャンバラ映像作品のキャラの名前や設定なんかが
出てくるので、そこんとこお好きな方はニヤリとすると思います。

以下に蛇足的登場人物の紹介をば。

ペリー来航で騒がしい江戸を舞台に、ふたりの男が主人公となってます。
ひとりは刀を差し「針谷清蔵」と名乗るものの、実は百姓の出というエセ侍。
遊郭で遊女に弄ばれいい金ヅルになってる冒頭から
借金返済できずにチンピラにつけまわされるというなんとも情けない男です。
ところがこの清蔵、剣術修行をしていくうちに凄腕剣士になってしまい、
ラストはまさかの…という展開に。

もうひとりの主人公・南部権十郎。
腕は立つが大酒呑み、通いの飯屋にツケが溜まりまくりの冴えない四十男。
過去がまだ明らかになっておりませんが、どうやら訳ありの元侍のようです。

ちなみに脇役がとても豪勢。
序盤の佐久間象山&勝海舟から始まり、
河井継之助に吉田松陰、坂本龍馬、清河八郎、西郷隆盛、新撰組…etc
といった幕末著名人がボロンボロン登場します。
正直、「え、ここでこの人必要?」という歴史上の人物がいないわけでもない
くらい豪華な顔ぶれです。
脇役といえば。
越中富山の薬売りに扮し、勝先生の間者のような働きをするジンがカッコえぇのですよ。
龍馬に「忍者!忍者!!」とwktkされて迷惑を被ってるわけですが
あながち間違いとも言えないよジンさん。ニンジャ。
posted by まるひげ at 23:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-09-09

icon_45_b.gif『秀吉の交渉人 キリシタン大名 小西行長』読了。


面倒くさがりで妙に余裕がある…というかユルい性格のくせして
やることなすことサマになって見える、という小西本。
正直、あまり期待しないで読み始めたんですが面白かったです。

豊臣秀吉政権下、キラ星のような武将がひしめく中、ひときわ異彩を放つ武将がいた。キリシタン大名、小西行長。時代に流されることなく、自らの信ずる道を真摯に歩き続けた一人の男の生き様を、圧倒的な筆致で描く。戦国時代を新たな切り口で見せる娯楽歴史小説、誕生(文庫より抜粋)。
永田 ガラ(著)『秀吉の交渉人 キリシタン大名 小西行長』

物語の主な舞台は、朝鮮出兵(文禄の役)の直前〜講和交渉まで。
主役の行長が
まわりから庇護欲かきたてられすぎな前半から、
包容力溢れる立派な大将となる後半へと華麗に変身…というかいつのまにか変身するお話です。
関ヶ原の戦いがエピローグになってますが、オマケみたいなもんです。
文禄の役のその後も読みたかったなぁ…。
戦況の推移や和議交渉など対外的なことはあまり詳しく書かれていないので
あくまでもこれは小西行長と彼に深く関わる人たちの物語ですね。
特に、行長とふたりの家老の絆が読みどころなので、ちょっと紹介させてください。

一番家老の小西作右衛門末郷(小西美作)。
戦においては小西軍の斬り込み隊長として、
平時には兄のように母のように行長の言行を心配する面倒見の良いおっさんです。
行長とは少しの遠慮もなく言葉を交わせる間柄の作右衛門は、
会話シーン読んでるだけでも楽しい。

もうひとりの家老は松永久秀の甥でもある内藤如安忠俊。
普段は控えめで思慮深く振舞っていますが、その実、
「偉大な叔父の汚名を雪ぎ、また武人として叔父を越えたい」という熱い信念を胸に秘めた人物です。
中盤以降、如安の心の揺らぎが注目ポイント。

豪快な作右衛門と沈着冷静な如安。
対照的なこのふたりはキリシタンであり、その縁もあって行長と出会います。
当初「主君はお飾りであってもいい、主君を利用して己が華々しい功名を得る」ために
打算で行長に仕官したのですが…ものの見事に絆されてるふたり(笑)。

さらに忘れちゃいけない重要キャラが阿蘇宮越後…いわゆる沙也可。
当初、行長を狙う刺客として現れるも、
その後の如安や宗義智にとって重要な役回りを果たすことになります。
ちなみにここでは胡人という設定を採っていて、
その設定がこの人物の行動をうまく裏付けている、なかなか面白い人物です。
このアイデアは良いですねぇ。

時々、周りから見た行長像が美化されててふおぉっ…てなります。
その反動として(?)、宿敵・清正がちょっと残念なことになってるので要注意。
「武士たるもの、武功こそが第一」とするこの時代の武将たちのなかで
ひとり異なる価値観と視点をもっていた行長の姿が印象的でした。
こにたんファンは読んでみてはいかがでしょう。
posted by まるひげ at 23:59 | Comment(1) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-08-13

icon_45_b.gif『三人の二代目(下)』読了。


上杉と宇喜多は当主の実母が強くて家臣の影が薄い。
毛利はそもそも当主の影が薄くて家臣が好き勝手に動いてる。
作品全体を見てみたらそんなイメージ。

そしてこの作品で一番印象に残った人物はなんといってもおふくさまです。
なんつーか…流石直家さまの嫁だよね。

信長没後、秀吉が天下をとった。五大老となった景勝、輝元、秀家三人の目的は、専横を極める家康阻止で一致。故に、関ヶ原は「家康VS.その他」の戦となっていく(単行本より引用)。
堺屋 太一(著)『三人の二代目(下)』

さて下巻。
本能寺の変から始まり、秀吉の天下〜関ヶ原の戦いのその後まで。
一番意外だったのが、関ヶ原前後があっさり記述されてるところですかね。
読む前の先入観として、秀吉の死後からがこの作品のメインだと思ってたんです。
ところが読んでみたら
下巻の本編467ページのうち、秀吉は397ページまで生きてます。
…残り70ページで関ヶ原の戦いが始まって終わって徳川の世ですよ。ページ足りなくねぇか。
物語の構成的にも、
それまで個々に描写されていた三家が「打倒徳川」の旗印のもとに
ひとつの大きな流れに収束されるのだろうと思ってたんですがねぇ…。
ラストは敗者となった三者それぞれの「生き残るための戦い」が描かれます。
結局、最後までみんなバラバラだったなぁ(苦笑)。

ちなみに終盤の作家さんの考察タイムでは、
西軍が負けた理由が次の3つとして挙げられています。
@三人の二代目の戦争目的の不一致
A家中の結束の弱さ
B情報収集の拙さ

これらは他作品でも言われてることだそうなので
小説じゃない形で読んでみたいですね。

…とここで感想文シメても良いんですが、
なんだか物足りないので以下にこの巻における三家の状況を紹介。


まずは上杉。
御館の乱後の論功行賞でもめた国人衆をまとめることに奔走する景勝。
秀吉からは越中越後の支配を一任されますが、
新発田重家の討伐にかなりの歳月を費やすこととなります。
苦労の多い景勝さまの相談相手は兼続…ではなくやっぱり仙桃院さま。
彼女がことあるごとに謙信公と景勝さまを比較するのは、
二代目に期待していないのかそれとも発破をかけてるのか微妙なところです。…たぶん前者。

次に宇喜多。
おふくの指導のもと、順調に成長する若き二代目・秀家。
おふくさま、上巻よりもさらに暗躍度アップ。
宇喜多家の政を牛耳っているだけでなく、隣の毛利との交渉にも積極的です。
さらには秀吉を操るような言動もしばしば見られます。
そして肝心の秀家は良くも悪くも坊ちゃんです。
…どうでも良いんですが、秀家坊っちゃんの口調がちょっとオカシイ。
言葉の端々になんだか時代下ってるイメージがつきまといます。
この時代で一人称が「僕」、家臣に「君」づけは違和感あるよなぁ…。

最後に毛利。
織田の組織をそっくり引き継いだ秀吉には逆らわない方針を採ります。
ところが秀吉への臣従について両川の意見が真逆となり、輝元さま板挟み。
さらには秀吉の贔屓に端を発する吉川広家と小早川秀包、
毛利秀元らの確執も描かれるので調停が大変。
…と言っても、輝元さまの基本姿勢は「傍観」なわけですが。
輝元さまが仕事するのは
関ヶ原後の大幅に減封されたお家の建て直し術においてでした。
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2011-08-11

icon_45_b.gif『三人の二代目(上)』読了。


萌えや燃えを期待してはいけない歴史小説でした。(またそういうこと言う…)
ちなみに毛利の二代目って…隆元はノーカウントなわけですねわかります。

偉大な先代の跡を継いだ景勝、輝元、秀家は、擡頭する織田信長を睨みつつ、自国の存続と勢力拡大を画策する。そして、本能寺の変勃発。彼らの決断は―(単行本より引用)。
堺屋 太一(著)『三人の二代目(上)』

上杉、宇喜多、毛利の三家の二代目が偉大なる先代の跡を継いで
領国を維持、さらにできることなら勢力拡大を目指して苦悩する姿を描いたものです。
上巻は謙信の死から物語開始〜本能寺の変前夜まで。
基本的には同時期の三家それぞれの内情を描写していく形式を取っています。
毛利家のページが一番多かったような…?

ちなみに上巻は普通に歴史小説してるんですけど、
下巻(特に終盤)は小説というより歴史論評というか解説書のような感じになってます。
新説を交えた作家さんの考察が興味深かったですね。

まぁ、まずは上巻の紹介から。

上杉では先代・謙信の死の直後で動揺まっただなか。
謙信の死を受け、後継の座をめぐる景虎との戦いに備える景勝&兼続。
珍しいことに、兼続はあまり出張ってません。
景勝の実母・仙桃院さまが若き二代目を厳しく教え導く役どころとなっております。

宇喜多は先代・直家の晩年からスタートです。
…うん、ここは二代目からだと8歳の主人公になるもんな。大河レベルだ。
その代わりと言ってはなんですが、
二代目の実母・おふくさまがなかなかの女傑っぷりを発揮しておられます。
彼女が居なかったら宇喜多家潰れてるくらいのお働きです。
自分の死後の宇喜多家(正確には八郎)の安泰を考えて後見人探しをするおふくさまを
頼もしいと感じる一方、ちょっと寂しさ感じてるのが読み取れる直家さま。
病み衰えた姿がなんとも痛々しいです。

そして毛利。
先代が統治していた制度とは根本的に異なるしくみをもった織田軍といかに戦うか、
が毛利家のテーマとなっておりました。
しかしフタを開けてみたら「三人の二代目」のなかで
一番グダグダだったという名ばかり当主の輝元。
己の意見よりも伯父である両川の言が優先されることに不満を感じております。
けれども両者をまとめるほどの決定的な統制力が自分にあるわけもなく。
結局は「何事も両川に諮って物事をすすめよ」という
先代の遺言どおりに動くことになるのです。
つーことで、基本的に輝元さまは愚痴シーンが多い。

そんな具合でした。
なんだか三人のキャラ紹介で終わってしまいましたが
上巻はそれほど目新しいこともないのでさらりと読めます。
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2011-08-07

icon_45_b.gif『国書偽造』読了。


これぞまさに逆転裁判。
(ただし異議は認められない)

狸寝入り政宗と信綱のくだりとか好きだなぁ。
知恵伊豆の目はごまかせねぇぜ!

