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2015-09-15

icon_45_b.gif『人魚ノ肉』読了。


新選組のメンバーが実は
百目鬼だったり肉人だったりドッペルゲンガーだったりゾンビだったり…したら
ワクワクするでねぇか!っていう企画ですねこれ。

ということで、
闇アイテム「人魚の肉」で幕末の人たち(主に新選組)がえらい目に遭うお話です。
前作『宇喜多の捨て嫁』よりもかなーり伝奇寄りになっておりまして、
こっちに来てくれたか木下さん!という感じで、わたくしとしては非常に嬉しい。
ねとっとした粘度の高い夏の夜のような伝奇モノでした。

坂本竜馬、芹沢鴨、近藤勇、土方歳三、沖田総司、斎藤一、岡田以蔵…想像を絶する幕末京都伝!人魚の肉を食めば、妖に憑かれる―。時代小説界の麒麟児、書き下ろし野心作(アマゾン・レビューより引用)。
木下昌輝(著)『人魚ノ肉』

人魚の肉を食べた者はみな怪異に取り憑かれる、というか自身が人外の者に変化してしまうという。
途中、ちょっとしたホラーな描写がありますので苦手な方はご注意。
割と早い段階で近藤&沖田&斎藤が人魚の肉を口にしてしまうので
この後どうなっちゃうんだ的ハラハラ感も楽しめます。
そしてどの話も、どんな結末を迎えるのか想像できないところが楽しいですね。
それぞれの主人公に関するくせや逸話など、
史実といい具合に整合性が取れているのがうまいなぁ。
というわけで、ある程度新選組に関して知ってる人向けの作品ですな。
すべての短編が別の短編とどこかしら繋がっているので、
読了後、もう一度ざっと読み直すだけでも再発見があります。

竜馬ノ夢(坂本竜馬)
妖ノ眼(平山五郎)
肉ノ人(沖田総司)
血ノ祭(安藤早太郎)
不死ノ屍(佐野七五三之助)
骸ノ切腹(沼尻小文吾)
分身ノ鬼(斎藤一)
首ノ物語(岡田以蔵?)


以下、感想文長いので畳みます。毎度すみません。

posted by まるひげ at 01:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2015-08-28

icon_45_b.gif『決戦! 大坂城』読了。


図書館レンタ本。

前作とは繋がっていないので、こちらから先に読んでも何の支障もないですな。
ちなみに、この決戦シリーズ、もうすぐ第3弾「本能寺」が刊行されるそうなので非常に楽しみです。
つか、冲方さんのあのニュースびっくりしたわ。

慶長二十年五月(一六一五年六月)。秀吉が築きし天下の名城・大坂城―。いまここに、戦国最後の大合戦が始まろうとしていた。乱世に終止符を打つのか、敗北すなわち滅亡か…(単行本より引用)。
伊東潤/(ほか著)『決戦! 大坂城』

大坂の陣を主題とした書き下ろし短編集。
今回も7名の作家による主人公たちが活躍してくださってます。
(今作は豊臣方4名、徳川方2名、商人1名)
個人的に好きだったのは木下作品と伊東作品。
前回と似たような冲方作品、
前回に続き「またどうしようもない微妙な人選んで(笑)」っていう天野作品。
目次と簡単なあらすじ&感想文は以下の通りです。

・葉室麟「鳳凰記」
・木下昌輝「日ノ本一の兵」
・富樫倫太郎「十万両を食う」
・乾緑郎「五霊戦鬼」
・天野純希「忠直の檻」
・冲方丁「黄金児」
・伊東潤「男が立たぬ」

・葉室麟「鳳凰記」(淀殿)
女の目から見た戦国末期とでも言いましょうか、
血縁による女たちの絆や朝廷をめぐる豊臣と徳川の確執などがテーマでした。
大坂の陣は豊臣家を守るための戦ではなかった
高台院との仲がギスギスしてなかったり
ヒステリー持ちじゃなかったり、
淀殿が悪く描かれていないのが好感持てます。そりゃ主人公だからね…。
個人的には、あえて豊臣の方から徳川に喧嘩をふっかけた理由とともに語られる
方広寺の鐘の銘文についての解釈が興味深かったです。


・木下昌輝「日ノ本一の兵」(真田幸村)
「日ノ本一の兵の首を獲りたい」と言って死んだ父・昌幸。
そんな父からは有力者に対する人質としての価値しか認められなかった幸村。
死の間際、父からある秘策を聞かされた幸村は
父が無しえなかった悲願を自身が成し遂げることで父を見返してやりたいと思うが…。

あーもう…この作家さんのなさることよ。
「なんでそうなっちゃうの…」とツッコミたくなる鬱的展開が繰り広げられるこの作風ですよ。
好きだなぁ木下作品。

それはともかく。
色んなコンプレックスがごっちゃまぜになった幸村がおります。
息子としても父としても武将としてもこじらせてる。
皮肉な結果となるまさかのラストが息苦しいくらいの緊迫感でした。
何故ああなってしまったのか…。
キーワード「日ノ本一の兵」が誰のことを指すのか、
ダブル?トリプル?ミーニングになっているのが上手いですね。
んでもって、‟左衛門佐”幸村の影武者である旅芝居役者の「幸村」がカッコいい。


・富樫倫太郎「十万両を食う」(近江屋伊三郎)
大坂の米商人が主人公。
商人はたくましいなぁ…というのが率直な感想です。
豊臣方へ兵糧を届けるため、大坂城へ続く地下の抜け道を通る伊三郎。
やがて兵糧を運ぶ以上に重要な仕事を課せられることになるのですが…。

カネが一番大事な商人が打った大博打。
カネ以上に価値あるものを得た近江屋のラストがさわやか。
でもやっぱり最後はカネだよね!っていう…(笑)。
地味に真田十勇士が登場したり鹿児島脱出ネタがあったりちょこちょこ楽しい。


・乾緑郎「五霊戦鬼」(水野勝成)
これもすごい作家さんの特徴が…伝奇臭ぷんぷん。
五霊鬼伝説を料理したらこうなりました、というお話。

かつて勝成が仕えていた小西行長からもらったとある丸薬。
死者を蘇らせるというこの薬をめぐる、
勝成と因縁のある怪僧・法雲、伊達お抱え忍びの黒脛巾組との三つ巴バトルです。
勝成の放浪時代の逸話や伊達勢の味方撃ちなどが
伝奇アイテムと関連づけられているのが上手いですなぁ。


・天野純希「忠直の檻」(松平忠直)
周囲に認められず居心地の悪い思いを抱えていた忠直。
口うるさい家臣、のさばる嫁、家康のあからさまなイジメで胃が痛くなりそう。
真田隊が家康の陣へ向かった際に
忠直があえて追撃しなかった時から家康の無事が伝えられるまでが
自らが徳川という大きな檻から解放されたというひとときの夢で、
忠直の心情が迫真に迫っております。
でもまぁ、終盤ではしがらみから解放されたことですし、
なんだか色々あったけど終わりよければ総てよし!って感じのラスト。


・冲方丁「黄金児」(豊臣秀頼)
秀頼の内面を冷静な筆致で詳細に描く…のですが、ちょっと描写がくどいかな、という感想。
秀頼の天才児っぷりはこれでもかと伝わって参ります。
周囲の人間より一段高いところから世界を観察してるようなイメージ。
最初の葉室作品とテーマが似ておりますね。


・伊東潤「男が立たぬ」(福島正守)
福島正則の弟・正守が主人公。
大坂の陣の直前、幕府より内密に千姫救出の密命が正守に伝えられる。
大坂城に味方として入城したからには最後まで豊臣方として戦う決意をした正守。
城内に潜む徳川の間者や正守を信用しない豊臣の重臣たちの目を盗みながら
千姫救出の手立てを探るのですが…。

ということで、千姫事件の前後を描いたお話。
とにかく構成が良いですねぇ。
徐々に秀頼に傾倒していく正守、
その正守の意志をつなぎ、やがて自らもまた譲れない信念を抱えて死んだ坂崎直盛、
そして最後に柳生宗矩の手に渡ったもの。
「死を恐れず名を惜しむ」男たちの意地の貫き方が鮮烈に印象に残ります。
posted by まるひげ at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2015-08-13

icon_45_b.gif『決戦! 関ヶ原』読了。


図書館レンタ本。

何故か勝手にリレー形式の連作集かと勘違いしてましたが
主題(関ヶ原の戦い)が共通の書き下ろし短編集だったんですね。

慶長五年九月十五日(一六〇〇年十月二十一日)。天下分け目の大勝負―関ヶ原の戦いが勃発。乱世を終わらせる運命を背負ったのは、どの男だったのか(単行本より引用)。
伊東潤(ほか著)『決戦! 関ヶ原』

7人の作家によるそれぞれ異なる主人公(東軍3名、西軍3名、どっちつかず1名)が
何を一番に考え、どのような思惑をもって戦いに臨んだのかが描かれます。
個人的には吉川作品が好きでした。
伊東作品と葉室作品は読む前の期待が高かったせいか、ちょっとハズレた感があります。
冲方作品は他の作家さんと文体違うような。時代物っぽくないですね。
以下、目次と感想文をば。

・伊東潤「人を致して」
・吉川永青「笹を噛ませよ」
・天野純希「有楽斎の城」
・上田秀人「無為秀家」
・矢野隆「丸に十文字」
・冲方丁「真紅の米」
・葉室麟「孤狼なり」

・伊東潤「人を致して」(徳川家康)
関ヶ原の戦いは家康と三成の共謀であった、という
「ほぅ…」と身を乗り出すような設定なのですが、その後が盛り上がらず…。
ちなみに共謀といっても一方が気を抜けばその隙を突かれて
もう一方が出し抜こうとする関係なので、
まさに狐と狸の化かし合いみたいなもんです。
最後の最後まで危ない橋を渡っていた両軍の様子がわかります。
主君に容赦ない忠勝が頼もしい。


・吉川永青「笹を噛ませよ」(可児才蔵)
タイトルで察する通り、主人公は可児才蔵なわけですが、
直政食えねぇ奴だなぁ…というのがまず最初に出てきた感想。
裏の主人公直政ですねこれは。
爽やかでありながら狡猾、大胆な行動の裏に細やかな配慮を見せる直政がとても印象に残ります。

これまで仕えてきた主君はすべて敗者だったとはいえ、
斎藤龍興 → 明智光秀 → 織田信孝 → 柴田勝家 → 三次秀次 → 前田利家…
すごいところばっかり転々としてきたなぁ才蔵。
沸点低すぎな正則とは、なかなか良いコンビ的な主従でした。


・天野純希「有楽斎の城」(織田長益)
上杉討伐へ向かう東軍において、
信長の実弟でありながらこれまで陰口を叩かれ続けた初老の男・織田長益。
汚名を返上しようと密かに心熱くしている姿が空回っております。
物語は長益の一人称で物語が進みます。
本人(長益)はこれまで巡り合わせが悪かったために武勲に恵まれなかった、とかぼやいてますが…。
「違うのよ長益! 今までの自分の素行を振り返ってみて!」ってツッコみたくなりました。
さらに武功を立てて立派な茶人になることを夢見てます。茶人に武功は必要ないぞ長益。
でもなんか憎めない人ですな。


・上田秀人「無為秀家」(宇喜多秀家)
酒飲んで愚痴ってばっかの宇喜多の坊。
秀頼の天下が何よりも大事という、他ではあまり見ない秀家の姿があります。
終始独り言小説でしたよ。

ラストの作者の問いかけはちょっと唐突かと…。
天下分け目の大戦に勝利した福島家、加藤家、小早川家はみな滅亡した一方で、
秀家の子孫は今も続いています。
配流の身となった秀家は、端から見ればただ命を長らえただけですが
「血を残すことが第一」と捉えると、
時を経て勝者が敗者になり、敗者が勝者となる歴史は確かにわからんもんです。


・矢野隆「丸に十文字」(島津義弘)
わずかな手勢で関ヶ原に布陣した島津勢。
関ヶ原までの道のりを苦い思いで回顧する義弘と、血気盛んな豊久が対照的。

敵陣突破で、家康に迫った時の描写が緊迫感あって良いですね。
一瞬なんだけど義弘 VS 忠勝とか。
あと、豊久の伯父御敬愛っぷりが非常に微笑ましい。


・冲方丁「真紅の米」(小早川秀秋)
関ヶ原の戦いの切り札となる小早川勢。
東西両軍から参戦を促される瀬戸際で、秀秋の心を決めたのは「米」だった。
…と書けば、「は?」って聞き返されそうですが、自分も「は?」ってなりましたわ。
この短編の見所は秀秋の人物像です。
秀秋が自身の内面と静かに語り合ってるような印象を受けました。
ステレオタイプの凡庸で優柔不断な秀秋ではないんです。
育ちの良さゆえの慎重さと冷静な頭脳を持ちながらも、
他者から理解されなかった秀秋が貫いた決意が描かれます。
ラストはバッドエンドですが、これはこれで結構アリかも。


・葉室麟「孤狼なり」(石田三成)
東西両軍の思惑が交差した関ヶ原の戦いは、誰も勝者ではなかった。
正確に言えば、誰も勝者にはさせなかった三成の策謀とはどのようなものであったのか。
戦の後、共に捕縛された恵瓊に対して、
三成が関ヶ原の戦いの全貌を語るものの、どうにも説得力が弱いような…。