時は寛永八年、徳川家光の時代である。対朝鮮外交を一手に握る対馬藩の家老、柳川調興が突然、所領の返還を申し出た。調興の訴えは幕府を揺るがす一大スキャンダルに発展していく。朝鮮王と徳川将軍の間で交わされた国書が対馬藩の中で偽造されたり改竄されたりしていたというのは本当か。そして調興の真意は一体何なのか。…史実を基に大胆な発想で描く時代法延ミステリー(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『国書偽造』

時代法廷モノとでも言いましょうか。
舞台はほとんど詮議の場です。
先日読んだ『中年宮本武蔵』のテンションとは真逆の、至極真面目な時代小説でした。
これが鈴木さん時代小説デビュー作品だそうで。
泰平の世に乱世でしか通用しない夢を見た者、
時の流れに乗り遅れた者の悲哀、痛切さが染み入ります。

物語は朝鮮外交を担当する対馬藩の家老・柳川調興が
「公儀より賜った領地を返進する」と訴えたことから始まります。
以下にあらすじっぽいものを。

己を恃むところの大きい調興は
自身が仕えるにはあまりに卑小な主君・宗義成を捨て国政に加わる野望を抱く。
そのための手段が、
「自らの禄と引き換えに、宗家が朝鮮外交において行った不正を暴く」という行動。
それにより公儀への衷心を認められ幕府直参の身になる、という筋書きを描いていた。
幕府の調べが進むにつれ、調興の言う通り
日朝間で交わされた国書が対馬藩で偽造されていたのは確実であることが判明した。
ところがこれには宗家、調興両方が関わった疑いが浮上し…


というおもしろき展開になっていくのです。

温厚でありながら人並みの器量というにはやや物足りない藩主・宗義成。
他方、藩政の実権をほぼ掌握しており、幕僚たちの覚えもめでたい逸材・柳川調興。
老中筆頭・土井利勝をはじめ多くの大名が調興を支持するなか、
対馬藩藩主・宗義成を支持するのは知恵伊豆と名高い若き老中・松平信綱。
基本的には義成と調興の主従対決ですが、
主従の立場を乱し社会の秩序を乱世に戻そうとする調興と
社会の序列の整備に一命を賭す信綱の
両者の信念の対決ともなっておりました。

力のある者が身分を越えてのしあがっていった乱世は終わり、
太平の世となった今では
「家臣がいかに有能であっても
その器量は主君のために使われるもので、己のために使ってはならない」

物語の冒頭で家康が宣言したこの言葉は、最後の詮議の場で再び登場します。
裁判を決定づけた論理として掲げられているのが、構成のうまいところですね。

ちなみにキーパーソンは隠居したじじぃ政宗。
ほんとにいつまでも落ち着かない御仁だこと!
戦国の数少ない生き残りとして、
調興の野心は誰よりもよく理解していても
泰平の世においては調興の戦乱の世を希う野心を認めることはできないと言う政宗。
調興との対話で政宗の本心が垣間見えそうで見えないのがやきもきする(笑)。

将軍家光直々の裁可が一番の見所です。
終盤まで調興に有利に働いたこの裁判、最後の最後で覆る詮議シーンの緊張感がたまりません。
いやそれにしても、義成サイドの規伯玄方の喰えなさっぷりがすごい。

あと蛇足になりますが、面白かった点をおひとつ。
落語「目黒の秋刀魚」の噺ネタです。
庶民は笑い話で済むこの噺の内容を、
城内の情報管理の杜撰さとして登場人物が危険視しているのが目からウロコでした。
そんな視点で考えないよ!
確かに将軍様のお食事中での会話が世間にダダ漏れなんてありえねぇんですが、
この噺の「殿様」を家光だと仮定すると
お忍び中に自分からポロリしちゃった可能性の方が高いと思われ。
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2011-07-09

icon_45_b.gif『信長の影』読了。


久しぶりの岡田作品は、さらっと読める短編集。
個人的には信光と勝家の話が印象に残りました。

織田信長―。これまでたくさんのエピソードが語られ、評価がされ、読まれてきた戦国武将。その信長に関係する人物を活写することで信長の姿に迫り、信長が彼らにどのような影響を与え、行動の指針になったのかをも描く連作集(アマゾン・レビューより抜粋)。
岡田 秀文(著)『信長の影』

全部で8話収録。
信長を取り巻く人々の心情が、冷静な筆致で描かれております。
鬱エンド…とまではいかなくても、主人公の死や悲劇的な終わり方をしているお話ばかりなので
どれもなかなかに辛気臭い読了感でございました。
暗殺ENDが多いような…。
以下、簡単に感想文をば。


・「上杉謙信」
信長の噂を耳にした謙信は、己の若かりし頃の姿と重ね合わせ、
ひそかに信長に対して共感を覚える。
しかし、その後の信長の振る舞いを知るにつけ段々と失望に変わっていく。


「洛中洛外図屏風」がキーアイテム。
信長の懐柔政策が光ってます。


・「織田信光」
信秀亡き後、織田一族の後見人となった信光は
次代の当主である信長のうつけぶりの真偽を確かめようとするが…。


腹黒信光さん。
織田家の長者として一族をまとめようとするその裏には、
「己こそが織田家を差配するに相応しい」という密かなる野望がありまして。
…いいとこまでいったんだけどね…やはり最後は信長が数枚上手。


・「浅井長政」
朝倉家と織田との板挟みに苦しむ浅井家当主長政の真の姿とは。

恵まれた体格と落ち着いた物腰のため、家臣たちに過大評価される長政がいます。
織田との手切れの際に見せた市の態度がとてもビジネスライク。
その姿に長政さま、思わず「斬り殺したろか」という殺意が芽生えます。
トドメに長政の実母・阿古御料の最期ですね。


・「柴田勝家」
かつて兄である信長と家督を争った信行に仕えていた勝家。
信長に許された後しばらくして、同僚であった佐久間信盛や林佐渡守の失脚を知り、
勝家が起こした行動は己の保身ただひとつであった。


ここで勝家は「いつか信長から粛清されるのではないか」と怯える
小心者としての姿で描かれてます。
信長の死によって呪縛から解放されたと同時に、
緊張感もなくなったためにその後の秀吉との争いに敗けた、という見解が面白い。


・「足利義昭」
信長に利用されていることに気づいた義昭は、「打倒信長」を心に決め
諸大名に檄文を送り続けるが、本能寺の変を受けると…。


復讐の相手である信長の死を知り、燃えつき症候群な義昭。
真っ白です。


・「蒲生氏郷」
己の野心と現状との折り合いをうまくつけていた氏郷は、
信長の死後も周囲の人々から信頼を寄せられていたのだが…。


信長と秀吉を比較し、冷めた目で秀吉を見ていた氏郷。
朝鮮出兵後、翳りが見え始めた豊臣政権に対し、
ついこぼしてしまったひとことが致命傷に。


・「織田秀信」
本能寺の変直後に秀吉に保護されて以降、政の道具とされた秀信の一生。

幼少時には秀吉に、秀吉の死後は西軍に利用される三法師さまの姿が気の毒な話。
途中ちょろりと出てきた今川氏真と秀信が“似たもの同士”というところ、
他人から指摘されないと本人は気づかないもんだよなぁ。


・「土田御前」
信長・信行兄弟の不仲を案じる二人の実母・土田御前。

これはあらすじをネタバレしない方が良いですね。
話の流れに「うわぁ…」てなります。構成としては好きなんですけど。
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2011-07-06

icon_45_b.gif『中年宮本武蔵』読了。


絶版なので図書館から借りました。

武蔵のオネエ口調が読めるのは多分ここだけ。

佐々木小次郎との決闘からすでに二十余年、五十三歳の武蔵は九州小倉藩に客分の身分で滞在していた。鬼才・鈴木輝一郎が新解釈で描く驚天道地・波乱万丈の痛快時代小説 (アマゾン・レビューより抜粋)。
鈴木 輝一郎(著)『中年宮本武蔵』

正直、真面目な人にはオススメしかねる、武蔵のキャラが崩壊してる滅茶苦茶な一冊。
とても真剣にふざけてる内容なんですが、
そのなかにやけにカッコイイ台詞や訓戒が登場するのがたまりません。
しかも今回は、地の文のツッコミ具合もいつもより激しい(笑)。
ちなみに主人公は武蔵の養子・伊織、しかし主役は武蔵。
読みどころは武蔵の奇矯なふるまいと言動、それを見た伊織の心の声ですね。

まずはあらすじを簡単に。
ときは寛永十一年(1636)、ところは九州小倉藩。
若くして藩主小笠原家の筆頭家老を勤める宮本伊織は、
養父・宮本武蔵の傍若無人な行動に頭を悩ませていた。
ある日、常の如く罪もない町人にイチャモンをつけていた武蔵に二人の男が接触する。
幕府の密命を帯びて小倉藩へとやってきた柳生十兵衛と荒木又右衛門であった。
十兵衛がもたらした密命を藩主・小笠原忠真より聞かされた武蔵父子は、
幕閣内の権力闘争に巻き込まれることになり…。

という内容です。

幕府の密命というのは、一言でいえば「朝鮮通信使の密殺」です。
これは朝鮮交易を担っていた対馬藩の国書偽造と家老の下克上運動…
いわゆる「柳川一件」を背景としたものですが、そのあたりは複雑なのでここでは割愛。
そして暗殺計画自体は、幕閣内の権力闘争から持ち上がったもので、
朝鮮通信使の暗殺を阻止せよ、という藩主のこらまた密命を受けて
武蔵父子が戦いに赴くことになるのです。
乱暴に言ってしまえば、
土井利勝&藤堂高次(戦上等派)VS 松平信綱&小笠原忠真(戦ダメ、絶対派)、
これら二大勢力の代理戦争として十兵衛&又右衛門と武蔵父子がぶつかり合う図式です。

ちなみに十兵衛は早々に戦線離脱して柳生の庄に引っ込んでしまうので、
もっぱら荒木又右衛門が率いる伊賀忍者(+江戸柳生)との戦いになります。
武蔵サイドには、助力者として対馬藩家臣の娘・りくが参戦。
敵方からの襲撃を、(色々な意味で)カタギ離れした戦術でもって鮮やかに迎撃する武蔵ご一行、素敵です。
正確には素敵を通り越してシュールです。

つーか、伊賀者の偽名センスなんとかしろ。
武蔵を騙るのに『新・宮本武蔵』『続・宮本武蔵』はまだいいとして、
『さらば戦漢宮本武蔵』『宮本武蔵・新たなる旅立ち』『宮本武蔵完結編』etc…
どんな映画のタイトルだよw

おっと、忘れちゃいけない重要キャラがもうひとり。
“前三位参議”という身分をフル活用して
武蔵たちをサポートしてくれるのは、家督を譲ってご隠居となった細川三斎さま。
身の危険を犯してまで武蔵を助けてくれるのですが、その真意は流石です。
「血が見たかったから」
忠興さんはいくつになっても忠興さんですね。

そんな血の気の多い三斎さまとすっかり意気投合する武蔵。
島原の乱を匂わせる終章では、武蔵が肥後熊本の細川家に遊びに行っちゃってます。
これは間違いなく
「あの細川三斎と二人で、手に手をとって当主細川越中忠利に迷惑をかけ」(P.312)てるよ!
きっと忠利と伊織、お互い難儀な父を持った者同士で話が合うに違いない。