キャラ的(キャラって言うな)なことを言えば
恵瓊には最後まで飄々と…というか達観していてほしかった。
つか恵瓊じぃちゃんてそっち系の趣味があったんか。
posted by まるひげ at 21:19 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2015-06-27

icon_45_b.gif『忍者だもの』読了。


タイトルは「忍者だって人間だもの」ってところでしょうか。
個人的には柴錬&山風が好みでした。

明智光秀、突然の謀叛。そのとき信長方の忍び・九十郎は……(「鬼火」)。職人として腕を磨き、子も生まれた。順風満帆な万作に、ある知らせが(「赤絵獅子」)。不義密通の許しを得たければ、我らの面前でこの女と再び交合せよ――。頭領は若き手下に命じた(「忍者服部半蔵」)。誰よりも速く走り、跳び、隠れ、騙す。けれど心にいつも巣食うのは、孤独と葛藤。笑って泣ける、傑作忍者小説五編(文庫より引用)。
縄田 一男(編)『忍者だもの』

副題には「忍法小説五番勝負」とありまして
大御所作家5名による、忍者を主人公とした短編アンソロジーです。
忍者と言っても超能力まがいの忍術使って云々…というものではありません。
忍者らしいキャラもいればそうでもないキャラもいて
それぞれ個性が異なるので、読んでいて飽きませんね。
ですが、性格は違えど共通している部分は一緒。
どの主人公忍者も、己の信念に従い生きていく姿が描かれております。
目次と簡単なあらすじ&感想文は以下の通り。

・池波正太郎「鬼火」
・柴田錬三郎「蜀山人」
・織田作之助「猿飛佐助」
・平岩弓枝「赤絵獅子」
・山田風太郎「忍者服部半蔵」

・池波正太郎「鬼火」
明智光秀の密書を毛利方に届けるためにひた走る伊賀忍者・伝蔵。
それを奪い秀吉に届け褒美をもらった甲賀忍者・九十郎。
30年の月日が経ち、再度対決したふたりだが―。

任務を全うできず、人を捨てた忍びと
他方、任務を全うし、人となった忍び。
ラストで両者の立場が逆転しますが、
どちらが幸せかというと、どちらも幸せではないんですよね…。
池波作品は一番読み慣れているせいか、すんなり読めました。

・柴田錬三郎「蜀山人」
江戸の庶民の味方・怪盗「自来也」の正体を突き止めようする南町奉行所の与力。
狂歌仲間で風流人の蜀山人こと大田直次郎に目をつけるのだが―。

蜀山人の正体に迫る与力の頑張り具合と、
洒脱なやり口でお上を出し抜く自来也の振る舞いが痛快。
5編中、最もさわやかな読了感でした。

・織田作之助「猿飛佐助」
猿飛佐助のわくわく冒険譚という趣なのですが…。

あとがきにて縄田氏が面白さを絶賛しておりつつも、読むのが苦痛でした。
コンプレックスの塊のブサメン佐助がとにかく五月蠅い。
お前は躁か!
くっちゃべってないでさっさと動け!!
…すいません、自分には合わなかったようです。

・平岩弓枝「赤絵獅子」
鍋島藩の御用赤絵師として順風な暮らしを送っていた万作であったが、
その出生にはとんでもない秘密が隠されており―。

これは江戸の市井ものを得意とする作家さんならではの作品でした。
実の父を知らない主人公が実父を知ることで悲劇が始まるという流れがつらい。
ラストは涙ものです。

・山田風太郎「忍者服部半蔵」
3代目「服部半蔵」正重の弟である京八郎正広。
忍者の修行に落第して以来、遊び惚けてばかりの軟弱者の弟である。
これを半蔵が成敗しようとしたところ、とんでもない事件が出来し―。

この弟のキャラが面白い。
忍者の修行や技術を批判するのですが、そのどれもが至極合理的で現実的な考えなんですよね。
「それを言っちゃ元も子もないよ!」というレベル。
忍者全否定のこの京八郎がラストは……これは痺れますね。かっこいい。
やはり京八郎も忍者であったんだなぁ、と。しかも天才型だよ恐ろしい。
ちなみに主人公の半蔵つーのは
3代目…と見せかけて4代目…って、あれ? W主人公って感じで良いのかしら。
posted by まるひげ at 23:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2015-04-23

icon_45_b.gif『くるすの残光 天の庭』読了。


聖遺物の十字架にサーフィン乗りしてる天海だったり
秘宝の守護者がなんとなくタタリ神(もののけ姫)っぽかったり
瀬戸内海で特撮感満載の海獣バトルだったり。
・・・・・
全部シリアスな場面なのに、脳内再生画像が至極残念なことに相成りました。

最終決戦、迫る!“三種の神器"“七つの聖遺物"をめぐる戦い――天海vs修道騎士の死闘に、山の民∞海の民≠ェ参戦。古(いにしえ)の力を得るものは誰だ!?
『僕僕先生』の著者が贈る、昂奮と感動の超絶忍法帖!(アマゾン・レビューより引用)
仁木 英之(著)『くるすの残光 天の庭』

シリーズ第4弾。
前作ラストで仄めかしていた通り、舞台は西国へ移ります。
寅太郎は依頼された庭造りの精神を学ぶため、
荘介は剣術師範として、ともに西国へ旅立ちます。
残りの修道騎士たちは江戸で留守番、のはずなんですが…さてさて。
一方の敵サイド。
自らの死期を悟った天海は、徳川の天下を盤石なものにするため
いよいよ最後の仕上げに取りかかります。
それはまつろわぬ人々、そして古の神の存在を消してしまうというものでした。
というか、聖遺物フルコンプする前に
三種の神器集めが始まってしまってますがそれは…。

その他、寅太郎のはじめて物語があったり
宗門改のがんばる新鋭・佐橋市正くんもこれまで以上に活躍していたり。
今作では、寅太郎に助力してくれる海の民が登場。
これまで出てきた山の民も同様ですが、
彼らの存在は読んでいてなんとも切ないですね。

ラスボス的立ち位置の天海さん、終盤で死んでしまってます
それでもまだなんとなく裏がありそうな気配が漂うのは、
この人の(歴史小説における)素行の悪さのせいでしょうか。

ここにきて聖遺物の新たな力が発動したのは良いのですが、
主人公サイドのキャラの死があったりもしているので素直に喜べません。
さらに後半の展開が非常に駆け足となっており
どどどどうなるのこれ…という感じで以下次巻。

次巻でシリーズ終わりかな?
posted by まるひげ at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2015-01-14

icon_45_b.gif『宇喜多の捨て嫁』読了。


実は去年読了した本の感想文。

久しぶりの読書!
しかも時代小説!!
そんでもって題材が宇喜多!!!
てな感じで鼻息荒く読み進めましたが
一編読み進めるごとにしゅるしゅると萎んでいくテンション。
鬱だわー。
どれも鬱いわー。

娘の嫁ぎ先を攻め滅ぼすことも厭わず、下克上で成り上がる戦国大名・宇喜多直家。その真実の姿とは一体…。ピカレスク歴史小説の新旗手ここに誕生!!第92回オール讀物新人賞受賞作(アマゾン・レビューより引用)。
木下 昌輝(著)『宇喜多の捨て嫁』

梟雄・宇喜多直家の苦悩と人生を、直家を取り巻く人々の視点から描いた短編連作集。
全部で6編収録ですが、時系列順にはなっておりません。
ひとつの作品中で登場した要素が他の作品のなかで言及されたり
全体の構成が緻密に組み立てられているのが素晴らしい。
これがデビュー作とのことですが、すんなり物語に入っていける読みやすさでした。
文体だけではなく、作品の雰囲気にさえベテラン作家さんのようなある種の貫録が感じられます。
最終話まで読み進めると、
これまでの作品に登場したひとつひとつの要素が一枚の絵となるような、
ジグソーパズルでピースが嵌っていくような、小気味良い感覚がありますね。
最後まで読んでこの作品の構成美が見える仕様となっています。

・・・
なんだかベタ褒めな感想文になってしまいましたな(苦笑)。

「捨て嫁」という単語のインパクトと
表紙カバーのおどろおどろしさに若干怯みますが
第152回直木賞候補作ということもあり、読んでみてはどうでしょう?
ただし血は出るは膿は滲むはで大変です。暗いです。

以下、バカみたいに長い感想文ですので読み飛ばしちゃってなんら問題ありません。
posted by まるひげ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2014-08-17

icon_45_b.gif『妖草師』読了。


今月の積読本消化1冊目。

敵さんが独り言多いので、読者が「?」ってなった部分を
律義に解説してくれるのがなんか面白い。
聞いてないのに答えてくれるよ!

江戸中期、宝暦の京と江戸に怪異が生じた。数珠屋の隠居が夜ごと憑かれたように東山に向かい、白花の下で自害。紀州藩江戸屋敷では、不思議な蓮が咲くたび人が自死した。はぐれ公家の庭田重奈雄は、この世に災厄をもたらす異界の妖草を刈る妖草師である。隠居も元紀州藩士であることに気づいた重奈雄は、紀州徳川家への恐るべき怨念の存在を知ることに―。新鋭が放つ時代伝奇書下し!(文庫より引用)
武内 涼(著)『妖草師』

本来は常世に存在するという妖草。
人の強い念に呼ばれてこの世に芽吹いてしまったそれらの植物のなかには
人々に災いをもたらすものもあるという…。
ということでありまして、
妖草を研究し、必要とあらば駆除することを生業とする‟妖草師”が主役の伝奇バトル小説です。
ちなみに、紀州徳川家の御家騒動が物語に絡んでおります。

今作も、作者の得意分野である草木の情報がてんこ盛りです。
ある時には生活家電として、またある時には武器として機能する妖しの草々。
それら妖草アイテムを駆使したバトルは緊迫感あって引き込みも強いです。
所々ややご都合的展開が見て取れたり
後半がちょっと駆け足なのもいつも通りです(苦笑)。

主人公の重奈雄、一見クールに見えながら
初恋時(当時8歳)の狂恋っぷりがなかなかにキモ…強烈でありました。
クスリはいけません、ダメ、絶対。
武内さん、ヒロインの淡い恋心を描くのはとてもうまいのになぁ…。
この重奈雄、敵方に論破されたり武芸からきしだったりするので
相棒的キャラが欲しかったところかな。
相棒とは違うものの、ヒロインの椿ちゃんは良い女房になりそうですぞ。

んでもって武内さん、
出自に謎の多い歴史上の人物を物語に絡ませるのも上手いですよね。
今作では、池大雅と曾我蕭白という江戸時代の画家たちが脇役として登場します。
個人的には蕭白が面白い人物でした。
おおらかでユーモアのある、奇想的なキャラで重奈雄を助けて(というか
首を突っ込んでくるというか巻き込まれて)くれます。
蕭白が自身の画風や思想を語るシーンがあるので、
彼の作品を思い起こしながら読むとこの人物のキャラ造形に納得します。

妖草師として、なにより人としてまだまだ成長途中の主人公。
シリーズ化してもおかしくない雰囲気を漂わせながらのEDでした。
posted by まるひげ at 23:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2014-06-06

icon_45_b.gif『粟田口の狂女』再読了。


積読本消化…3月の(えっ

間が空いてしまったので再読してしまいました。
滝口作品好きなんですけど、絶版多いのが悲しい。

伊達勢大軍による味方討ちで、神保隊三百余名は哀れ全滅する。伊達の権勢に遠慮した家康側は、この事件を闇にほうむろうとした。真相を知り、娘婿神保長三郎の無念を思いやる老女お勝は、ひそかに一計を案じて洛中の街頭に立ったが……。大坂夏の陣を題材に、豊臣・徳川の交替劇を鮮烈多彩に描いた歴史小説集(単行本帯より引用)。
滝口 康彦(著)『粟田口の狂女』

大坂の陣を題材とした短編集。
各短編の主人公が抱く苦悩と葛藤の末の決断が非常に重い。
自らの意志を全うしようとした時、犠牲となるのは己の命だけでなく一族郎党の命運、
時には御家断絶までも覚悟しなければならない状況下において
忠義のため、あるいは名誉、報復のため、
命と引き換えにしてでも譲れない信念を貫き通した人々の姿が描かれております。

ストーリーの内容だけを見ればお先真っ暗な鬱ENDが多めですが
己の生き方に誇りを持って死んでいった人々の姿は凛然としていて
読了後は、やりきれなさは多分にあるものの、背筋の伸びるような余韻が残ります。

久しぶりに感想文書いたら張り切って長くなってしまいました。
お時間ある方だけどうぞ…。

posted by まるひげ at 23:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2014-03-08

icon_45_b.gif『秀吉を討て』読了。


3月も一週間が過ぎましたが、2月の積読本消化2冊目。

えーっと。
とにかく人死にすぎです。
死にもの狂いで故郷の地を守ろうとする人々の覚悟がとにかく悲壮で、結構重めの内容でした。

根来の若き忍び・林空は、総帥・根来隠形鬼に呼び出され「秀吉を討て」と命じられる。同じく指令を受けた根来の刺客忍が、次々と秀吉を襲うが、甲賀忍者・山中長俊らの鉄壁の守りに防がれていた。仲間の叡海や俊念と共に出立した林空は、家康との合戦のため進軍中の秀吉を銃撃しようとするが―(単行本帯より引用)。
武内 涼(著)『秀吉を討て』