なんだかキャラ話に流れてきたのでそろそろシメます。
今回も最初から最後まで、ダレることなく楽しませていただきました。
鈴木作品、ほんと最高です。
posted by まるひげ at 01:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-06-06

icon_45_b.gif『関ヶ原疾風伝(一)若き大老の決意!』読了。


坊ちゃん大変だなぁ…(しみじみ)。
秀家と三成の西軍における主導権争いがウスラ怖いです。
火花飛び散りまくり。


尾山 晴紀(著)『関ヶ原疾風伝(一)若き大老の決意!』

西軍の采配を振るうことの重大さに不安を抱きつつも頑張る秀家が主人公の、
関ヶ原決戦が発生してないif小説です。

まずはいつもの公式あらすじ。

慶長五年。大垣城で宇喜多秀家は苦悩していた。
このまま石田三成に任せていたら、西軍は必ず負ける―。
しかし、若い自分に諸将はついてくるのか…。
東軍の関ヶ原転進が噂されるなか、
腹心・明石全登の後押しを受けて、秀家は主導権を握る決断をする。
島津義弘の協力も得て軍議を主導し、岡山に布陣している東軍への夜襲を敢行。
敵将の池田輝政と松平忠吉を討ち取る。さらに伊勢の平定にも成功し、秀家の発言力は増していく。
石田三成との関係を気にしながらも、秀家は次に清洲中入りの策を提案する―。
一方、徳川家康は西軍の策に驚くも、慌てることなく壮大な計画を進めていた―。
(新書帯より引用)


…と、ここまでがだいたい中盤までの展開でした。
秀家と秀忠がぶつかる国府宮の戦いでの、
東西両軍の指令系統の差異とか面白いですね。

以下、ネタバレ注意の感想文です。


posted by まるひげ at 00:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-05-18

icon_45_b.gif『悲将 石田三成』読了。


積読本消化。
甘損さんとこのレビュー見たら★1になってた。
うん、わからなくもない。
それにしてもなにゆえこの表紙…。

石田三成は、闘わぬ男だったのか?最前線に立つよりも後方支援や官僚政治で活躍し、武断派から毛嫌いされたとする姿は真実なのか?否!三成とて熱き血潮流れる青年武将だった。義に篤く忠を重んじ、豊臣秀吉の恩顧に報いるため死をも厭わなかった熱き男。いざ、徳川家康を追い詰め、関ヶ原を血に染めよ!(文庫より抜粋)
加野 厚志(著)『悲将 石田三成』

あらすじまで熱いですなぁ。
この紹介文から判断すると、
従来の三成像を打ち破り、戦う熱苦しい武将という新しい三成像を描いてるんだろうな…
と想像するかと思うのですけれど。
特に新しいところは無かったです。
三成を取り巻く環境も周囲の人々も変わりなく。

内容は
三成の寺小姓時代から関ヶ原合戦での敗走までで、かなり駆け足な展開となってます。
語り手は三成と同郷の韋駄天・渡辺甚平。
六条河原に打ち捨てられた三成の首無し遺体を密かに取り戻した甚平が、
協力者の若き沢庵和尚に三成の生涯を語る…というもの。

なのですが。
読んでいくと、ところどころ間違った記述があるので注意が必要です。
鹿之介や吉川元春&元長父子の最期とか
蒲生郷舎が蒲生氏郷の次男となっていたり。
人名の間違いは如何なものかと…丹羽秀長?石田家重??
他にもありますが細かくなるので割愛。

途中、なんてことないんだけど笑えるシーンがチラホラあります。
秀吉に重用されまくりの三成が
「おまえ、放課後体育館の裏に来い(意訳)」って
清正・正則・孫六にボコられたり。
半兵衛の紹介で戦況の詳細を官兵衛のもとへ聞きに言ったら
戦況そっちのけで宗教勧誘されたり。
でもみったんも負けてはいませんよ。
勧誘されても動じることなく「うち仏教徒なんでサーセンw(意訳)」という切り替えしを発動。
っていうかそもそも、
かんべの第一声が「わが名はシモン」てとこからしておかしいと思うんだ…。

こんな感じでツッコミどころも満載なので、
ちょっと斜に構えた読者(?)向けの本でございました。
posted by まるひげ at 02:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-04-28

icon_45_b.gif『北条氏照』読了。


積読本消化。
当主の兄を支え、父祖代々の「義」を貫き通した氏照が主役です。
越後にヨメ…じゃない養子に行った三郎景虎を気遣う、弟想いな兄さんでもありました。

やー、それにしても。
本当に背負いすぎだ氏照…。

小田原北条氏百年の最期にふさわしい“有終の美”を飾った男・北条氏照。三代目・氏康の三男として生まれ、「武」と「智」を兼ね備えた氏照こそが、北条氏を関東制覇へと導いたといっても過言ではない。豊臣秀吉による小田原攻めでは、徹底抗戦を主張し、始祖・早雲の夢「王道楽土」を追い続けた義将の生涯を描く力作長編(文庫より抜粋)。
伊東 潤(著)『北条氏照 秀吉に挑んだ義将』

越相同盟の締結(1569年)の直後、信玄が小田原へ攻めてくるところから
秀吉による小田原征伐、そして氏照の死まで。
わりと最初の方から、辞世の歌へとつながる氏照の思想が語られているのですが、
終盤で逆にそのことを氏直から教えられる、という展開が良いですね。

ストーリーは氏照を中心として
当主・氏政(のち氏直)や上方に肩入れする弟・氏規の動きなどが
北条氏が秀吉に屈するまでの流れに沿って描かれています。
氏照が構想した八王子城が完成するところ(中盤)が一番幸せな時期で、
その他はとにかく苦労の連続です。
要所に挿入される氏照の横笛の音色が、なんとも物悲しい色を添えておりました。

始祖・早雲から続く治世の理念「万民のための領国統治」を貫くために生きた氏照。
目指したのは北条が天下を取ることではなく、
関東に独立した領民のための国をつくりあげること。
しかし、越後の謙信や甲斐の武田との攻防、
天下統一を狙う信長や秀吉の干渉などによりその理想を遂げられずにいます。
なにより家中が一枚岩ではないことが、北条家にとっての不幸でありまして…。

西国に対する強硬派と慎重派の対立は、どちらの主張も一理あるので難しいですね。
去年読んだ同作家さんの信雄&氏規W主役本にて
氏規の考えも記憶にあるので、なおさら複雑な心境になりました。

終盤の小田原開城以降は、頁こそ少ないのですが感動のクライマックス。
氏直との対峙シーンと、それに続く氏政&氏規との最後の語らいの場面です。
たたみかけるように描かれる悲哀シーンが遣り切れなくも綺麗なのです。
本来なら当主に課せられる荷を氏政とともに背負った氏照、
それらの重荷から解放された氏照の姿が清々しい。
澄み切った青空のもと、爽やかな風が吹くなかで
潔く死に臨む氏照の姿が目に浮かびます。
ラストの青年僧の話が一条の救いとなってます。

ひとつ贅沢を言えば、
氏直が氏照に告げた結論にたどり着くまでの氏直の考えを知りたかったなぁ、という感じです。
作中、氏直の心中はほとんど語られず、
「氏規の意見を受け入れた」という程度なので、ちょっと唐突な印象を受けました。
…まぁ、自分が勉強不足過ぎということが一番の問題なのですが…。
posted by まるひげ at 22:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-04-13

icon_45_b.gif『佐竹義重・義宣』読了。


秀吉の真意を読みすぎて時にうっとおしい官兵衛。
全然読まないけど純粋さゆえ万事オッケーな宇喜多の坊。
登場シーンゼロなのに、この表現がやけに頭ン中に残りました。
褒められてるんだか馬鹿にされてるんだか…。
素直に喜べないのは確かだな。

上杉謙信と戦友の契りを結んだ佐竹義重、石田三成の危急を救った息・義宣。混迷する戦国の関東で、伊達政宗を人取橋の戦いで追い散らし、関東の雄・北条氏とも一進一退の争いを繰り返した名族・佐竹氏の荒武者父子。台頭する織田信長・豊臣秀吉ら上方の勢力に対し、坂東の覇者としていかに抗したのか。関東での勢力争いから関ヶ原まで、その苛烈な生き様を描く!(文庫より引用)
志木沢 郁(著)『佐竹義重・義宣 伊達政宗と覇を競った関東の名族』

タイトルは義重と義宣。でも主人公は義重。
義宣も頑張ってはいるんですが…どうにも地味です。
時期的には、
北条が芦名氏、結城氏と結んで義重の同盟者・多賀谷政経を攻めるところから
関ヶ原の戦い後、佐竹一族が出羽へ転封されたところまで。

上方における近世的な主従関係に対し、
この時期の常陸では中世的な擬制一族関係が存在しており、
義重が一族内の調整に苦心するさまが印象的でした。

前半は義重が周辺豪族との小競り合いに明け暮れる日々です。
そうしてるうちにも
遠くじゃ信長とかいう活きのいいのが登場するは
伊達の若ぇのが落ち着きなく暴れまわるは
いつの間にか北条が出張ってくるは…
田舎は田舎で大変だっぺよ!
…な状況が続きます。
そして後半は佐竹が豊臣に臣従したことにより
煩雑となった政治上の駆け引きメインでやや早足で描かれます。
若くして家督を譲ってからも
隠居という立場で家中に存在感を示す義重がいました。
関ヶ原の描写が、なんとなくぼんやり終わってしまったのが残念です。
ま、史実でも挙止が明らかになってないからここは仕方ないか…。

脇役の東義久や太田資正がいい感じに絡んできてます。
特に資正(&政景)の行動については、
義重の考え方にも影響を与えています。
乱世における身の施し方とか、父と子のあるべき姿とかね。

以前読んだ志木沢さんの宗茂本より盛り上がりには欠けますが
その分落ち着いて読むことができました。
何と言っても義重のどっしり重厚な存在感よ…。


蛇足。
そういや、最近読んだ歴史小説、タイトルに人名があるものばっかりだなぁ。
ちなみに今はP●P文庫の氏照読んでます。
北条氏わからんのにいきなり氏照とかどうなの自分。
posted by まるひげ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-04-06

icon_45_b.gif『山中鹿之介』読了。


絶版なので図書館から借りました。
高橋さんの描かれる官兵衛はものすごく腹黒いんですが、
今回は黒くなかったです。非情なだけです。

あ、すいませんかんべじゃなくて鹿之介ね、鹿之介。
イケメンステータスが、この人の代名詞「七難八苦」のせいで霞んでる気がする…。

中国地方の名門尼子家は、主君晴久の急逝を境に天運傾き、毛利元就によって滅ぼされた。生き残った尼子近習衆は、家中随一の武者、山中鹿之介を中心に集結する。主家を再興し、何よりも失われた故国、出雲を取り戻すために。強大な毛利に幾度も戦を試み、秀吉とも渡りあい、風雲の戦国末期を駆けぬけた武者の、鮮烈な生涯(アマゾン・レビューより引用)。
高橋 直樹(著)『山中鹿之介』

尼子勝久が最初から最期まで明るいのが救いでもあり、いたたまれなくもあります。
そして勝久も家臣衆もみんな、鹿之介にべったり頼すぎ(苦笑)。

勝久を擁立した鹿之介らが富田城奪還を目指す第一次再興運動から
鹿之介の死(正確には+33年後)までのお話でした。
二部構成になっていて、
第一部は横道兵庫助や秋上伊織介らなど仲間に対する友情と信頼、
第二部は台頭してきた織田家のなかでの尼子衆の苦悩、
といったところが読みどころでしょう。
ちなみに、鹿之介がぼっとん便所から大脱出するところで第一部が終わります。
S属性の元春とドM属性の鹿之介はいい組み合わせだと思った捕虜シーンの数行。