タイトルからしてこの任務は失敗に終わるんだろうということが予想されます。
「実は最後にどんでん返しがあるかも?」とうっすら期待したんですがそれもなかったです。

ストーリーは公式あらすじのとおりで、
全国統一を目指す秀吉による紀州攻めが題材となっております。
これに抗い、民による自治を貫くために紀州の民が蜂起するという歴史エンタメ小説です。
もちろん、作者のカラーである忍者小説としての面白さも健在。
主人公が属する紀州の修験行人たちを束ねる総師・隠形鬼。
敵サイドとして秀吉を護衛するのは山中長俊率いる甲賀忍び、
秀吉とは微妙な関係の家康のそばには服部半蔵率いる伊賀忍び、
これら三つの勢力が入り乱れ、忍びたちの死闘が繰り広げられます。
緊迫感に満ち溢れた忍び同士の戦闘に加え、
戦闘員ではない人々が参加する千石堀城や太田城での籠城戦が
絶望的な戦況なので、読んでいて非常に重苦しい。

前2作との大きな違いは、より歴史小説としての比重が大きくなったこと、
そして主人公のキャラ付けですね。
これまでは割と完成された主人公というか、最初からリーダー的位置にあって
泰然と任務をこなしていくクールな上忍が主人公でした。
一方、今作の主人公、鉄砲の腕は天才的でありながら、精神的にはやや未熟。
まぁ、ひとりの青年の成長物語として読んでも良いのですが、
個人的に前2作の主人公の方が好みだったのでちょっと思い入れが浅い…。
ちなみに今作の主人公、運がとても悪い(苦笑)。

同じ根来の忍び仲間や師匠、道行く先での協力者、強力な敵役など
脇役もキャラが立っていて混乱することはありません。
初登場時に「あ、この人死にそう…」って予感したキャラが2人いたんですが、
読み終わってみたら死んだの2人どころじゃなかった。
しかも、信頼度上がったりいい感じの雰囲気になったところで死んでしまうのがなんとも…。
それにしても、根来衆ボスの隠形鬼。
半蔵ビビらせるほど最強オーラ出しときながらあんな中途半端なところで
退場しちゃったら部下に申し訳ないだろう。

敵キャラは、甲賀衆が怖いですな。
山中長俊の手際の良さと配下の女忍び・氷雨。
ヒロインまで忍びにしなくても良かったんじゃ…と思いましたが、
そういう設定にした理由が最後に語られます。
そして作者様はほんとに権力者嫌いなんですね。
秀吉、自らが百姓の出自だからこそわかる、百姓の恐ろしさ。
虐げられる者から虐げる者になってしまった人間の負の面が滲み出ておりました。

蛇足。
終盤の記述で、
紀州攻めとは「民衆の命を大事にしない中央集権専制国家」と「自由の民」の戦いだった
という一文があります(p.350)。
フランス革命に代表される近代ヨーロッパでは
自由の民(ちょっと定義が違いますが)が勝ち、日本においては国家の勝利に終わります。
これにより自由の民は貶められ、国家の力が増長していくその後の歴史を思うと
なかなか考え込んでしまう記述で印象に残りました。
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2014-02-19

icon_45_b.gif『神剣の守護者』読了。


見どころは神剣を携えた正具が信長を前に啖呵を切るシーン、
ここの舞台がとても映像的で絵になる場面でした。

しっかし、改めて表紙イラスト見てみたら…「神剣を探せ!」的レイアウトになってて神剣涙目。


智本 光隆(著)『神剣の守護者』

とても読みやすいです。
信長の伊勢侵攻については、これまで北畠家だったり
忍び連中がメインの作品がいくつか頭に思い浮かびますが、
楠木一族にスポットが当たってるのは初めて読みました。
歴史改変があるif小説とは異なり、
この作品では伊勢侵攻を題材として、史実の裏にフィクションを添える構成となってます。

神器強奪事件「禁闕の変」から物語が始まります。
この作品の重要アイテムである「草薙剣」にまつわる事件をまず描くことにより、
主人公である楠木一族の使命の始まりがここで語られるだけでなく、
登場人物の人間関係まで縮図として表されているのがうまいですね。
公式あらすじがちと長いですが、重要なので貼っておきます。

天下を統べるにふさわしき人物が現われるまで、この剣を守護せよ」
神器「草薙剣」の守護者となることが、楠木家の使命となって百余年。
伊勢に侵攻してくる織田軍を視察するため
津島にいた若き楠木の当主・正具は、猿顔の奇妙な男の命を救った。
織田との戦がもはや避けられないところまで来たある日、
正具の前に織田家の使者がやってくる。
その使者の名は中村藤吉郎。以前に命を救ったあの猿顔の男だった。
藤吉郎の使命は「神剣とともに楠木正具を岐阜へ連れて来ること」。
第六天魔王を名乗る織田信長とは、天下を託せる人間なのか?
正具はそれを見極めるべく「草薙剣」とともに信長のもとへと向かった―。(単行本より引用)


ということでありまして、物語が大きく動くのはこの直後です。
ボリュームでいえば全体の半分を過ぎたあたり。
秀吉覚醒もここ以降。

伊勢侵攻がメインではあるものの、
戦闘シーンはあまり多くありません。
終盤、少数で織田勢を迎え撃つ正具は、
軍神と呼ばれた楠木正成の末裔にふさわしい軍略を発揮し
ゲリラあり詭計あり夜襲ありの戦で散々に織田勢を苦しめます。
そしてラストは伝承系の締めでありました。
史実のとおりに正具のその後を描くのではないところに
この物語の神秘的要素(というかファンタジー要素?)が出ていて余韻が残ります。

以下、どうでもよいキャラ語り。
主人公の楠木正具、飄々とした雰囲気をまといながらも
一族の使命を胸に抱える強い信念を持った青年です。
智本作品主人公によく見られる、ちょっと皮肉屋さんでもあります。うむ、かっこよい。
幼馴染(と言っても一回りほど離れてますが)のヒロインは
正具の主家である北畠の一の姫・雪姫。
凛としたお姫様で、正具とは若干似た者同士のような雰囲気をお持ちです。

脇役キャラとしては
正具の手足となって働く甥っ子&姪っ子、家臣も頼もしい。
大概良いとことなしの北畠家一族。
ちなみに敵方の織田家武将たちのなかでは、
やはり楠木との因縁つながりで土岐氏の光秀が注目されますが、
それほど出張ってなかったです。うっそりしております。
雑草根性で頑張ってる秀吉は、
上役のいじめに屈せず命の恩人の正具を庇ったりする非常にきれいな秀吉です。
若干きれいすぎるような…。
posted by まるひげ at 00:46 | Comment(4) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-12-30

icon_45_b.gif『光秀の定理』読了。


いい加減この本の感想文書かねば。
図書館レンタ本。

確率論の話があちらこちらに展開されており、
解説読んでもド文系頭にとってはモヤリとした思いが残りましたね。
でも読了感は悪くないです。ちょっと寂しさの残るさわやかさというか。

永禄3(1560)年、京の街角で三人の男が出会った。食い詰めた兵法者・新九郎。辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。そして十兵衛。この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形作ってゆく。光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てられ、瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。彼の青春と光芒を高らかなリズムで刻み、乱世の本質を鮮やかに焙じ出す新感覚の歴史小説!!(単行本帯より引用)
垣根 涼介(著)『光秀の定理』

物語は1560〜1597年まで。
メインの登場人物は光秀、生臭坊主の愚息、そして兵法者の新九郎です。
この物語は、あらすじにあるような
「なぜ光秀が信長に高禄で召し抱えられ、織田家随一の武将となったのか」
という点を突き詰めるのではありません。
光秀の不遇の時代から織田家で出世していくまでの光秀の人となりが語られます。
語り手は、光秀の親友となった二人の男、愚息と新九郎。
釈尊しか尊敬せず、位階や血統、名誉、財力などとは無縁に生きると豪語する僧侶・愚息と
食い詰め浪人ながら、のちに独自の剣技を拓くこととなる純朴な兵法者・新九郎。
この二人の「頑固な先生と叱られてばっかりの生徒」的な掛け合いも読みどころです。

責任感が強く、不器用で人見知りで泣き虫な光秀は、現代で例えるならば
会社での出来事を妻に逐一報告するサラリーマンのようです。煕子大変。
自分の弱さも迷いもさらけ出す光秀は、
ややもすればどうしようもない人物に見られそうですが、
不思議とそんな印象は受けませんでした。
長い不遇の時期を経て、ついに光秀は織田家に高禄で召し抱えられることになります。

ちなみに、クライマックスは六角氏が籠る長光寺城攻めです。
―この山城に至る山道は四つあり、そのうち三つには伏兵が潜む。
光秀は忍びの報告により二つの道に伏兵がいることが分かった。
残るは二つにひとつ。だがその確率は、本当に50%だろうか?―

わざわざこう書くくらいですので、50%じゃないんですよ(笑)。
ここで確率の仕組みが、愚息が行う辻賭博と似通っていることに気づいた光秀は
長光寺城を落とし、以降、織田家での地位を確かなものにしていくのですが…。

終盤は本能寺の変を直接描くのではなく、
穏やかな気質を持つ光秀が精神的に徐々に追い詰められ、
最終的に主君殺しにまで至った経緯を愚息と新九郎が推察するという形をとっております。
そして、タイトルの意味もここで判明します。

ちなみに登場人物のなかで存在感があるのが、藤孝ですね。
この人の悪党っぷりは、初対面で愚息に見抜かれてます。
本能寺の変後、光秀を貶めたことを許せない愚息と新九郎の殺気を封じ込めた藤孝が、
何というか…最後まで本当に策士でした。
posted by まるひげ at 23:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-12-26

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(10)乱世終焉』 読了。


今月の積読本消化1冊目。

ラスト直前の衝撃よ…長政がやりおった。

豊臣秀頼の仕掛けた罠に填まり、徳川秀忠は禁裏に兵を引き入れるという愚を犯してしまう。徳川家康は関東平野で決戦を行うため、すべての防衛線を放棄して関東に集結するよう命令、合わせて結城秀康に家督を継がせ、秀忠には宇都宮城に入るよう命じた。そして奥州の雄・伊達政宗は、上杉、佐竹、南部と合流し、家康との決戦へ向かった。政宗の後詰めのため、箱根の関を突破する豊臣秀頼軍。戦国シミュレーションの傑作、ここに堂々完結!(アマゾン・レビューより抜粋)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(10)乱世終焉』

ものすごくテンポがよろしい最終巻。
今巻みたいなスピードだと10巻もかからなかったんじゃ
見せ場にはきちんとページを割き、戦況描写が冗長になる前に場面転換してくれてます。
…ダイジェスト的という印象が無きにしもあらずですが。

あらすじ補足は以下の通り。

帝を味方につけ、錦の御旗を掲げた秀頼軍。
これに敵対する徳川軍は逆賊の汚名を被ることとなった。
廃嫡され、兄・秀康の代わりに宇都宮城を任された秀忠だったが、
政宗率いる奥州連合軍に攻め寄せられ命を落とす。
そしてついに家康率いる徳川軍と奥州・会津連合軍が関東平野で決戦を迎える―。


秀頼率いる上方勢が決戦地に到着してから
本格的なバトルが展開されるのかと思ったら、秀頼着陣後はすぐに決着がついてしまいました。
上杉・伊達連携の車懸りの陣カッコえぇですね。

読みどころをいくつか。
黄後藤の無双シーンが地味に印象的です。呂布か。
後藤といえば、もうひとりの後藤さん(又兵衛)の動向が
あれっきりというのはちょっと寂しい。
まぁ、この人の見せ場は旧主がとんでもないラストを飾ってくれたから
相殺ということにしとこう。
そして清州城で深手を負った正則も戦場復帰。
仲直りの清正&三成は互いに対するわだかまりを克服。
恥じらうおっさん2人の図は、読んでるこっちも恥ずかしいものです。


当初は独眼竜が天下を掴む話かと思ったんですが、
「都の干渉なしで繁栄できる奥州」という藤原家の悲願を政宗が成就するお話でした。
…まぁ、天下が転がってくるなら拒みはしないという意識みたいですがね。
そして白河の関を境に、南は関白・秀頼が治め、
北は陸奥の領主たちが連合して統治する半独立の連合王国という形に収まりました。
ということで、
全体として見ると明らかに合戦描写の配分間違ってるよな
とか
視点がワールドワイドなのは結構だけど
オープンな(性的な意味で)妖童・秀頼10歳設定は無理があるよな
とか
豊臣徳川伊達以外の勢力の印象が薄いよな
とか
振り返ると色々ツッコミ所は多い作品ですが、
小狡い策をさわやかに発動させ、苦境を乗り切る独眼竜が魅力的な全10巻でございました。
posted by まるひげ at 23:24 | Comment(2) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-12-06