主家の再興を悲願として鹿之介のもとに集まった尼子家遺臣たち。
いつ果たせるとも知れない夢を追っていくうち、
ある者は死に、またある者は毛利に降り、
一人またひとりと鹿之介のもとから去っていくのが寂しいです。

それでも諦めない鹿之介。
何があっても諦めない鹿之介。
そのド根性精神の源はどこから来るんだ…尊敬よりもいっそ恐怖ですよ。
いやほんと、地獄の底からでも凄い形相で這い上がってきそう。

ちなみに、
鹿之介の不屈の精神…というか生き方については、
世の中に喧伝されるような主家再興(=他人のため)ではなく
鹿之介の魂が欲した(=自分のため)からこそ出来上がったものだ、
とあとがきにあります。
個人的には、
他者のためとか自分のため、という考え自体が無かったんじゃないかと感じましたね。
いや、脳筋ということではなくてだな…。

のちの亀井茲矩である湯新十郎や
長男・新六(兄の遺児という設定)とのひとときは、
鹿之介の穏やかな部分が垣間見えるシーンでした。
ラストは涙です…。
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2011-04-02

icon_45_b.gif『小説「関ヶ原」小早川の策謀、家康の焦燥』読了。


積読本を消化。
関ヶ原モノを久しぶりに読んだ気がする。

「関ヶ原」を仕掛けたのは小早川秀秋だった!豊臣家を守るため、関白の座を狙う秀秋。豊臣を滅ぼすことなくじっくりと天下を狙いたい家康。慶長五年、秀秋はひとつの策を放つ。それは、宇喜多秀家を、石田三成を、大谷吉継を、そして徳川家康を巻き込んでいく。それぞれの野心や思惑が交錯しながらやがて事態は秀秋の思惑から大きく外れて…。新視点で描く「天下分け目の合戦」 (文庫より引用)。
坂上 天陽(著)『小説「関ヶ原」小早川の策謀、家康の焦燥』

珍しいことに金吾が主役です。それも暗愚じゃない金吾。
「豊臣家を守る」という信念は一致しているのに、
それを実現するための過程がどうしても折り合わなかった秀秋と秀家。
己ひとりの手で豊臣家を守ろうとし
東西両軍を翻弄した秀秋だったが、
結局は家康の手によって裏切者の烙印を押されてしまう…という残念なお話でした。
ということで、
「関ヶ原」を仕掛けたのは小早川秀秋だった! とあらすじにありますが、
仕掛けたのは秀秋でも、仕上げたのは家康 と続くのではないかと。

もとから東軍のつもりで、戦の時機を見て参戦した秀秋。
ところが、東軍諸将からは脇坂勢と同様に寝返ったとみなされたことを知った後は
真っ白に燃え尽きてしまいます。
鬱END、とまでいかなくてもちょっとやるせない読了感でした。

タイトルが秀秋じゃなくて小早川になってるのはちょっと考えるとこですな。
ここの秀秋は、作中で「己と徳川の二頭体制」を狙ってるんです。
これは毛利家中での両川体制を踏まえての構想でしょうから、
養父・隆景の教えが生きてるってことなのかしら。
でもそれほど隆景出てくるわけじゃないのが弱いなぁ…。

この作品、人物の思惑が従来と異なっているのが特色です。
秀秋はあくまでも豊臣家を守るために関白の座を狙い、
家康は豊臣を形骸化させ、実権だけを手に入れようとしてるし
家康から遠ざけられつつある忠勝は、出来レースのような戦を嫌いすっかりやる気ゼロに。
三成は佐和山蟄居を馬鹿正直に守ってすっかり隠棲しちゃってるし
そんな三成を戦へ引っ張り出した刑部(一人称「俺」)は、
豊臣家のためじゃなく死に場所を求めただけだったり。
あ、あと正則が政治中枢に憧れていたり(えっ)

読みどころは、関ヶ原前夜、刑部が秀秋を非難するシーン。
秀秋がこれから西軍を裏切ることではなく
「秀家ほど純真な人を騙すなんて許せない」というところです。
刑部、刑部、怒るとこそこやない…。
天然記念物のように言われてる宇喜多の坊もどうかと思うが。
posted by まるひげ at 01:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-03-19

icon_45_b.gif『明智左馬助の恋』読了。


なんかもうね、器用貧乏の光秀が報われなさすぎて涙出ちゃう。
人間、真面目すぎるのも考えものだよね!
そんな主君を補佐しまくる有能すぎる家臣・明智左馬助秀満(光春?)が主人公。

歴史の大きなうねりに飲み込まれながらも、ある女性への思いを貫いた一途な男、明智左馬助。義父・光秀の腹心でもある彼の純愛を主題に「本能寺の変」のもうひとつの意味を浮き彫りにする。「本能寺」三部作完結! (アマゾン・レビューより引用)。
加藤 廣(著)『明智左馬助の恋』

「本能寺」三部作のなかで一番静かな作品。
ストーリーは荒木村重の謀反から左馬助の死までで、
この期間の明智光秀の動きを左馬助の視点から描いたものです。

レビューで見かける「新鮮味がない」という意見は、確かに頷けるものがありますね。
前2作で本能寺の変に関する大きな謎はほとんど明かされてしまっているため、
この作品は、今まで描かれなかった部分の補完、という印象を受けました。
まぁでも、新たな解釈も出ています。
荒木村重の謀反の理由とか
本能寺の変前後の朝廷の動きとか
左馬助の湖水渡りの真相とか。
他には…
本能寺の抜け穴や信長の遺体に関する左馬助の行動も明らかになってます。
…う〜ん、やっぱり穴埋め的(苦笑)。

ラストが切ない…というかやり切れない感じ。
この作品は左馬助と光秀の長女・綸(=さと)との恋物語でもあるのですが、
題名になるほどガッツリした恋物語ではないような?
それにしても加藤作品のヒロインてどれも同じようなイメージだなぁ。
さらに魔王のこきおろしっぷりがひどい。

気になるところは、光秀の生死が謎のまま、という点です。
秀吉のもとへ届けられた首は影武者のものになってました。

ということで、本能寺三部作は自分にしてはトントン拍子に読み終えられました。
まだ外伝があるので、そのうち手を出してみようと思ってます。
個人的には、半兵衛とか家康が主役の作品を読んでみたいなぁ…。
posted by まるひげ at 22:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-03-14

icon_45_b.gif『ガラシャ』読了。


忠興のDVっぷりにうへぇうへぁ言いながら読み進んでったんですが、
最後章にビックリした。
すごいんだ、藤孝の光秀に対する執着がさ…。
こんなユーサイ初めて読んだわー。

嫁いだ後にはじめての恋を知った玉子はガラシャと名を改め、異国の神に祈り続ける。彼女に献身的な愛を捧げる侍女・糸もまた、報われぬ愛に身をこがし…戦国に散った細川ガラシャとその父・明智光秀、夫である細川忠興、舅の幽斎―想えば想うほどすれ違う恋人たちを描く渾身の恋愛長編(アマゾン・レビューより引用)。
宮木 あや子(著)『ガラシャ』

この想いを伝えてしまえばすべてが終わってしまう、でも想うのを止めることはできない、
という悲恋で秘恋な恋愛小説でした。
タイトルこそ主役は玉子に見えますが、彼女に深いつながりのある人たちの物語でもあります。
ラストが綺麗に終わってて余韻が良いですな。

玉子と侍女の「糸」が瓜二つ、という設定が出てきたところで
なんとなくその後のからくりが予想できるのが残念といえば残念。
でもこの作品の大事なところはそこではなく。
登場人物の複雑な人間関係と
それぞれの内面描写が読みどころでしょう。
よろしいか、これから書き出しますぞ?

忠興が玉子への愛に溺れているのはいつものことです。
その愛の内訳がなんとも複雑なのですが、そこはまぁ読んでいただくとして。
キリシタンの糸は、玉子に対して特別な感情を向けているものの、
やがて忠興の弟・興元に対して恋心を抱くようになります。
その興元は妻を迎えていながらも密かに玉子を想い続け、
愛の渦中の玉子は幽閉先の味土野で出会った男・秀治を忘れられずにいます。
そうしてるうちに忠興の側室問題で「ハァ…(溜息)」てなったところ、
トドメの藤孝 → → → 光秀に頭パーンなる。

これから読まれる方は、これらの人間関係にやきもきしましょう。

父の謀反、幽閉、流産、初恋、夫からの愛と暴力、
そんな状況のなか、異国の神に救いを求め祈りを捧げる玉子。
幽閉を解かれ、細川の家に戻ってからは
信仰を心のよりどころとし、
目の前の現実に意識を向けずに過ごすようになっていきます。
精神のバランスを欠いたような危うい様子を見せたかと思えば
忠興を支配するような鬼気迫る雰囲気を見せたりと
中盤以降の玉子は、ちょっと捉えどころがない感じでした。

個人的には、糸と忠興の会話シーンが好きだなぁ。
忠興さんに臆することなく意見できる侍女ってすごいよ。
posted by まるひげ at 23:45 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-03-02

icon_45_b.gif『秀吉の枷(下)』読了。


あー…鬱い
まことに鬱でございます。
まぁ、下巻で起こる出来事が
利休粛清、朝鮮出兵、秀次切腹…と暗いものばっかりだから無理もない。

それにしても子作りと下ネタが多いですぞ(言葉を選べよ)。

比類なき軍事・政治手腕と財力を武器に天下を平定。官位も最高位に上りつめながら、独裁を強めた晩年は横暴で奇矯なふるまいへ。ついに人心は離れていく―そこにあるのは覇者の驕りか、後継不在への焦りか、それとも…桜花のように儚き栄華。豊臣秀吉の最期、物語は衝撃の結末を迎える(アマゾン・レビューより引用)。
加藤 廣(著)『秀吉の枷(下)』

下巻は秀吉の人生の急速落下のターンです。ただただ落ちる。
老いと病により心身ともに弱っていく秀吉。
傲慢、焦燥、猜疑、嫉妬…という負の感情に凝り固まり、
自縄自縛な精神状態に陥ってしまうその姿は
悲哀を通り越して悲惨なただの老人です。
天下人自らが側室の受胎期を計算してひとり懊悩するシーンは滑稽ですらあります。

内容は
伊賀者を使って本能寺の変の真相を知った家康との戦い、
世継ぎが出来ないことに対する秀吉の焦りがメインです。
淀君が身籠った後は、それが不義の子と知りながらも
豊臣家安泰のためには実子とせざるを得なかった秀吉の苦しみが続きます。

さらに、この作品で提示される謎「淀君の密通疑惑」と「秀次切腹」の背景は、
秀吉の謀臣・前野将右衛門が謎解きをしています。
以下、ネタバレ反転。

淀君の不義の相手は名古屋山三郎とされ、
そのことを秀次に知られた淀君が、秀次に刺客を放ちます。
秀次が起こした数々の凶行は、その刺客によって盛られた鉛毒による精神障害。
秀次を狂人に仕立てあげて秀吉に殺させることで、
我が身と秀頼の安全を謀った淀君。
一方、秀吉は、秀次の凶行を唐瘡によるものと勘違いしてしまいます。
その後の一族皆殺しも、伝染を恐れての処置ということに。