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(9)龍神たちの宴』読了。


11月の積読本消化。

仙台城を包囲され、空前の火力によって砲撃を受けた政宗は、カノン砲を仙台城に設置し、家康のカルバリン砲を鎧井楼ごと打ち崩すが籠城戦はしばし膠着状態が続いた。やがて、優勢にあった家康の軍陣に、凶報がもたらされる。清洲城にあった秀忠が、勝手に上方へと軍を駐留させ、そのため京の風紀は乱れ、町人から徳川軍への怨嗟の声があがり始めたというのだ。動揺の走る徳川軍に、政宗の常識を覆す一撃が襲いかかった!(新書帯より引用)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(9)龍神たちの宴』

あらすじ補足は以下の通りです。

秀忠の暴挙を止めるため、仙台城から撤退を始めた徳川勢。
それを見た政宗は、これまでの劣勢を覆すべく
自然の地形を利用した秘策を発動させる。
政宗の策略に大打撃を被った家康だが、なんとか江戸城へ帰還する。
一方、京では、秀忠が帝を関東へ動座せしめようと禁裏に軍を入れてしまう。
危ういところを秀頼に助力する真田の忍び衆に助け出された
帝は合戦停止の詔を廃し、徳川を朝敵と定める―。


…ということで、
前半が奥州、後半が京(+九州)を舞台とした戦いが展開しております。
奥州戦、伊達と徳川の大砲対決が膠着状態に陥ってしまうので
ちょっと間延びしてるような感を受けます。
その割に、家康が江戸城まで撤退するのはあっという間なんだよなぁ…。

そして上方は動乱も動乱。
妖術を用いた秀頼の秀忠いじめが炸裂して
秀忠軍はほとんど機能していない状態です。
一番あたふたしてるのが目付役の正信と康政っていう情けない構造になってます。

ラストは、地方大名たちの現状をおさらい。
九州とか北陸等の今まで放置されてた各勢力の描写が
「次が最終巻だからとりあえずまとめておけ」感が滲み出ておる(笑)。
posted by まるひげ at 22:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-11-10

icon_45_b.gif『とっぴんぱらりの風太郎』 読了。


現状に流されて生きてきた風太郎が、絶望的な状況のなかで見つけた自らの信念。
忍び仲間たちが胸に抱えるそれぞれの想いと決意。
つないだ希望と果たされなかった約束。
ほんのり切ないラストに静かな溜息が出ます。

天下は豊臣から徳川へ―。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へ転がっていく。やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太郎の前に現れたものとは?(単行本より引用)
万城目 学(著)『とっぴんぱらりの風太郎』

ファンタジー要素ありのエンタメ時代小説でした。
片手で読んでるといつの間にか手が痺れてる重さです。流石に746ページ。
大坂冬〜夏の陣を背景としておりますが、
有名な大名やら武将やらが登場するわけではありません。
主人公との関わりで、高台院や伊賀藩主の高虎がちょろっと出てくる程度です。

出来損ないとして伊賀の国を追い出された主人公・風太郎(ぷうたろう)。
相棒である南蛮生まれの忍者・黒弓の手違いから自分の望む未来を棒に振ったと根に持ち、
「こんなはずではなかった」と詮無いことを愚痴りながらのグダグダ生活が始まります。
自分は何者なのか、これから何をするべきか、将来に漠然とした不安を抱える
彼の精神状態は現代人とも大差ないです。
そんなある日、風太郎の前に自らを“因心居士”と名乗る謎の幻術士が現れ、
「ひょうたんを育てよ」と告げられます。
伊賀つながりの店のよしみで仕事をもらいながらひょうたんを育てる風太郎。基本素直です。

やがて風太郎が秀吉の正室であった高台院から依頼を受け、
とある貴人の護衛を任されるところから物語は本格的に動き出します。
この貴人と高台院の関係は?
幻術士の目的は何か?
そして落城間近の大坂城で風太郎が手にしたものとは―

という展開で、中盤以降は読むスピードが上がります。
ちなみに、読みどころは終盤。
燃えさかる大坂城へ乗り込むところは戦闘シーン続きで緊迫感がハンパない。
同じ作品とは思えないくらいのテンションでした。

以下、気になった点をふたつほど。
読み直してみると、物語序盤から主要な要素が登場しているのですが、
いかんせん話の進みがゆっくりなので、ちょっと間延びしてる感があります。
このボリュームですので「読んだなぁ」という達成感はあるものの、
果たしてこれほど長くする必要はあっただろうか、疑問が残ります。

時代のせいか、みんなあんまり忍びっぽくない(苦笑)。腕は良いんだけども。
忍び仲間たちもキャラが立ってるので会話シーンは退屈しませんね。
でも一人くらい(頭目の釆女様はともかく)忍びらしいキャラがいても良かったのかな。
あと、凄腕の敵キャラ・残菊に最後まで手こずるとは予想外でした。
予想外と言えば、まさか主要キャラほとんど死んでしまうのが寂しい。
posted by まるひげ at 01:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-10-31

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(8)仙道の火祭り』読了。


今月の積読本消化1冊目。

独眼竜負け越しな巻。

奥州の地へ侵攻軍を催した徳川家康は、カルバリン砲をもって石森城を力攻めする。政宗は兵を退き、軍議において家康との決戦を仙台城に移すことを決定する。一方、大坂の豊臣秀頼は、徳川の息の根を止めるための奇計を実行に移す。そこへ、上方を牽制するため清洲城に駐屯していた秀忠が、父・家康への不信感から妄動し、軽はずみな行動を起こしてしまう(アマゾン・レビューより抜粋)。
中里 融司(著)『戦国覇王伝(8)仙道の火祭り』

表紙カバーは政宗の協力者であるスペイン伯爵令嬢・ジュリア姫さん。

あらすじ補足は以下の通りです。

奥州征伐として侵攻してきた徳川軍。
前線基地の石森城で迎え撃った伊達軍であったが、
先鋒の本多忠勝、そして強力な火力兵器を伴う徳川軍本隊に落城してしまう。
兵を引いた政宗は、決戦を仙台城へと定めるが
仙台城までの道程では諸侯の部隊との連携が取れず、
その隙を家康に突かれ、敗戦を重ねてしまう。
一方、毛利、宇喜多、石田ら豊臣有力大名が時を同じくして兵を起こしたとの知らせが
清州城を守る秀忠の元へ届けられる。
大坂方へ京を押さえられることを恐れた秀忠は、
家臣らが止めるのも聞かずに先手を打つため京へ向かう―。


という展開です。
勢い良く戦始めた伊達軍ですが、そう簡単にはにいきません。
前巻から続く徳川軍との戦い、結果だけ見ると伊達軍の敗戦続きです。
今巻にて、戦場はついに仙台城下というところまで来たのでもう後がありません。
決戦は家康のカルバリン砲と政宗のカノン砲対決になるんでしょう。

それにしても。
シリーズ残り2冊というところまできて、あのビックリ要素は必要だったろうか。
女剣士・香義の突然のデレ&春到来はまぁ良いとしても、
曽呂利の正体があの人て…。
正体を知ってしまえば、徳川方じゃなくて豊臣方についてるのが面白いです。

豊臣に味方する大名たちや公家集への牽制と監視のため、清州城へ詰めていた秀忠。
父親から「何があってもオメーは動くな」と釘を刺されたにも関わらず、
周囲に自身の才覚を認めてもらえないことに憤り、人間不信に陥りまくりな秀忠。
お目付役の老臣たちの静止も聞かず、次巻で大変なことをやらかしてくださる気配です。

ラストは上田城の仕返しにうきうきな昌幸@山賊中。
倍返し…倍で済まないですねあの勢いは…。
posted by まるひげ at 22:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-10-12

icon_45_b.gif『姉川の四人 信長の逆切れ』読了。


高潔で武勇無双な浅井長政。超人です。
戦後の論功行賞で美形スマイルを惜しみなく振り撒く信長。ご機嫌です。

どちらも怖いわ。

あの屈辱の金ケ崎の敗戦から三ヶ月。復讐に燃える信長は、盟友・家康をこきつかい二倍近い大軍で浅井長政領内奥深くに攻め込む。楽勝かと思いきや、とことん弱い織田勢は…大誤算にキレる信長、一撃で粉砕、弱すぎる秀吉、どこにいる?光秀、またも巻き込まれた家康。のちの天下人・四人の悪戦苦闘をコミカルに描く痛快歴史小説(アマゾンレ・ビューより引用)。
鈴木 輝一郎(著)『姉川の四人 信長の逆切れ』

独特の人物設定と会話の妙が読んでて楽しいこの「四人」の困ったさんシリーズ。
今回は姉川の戦いにおける四人のドタバタ劇を描いております。
ちなみに史実では光秀はこの戦いに参加した記録はありませんが、
作中では将軍家につくか織田家につくか迷っており、
姉川の戦いにはとりあえず「一山当てる」つもりで参戦(というかほぼ傍観)
という設定になってます。
主人公は、やっぱり巻き込まれ体質の家康。

今作の四人をひとことで言うと。
・コミュ障兼人間不信兼神出鬼没のコスプレ魔の信長。
・「この人居ないと織田家が機能しない!でも兵力はゼロ」…何がなんでも死にたくない秀吉。
・貧乏性を正室からいびられたり息子の将器に嫉妬したり…家中より家庭内に問題のある家康。
・家康が迷うとすかさず懐からサイコロやらちょぼ札やらを差し出してくるバクチ屋光秀。
ちなみに脇役では、稲葉一徹が良い味出してます。
光秀と一徹のじじぃ同志の確執もチラリ。

冒頭、信長が千草峠で何者かに狙撃されるところからスタート。
犯人は最後になるまで判明しないので、疑われるのが例の3人なわけですよ。

家康→伊賀者をかかえているから暗殺しやすい?
光秀→将軍・義昭から密命を帯びている?
秀吉→信長が死ねば織田家乗っ取る or 他家に高禄で召し抱えられる?

といった理由でそれぞれ容疑者扱いされてます。
そういった状況下で、とりあえず「浅井長政ぶっ殺す」宣言をした信長。
信用しきれない者たちに囲まれながら、
果たして強敵の浅井勢を打ち破ることはできるのか―という内容です。
後半が良いですね。
織田軍の備えを次々と破っていく浅井軍の勢いに
家康、一時は信長を裏切ることまで考えます。
焦りに焦る家康の心理が読者にまで伝わってきます。

テンポは前作の方が良いです。
と言っても、長くなった分、戦闘に関する薀蓄がふんだんに盛られているので
読み応えがあるという面もあります。
後書きにありましたが、作者自ら戦場跡を何度も地取りし
史料の記述と実際の地形とを比較したうえでの戦闘描写が詳細です。
このシリーズは、珍しい人物設定と軽妙な会話シーンが話題に上がりますが、
戦闘や当時の時代背景に関わる解釈の筆致はとても鋭く冷めてます。このギャップも素敵。

ということで、今回も楽しく読ませて頂きました。
このシリーズ、本能寺まで続いてくれないかしら。
posted by まるひげ at 23:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-09-08

icon_45_b.gif『天を裂く 水野勝成放浪記』読了。


気になってた鬼日向の本を読んでみた。

序盤から敵方さくさく殺して生首××しちゃうようなDQNだもんで、どうなることかと思いました。

藤十郎勝成、十九歳、盟友は井伊直政、好敵手は石田三成。信長が永楽銭の旗印を与え一人で一万の敵に当たる戦巧者。家康の年若い従兄弟にして三河刈谷・水野家の御曹司。切腹より重い処罰を食らい、天下人・秀吉に命を狙われ、家を捨て、名を変え、主と戦場を渡り歩いた若者が、放浪の果てに臨んだ関ヶ原の大勝負とは!?稀代の戦バカの戦国青春放浪記!(単行本帯より引用)
大塚 卓嗣(著)『天を裂く 水野勝成放浪記』

一文一文が短いのでテンポ良く読めます。ラノベ並みの読みやすさ。
文体の軽快さは読んでいて気分が良いですね。
内容は会話文が多いうえに、話し言葉も現代的です。
ネット発だったり、既存作品の台詞を連想させるような言い回しなんかもあるので
そこんとこはちょっと笑ってしまいました。
良くも悪くもネオ時代小説。年配の方には受けないだろうなぁ。

それはそうと、内容。

若き日の勝成は、
当主である父・忠重の家臣を誤って殺してしまったことで勘当され、
奉公構の憂き目に遭い、十数年の間、名と主を変え戦場を渡り歩く日々を過ごす。
途中、友と呼べる存在や多くの武将たちとの出会いと別れを繰り返し、
たどり着いた地で、勝成は命を賭して守るべきものを見つける―。


というストーリーでありまして、
好き勝手に生きてきた勝成が紆余曲折を経て己を知るまでの成長物語です。
ちなみに時代背景は、天正壬午の乱(黒駒合戦)から島原の乱まで。
婆娑羅武将として殺伐としたフリーター生活してる前半と
のちに名君と呼ばれる姿が想像できるやや落ち着いた後半部分に分かれます。
「風流尽くそうかい」が口癖である戦好きの勝成、
‟傾き者”としての性格は一生変わってないです。
しかし、放浪生活のなかで虚を胸に抱えつつ
己の生き方を掴んだことで、確実に勝成は変わっていきます。
前半と後半とでは、戦を見る目と戦場に臨む心境が異なっているところに
一人の人間として、他者を動かす者として成長した勝成の姿が見て取れますね。