↑ ここまで。

秀吉の裏の仕事を一手に任せられたものの、
天下統一後は遠ざけられた将右衛門。
「恥の多い人生を送ってきました」と後悔しきりのその最期は
苦渋に満ちていながらも潔いものでした。
ちょっと意外だったのが、
「信長公記」についての描写がほとんどないという点ですかね。
牛一の名前すら極終盤に1回出てたっきり。

読み終わったところで想像してみたタイトルの「枷」の意味。
自らを藤原氏の裔と信じ、
御帝を中心とした世を実現するため謀略を重ねた秀吉の、
決して明るみに出てはいけない“負い目”とか“罪の意識”みたいなものなのかと。

…こんな感じでした。
読んでいて楽しいものではないはずなのに
何故だか続きが気になる不思議なシリーズだなぁ。
この調子で『明智左馬助の恋』に取り掛かりたいと思います。
実は、以前借りて挫折した記憶がある…(汗)。再チャレンジです、しゃまのすけ。
posted by まるひげ at 01:09 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-03-01

icon_45_b.gif『秀吉の枷(上)』読了。


『信長の棺』を読んだ後、2作目を読もうかどうしようか悩んでいたところ
Excaliburさんのblogでオススメを頂いたので、ボリュームに負けじと読んでみました。

「本能寺の変」の後、遠く離れた地から電光石火で京に戻り、謀反人・明智光秀の首を取る。この「中国大返し」に太閤伝説最大の謎が潜む。信長の跡目争いに羽柴秀吉を突き動かした、ある使命とは。そして本能寺に隠された秘密とは。史実の行間をスリリングに読み解く本格歴史ミステリー(アマゾン・レビューより引用)。
加藤 廣(著)『秀吉の枷(上)』

いわずもがなの『信長の棺』を、主人公を秀吉にして再構成したお話です。
…といっても、前作のように時間が遡ったりしておらず、
三木城の戦いから秀吉の死までが時系列に沿って描かれてるので
こちらの方が読みやすいかもしれません。
と言いつつも、
前作では牛一側の視点で述べられていたアレやコレやの事件を
秀吉サイドから描写しているので、
観点が変わっている部分を見つけるのも楽しいものです。

ちなみに上巻は、半兵衛の死から本能寺の変を経て秀吉が天下を取り、
大坂城を新たに築くところまで。

物語の序盤、死の床にありながら
「秀吉は信長よりも大きな器をもっているのだから、
早急に信長を捨てるか、あるいは信長を踏み台として利用するべき」
ということばを秀吉に囁いた半兵衛。
この半兵衛の遺言が、秀吉を呪縛しているような雰囲気が漂います。

当初は「そんな大それたことを…」と恐れていた秀吉ですが、
その後の信長の行動を観察していくうちに
徐々に主君を冷めた侮蔑の目で見るようになります。
さらに、半兵衛のもうひとつの遺言であった
諜報の重要さを認識した秀吉は
敵方だけではなく、味方である織田家中にも忍びの者を放ち、
少しずつ、だが確実に自らの野望のため動き出します。

ということで、上巻は秀吉が天下を取るまでのサクセスストーリー…
のはずなのですが、
小心者で野心家の内面がこれでもかと暴かれます。
人たらしな発言や豪気な行動も多々あるんですが、
それ以上に印象づけられるのが秀吉の暗黒面かと。
ここまでじとっとじめっとした内容であれば、
普通なら一人ぐらいサワヤカ担当の人物が登場するもんですが…どこにもおらぬ。
清涼剤キャラが欲しいところです。
清玉上人は…サワヤカ系とは違うしなぁ。

秀吉は半兵衛の死後も、ことある毎に半兵衛を思い出し偲んでます。
一方、もうひとりの軍師・官兵衛とはちょっと距離を置いてます。
心の裡を見せない官兵衛に
秀吉は一抹の不安と嫌悪を抱き、警戒している感じです。
裏の仕事を任せた前野将右衛門に対しては
秀吉が唯一弱みを吐くことができています。
あと、登場人物といえば
「ミソサザイ、ミソサザイ…」とブツクサ言いながら
実子ではなかったという設定の嫡男・信康を始末した家康が不気味。
…下巻に続きます。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-02-18

icon_45_b.gif『くるすの残光 天草忍法伝』読了。


…あれ? これって続きモノなんですか!?

触れるだけで命を奪うことができたり
宙にどこでも腕を出現させたり
人形に命を与え、式神のように使役できたり
雷撃を打ったりできたり…
予想以上に伝奇なバトルをしてました。

雷蔵の初登場シーンが非常に忍者忍者していてテンション上がりますな。
でもその後が残念なことに…。

寛永十九年(一六四二)年の春、天下泰平のお江戸は活気あふれる下町の貧乏長屋に、一人の少年が現われた。寅太郎という名の少年はひっそりと暮らし始めるが、彼は大きな使命を抱えた島原の乱の生き残りだった。それは、主・天草四郎の復活と理想の国造りを成し遂げること。そのためには、徳川幕府を裏で操る怪僧・天海が持ち去った七つの“聖遺物”を奪い返さなければならない。異能の忍びたちの秘術を尽した死闘の行方は?不思議な力を放つ聖遺物を手にする者は?(単行本帯より抜粋)
仁木 英之(著)『くるすの残光 天草忍法伝』

島原の乱の生き残りが四郎を守っていた“修道騎士”= 異能の忍び、ということで
この人たち5名がメインキャラで活躍します。
普段は江戸の長屋で正体を隠して暮らしている彼らは
救世主・天草四郎の復活を宿願とし、さらには
「父と子と精霊の名において成敗致す!」という世直しもやらかしてます。

四郎の復活と救世のために必要なものが四郎の“聖遺物”であり、
幕府に奪われたこれらの秘宝を取り返すことが重要ミッションとなります。
聖遺物は7つあって、
それらがキリスト教の「7つの大罪」と対応しているという、
聖遺物と7つの大罪を関連させるアイデアが面白いですね。

ちなみにこの聖遺物は、キリシタンではない者にも強力な力を与える、という設定なので
敵の手に渡ったことによって、
本来の持ち主であるべきキリシタンの主人公たちを苦しめることにもなっているのが
やきもきな感じでよろしいです。

敵役としては
キリシタンの残党狩りを担当する下総高岡城主・井上政重と幕府の精鋭“閻羅衆”、
江戸に集まる膨大な量の物資を捌きながら、密かに公金を横領している蔵奉行・大館義之と
その配下である山と岩の力を借りて戦う忍び衆“南部隠”。

物語が進むにつれ、これらの敵方をじりじり追い詰めていく一方で、
主人公サイドも正体がバレて危機的状況になるという
ハラハラな展開で読ませてくれます。
一方、ノンバトルの長屋パートでは、
主人公格の少年・寅太郎と、寅太郎を養子とした庄吉&たま夫婦の交流が
江戸の人情モノっぽくて心温まりました。

ということで、ささーっと読めて面白かったのですが、
読了感がシリーズものの第1巻という印象なんですよね。
今後は寅太郎たちがひとつずつ聖遺物を奪還していく展開になるのは明白。
でも、これが全1巻ってことになると、こんな丸投げな話もないわー。
「読者のご想像にお任せします」というか
「俺たちの戦いはこれからだ」というか。
正直、この1冊だけだとどうにも評価しづらいです。
ラスボスであろう天海も最初にちょろっとだけ登場したっきりだし
聖遺物もひとつ回収しただけだし。
…続編に期待したいところですね。


以下、読んだ方しかわからないメモ。
読み落としがあるのかもしれませんが、いちと荘介の役割がわかりません。
序章で四郎が寅太郎に語っていた四郎の“肉”を授かった者のなかで
四郎の眼を持つ者=いち
四郎の足を持つ者=荘介
で良いのかな…? 逆?
posted by まるひげ at 00:07 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-02-10

icon_45_b.gif『立花宗茂』読了。


積読本を消化。
積んでるうちにいつの間にか絶版に…。
宗茂が他人に対して誠実な人で、ほんとこれは惚れる。

実父・高橋紹運、養父・立花道雪と名将二人の薫陶を受けた立花宗茂は、大友家臣として武名を轟かせ、九州征伐後は筑後柳川城主として独立、秀吉に西国無双、九州の逸物と激賞された。一度も家康に靡かなかった故に、関ヶ原後は長い冷遇期間を忍ぶこととなるも、二代将軍・秀忠による復権後は、大坂の陣、島原の乱と武勲を立て、三代・家光からも絶大な信頼を得るに至った。義を貫き通した最後の戦国武将、波乱の生涯(文庫より抜粋)。
志木沢 郁(著)『立花宗茂』

読みやすく面白かったです。
以前読んだデビュー作とは作風がちょっと変わってるような。
…まぁ、デビュー作は伝奇モノだったので安易に比較は出来ませんがな。

宗茂の初陣からその死までを描いた小説です。
戦上手なだけではなく、無骨ながらも実直で人心の機微に通じた、
とにかく宗茂の魅力が満載な1冊でした。
登場する多くの武将が宗茂の人柄に惹かれていくのですが、
注目すべきは
宗茂が細川忠興や黒田長政、徳川秀忠といった
偉大すぎる父を持った二代目たちのよき理解者ともなっているところでしょうか。
特に忠興さんとは取っ組み合いの喧嘩するほど仲が良いので
読んでて非常に楽しかったです。
個人的には義弘と一緒の場面がなんつーか、油断できない感じで好き。
(ちょっとしか出てこないけど…)

さらにこの作品、
「正室であるギン千代との関係が繊細に描かれている」との巷の高評価、確かにその通りでした。
史実では夫婦仲が悪かったとされていますが、
ここでは仲が悪いわけではなく、道雪の死後、別居したことも
お互いを理解し、尊重したが故の結果となってました。
うーん、でもギン千代の攻撃(=口撃)に辛抱強く付き合う宗茂の姿は
ちょっと気の毒だったりしないわけでもない…(苦笑)。

序盤では、実父・高橋紹運と養父・立花道雪が活躍するシーンもあります。
伝令出さなくても示し合わせたように連携するこの2人…!
終盤では知恵伊豆さんもちょろりと登場してます。

蛇足。
作者さま、最近はもっぱらM文庫の武将伝記モノを手がけてらっしゃるようですねー…って。
3月に新刊が出るようです。


志木沢 郁(著)『佐竹義重・義宣』

しかも佐竹父子!
これは買わねば…!!
posted by まるひげ at 00:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-02-07

icon_45_b.gif『細川忠興戦記 本能寺将星録(下)』読了。


忠興さんのSッ気があちこちで炸裂。
耳元であんなこと囁くのは反則です。


智本 光隆(著)『細川忠興戦記 本能寺将星録(下)』

下巻は秀吉の大返しからスタート。
まずは公式あらすじを載せておきます。

細川忠興は、石山で織田信孝に攻められていた織田信澄を救出。
千宗易の助力もあり堺を抑えることに成功する。
信澄は忠興から、暗殺の首謀者が秀吉であることを確認し、
ある策を行うことを提案する―。
一方、秀吉の軍はすでに姫路まで迫っていた。
さらに、細川家に保護されている三法師を誘拐しようとするが、これは失敗。
兵力で圧倒している羽柴軍は、ついに直接雌雄を決すべく東進。
明智軍もこれに呼応し、山崎の地で決戦の火蓋が切られようとしていた―!
(新書帯より引用)


以下、ネタバレ注意の感想文です。
やっぱり長くてすいません。



posted by まるひげ at 00:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-02-02

icon_45_b.gif『天主信長 我こそ天下なり』読了。


『信長の棺』での「本能寺の変」の真相よりも驚天動地な解釈がされてました。
創作っぽいというか伝奇寄りというか…
ブッ飛んでました。特にラスト。
あと、半兵衛の存在が大きい。
半兵衛スキーさんにはかなりオススメです。

信長は何故、安土に豪壮な城を築かなければならなかったのか。秀吉の参謀、竹中半兵衛と黒田官兵衛が、壮大なる野望の真相に迫る。430年の時を超える「本能寺の変」の新説―歴史小説ファン必読の書!(単行本帯より引用)。
上田 秀人(著)『天主信長 我こそ天下なり』

権威と宗教に対する信長の思考が、確かに合理的で納得させられますね。
といっても、その思考から導き出された仕置きが強行すぎるのはいつものこと。

天下人に一番近い武将であった信長の孤独、
周りはすべて敵ばかり、身内にさえも裏切られる状況のなかで
信長の唯一の理解者である半兵衛。
半兵衛と信長の信頼関係がふたりの問答を通して描かれており、
ここは読んでいて興味深かったです。
お互いを気にかけてるんですが、
特に、半兵衛の信長の理解度が半端ないです。

その半兵衛の死後、信長の箍が外れ、
天下への野望が狂気を帯びつつ「本能寺の変」へと繋がるところは
物語としての面白さが光る展開ですね。
「信長が光秀に討たれる」という構図を信長自身が考案するものの、
その後にどんでん返しが待ち受けてございました。

前半のキーパーソンが半兵衛なら、後半は官兵衛です。
質である嫡男・松寿丸を殺そうとした信長と、その命に従った秀吉。
このことは官兵衛の心に暗く深い影を刻むこととなります。
一方、
殺されるはずであった松寿丸を匿ってくれた半兵衛に対しては恩を感じるのですが…。
半兵衛の遺言に記されていた信長と秀吉を案じた文言、
それが官兵衛が密かに心に決めた復讐の糸口となってしまったのは皮肉なもんです。
でも、官兵衛が再登場するあたりから、後の展開が読めるっちゃー読めるような…。
・・・・・
なんだか微妙にネタバレしかけてきたのでここまでにしときます(苦笑)。

ちなみに、
秀吉があまりパッとしない描かれ方で、
光秀はいつもの通り貧乏くじ引いてました。
posted by まるひげ at 12:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-29

icon_45_b.gif『信長と信忠』読了。


今年の目標としては( ← もうすぐ2月だぞ)
今まで敢えて手を出さないでいた信長まわりの本を読んでみようと思います。
つーことで、図書館から借りた本を読了。

これ読んだら、家族内で性格が真逆なメンバーがいるのは
社会心理学的に「テリトリー内で調和を保つため」だっていう話を思い出しました。
そう考えると、苛烈な性格の信長と冷静で温厚な信忠、
というここでの織田父子はさぞかし振れ幅デカいだろうなぁ…。

誰もが恐れた戦国の“覇王”信長と大軍統率能力に優れ、人望、武功とも万人が認める天下人の後継者・信忠。知られざる父子の葛藤(アマゾン・レビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『信長と信忠』

テーマは「父子の情」です。父が主観の。
己よりも優秀で将才のある信忠に戸惑い、苛立ち、嫉妬する
父・信長の姿が人間味あって面白い。

自分が生きるのに精一杯で、他の者を気にかける余裕がない信長。
父親としての情も欠落してそう…と思いがちってなものです。
当初、信長にとって子は「利用価値があるか否か」、それだけの存在でした。
しかし、時が過ぎ、天下統一に着々と近づいていくなかで、
子に対する接し方が変わっていきます。
少しずつですが徐々に寛容になっていくのです。
ラストの信長と信忠の2人だけの対話は、あれこそ「父と子の対決」の場面です。
そこで子が父を超えたことを知り、「悔しいけど嬉しい」と感じる信長。
これは普通の父親の感情ですよね。

ちなみに、信忠の心中が語られることはほとんどありません。
なので、
最後の場面で信長に対し「凡俗になった」ときっぱり言い放つ信忠の心境はどんなものか、
ちょっと想像できないですね…。

他方、織田父子とはまた異なる描かれ方をされているのが家康と信康父子。
…まぁ、こちらは子が父を全然信じていないので
一方的に家康が情を引きずっている間柄なのですがね…信康の死後も。
さらに父子といえば、
信秀と信長、信玄と勝頼、顕如と教如、可成と蘭丸あたりが
ちょっとだけ登場してます。

脇役では、濃姫が素敵な奥方様でした。
信長が家督を相続される前から輿入れしているので、
非常によく信長の性格や考え方を見抜いております。
信長の愚痴を聞き、さらりと受け答える、信長の良き理解者。
濃姫と信長の会話が時々間が抜けていてちょっと笑ってしまいました。

あともうひとり。
光秀も珍しい設定です。
特技はイカサマさいころ&決戦では大博打を打つ、という893なみっちゃんカッコいい。
posted by まるひげ at 00:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-27

icon_45_b.gif『信長の棺(下)』読了。


読了感が
「寂しいような哀しいような、でも爽やかでちょっと虚しい」そんな不思議な感覚でした。

すべての謎が解け、
最後の最後で、牛一が「権力者の嘘まじりの手柄話を書くのは、もうこりごりだ」(p.300)
と独白していますが、
それでも、この人の信長崇拝はほとんど変わってないよ!(苦笑)
そして文庫版では解説を先に読んではいけません。
ネタバレしてます。

なぜ信長の遺骸はいつまでたっても見つからないのか。光秀はなぜ戦勝祈願の連歌を詠んだのか。秀吉の「中国大返し」はなぜ可能だったのか。丹波を訪れた太田牛一は、謎の美女、多志に導かれ阿弥陀寺、本能寺、丹波を結ぶ“闇物語”のとば口へと足を踏み入れる。驚天動地の歴史ミステリーいよいよクライマックスへ(文庫より引用)。
加藤 廣(著)『信長の棺(下)』

この作品、「本能寺の変の真相は○○だ!」
という諸説を組み合わせて物語が構成されてるので、
読者がそれをどのくらい知っているかで面白みの度合いが変わりますね。
レビューで評価割れしてるのもそれが原因のひとつだと思われます。

下巻は、
醍醐の花見の後、牛一の記した『信長公記』を納本するところから始まり、
ラストでは、秀吉の死後、いよいよすべての謎が解かれます。
最終章は怒涛の謎解きターンです。

冒頭から謎となっていた「5つの箱」の中身には拍子抜け。
実は中身そのものではなく、それの用途がキーポイントだったわけですが。
そう言われてもあんまり意外性がないよ…。

信長の遺骸を引き取ったという記録もある
阿弥陀寺の開祖・清玉上人とその弟子・清如が重要人物でした。
この清玉上人の正体が実は…!
となってますが、まぁそれはオマケ設定といった感じ。

以下、ネタバレなので反転。

最大の謎となっている信長の遺骸の行方。
これは阿弥陀寺の無縁墓地に葬られたものの、
月日が経ってどこにあるか、もはやわからない状況になってます。
本能寺の変直後、明智軍の執拗な探索の手から信長の遺骸を守ったのが、
そのうえに幾重にも積み重なった名も無き人々の遺体だというのは
想像するとなかなかに壮絶。

さらに、
秀吉はただの農民の出ではなく、もとは丹波の“山の民”の出身であり、
そのネットワークを利用して天下人にのし上がったとされています。
そんな秀吉の手の者によってつくられたのが
本能寺の地下の抜け穴。
忍びからの報告によって光秀の行動を把握した秀吉は、
本能寺地下の抜け穴を塞がせ、信長を窒息死させたとされてます。
何故、秀吉がそんな行動をとったのかについては
牛一が「それまで蔑まれてきた復讐心ゆえ」としているのみです。


↑ ここまで。

個人的には、期待したほど…というか
話題になるほど面白いというものではなかったのですが、
とりあえず次作の『秀吉の枷』も読んでみようと思います。
信長サイドから読んだだけだと
見落としている点や隠されている点もあるだろうし。
そういや秀吉の信長に対する感情が描かれていなかったので、そこも気になる。
秀吉…なんだか鬱屈してそうだなぁ。
posted by まるひげ at 23:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-23

icon_45_b.gif『信長の棺(上)』読了。


太田牛一の信長崇拝っぷりにちょっと引く。
地の文まで「信長さま」表記という徹底ぶりです。
信長フィルターがかかってるためとはいえ、
「『信長公記』に、この逸話は載せないでおこう…後世での信長様の評価が下がるから!」
とか言って、
信長のマイナスイメージになるエピソードを切り捨てるのはどうなの。
そのうち「信長様は厠なんか行かない」とか言い出しそう。いやだこわい。

「惟任(光秀)ご謀反」―。安土城で知らせを聞いた太田牛一は、生前の信長の密命に従うべく、5つの木箱とともに西へ向かう。が、佐久間軍に捕えられ能登の小屋に幽閉されてしまう。10カ月後、天下統一を目前に控えた秀吉から伝記執筆を条件に解放された牛一は、天満に小さな隠居所を構え、信長暗殺の謎を追うのだった(文庫より引用)。
加藤 廣(著)『信長の棺(上)』

「驚天動地の歴史ミステリー」と銘打ってあるので
どんだけビックリな内容かと思っていたのですが…そんなに驚くようなものでもないような?
語り口も落ち着いてます。

上巻は、
信長の死を受け、牛一が安土城を脱出するところから始まり、
ラストは秀吉の醍醐の花見に牛一が招かれるところまで。
秀吉の天下になり、いよいよ牛一が本能寺の変の真相を探り出す
上巻の後半部分から本格的に面白くなってきますね。

『信長公記』に取り組む牛一の熱意がものすごいです。
著述に必要な資料を集めたり
事件の関係者から聞き込みをしたり
資料や聞き込みで知り得た場所には実際に地取りをしたり…
とても70過ぎた爺さまとは思えないほど精力的な執筆家です。
いろんな意味で現役。
…えぇ、そういうシーンもあります。いい歳してほんとに元気。

牛一が信長の側で書き続けてきた日記をもとに、
敬愛する信長の生涯を記すことを心に決め、ひそかに著述を進めている折、
秀吉から信長の伝記を執筆してほしいと命じられることになります。

話が進むにつれ、謎も増えていきます。
本能寺の変の背景はもちろんのこと、
信長の前半生を語るうえで不明な部分である
桶狭間で何故信長は義元を急襲することに成功したのか?
それについて知っているはずの秀吉は何故口を噤むのか?