最後に恒例のキャラ語り。
キーパーソンは、備中の豪族・三村親宣。
勝成の後半生に重大な影響を与えた人物として描かれます。ものすごい良い人。
・「勝成の盟友」井伊の赤鬼
まっとうにお役勤めしてる直政かっこよいです。
・何故か一方的に勝成から「好敵手」と思われてる三成
本人の登場シーンはあまりありませんが、
「政をするために生まれてきた化け物」(p.272)という家康の評価がなんかいいですね。化け物。
・ちょろちょろ出てくる又兵衛
勝成をライバル視する道化役的ポジション。基本良いとこなし。
逆に長政がなかなかな人物でした。外面はものすっごい好青年。実は計算高い腹黒さん。
posted by まるひげ at 00:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-09-02

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(7)鹿角の軍神』読了。


8月の積読本消化2冊目。

if小説の直継ってかわいそうな役回りが多い気がする…。

豊臣家の宗主・秀頼が、絶体絶命の窮地に陥った清洲城の掛け替えのない忠臣・福島正則を救出するため、危険を省みずわずかな兵力で出陣した。果たして、秀頼は無事に大坂へ戻れるのか?一方、家康は伊達政宗の本拠地・奥州へと兵を挙げる。その先鋒は、徳川四天王がひとり本多忠勝。鹿角の軍神を迎え撃ち、政宗に運命の戦いが迫る!(アマゾン・レビューより引用)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(7)鹿角の軍神』

今巻は、前半の正則 VS 家康、後半の政宗 VS 忠勝という構図に分かれてます。

とりあえず、いつものあらすじ補足です。

家康の攻撃の前に窮地に陥った正則を救うため
少数の兵をもって隠密裏に清州城へと乗り込んだ秀頼。
清州城は家康に攻め落とされたものの、正則を救出することに成功する。
その後、家康は政宗討伐のため大軍を挙げて奥州へ侵攻する。
伊達領の前線である石森城へ徳川軍の先鋒として攻め込んだ本多忠勝。
守りの堅い石森城攻略に苦戦する徳川軍のもとへ、政宗率いる伊達本軍が近づいていた。
しかし時を同じくして、家康率いる徳川本隊が戦場に向かっていた―。


という展開です。

正直なところ、奥州戦はあんまり興味ないので
秀頼の初出陣となった正則救出戦が楽しい。
…まぁ、出陣といっても、船上待機なのですがね。
落城間近の清州城に乗り込んだ少数精鋭の豊臣勢のチートっぷりがすごい。
秀頼といえば、同盟者である政宗との絆の強さを世間に知らしめるため、
政宗の五女・五郎八姫と婚儀を結ぶことを提案してます。
似た者同士の秀頼と政宗、大坂−奥州間の調整に神経すり減らしてる小十郎が気の毒です。
そしてここんとこ大人しい西方。
島津&鍋島あたり、そろそろ動き出しても良い頃合いですが…。

あと、団右衛門は失業後すぐに再就職できたけど
前巻で黒田家退職した又兵衛、どこで何してるの。
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2013-08-31

icon_45_b.gif『大坂将星伝(中)』読了。


今月の積読本消化1冊目。

前巻ラストの予告で勝永が三成を兄と慕う云々ってありましたが、
そんな雰囲気はありませんでしたぞ。

大にして、広き国―。大航海時代の世界を見つめた豊臣秀吉の国家構想のもとで、朝鮮出兵が始まった。だが、理想とは裏腹に、朝鮮の戦場は泥沼の様相を呈する。そして、夢を果たせぬまま秀吉が薨じたとき、巨魁、徳川家康が蠢動し、天下は再び風雲急を告げる(単行本より抜粋)。
仁木 英之(著)『大坂将星伝(中)』

中巻の内容は、肥後の国人一揆から関ヶ原の戦い終了まで。
メインは朝鮮出兵ですね。
関ヶ原の戦いはほんとにあっさりさっぱり終わります。

この巻で勝永は、自らの戦う意義を見出します。
秀吉の掲げる「大にして広き国」実現のため、
秀吉の死後も豊臣家を主として盛り立てていこうとする勝永。
さらに、朝鮮の戦場、関ヶ原の戦いを通じて多くの武将と出会い
それぞれが信じる志に触れることになります。
名護屋城下では真田幸村、木村重成との邂逅があり、
これで大坂の陣に関わりのある人物がすべて揃いました。

関ヶ原の戦いでは、勝永は序盤の伏見城攻めで戦功を挙げます。
ところが本戦では南宮山配置になってしまうので、勝永は出陣することなく敗走、
結果として領地の豊前国が没収され、土佐の山内一豊のもとへ身柄を預けられます。
終盤、戦は終わったのかと問うおあんに対し、
「終わらない、続いていく」(p.338)と応じた勝永の台詞が、
そのまま大坂の陣へと繋がっていく形で以下続巻。

キャラを見てみると…
なんだか、想像したよりお玉が勝永に突っかかっていかないな、と。
そして勝永の正室・おあんの出番がほとんどないな、と。
あとはオリキャラの朝鮮人・郭絶義がなかなか面白い立ち位置のおっさんでした。

秀吉の志を妄執と断じ「小にして厚みのある国」を築こうとする家康。
勝永と家康はこれまでは険悪な仲ではないのですが、
大坂の陣へ至るまでの勝永の感情の変化が楽しみです。
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2013-08-23

icon_45_b.gif『くるすの残光 いえす降臨』 読了。


三戸とか戸来とかって地名が出てきたから、
もっとトンデモなナニャドラヤ的何かが展開されるのかと
恐る恐る読んでしまったじゃないの。杞憂。

<その力は本物か、それとも――>
天草四郎の遺志と力を継ぐ心優しき忍者・寅太郎。“あの方”の復活のため、“聖遺物”を取り返す戦いを続ける彼らの前に"いえすの生まれ変わり"を称する少年が。その力を目にしたとき、激しい驚愕が寅太郎を襲うー(アマゾン・レビューより引用)。
仁木 英之(著)『くるすの残光 いえす降臨』

これまで、茨冠と聖槍を取り戻した寅太郎たち。
敵方の手で強大な力を発揮した聖遺物ですが、
キリシタンたちの手では本来の力を引き出せないでいます。
ちなみに、序章を読むと今回の聖遺物は「聖骸布」であることがわかります。

今作は3つの勢力がそれぞれの信念を貫くため闘っております。
ひとつは、寅太郎たち天草四郎の修道騎士、
もうひとつは天海とその配下のキリシタン討伐部隊「閻羅衆」、
最後は奥州で「神の子」と讃えられる少年・一起と隠れキリシタンたち。

高度な製鉄技術を持った奥州の山の民たちは、同時に熱心なキリシタンでもありました。
彼らを水面下で保護してきた伊達藩でしたが、
藩主・政宗の死後、幕府によるキリシタンの弾圧が本格化します。
「いえすの生まれ変わりが奥州の地に現れる」という予言を信じ、
迫害を耐えてきたキリシタンたちが一起を戴き、
神の国をつくるため蜂起する機会を窺っていました。
奥州の隠れキリシタンの噂を聞いた寅太郎と佐七は、
蜂起は無謀であると説得を試みるものの、奥州のキリシタンたちには受け入れられず、
逆に山の民と一起の力に圧倒されてしまいます。
そしてついに奥州のキリシタンの軍勢が仙台城を取り囲み、
寅太郎、一起、公儀の三つ巴の戦いが始まってしまい―。

いささか長くなりましたが、そんな展開です。
なんだかこのシリーズ、読んでいるとモヤッとしますな。
主人公である天草四郎を奉じるキリシタン側の主張が弱い、というか説得力がないんです。
いつも敵側の論法に霞んでしまっている印象を受けます。
今回は、同じキリシタンでありながら宗派の異なる者たちとの対立です。
対立した相手側のことを考えてくれないんですよねぇ。
敵の敵は味方、とはならないところが惜しい。
まぁ、たとえ共闘して幕府を相手にしたとしても、
互いに相手を認められない状態で勝てるわけもないんですがね…。

敵方の井上政重(元キリシタン)がかっこよいご老体です。
「信仰を取り戻せ」と言うキリシタンに対する返答が揺るぎないものであるのが潔い。
敵といえば、天海の過去(光秀が天海となった経緯)も明かされています。
ベタなので隠す必要ないなぁ…(苦笑)。

一方、その他修道騎士メンバーは。
寅太郎と佐七(+お雪)以外は、待機でした。
そのなかでも前作で、天海の呪術によって甦った立花宗茂に完敗した荘介。まだ落ち込んでます。
悶々とする荘介の前に萩藩の侍から仕官の誘いがかかります。
いわくつきの話ではあるものの、
キリシタンも絡んでいることもあり、荘介は仕官することを決意。
ということで、次作の舞台は萩ですね。
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2013-08-12

icon_45_b.gif『関ヶ原』読了。


図書館レンタ本。

結果的にみんな「こんなはずではなかった…」感が半端ない。

秀吉の死後に豊臣家で起きた内部抗争を、三成の娘・辰姫を養女にし、天下の平安を願い続けた寧々はどんな思いで見ていたのか? 三成・家康の視点を交えて描く「寧々の関ヶ原」(アマゾン・レビューより引用)。
岡田 秀文(著)『関ヶ原』

物語は秀吉の死の直後から始まり、
関ヶ原の戦い後、寧々に預けられていた三成の三女・辰が津軽家へ引き取られるところまで。
父の勝利を願い、その身を案じる辰は7歳とは思えない落ち着きを見せておりました。

三成と寧々の不仲説に新解釈、というフレコミでしたが、
読んでみたら新解釈ってほど目新しいものではないかと。
三成、家康、寧々、三者の視点からの関ヶ原を描いた作品でした。

ここでの三成は、
当初は家康の野心を警戒しつつも、その人望と軍事力を頼みに連携して
政権を取り仕切っていこうと半ば本気で考えているところが面白い。
家康が秀吉の望み通りに振る舞うならば家康を支えていくよ! 的心意気です。
ところが、利家の死後から豊臣家をないがしろにし、
三成と敵対する立場をとった家康は打ち倒すべき存在となります。そっからは容赦ないです。
と同時に、寧々のもとには幼い我が子を預け、出自を隠して養育してほしいと依頼したり。
利家存命時点でのこの行動、三成の覚悟の程が推し量れようというものです。

一方、利家の死後は「三成ごとき何も出来ないだろう」と高を括っていた家康。
ゆるやかな政権簒奪を考えていたものの、
自らの天下取りへの道を大きく狂わせられたことに気づき、三成を徹底的に警戒し出方を窺います。
時が経つごとに、家康にとって悪い方向へと動いていく情勢。
この作品での家康は8割方焦ってます。

そしていまひとりの重要人物である寧々は、
豊臣家のため、秀頼のために、家康に従うことを余儀なくされます。
家康の律義さを信じつつも信じきれない、
中途半端な気持ちに懊悩し続けた寧々が下した決断は
「どちらの味方にもつかない、和平の使者となる」というものでしたが…。
秀吉の死後は徳川へと傾く時勢とはいえ、

「避けられぬ戦であるなら、秀秋にかぎらず、自分の身内たちには、大坂のため、
豊臣のため、戦って欲しい。」(p.281)


この独白が偽らざる寧々の本心であったと心情的に納得できますな。

また、関ヶ原の戦いは東西両軍それぞれに身を置く大名たちにとっても
自身の思惑の齟齬が続いた末の戦であったことが描かれます。
ある理由により天下を望んだ輝元、
豊臣家への忠義心と家中の徳川派の家臣たちとの板挟みに苦しむ秀秋など
「なるほど、そんな風に考えていたのかも」と思える心理描写でした。

あと、どうでも良い注目点。
佐和山主従は、落ち着いたもん(?)です。『太閤暗殺』でのキャッキャぶりどこ行った。
結構喧嘩っ早いというか家康始末を主張するのが左近で、
三成は戦が諸処にもたらす影響を慮り、
ぎりぎりまで武力に訴えることを回避しようとします。
こういったところは「暗殺は卑怯だ」と正義感に燃える三成が反対した、
とするよりも現実的で良いですね。
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2013-08-08

icon_45_b.gif『荀ケ 曹操の覇業を支えた天才軍師』読了。


7月の積読本消化2冊目。
久しぶりの三国志関連本。積んでるうちに絶版になっちまった。

乱暴に言ってしまえば
序章と終章とあとがきを読んでしまえば事足りる話です。乱暴だな!

中国・三国時代。曹操のもとには「王佐の才」を謳われる男がいた。その名も荀ケ。「王佐」とは王を佐けるの意。文字通り政戦両略にわたって曹操を支え、その覇業を援けた。曹操の留守を狙って攻め寄せた呂布を撃退する、袁紹の息の根を止めるよう迷う曹操に進言する等、まさに魏の建国は荀ケなくしてありえなかった。その秀でた才能ゆえに非業の死を遂げた男の波乱に満ちた生涯を描く(文庫より引用)。
風野 真知雄(著)『荀ケ 曹操の覇業を支えた天才軍師』

ちなみに序章と終章は荀ケの死の間際で、
本章は荀ケと曹操の出会いから始まる回想シーンです。
今まで書物で描かれてきた荀ケと曹操の人物像と事跡との不一致を取り上げ、
そこから荀ケの死にまつわる「空の器の逸話」の新解釈へと展開していきます。
荀ケが漢の再興を願う忠臣で、
王位簒奪を狙う主君・曹操との軋轢が…というのがデフォですが
実際は逆だったのではないか、という発想の転換が面白い。
その着想は素晴らしいのですが、
いかんせん、本編が平坦でダイジェストすぎるのが残念です。
曹操軍内の他の武官や文官たちとの交流があまりなく、
荀ケが曹操の参謀として助言や献策をする場面がほとんどです。はっきり言って単調です。
曹操の前に仕えていた袁家は人いっぱい抱えてるし、
呂布や劉備なんかもちょろちょろ出てきてはいるんですがさほど印象に残る人物でもないし。
人間関係をもう少し深く描いてくれたら読み応えあったんですがね…。

まぁ文句ばかり言っても仕方ないので
この作品一番の魅力である空の器の新解釈について一言。

曹操から荀ケに器は贈られ、
そこには曹操から荀ケに向けての好意を示すものが入っていました。
つまり、器は空ではなかったのです。
器のなかに入っていたものは曹操と荀ケふたりだけが分かる品だったのですが、
曹操の好意を理解しながらも荀ケは
「空の壺を贈られた荀ケは己が無用となったことを悟り自害した」
という噂を流すよう家人に命じ、病死します。
そのような謀を弄した荀ケの真意は、そして荀ケの死を知った曹操はー。

時を経るにつれ、どちらからということもなくすれ違っていった主従。
ひとつの器を通じて互いの心中を察することとなるのですが、
曹操と荀ケ、どちらも望むもののために
その感情を封じなければならなくなるのがやりきれない、そんな読了感でした。
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2013-08-04

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(6)東海道の荒武者』読了。


7月の積読本消化1冊目。

表紙は淀殿。戦に出向く我が子を静かに見送る聞き分けの良い母御です。

乱世の再来は、公家達の間にも嵐を巻き起こした。京洛では、徳川方につくか豊臣方につくか、百鬼夜行さながらの密談が繰り広げられる。右大臣就任の御礼言上という名目で馬揃えを行い、軍事示威行動をとる豊臣秀頼。天下への野望を剥き出しにした徳川家康は、東海道における上方の防衛拠点である清洲城攻略に取りかかった。窮地に立たされた清洲城主・福島正則の命運は?(新書帯より抜粋)。
中里 融司(著)『戦国覇王伝(6)東海道の荒武者』

秀頼と政宗が思い描く商業中心の政治体制と
家康が理想とする土着の農業主体の政事との比較や
さらには秀頼(+政宗)支持のイスパニア VS 家康支持のオランダ、という構図が決定的になってます。
それにしても今巻は結構引っ張りましたねー。
まぁ、秀頼の出馬が実現するか!?というところなので無理はないが。

とりあえず、あらすじ補足を以下に。

策略により、家康派の公家たちによって出された弓矢停止の詔。
その間に家康は四国へ手を回し、長宗我部、藤堂らを味方につけることに成功し、
東西から大坂を攻略する作戦を実行する。
また、言いがかりに近い大義名分を掲げる徳川勢に攻め寄せられた福島正則は、
大坂方の援軍を恃みとせず籠城策をとるが、圧倒的な兵力差を目の当たりにし窮地に陥る。
激戦地となった清洲城へ密かに近付く三隻の船。
そのなかには、正則救出を決意した豊臣秀頼の姿があった―。


という感じです。

序盤、豊臣か徳川どちらにつくか公家連中のおじゃる会話がキーポイント。
この喰えない殿上人たち&西国の大名たちを味方につけようと
崇伝や教如やら坊主連中が暗躍してます。胡散臭いことこのうえなし。
一方、帝が発した合戦停止の詔勅のため、公に清洲城へ後詰を出せない大坂方。
秀頼は相変わらず10歳とは思えない策謀を思いつき、正則救出への道を開きます。

本筋である正則攻略は物語が半分ほど進んでから。
秀吉の死後、家康に加担した正則はかつて大局を見誤った己を悔い…
とはいかず、徳川方へと自分を唆した長政や
今まで律義者の皮をかぶっていた家康に怒りの矛先が向かってます。
ちなみに且元も「内府さまに楯突く秀頼さまが悪い!わしは悪くない!!」
的思考をしており、責任転嫁甚だしいですこの七本槍メンバー。

脇役サイドでは
家康の掌の上で踊りまくってた且元の一時(?)退場、
浪人・塙団右衛門の豊臣方への助力なんかがあります。
とっても愛嬌のある豪傑団右衛門、清洲城戦で派手に暴れてくれそうです。
あと、ついに又兵衛が長政見限って黒田家出奔。
長政のテンパり具合が半端なくてちょっと可哀想になってきた…。

次巻ではいよいよ秀頼の戦場デビューです。
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2013-06-22

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(5)北辺の守護神』読了。


今月の積読本消化1冊目。

一冊まるっと伊達 VS 最上でした。ちょっと飽きるくらい。
戦闘ばっかりしてた印象です。

徳川家康に使嗾された最上義光は、豊臣方である小野寺義道の居城・横手城を攻めた。これを奥州統一の好機と捉えた伊達政宗のもとに、上田城陥落後ゲリラ化していた真田信繁が、幸村と名乗りを変えて馳せ参じた。強力な助っ人を得て欣喜雀躍する政宗は、伯父である義光を討つべく北上を開始する(新書帯より抜粋)。
中里 融司(著)『戦国覇王伝(5)北辺の守護神』

今巻の舞台は奥州でございます。
つーか、潜伏生活楽しそうだな昌幸。わくわく山賊ライフ満喫してます。
真田はゲリラやらしてナンボだよ!

とりあえず、あらすじ補足を以下に。

徳川方についた最上義光が豊臣方である横手城を攻めたことをきっかけに、
政宗は本格的に奥州統一へと動き出す。
上田城陥落後、富士山麓に潜伏しつつ徳川勢の隙を窺っていた真田昌幸は、
息子・信繁を配下の忍び衆とともに政宗のもとへ向かわせる。
協力者を得た政宗だが、実母・保春院が人質として義光に同行していることを知る。
保春院救出のため最上軍へと潜入する真田忍びと紅脛巾たち。
そして新たな戦法と調略を用いて最上軍を瓦解させた政宗は、奥州の覇権争いに勝利する。


ということで、奥州へ派遣された幸村、遊軍扱いで身軽に活躍してます。
活躍といえば忍びの皆様も派手に立ち回っておられます。
とりわけ保春院を救出するため最上陣内に潜入した紅脛巾たちの活躍が目立ちました。
義光は潔い最期だったのがちょっと意外。

前巻で完成した騎馬鉄砲隊“騎砲隊”の活躍があったり、
政宗が独自に考案した陣形が大当たりしてます。
読んでる最中は具体的な陣形がどんなもんなのか読み飛ばしましたがわかりませんでしたが、
あとがきの秀頼&小十郎の会話ネタからなんとなく想像つきました。
…所謂ファランクスだよね?
ファランクスというとギリシア版を思い起こすんですが、
政宗が参考としたのはアレキサンダー大王版。騎馬隊使ってるし。
これまでのジュリアの発言でテルシオやカラコールといった
西洋の陣形が紹介されてましたが、この戦いのための前振りだったのですね。

ちと不満な点は、
この間の他の大名たちの動きが描かれてなかったこと。
最後に秀頼と家康の状況が判明してますけれど、もう少し内情が知りたかったなぁ。
家康は上方侵攻のため東海道の重要拠点・清洲城攻めに動き出し、
秀頼はそれを阻止するために出馬を宣言したところで以下続巻。
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2013-06-04

icon_45_b.gif『大坂将星伝(上)』読了。


5月の積読本消化2冊目。

一番テンション上がるのは冒頭6ページの大坂の陣のワンシーン。
「新しき世を産む前に、美しき地獄を見ろよ、家康」(p.9)のとこね。

「惜しいかな後世、真田を云いて毛利を云わず」天下一統が成らんとする戦国末期、豊臣秀吉の側近である黄母衣衆の森家に、一人の男児が産まれた。―彼の名は、森太郎兵衛。太郎兵衛は、後藤又兵衛や長宗我部元親、そして立花宗茂など、強き者たちとの出会いを通じて成長し、齢十一にして大名となるのだが…(単行本より抜粋)。
仁木 英之(著)『大坂将星伝(上)』

ということで、毛利勝永こと森太郎兵衛の成長物語。
書き手が仁木さんなので安心の読みやすさです。
上巻の内容は本能寺の変〜秀吉の九州平定まで。
勝永的年表で言えば、ちょうど満5歳〜10歳のお話です。
長浜城下の幼少時代から始まり、竜造寺政家の娘を娶るところまで。
太郎兵衛、年齢が年齢なので感情に左右されることが多いですが、
歳の割には分別のある落ち着いたお子様でした。

秀吉の黄母衣衆である厳格な父・吉成のもと、
叔父たちに武芸や兵法を教え込まれた太郎兵衛は
吉成の馬子として戦場へついていくことを許されます。
そこで出会った戦国武将たちの強い信念に触れ、
太郎兵衛の精神が鍛えられていく様子がメインとして描かれております。
上巻では、山崎の戦い、小牧長久手の戦い、九州征伐等
大きな戦に接しておりますけれど、参加というより傍観者的立場です。馬子だし。
そのくせ大物人物と接点があるのは…主人公補正というやつです。

有名武将がゴロゴロ登場しますが、基本的に悪人はおりません。
盛親や宗茂などはそれほど深く関わってはこないのですが、
後に勝永と強く繋がる人物をうまく絡めてきてるな、という印象ですね。
でも「明石のおっさん」はちょっと無理に引っ張ってきた感があったりして(笑)。

上巻で太郎兵衛と一番つるんでいるのは、
天下が秀吉の下治まろうという時勢、槍一本で名を挙げようとする後藤又兵衛。
ふたりの交流が微笑ましいです。
またべ、子守上手いな!
ちなみに又兵衛は主君である吉兵衛とはすでに険悪ムードでした(笑)。

ラストは、絡み酒で人格変わってる三成…もとい肥後国人一揆勃発でシメ。
そして中巻予告「兄と慕う石田治部少輔三成と共に、関ヶ原で家康を迎え撃つ!」
…次巻で勝永と三成の間にどんな出来事が出来したのか、そっちの方が気になるわ。
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2013-05-11

icon_45_b.gif『天下人の血 桃山乱戦奇譚』読了。


あっという間に読んでしまいました。
読み返してみたら、今作のヒロインは大政所でした。ばばさーッ!!


智本 光隆(著)『天下人の血 桃山乱戦奇譚』

公式あらすじは以下の通り。

天正十七年、小田原。二年ぶりに帰参した豊臣秀勝は、
真砂五右衛門からひとつの忠告を受ける―「敵は外ではなく、内にいる」。
混迷する太閤・秀吉の天下。そこに下されたひとつの命。
「天皇を助けて秀吉を討ち取った者が次の天下人である!」
伊達、徳川、蒲生、細川、そして豊臣秀次・秀勝兄弟…。
己の天下を目指して、皆が一斉に「秀吉の首」を狙う!果たして次の天下人は誰か?
(新書帯より引用)


公式さんよ…徳川は外してもいいだろ。
ということで、
秀吉の甥である秀勝が文禄の役で病没せず
左目を失いつつも日本へ戻り、秀吉の天下を覆すという展開です。
ちなみに首取り合戦に突入するのはかなり終盤でした。
自分のようにif小説をもっぱらキャラ小説として読んでいる方は別として、
シュミレーション部分を重視する方にとっては物足りない内容でしょう。
何より1巻で終わりというのがネックですね。

以下、ちょっとネタバレ注意の感想文です。
posted by まるひげ at 23:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-04-30

icon_45_b.gif『秀頼、西へ』読了。


今月の積読本消化4冊目。

なんだろう、特に誰に思い入れすることなく淡々と読み終えてしまった。
謎と謎が絡み合って複雑な様相を呈しているのですが、
仕掛けがわかったところで「な、なんだってー!?」とまではならないような気がする。

戦国末期。天下を手中にしようとしていた徳川家康は、大坂城に配下の者を忍び込ませた。一方、真田大助は、父・幸村より、落城の際には秀頼を連れ出し落ち延びよ、という密命を受ける。目指すは薩摩、島津家の元。燃えさかる大坂城を脱出した一行は西へ―。誰が味方で誰が敵なのか?行く手には、想像を絶する謀略が待ち受けていた!迫真の傑作時代ミステリー(文庫より引用)。
岡田 秀文(著)『秀頼、西へ』

時代ミステリif物語。
大坂城落城後、秀頼は真田とともに薩摩へ逃れたという伝説を下敷きにしております。
夏の陣の間際、薩摩の島津家が大野治長に密かに伝えた言葉。
それは「大坂城落城の折には秀頼を薩摩へと落とす」という約定だった。
その密約を知る真田幸村は、嫡男・大助に秀頼の側へ仕えることを命じる。
やがて大坂方の敗北が決し、炎上する大坂城から秀頼を脱出させることに
成功した大助だが、薩摩行きの途上には秀頼の逃避行を助ける者たちと
それを阻止する者たちの存在があり―。