そして最初から提示されている
信長の遺骸はどこへ消えたのか?
生前の信長が牛一に預けた5つの箱の中身は何なのか?
という大問題もまだ明かされないまま、下巻に続きます。

全体を通して面白く読めました。
でも、納得いかない部分もあります。
まずひとつ。
水尾の茶屋で牛一が視た白昼夢、唐突過ぎます。
あれは…強引でしょう(苦笑)。
しかもそれが光秀の裏切りの真相というのは、ちょっと…。

さらにもうひとつ。
「奇跡には必ず裏があるもの。歴史とは勝者の作り話に過ぎない」(p.188)
と牛一自らが独りごちているのですが、
その割には、こと信長の起こした奇跡について
牛一の知らない信長の負の部分を知った時の拒否反応が激しいのですよ。
勝者の作り話である歴史を
自分もまた作り出そうとしていることに、気づいているとは思うのですけれど…。
posted by まるひげ at 00:55 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-18

icon_45_b.gif『密室大坂城』読了。


ひとつの時代の終焉を舞台にした物語というのは
やっぱり読んでると寂しいですね…。

それにしても、これは素晴らしい秀頼さまですぞ。
人としての優しさと強さを兼ね備えた秀頼の姿がとても魅力的。
…でも体重が 約95kg ちゅーのは…ちょっと太いよね(言わんでもえぇ、そんなこと)。
あと地味にポイント高いのが老犬斎と片桐且元のお二方。

闇を裂く一本の朱柄の矢。燃えあがる天守閣で<我ハ少シマドロミテ、其後切腹スベシ>と瞑目して動かぬ豊臣秀頼。茫然自失の淀殿。密室と化した大阪城で、壮絶な人間ドラマが展開されていた。包囲する徳川軍二十万の計略と落城までの一部始終をスリリングに描き、秀頼、淀殿の隠された悲劇に迫る傑作時代小説(文庫より引用)。
安部 龍太郎(著)『密室大坂城』

画像には「最新刊」とありますが、絶版です(苦笑)。
あらすじに「壮絶な人間ドラマ」とあるとおり、確かに人間ドラマでした。壮絶でした。一部ドロドロ。

序章と終章が大坂城落城時で
本編は大坂冬の陣の半年前〜冬の陣の終盤まで。
なので、実際は本編と終章に約半年分の開きがあるのですが、
気づかず読んでしまいそうです(汗)。
巻末にある島内景二氏の解説も一読の価値ありですね。

ちなみにこの作品、
大坂城内の内通者は誰か、
又兵衛だけが知っていたある登場人物の正体は誰か、
淀殿の犯した罪とは何か、
などミステリっぽい要素もあります。

以下にあらすじを補足。

太閤の遺児・豊臣秀頼は、
自分が本当に秀吉の子であるのかを不安に思いながら、
秀吉亡き後、己を守り続けてきた母・淀のわがままに耐え、
大坂城内に潜む徳川の間者、信用できない家臣に頭を悩ませる日々を送っていた。
己の意思を曲げない強硬な淀に反発しながらも、
豊臣家のあり方を懸命に探る秀頼だったが、ついに合戦が始まってしまい―。

…という展開です。

秀頼が「天下人の子」という名のもとに生きるのではなく、
一個人として自らの力のみで生きることに目覚めていく過程がメインです。
そんな悩める主人公・秀頼を教え導き、支えるのが
守役の速水甲斐守であり、
後藤又兵衛を筆頭とする牢人たちであり、
大坂城に逗留し、秀頼と門答を重ねる謎の僧・宗夢であります。
特に秀頼の心の師となる宗夢の正体はちょっと驚く人でした。

大坂城内での、息の詰まるような重苦しい状況のなかで
秀頼が千姫と過ごすひとときや又兵衛、宗夢との語らいなどといった場面が
一種の清涼剤となってますね。

他方、過去に犯した過ちに怯え、
己を取り巻く現状を恐れ、ヒステリーを起こす淀殿。
その側には彼女の命に従うばかりの大野治長、大蔵卿、有楽斎。
客観的に見れば、
淀殿の落城トラウマや激動の人生には心痛むものがあるのですが
作中で描かれるのが益体もない姿なので、ちょっと同情はできないなぁ…。
息子の前で ×× シーン見られるのは如何なものか。

そして又兵衛がカッコ良かったです。
最初から幸村と仲がよろしいのも読んでて楽しい。
酒屋でじゃれてるのが可愛いオッサン共でした。
posted by まるひげ at 02:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-15

icon_45_b.gif『花鳥の乱 利休の七哲』読了。


久しぶりに岳作品を読んでみました。
そういや、群雲シリーズの大坂城、なかなか出ませんね…(やきもき)。

戦国時代、千利休の門下には、さまざまな逸材が雲の如く集まった。信長に弓ひいた荒木村重やキリシタン信仰に殉じた高山右近、師をも凌ぐ美意識の持ち主、古田織部ら七人の弟子は、いったい何を求めたのか?茶の湯に人生の真実を賭け、反逆の熱き心を燃えたたせた武将たちが織りなした、乱世の人間曼荼羅(アマゾン・レビューより引用)。
岳 宏一郎(著)『花鳥の乱 利休の七哲』

利休七哲、ということで頭ン中はあの曲がエンドレス。
メンバーには 諸説あるんだ♪
…ということで、
茶の湯をたしなんだ武将(大名?)たち7人を取り上げたもの。
利休先生はちょろりと登場するくらいです。
一番衝撃的だったのは利長かなぁ…。
これ読むとこのいまいち地味な二代目大名のイメージが変わります…。

オムニバス形式で、どの作品も30ページと少ないのでさらっと読めます。
以下、簡単なあらすじと感想文です。


・「風の武士 荒木村重」
妻子を見殺しにしてまでも信長に抗い続けた村重の半生を描いたもの。

お互いに「あいつ死なねぇかな…」て思ってる、信長に対する村重の反感、
村重に対する信長の恐れっぷりが印象的。
「趣味は謀反を少々」というだんぢょー(久秀)がワルいじじいで素敵でした。


・「天上の城 高山右近」
武将としての責務とキリシタンとしての生き方に悩む右近。

秀吉から棄教を迫られるその瞬間まで、右近が「棄教する」と答えるつもりでいた、
という部分はもっと詳しく読みたかったような。
右近の身のまわりで起こったことの記述が多かったです。
愚痴っぽいルイス・フロイスが脇役のくせによく出てくる。


・「花の下 織田有楽斎」
“逃げの有楽”と渾名された有楽斎の世渡りの巧妙さ。

自己保身甚だしいのに、どこか憎めないのがこの人の愛嬌というかなんというか。
本能寺の変をはじめ、利休と秀吉の確執や大坂の陣など、
危機を嗅ぎ分ける感覚の鋭さは異常。


・「早舟の客 蒲生氏郷」
信長と秀吉、二人の権力者にその才を愛された氏郷が天下を望むも、
結局は己の能力の限界に気づき、失意のうちに亡くなる姿を描いたもの。

氏郷が秀吉に尻を撫でられる話。
これはとても…岳先生らしい小ネタの入れ方だと思います。
まぁそれはともかく。
「天下を狙える器」とされた氏郷は早世してしまいましたが、
早死にしたからこそ、その才が惜しまれる声が高かったという面は確かにあるんですよね。
秀吉のもとで己が「将の将たる器」ではないことを
知ってしまった氏郷の姿が描かれているので、その後の
夭折もあながち悪いものでもなさそうだ(p.126)、という記述は
一種の皮肉のように感じられます。


・「雨の中の犬 細川忠興」
秀忠の小姓を務めた細川家の三男・忠利を跡継ぎに据えたい徳川家と
次男・興秋に家督を譲りたい忠興との駆け引き。

ガラシャと息子たちに対する感情が屈折していてとても忠興らしい。
特にこの作品においては
息子のなかでもっとも愛していたにもかかわらず、
夏の陣では大坂方についた興秋に対して、
怒りや憎しみを感じると同時に喜びや誇らしさ、不安…
それらがないまぜになった複雑な感情を抱く忠興が印象に残ります。
そしていつまでも藩主の座を譲らないのは徳川家と忠利に対する嫌がらせかw


・「加賀の狐 前田利長」
前田藩二代目・利長の従兄弟である太田但馬守長知が誅殺された
事件の背景にあったものとは…。

利家の死後、前田藩が置かれた政治的情勢を描いているのですが、
余人に窺い知れない利長の思惑が暗黒。
芳春院が人質として江戸へ発つ際に「自分は死んだものと思え」と言い残した時には
すでに息子に捨てられていた、というのがウスラ寒くなりました。


・「美の巡礼 古田織部」
大坂の陣において豊臣家へ内通したと噂された将軍家の茶道師範・織部正重然の人生。

まんま「へうげ」の左介です(笑)。
作品の冒頭と末尾に内通疑惑の経緯が説明されますが、
本編は織部の人生を紹介するものです。
結局、織部の内通事件の真相は謎のままでした。
利休と織部の茶道精神の違いや織部の独創性の説明がわかりやすい。
posted by まるひげ at 11:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-12

icon_45_b.gif『細川忠興戦記 本能寺将星録(上)』読了。


想像してたよりも忠興が随分まともな性格でした。
なんたって主人公だからね!

作中いくつか登場するキメシーンの描写は、
映像で見たくなるようなわかりやすい演出である反面、
ちょっと間違えればベタなものになりそうな…。
うん、危ういところだ。


智本 光隆(著)『細川忠興戦記 本能寺将星録(上)』

前作よりも会話シーンの面白さが減ってるのが残念。
…まぁ、主人公が忠興なので、そこには期待するなということでしょう。
小説だとかなりの割合で「DQN四天王・西の忠興」の名を
ほしいままにする人物として描かれる忠興ですが、
この作品においては
自身の冷たい態度やそっけない言葉が周りを怖がらせてることに自覚なし。
信長に心服しているため、主命とあらば焼討ちだって躊躇なし。
舅にだってゲンコツで殴り掛かる。
でも珠子と一緒のときはちょっと雰囲気柔らかく(笑)。

あれっ?フォローしきれてな
…そんなキャラです。
基本的に怜悧で頭の回転が早い人でした。

それではいつものあらすじ紹介から。

天正十年五月。西国出陣の直前に、
細川忠興は義父・明智光秀から愛宕山での連歌の会に誘われる。
そこでの会話に不穏なものを感じた忠興は、
信長が滞在する京都・本能寺へと向かった。
しかし、都では光秀の軍勢が勅命を得て信長を討つべく蜂起していた。
さらに、嫡男である織田信忠までもが父・信長に反旗を翻したという。
信長の安否を確かめるべく本能寺へと急ぐ忠興。
しかし、炎に包まれた本能寺で、主君はすでに躯となっていた―。
そして、その側には意外な人物が血染め刀をもって立っていた…。
(新書帯より引用)


と、ここまでが大体ページ前半までの展開。
ちなみに上巻の時代背景は、
松永久秀の謀反から秀吉の大返し直前まで でした。


以下、かなりのネタバレ注意の感想文です。




posted by まるひげ at 02:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2011-01-05

icon_45_b.gif『三成死すべし(三)新しい天下』読了。


終章の三成の存在感がデカかったです。
そしてその後の幸村の三成評が作者さまの三成像なのかな、と思ってみたりして。
意外だったのは高虎。
ラスト、良い意味で裏切られました。


尾山 晴紀(著)『三成死すべし(三)新しい天下』

題名からして三成が負けることは最初から予想できたことですが、
問題はその負け方。
絶対絶命の豊臣軍、しかも物資は決戦一回分ぽっきり、
でもその決戦で勝っちゃう、という大逆転展開でした。
大名それぞれの行動は妥当な動かし方だと思います。
けれど、終わってみればどこかうまくいきすぎな印象が残るこの不思議さよ。