という展開です。
物語は大坂冬の陣終了後からスタート。
序盤から、徳川方、豊臣方の登場人物の企みが少しずつ語られていき、
中盤あたりでぼんやりと各勢力の思惑が掴めてきます。
人物の行動が入り乱れているのでちょっと混乱しますね。
まぁ、それが作者の狙いなのでしょう。
「このとき秀頼一行を襲ったのってどこの勢力?」
「ふたつの勢力がぶつかったけどお互いに相手の正体わかってるんだったっけ?」
という感じで、数ページ前に戻ること幾度かありました。

命がけの逃避行なので危機的状況もたくさんあるのですが、
主役級の大助くんが割とほんわりしてる性格なのが心配になるやら笑っちゃうやら。
薩摩までの道中で成長していく秀頼と大助、
家康と正純の謀略、島津家の内情がキーポイントです。
一部の隙も無く悪役な正純。似合う役回りだわー正純ー。

最後の最後で明らかになる家康の本心と
大助が重要人物である姫君にかけた言葉が
後の世の情勢を暗示しているところなんかも心憎い趣向でした。
残念なのは、後味があまりよろしくない点。
岡田作品にスッキリ明るいものを期待したわけではないんだけども。
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2013-04-24

icon_45_b.gif『時限の幻』読了。


図書館レンタ本。

政宗と盛備、二人静かに並んで座ってるのにテーブルの下ではお互い足蹴り合ってる、そんなイメージ。

天下の趨勢が織田信長に傾いていた戦国中期。「会津の執権」金上盛備は、ときに政略結婚で隣国の動きを封じ、ときにあえて仇敵と同盟を結び、巧みな外交術で主家・蘆名氏を支えていた。しかし本能寺で信長が倒れるや、天下を狙う隣国の若き当主・伊達政宗が牙をむく。一気に蘆名を平らげるべく暗殺者を送り込んだのだ──。合戦の勝敗は、始まる前に決まる。「外交の達人」金上盛備と「独眼竜」伊達政宗の、奥州の覇権を懸けた謀略合戦が幕を開ける(アマゾン・レビューより抜粋)
吉川 永青(著)『時限の幻』

ダブル主人公となっております。
一人は説明不要の独眼竜・伊達政宗。
二言めには「殺すぞ」って言う結構なDQN坊ちゃんでございます。
もう一人は、巧みな外交手腕を称えられた「会津の執権」こと蘆名家筆頭家老・金上盛備。
…マイナーですねー(笑)。
会津を治める蘆名一門衆の家柄でありながら
家臣としての立場を貫き、会津の守りに生涯を捧げた人物です。頑固で真面目な爺さんでした。
天下取りのために時を早く進めたいと願う政宗と
蘆名家家中をまとめるために時を止めたいと願う盛備。
とぢらの願いも時限のものであり、結果的には幻となってしまったという物語です。

お話は伊達と蘆名の内情が交互に語られる構造となってます。
政宗が家督を継いでから勢いを増す伊達家には
先代からの有能な軍師や多くの若い家臣たちの支えがあったのに対し、
蘆名家は主君が相次いで亡くなり、
譜代の家臣たちと他家から迎えた主君の家臣たちとの軋轢、
すれ違いや主張の相違による盛備の孤立化など、落ちぶれる一方です。
なんかもう、蘆名サイドがガタガタに崩れていくさまが哀れでいたたまれない。
盛備おじいちゃん一人で頑張ってるからに!

伊達と蘆名、正面切ってぶつかり合う戦はあまりなく、
大きな戦いは人取橋の戦いと摺上原の戦い。
それ以外は血で血を洗う謀略やら調略の応酬が描かれます。
水面下での熾烈な戦い…えげつないです。

蘆名を手に入れたけれど、天下を取るという最大の目的は果たせなかった政宗。
家中をまとめ切れなかったけれど、天下が定まるまで蘆名家を存続させた盛備。
結局は政宗も盛備と同じように、家名を存続させるために天下人へ従うという道を選びます。
盛備があったればこそ、天下への野望を燃やし続けられた政宗という構図が良いですね。
情感を抑えた筆致で割と淡々と進むのですが、ラストは少し切ない余韻を残しておりました。
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2013-04-23

icon_45_b.gif『戦都の陰陽師 迷宮城編』読了。


今月の積読本消化2冊目。

ラストがあんなに甘酸っぱサワヤカな幕引きだとは想像できませんでした。
疾風と光子の微妙な関係がずっと繋がっていると良いなと思う。
それにしても光子は当初から結構攻めてるよね(笑)。

破魔の霊剣・速秋津比売の剣を奪還した、陰陽師の土御門光子と、疾風ら7人の伊賀忍びたち。だがその剣は妖術師・果心居士の施した蠱物におかされており、それを運ぶ光子の力をどんどん奪っていく。果心居士に操られた“虫憑き”の妖忍や、松永久秀の軍勢、魔性の天狗らの襲撃を撃退しながら、光子は果心居士を討つため信貴山城へと向かう。だが霊剣に最後まで纏わりついた、とてつもなく邪悪な蠱物が、ついにその正体を現した―(文庫より引用)。
武内 涼(著)『戦都の陰陽師 迷宮城編』

緩急自在な物語展開に、やっぱり一気読み必至な完結編でございました。

前巻にて霊剣を奪還した光子一行が多聞山城から脱出するところからスタート。
今巻は、シリーズ最終巻にふさわしく
陰陽道の戦いも忍びたちの戦いもヒートアップしてます。
人妖入り乱れたバトルが緊迫感を煽りまくり。
敵方は天魔の天狗、果心居士、ラスボス“夜刀の神”という三段構えで光子たちを苦しめます。
そして、戦闘の合間に挿入される一時の平穏な日常。
木賃宿で過ごした仮の生活や旅の途中に一息吐く場面等は
読んでいて本当に心和みます。そしてちょっとニヤニヤしちゃう。
これまでの過酷な旅を通して深まった光子と伊賀忍びたちの絆に胸熱でありますよ。
また、出雲編と異なり、この奈良編では
伊賀の皆様から脱落者が出てないのが良かったです。
疾風と光子の仲を見守るというより野次馬根性丸出しな飛鳥をはじめ、
個性の強い伊賀忍びたちの強い連帯感が頼もしい。
お色気担当じゃないのに今回も全裸で戦う羽目になった蘭…お疲れ様です。

特にツボなシーンは
藤林一党の秘技・もぬけの術が破られたところ。
すべてが終わった後の疾風の告白と合わせて印象的な出来事です。
しっかし、光子は疾風の立場を考えてやるべきでしょう。
…まぁ、17歳の公家の姫様ということを考慮すると無理のないことなのかもしれません。
敵味方の区別無く、すべての者を救いたいという光子の願いは
崇高ではあるものの、あまりに理想的。

脇役サイド。
葦姫と新次郎はつらい展開になってしまいました。
葦姫を失い、自暴自棄になった新次郎ですが、
光子と伊賀の忍びたちに接したことで彼が下した決断が
その後の妖との戦いに大きな影響を与えることとなります。
新次郎といえば、ちょっとしか出てこない左近の記述がムダに格好良くて正直ずるいと思った。
贔屓目ではないはず。

ひとつ文句を言うとすれば。
毎回言ってることでありますが、物語の構成配分の問題。
終盤の信貴山城ステージ(ステージ言うな)にもっと時間かけるのかと思ってた。
中盤が長かったこともあるので、余計バランスが悪く感じるのかもしれません。
でもなんだかんだ言っても非常に楽しく読ませていただきました。

次の文庫化(単行本?)は「デジタル野生時代」に連載中の『秀吉を討て』でしょうか。
楽しみです。
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2013-04-21

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(4)西海の猛虎』 読了。


今月の積読本消化1冊目。

文庫版が3巻までしか見当たらないので4巻以降は新書版を購入。
表紙カバーはせいしょこたん。

妖童・豊臣秀頼の出現により再び巻き起こった乱世の風雲は、九州へも波及した。豊臣家を支持する加藤清正、黒田如水らは、日向、肥後に軍を進めた島津を討伐すべく兵をあげた。一方、伊達政宗は、難破したイスパニア船から石火矢と西洋の戦術を手に入れ、新たなる野望に燃えていた。徳川か、豊臣か。あるいは第三の天下人が現れるのか?戦国の世は、ますます混迷の度合いを増していく! (新書帯より抜粋)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(4)西海の猛虎』

中里氏の清正と三成は和解するパターンが多いのでしょうか。漢の友情熱いわー。

それはともかく、あらすじ補足は以下の通り。

常陸と信濃を新たに領地とした家康は、
九州と結ぶことにより大坂を挟撃しようと画策する。
一方、秀頼へ呪詛を放った島津家。
かつて秀吉により九州統一の夢を砕かれた無念を晴らすため、
さらには天下を狙う野望を抱いて豊臣家に反旗を翻す。
関ヶ原の戦いの後、豊臣を守るため島津を警戒していた如水率いる連合軍は、
勢いに乗る島津軍を押さえ込もうするが、味方の裏切りに遭い危機に陥る。
老いた己よりも有能な若者が秀頼には必要だと断じた如水は
清正らを戦場から逃した後、命を落としてしまう―。


ということで、メインバトルは九州の地で、
バックに家康のついた島津 VS 如水&清正という構造です。
如水の退場は早いですね…。
如水最期の呟きにより、又兵衛が徳川方を去ることがこれで決定しました。
それにしても長政の嫌われっぷりが徹底されてて可哀想になってくるw

大坂では、秀頼&三成が本調子ではないことにより、野心出てきたのが且元。
これは家康には願ったりな要素です。

おっと、忘れてた奥州筆頭。今巻は出番少なめ。
ジュリアからイスパニアの軍法や戦法を吸収した政宗は、
騎馬隊に鉄砲を装備させた「騎砲隊」を考案。
次巻にて最上のおじさんがこの餌食になりそうな予感です。

ラストではゲリラ化した真田勢が徳川の輜重隊を急襲。
真田がこのまま秀頼の元へ向かうのか、
それともどこか地方の軍勢と結ぶのか、気になるところ。

それにしても、秀頼のあの性質はサービスシーンなのだろうか。
腐女子しか喜ばんじゃろ…。
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2013-04-07

icon_45_b.gif『戦都の陰陽師 騒乱ノ奈良編』 読了。


3月の積読本消化2冊目。

予想というか期待をしていなかったと言えば嘘になるけど。
ほんとに出てくるとは思わなかったよ、左近。訛っててもかっこいいよ!

時は戦国。大陰陽師・安倍晴明の末裔たる土御門家を“魔天の四天狗”を名のる魔物が襲撃、魔を滅ぼす霊剣・速秋津比売の剣を奪い去る。それは裏蘆屋の流れをくむ妖術師・果心居士の指図だった。果心居士は奸雄・松永久秀を操り、恐るべき陰謀を企てていた。霊剣を取り戻すため、土御門家随一の使い手・光子姫は、凄腕の伊賀忍び・疾風らに守られながら、久秀のいる多聞山城をめざすが―。新説・陰陽師物語、待望の第2巻(文庫より引用)。
武内 涼(著)『戦都の陰陽師 騒乱ノ奈良編』

前巻で陰陽師の姫・光子が出雲から持ってきた霊剣が
魔の者に奪われてしまうところからスタート。
ちなみに今回は、忍びたちの戦闘より陰陽師同士の戦いの方が多いです。
本格的なバトル描写は序盤と終盤のみで、
本編の大部分は魔の者との闘いのための情報収集と下準備の様子が描かれます。
ここのパートが結構長いのですが、
今巻の舞台となっている奈良の緊迫した状況や
登場人物たち(敵味方どちらも)の行動や感情が丁寧に描かれているので
中だるみという印象は受けませんでした。読み応えだっぷり。
ということで、
なんといっても読みどころは人間関係ですね。
光子と祖父との絆がとても強くて、これはもう全米が泣くレベル。
大切な人間を想うがため、命を懸けて全力で護ろうとする光子の姿を見て、
今まで一定の距離を置いていた伊賀忍びの惣領・疾風の心にも変化が現れた様子。
この2人の仲もね、気になるわー。
気になるといえば、前巻よりもさらに竜牙と蘭の仲が縮まってるのも見逃せない。

さらに今巻は、光子一行以外の脇役の活躍も目立っているところが嬉しいです。
なかでも面白いのが、松永軍に身を置く柳生新次郎厳勝。
敵方の筒井軍の勇将・島左近の親友であり、
本音としては久秀を見限り筒井軍に合力したいわけですよ。
ところが、父の宗厳は筒井一族を憎むあまり久秀に忠誠を尽くすの一点張り。
また、新次郎が想いを寄せているのが久秀の正室・葦姫。
この葦姫が新次郎に久秀暗殺を仄めかしたりしてややこしいことに…。
現実と本心の板挟みとなり苦悩する新次郎が
あんまり悩みなさそうな(失礼な)左近とは対照的でした。
…キャラ話に花を咲かせすぎるのもナンなのでここまでにしときます。

多聞山城に潜入し、霊剣を取り戻すことに成功した光子一行。
ところが霊剣には強力な呪詛がかけられており、光子の身体を徐々に蝕んでゆきます。
予断を許さない状況のなか、最終巻に続く。
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2013-04-06