ちなみに作者さまのblogにこの作品のあとがきが載ってまして、
そこでは「公儀軍勝利END」という構想もあったようです。
そっち読んでみたかったなぁ…(苦笑)。

とりあえず、いつもの公式あらすじ載せときます。

加藤清正・福島正則・立花宗茂ら猛将たちの活躍により、
豊臣軍は伏見城陥落まであと一歩と迫っていた。
しかし、九州からの輸送船団が公儀水軍の襲撃を受け、淡路も占領されてしまう。
これにより、瀬戸内の海路は完全に公儀軍によって封鎖されてしまった。
兵站線を切られ危地に立たされた豊臣軍は伏見を撤退。
殿軍を務めた加藤清正も小西行長によって討ち取られてしまう―。
一方、石田三成は、佐和山城に諸将を集めて「秀頼討つべし」と宣言。
主家に刃向かうことを明言し、十万を超える大軍を大坂へと向けた!
兵糧も猛将も失った豊臣軍に勝利の道はあるのか?
(新書帯より引用)


ということで、メインはやはり最終決戦・道明寺の決戦。

以下、ひどいネタバレ注意の感想文です。




posted by まるひげ at 02:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-12-28

icon_45_b.gif『若君御謀反』読了。


中村さんは秀家好き(あとがきより)だそうで、なんか嬉しい。
ということで、今回の短編集にも宇喜多家関連の話が1本。
宇喜多の坊は出てきてないんだけどね…。

名将・加藤清正に始まる有力外様大名、肥後熊本五十四万石の加藤家は、清正の子・忠広の代に改易となった。名門の大藩を破滅に導いた三代目・光正の度し難い悪戯とは何だったのか?表題作のほか、関ケ原に敗れ、流罪となった宇喜多秀家を支えた人々を描く「母恋常珍坊」、赤穂浪士の討ち入りから70余年後、その思い出を語る尼僧の正体に迫る「堀部安兵衛の許婚」など、江戸初期から後期まで、江戸情緒を切り取った作品集(文庫より引用)。
中村 彰彦(著)『若君御謀反』

江戸時代が舞台の7つの短編が収録されてます。
敵討ネタが3本、残念ネタが2本、ホラふきネタが2本。
以前読んだ『五左衛門坂の敵討』『槍弾正の逆襲』に比べたら、さらっと読めるお話が多いです。


以下、ネタバレありの感想文です。



posted by まるひげ at 00:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-12-21

icon_45_b.gif『宇都宮釣り天井事件異聞 本多正純の悲劇』読了。


冬はやっぱり正純の季節!(と自分だけが思ってる)

千年の歴史が秘める物語
宇都宮氏滅亡をめぐる南呂院の秘話
徳川家重臣・本多正純の謎の失脚
語り継がれる宇都宮釣り天井事件の真相(単行本帯より引用)
和氣 良雄(著)『宇都宮釣り天井事件異聞 本多正純の悲劇』

個人的には、第一話と第三話を興味深く読ませて頂きました。
基本的に小説なのですが、
正直に言って小説としての面白さよりも、知識欲をくすぐられる作品かと思います。
資料編として宇都宮城の歴史や歴代藩主のデータも掲載されてあるので
宇都宮についてさらに知りたくなりますね。

短編が3本収録。
ところどころ場面転換が分かりづらかったり、
1人の人物のセリフが数ページにも及ぶところがあったりして
ちょっと読みづらい部分がありました。
でも字もデカいし短編なので読むのに時間はかからないかと。

以下、ネタバレまみれの感想文です。
久しぶりに歴史モノの読書感想文書いたら
ビックリするくらい長くなりました…。




posted by まるひげ at 00:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-10-19

icon_45_b.gif『囁く駒鳥 影与力小野炎閻魔帳』読了。


あらすじから「昼は北町奉行内与力、夜は闇の仕事人」みたいなモノを想像してしまいました。
が。
読んでみましたら、ミステリ要素ありのふつうの時代モノでした。
鳥居耀蔵や水野忠邦といったこの時代の有名人なんかの姿も見えます。

京の貴人が東男に生まれ変わり、振るうは名刀・草薙影踏。古今無双の太刀筋は、江都で右に出る者なし。燃ゆる剣の舞を見たくば、この炎の閻魔帳に記されるを覚悟するがよい―。北町奉行が右腕と恃む、内与力・小野炎。奉行の側近としての役儀はむろん、その影働きで重用されていた。平安の昔、嵯峨天皇に仕えた小野篁を遠祖に持ち、面魂は優しいが、実に頼もしき男。「江戸の闇に隠れて、悪事を成す者には天に代わって、この炎がお相手致そう」。(文庫より引用)
藤村 与一郎(著)『囁く駒鳥 影与力小野炎閻魔帳』

中篇2本が収録です。
かっこいい主人公、わかりやすい悪役、基本的には勧善懲悪なストーリー展開、
ということで、時代劇ドラマで作りやすそうな設定ですな。
…とか思いましたが、表題作はネタ的にきわどい

・「小夜町江戸暦」
天保四年の師走、
江戸の町では易者が相次いで殺されるという事件が起きていた。
そんな折、小野炎の又従姉妹・小夜町が南町奉行の手により捕らえられた。
背景には炎の宿敵・泉屋甚右衛門の影がちらつき…。


甚右衛門の陥穽にはまり、拉致された小夜町。
これは炎を貶めるための罠だったのですが、まぁ上手くいくわけが無く。
この時代の御家人株やら暦事情という時事ネタ(?)が絡んだ事件でした。
甚右衛門が面白いくらいに金の亡者な悪役ですね。


・「囁く駒鳥」
うららかな春の日、着物から小物まで暗い藍一色に身を包んだ女人を見かけた炎一座。
一種異様なその姿と女の思い詰めた顔色、どこか寂しげな風情に炎はひっかかりを覚える。
女は老中首座・水野忠成の屋敷へと姿を消すが、
その後しばらくして、同屋敷内で忠成が毒殺される。
屋敷の用人とかかわりをもった炎は、その死の原因を探ることとなるのだが…。


この作品は、
冒頭で事件のキーワードというかガジェットが結構あからさまに示されているので
事件のおおまかな構造は予想がつくと思います。
もちろん、事件についての詳細な背景は
最後まで読まないと明らかにならないので先が気になりなることに変わりないです。
ギャグ担当として、随分とうなぎに固執するキャラが1名(笑)。
読んでるこっちまで食べたくなってしまうじゃないか!

どちらの話も、
炎と小夜町に味方する仲間たちの絆があたたかいですね。
威勢のいい江戸っ子で口が回る脇役たちの会話シーンも楽しいです。

でもなぁ…
個人的な好みで大層申し訳ありませんが、主人公が完璧すぎてちょっと苦手かも。
顔良し、頭良し、剣の腕は立つし性格は良いし。死角なんて無いよ!的なヒーロー。
あと小夜町。懐に小鳥2羽忍ばせてるヒロインて今時分どうなの。

それはともかく。
作中、他の事件についての言及があったのでもしやと思ったら、


伊吹 隆志/藤村 与一郎(著)『鳳凰の珠/満願丹』

こっちが第1作目らしいですね。シランカッタ。
まぁでも前作知らなくても支障はほとんどないと思います。
posted by まるひげ at 00:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-09-16

icon_45_b.gif『三成死すべし(二)秀頼の葛藤』読了。


怖ー。
ここの三成怖ー。
三成のスキルに「戦上手」と「人当たりの良さ」を加えると
そらもう怖いもんなしだと常々思ってたんですが、
後者に換えて「演技力」でも可ですね。
でもここでそれ見てみたらおっかねぇのなんのって…。
ついでにここの三成さん、戦では直接に采配振ってるわけではないのですが、
一段階高いところで戦を動かしているその視点がすごいです。
兵站の重要性を何より知ってる人間の戦略だなぁと。

そして本文イラストの高虎がものそい若くてビビッた。
みったんあんなに老けてるのに!


尾山 晴紀(著)『三成死すべし(二)秀頼の葛藤』

前巻ラストでは、大坂城炎上の二ヶ月後に
九州の武功派のもとへ秀頼が無事な姿を現すところで話が終わってますが、
この巻は、それより時間がちょっと遡って、
大坂城炎上の一ヵ月後、幸村と秀頼が潜伏しているところから始まります。

命がけで幸村と大坂脱出をした秀頼は、己を取り巻く状況を理解したことで
公儀からも武功派からも己が利用されている、と感じ、
「余、幸村以外は信じない!!」
と、頑なになっておられます。
…まぁ、この年齢期によくある人間不信ですな。

いつもの如く公式あらすじを載せておきます。

石田三成ら公儀は、大坂城炎上事件により秀頼の死亡を宣言。
事件の首謀者は大老・宇喜多秀家であると断罪。すぐさま大軍を関東へと向けた。
韮山城で大谷吉継らが善戦するも、圧倒的な兵力差の前に宇喜多軍は敗北を覚悟する―。
しかし、死んだと思われていた豊臣秀頼と真田幸村は、
事件から二ヶ月後、突如、豊前中津城に現われ、
福島正則、加藤清正ら武功派たちの前で「打倒三成」を宣言する。
決起した豊臣軍は、大坂城を奪還。
そして三成の片腕・藤堂高虎が守る伏見城を包囲した―。
秀頼対三成。その直接対決が目前にまで迫っていた。
(新書帯より引用)


中盤までが公儀軍による関東征伐、
それ以降は秀頼を奉じた武功派(=「豊臣軍」)の上方進攻がメインとなってます。

以下、かなりのネタバレ注意感想文です。

posted by まるひげ at 23:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2010-08-23

icon_45_b.gif『三成死すべし(一)大坂城炎上』読了。


一ヶ月以上ご無沙汰の読書感想文であります。

読みながら何度も「あ、徳川もう無いんだっけ」てなりました。

傍から見るとここの三成のやり方は非情で苛烈なものですが、
三成側から見ると、やっぱり応援したくなりますな。
佐和山主従はいつもの通りだし。
玄以の後に京都所司代となった高虎の、
“三成の片腕”の座をめぐって左近と静かな火花を飛ばし合うシーンもあります(おぉ怖)。


尾山 晴紀(著)『三成死すべし(一)大坂城炎上』

『群雄戦国志』でなんとも美味しい悲劇的主人公だった三成が、
今回はなにやら悪役っぽい立場ですよ。

まずは、公式あらすじを以下に。

慶長三年八月。太閤・豊臣秀吉薨去。同日、石田三成、徳川家康・秀忠を謀殺。
さらに、結城秀康を討伐し、徳川家は滅亡。
関東には宇喜多秀家を封じる関東仕置を断行する。
「秀頼成人までの『十年』の公儀委託と家康・秀忠排除」
この秀吉の遺言を盾に、石田三成は豊臣政権を完全に掌握した。
あまりの横暴に激怒した福島正則ら武功派たち。
しかし、重鎮である黒田如水は太閤の遺言通りに十年待てと諭す―。
秀吉び十回忌をむかえる慶長十二年。
果たして三成は遺言通り秀頼に権力を委譲するのか?
専横に堪え忍んできた武功派の動きは!?
壮大なスケールで描く新シリーズここに開幕!!

(新書帯より引用)

以下、ネタバレまみれの感想文です。

posted by まるひげ at 03:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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