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(3)乱刃信州戦線』 読了。


遅くなりましたが3月の積読本消化1冊目。

着々と大合戦への準備が進んでいきます。特に徳川サイド。

徳川軍に侵攻された常陸の佐竹義宣を救出すべく、鹿島沖で徳川水軍と激突する伊達政宗。徳川水軍の圧倒的な火力の前に苦戦を強いられる伊達水軍であったが、思わぬ援軍により九死に一生を得る。本格的な天下取りへと乗り出した家康は、信州へも侵攻して上田城に篭もる真田昌幸を取り囲んだ。城攻めは不得手と評される家康が、名にし負う堅城に如何に挑むのか?(文庫より抜粋)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(3)乱刃信州戦線』

あらすじ補足は以下の通り。

常陸より海路で逃れてきた佐竹義宣を救出するため、自前の水軍を率いて出陣した政宗。
追っ手の徳川軍の安宅船から大打撃を被ったものの、
突如現れたイスパニア船の援護を受け、窮地を脱する。
一方、大坂方と上杉・奥州の連携を断つために信州へと侵攻した徳川軍は
上田城を守る真田昌幸の軍略に翻弄されるが
新兵器の火力の導入により上田城を陥落させることに成功する。
そして、大坂では天下への野望を明らかにした島津家の手の者により、
秀頼と三成が呪詛をかけられてしまう―。


ということでありまして、
新兵器・石火矢の大活躍により、家康絶好調!!な3巻でございます。
石火矢といえば、差配してるのが長政でして。
ある意味、又兵衛への嫉妬の捌け口として大炎上させられた上田城。どえらい迷惑。
家康への嫌がらせとして自国の美女1000人を奥州へ移住させた義宣と
それにホイホイ釣られて佐竹に手を貸す奥州筆頭w

真面目な点を言えば、
イスパニアのお姫さん・ジュリアと彼女の自国の軍制なんかは、
伊達軍に新たな戦法を授けてくれそうな雰囲気でした。
そして今後の布石となりそうな勢力は、前田&真田でしょうか。
諸勢力の取り込みを企む家康が目をつけたのが、
人質として江戸へ留め置かれていた芳春院。
家康の本心を見抜いていながらも、前田家存続のために徳川へ味方するよう
利長・利政兄弟を説得することを了承します。
これにより東日本は伊達・上杉を除いては家康の勢力圏に。
登場早々城を失った真田勢は、ここからの逆転が楽しみです。

あ、あと前巻で政宗と手を組むと宣言した最上のおじさんは早くも家康に釣られた模様。
真田と同じく一時的にオフラインとなった秀頼&三成。
大事無いと思いますが、次巻は黒幕である島津家(というか九州))に
スポットがあたりそうな気配でごわす。
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2013-03-12

icon_45_b.gif『戦都の陰陽師』読了。


今更ながら2月の積読本消化3冊目。

この方の文章は久しぶりに読むと慣れるまでが結構苦しい。
本格時代小説と言ってもいいほど重厚なのに時折スカッと軽くなるのが不思議。

忍鳥「松風」の活躍がとっても光ってます。グッジョブ鷹!

時は戦国。不穏な戦雲におののく京の都に、無数に張られた結界を破って六百年ぶりに恐るべき天魔が侵入、魔界への口を開こうと画策していた。大陰陽師・安倍晴明の末裔である土御門家の姫・光子は、唯一天魔を討つことができる出雲の霊剣・速秋津比売の剣を取りに行くことを決意。藤林党の若き惣領・疾風ひきいる伊賀の忍び七人を護衛とし、出雲への危険な旅に出発する。はたして光子は都を救えるのか!?新説・陰陽師物語!(文庫より引用)。
武内 涼(著)『戦都の陰陽師』

前作『忍びの森』よりもキャラが若干弱い…
とか言いながらも今作も一気読みですよ負けました。

ちなみに前回は忍者 VS 妖怪のトーナメント形式でしたが、
今回は忍者+陰陽師の姫 VS 魔の者+戦国大名という図で、
忍者が戦闘力ゼロの姫を護衛しつつ封魔の剣を取りに出雲へ行って都に帰ってくる物語。
忍びの者だけならばこれほど困難な任務とはならなかっただろうに、
重要アイテムである霊剣を扱えるのは陰陽師の姫だけ、というのがミソです。

どうしても前作と比較してしまうのは仕方ないですわ。
閉鎖空間であった前作とは異なり、今作は舞台のスケールが大きくなってます。
忍びたちの死闘というメインパートに、
記紀の世界、陰陽師、戦国大名の勢力争い等の要素がプラス。
毛利元就と配下の世鬼一族、尼子氏に仕える鉢屋衆といった異能の忍びたちが
霊剣を我が物とするため執拗に光子一行をつけ狙います。
読みどころは、やはり忍びの者同士の壮絶な闘いでしょう。
緊張感たっぷりで目が勝手に1ページ先を読みますね。
あと、冬山の描写が圧倒的。読んでるこっちまで寒くなります。

もうひとつの読みどころはキャラ萌…もとい
任務遂行を第一とする忍びの者たちの、
戦闘時以外の何気ない会話シーンです。数少ないほのぼのタイム。
惣領の疾風に対する光子の淡い感情に頬が緩みますね。それは恋だよお姫さん…ニヤニヤ。
つーか、陽気な竜牙とツンばかりの蘭の仲がもどかしいことこのうえない。
竜牙いい奴だよ蘭! ちょっと馬鹿だけど相手してやって。
基本的に登場する戦国大名・武将たちは悪役として描かれますが、
出雲弁まるだしの山中鹿之介がサワヤカな漢気溢れるキャラでしたじぃ。

旅の途中で数人の仲間を失いつつも迎えた最終戦。
ここが本編510ページのうち30ページ程度と、あっという間に終わってしまいます。
明らかに構成配分に問題があります(苦笑)。
ラストは大仕事を終えた後の充足感と再び訪れるであろう危機への不安を抱きつつも
不思議と清々しい読了感でございました。
posted by まるひげ at 00:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-03-06

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(2)北の関ヶ原』読了。


2月の積読本消化2冊目。

もろもろと新登場のキャラが出てきて楽しいです。

正体を露わにした恐るべき妖童、豊臣秀頼の采配により、関ヶ原の合戦は、喧嘩両成敗という思わぬ結果を生んだ。自ら傷を負い、蟄居を命ぜられた徳川家康は、天下取りへの野望を剥き出しにする。春日山城を急襲した上杉景勝を討つべく、独断で討伐軍を興す徳川家康。だが、その前には、奥州の雄・伊達政宗の罠が張り巡らされていた(文庫より抜粋)。
中里 融司(著)『戦国覇王伝(2)北の関ヶ原』

全体として見ると、2巻は前巻でおおまかに思い描いていた計略を
政宗・家康それぞれが行動に移しているという印象です。
まずは「公式あらすじの補足」という名のネタバレを以下に。

関ヶ原の戦いの翌年、
旧領の春日山城を奪還すべく動き出した上杉軍。
家康はこれを討伐するため秀頼の許しを得ないまま徳川・伊達連合軍を組織するが、
上杉と密約を交わしていた政宗の寝返りにより、徳川軍は壊滅。
政宗離反の報を受けた家康は、いよいよ天下獲りの野望を明らかにし、
関東の周辺諸国へ進攻することを決意する。
窮地に陥った佐竹義宣は、政宗に保護を求めるが・・・。
一方、岡山城を占拠した小早川秀秋は秀頼率いる豊臣の大軍に攻められ、開城を余儀なくされる。


ということで、
2巻のポイントは政宗の徳川離反と秀頼の出馬でしょう。
正直なところ、前者はもっと先の話かと思ってました。
4〜5巻あたりまで徳川の不穏分子の位置をキープしていくものと勝手に予想しとったわ。
これから先は「秀頼&政宗 VS 家康」という図式かしら。

さらっとした記述しかない九州。
如水は清正とともに豊臣の地盤を固めるために動いてます。
豊臣方についた如水と、徳川方についた長政。
そんな黒田家は今後ひと波瀾ありそうな気配ですね。
伏線として忠勝と又兵衛が将来対立することが仄めかされてましたが、どうなることでしょう。
終盤は佐竹の苦難とスペイン軍艦に乗ってやってきた美少女姫さんが登場したところで以下続巻。
posted by まるひげ at 01:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-02-28

icon_45_b.gif『戦国覇王伝(1)乱世ふたたび』読了。


今月の積読本消化1冊目。
「面白いよ!」という話を聞いて買ったは良いが、
どんなストーリーなのかすっぱり忘れて積んでた本を読了。
ちなみに紙媒体としては絶版ですが、電子版で読めます。

独眼竜があの手この手を使って天下を掴む…という展開になるのかな?

奥州の雄・独眼竜政宗が、ついに策動を開始した!時は慶長五年。豊臣秀吉亡き後の天下人の地位を狙い、諸大名を調略していく徳川家康。だが、その前途には思いも掛けない人物が立ちはだかる。英雄豪傑が命の炎を燃やした戦国の世が、今、再び甦った!誰もが予想だにしなかった展開が繰り広げられる、戦国シミュレーションの傑作!!(文庫より抜粋)
中里 融司(著)『戦国覇王伝(1)乱世ふたたび』

公式あらすじにある「思いも掛けない人物」というのがキーパーソンです。
いきなりネタバレしちゃうと秀頼です。
作中、頻繁に「妖童」と表現されてますが
御歳8つの彼のあの発言にはのけぞったね。え、そっちの意味も? 淀殿卒倒すんぞ。

あ、すいませんキャラ話は後にします。

if色が強まるのは関ヶ原以降。
さらりとあらすじを補足すると以下の通りです。

関ヶ原後は大坂城に拠り、秀頼の後見人となった輝元。
三成と家康は喧嘩両成敗として謹慎処分となり、
秀頼を主とする新たな豊臣政権に恭順する秀吉恩顧の大名たち。
関ヶ原の勝利は無に帰し、秀頼に本心を見透かされた家康は
秀頼への復讐を胸に、地盤固めとして関東を席捲すべく動き出す。
一方、長谷堂の戦いの後、上杉領へと忍びで乗り込んだ政宗は
景勝・兼続と会見し、共闘を申し出る。


群像ifと言っても良いストーリー運びですが、基本的に主人公は政宗。
家康の下につくことを不服とし
世の中を面白おかしく引っ掻き回し
それにより天下が転がり込んでくれればなお嬉しい、という考えに基づき、
あっちと密謀を結んではこっちに裏工作を仕掛ける政宗の姿が活き活きと描かれます。
己に都合の良いことをいけしゃあしゃあとぬかす政宗は不思議と憎めない魅力がありますね。
そんな主君に頭抱えながらフォローする小十郎…がんばれ。

佐和山主従は、同著の『異戦関ヶ原』と同じ雰囲気で、読んでて懐かしくなりました。
頑張る三成と保護者な左近の組み合わせですよ。
他の登場人物(雑なくくりだな)はステレオタイプです。
あ、オリキャラである2人の朝鮮少女や
作者お得意の忍びの者もしっかり活躍してます。

1巻ではifの花形・真田も姿見せてないし、如水も顔出し程度なので今後の動きに期待です。
期待と言えば、関ヶ原参戦の主要メンバーがほぼ生き残ってるので
さらなる戦乱の予感にわくわくします。
シリーズは10巻までなのでこれからゆるゆると読んでいこうと思います。
posted by まるひげ at 01:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2013-01-24

icon_45_b.gif『後藤又兵衛』読了。


今月の積読本消化2冊目。絶版御免。

先日読んだ長政本で又兵衛があまりにも出てこなかったため、
またべ充しようと読んでみました。
やー、充実した。

幼くして父を失った後藤又兵衛は、戦国随一の智将・黒田如水の庇護のもとに育った。やがて如水の子・長政を凌ぐ大器として朝鮮の役、関ヶ原の合戦で活躍。筑前大隈城一万六千石の城主になるも、長政との確執の果てに、又兵衛は浪々の身となる。だが、豊臣秀頼に招かれて大坂の陣に参戦、縦横無尽の働きぶりを示して、華々しく散った。沈着にして勇猛な武将の生涯を活写した書き下ろし(文庫より引用)。
風野 真知雄(著)『後藤又兵衛』

「又兵衛がかっこいい本です」と素直に紹介できる作品でございました。
普段は穏やかな物腰でいながら、
戦場にあっては戦の機微を知り尽くし、鮮やかな戦いぶりを示す姿が印象的です。

物語は天正15年、豊前宇都宮氏の抵抗に黒田勢が苦しめられるところから始まり、
朝鮮出兵、関ヶ原の戦いを経てラストは大坂の陣まで。
又兵衛が黒田家出奔するのが大体真ん中あたりです。

読みどころはやはり又兵衛と主君・長政との確執。
長政のツン・・・ヤンデレっぷりはなかなかのものでありますよ。
ほんとに難儀な子でもう大変。たぁいへん。
幼少期には兄のように慕っていた又兵衛に対し、
憧れと劣等感を抱えたまま成長しちゃってるので
何かにつけ又兵衛にイチャモンつける長政の姿があちらにもこちらにもそちらにも。
「自分は戦略家で又兵衛はせいぜい戦術家」とか、
自分が納得できる枠に当てはめて
己と出来すぎる家臣との力量の差を埋めようとする長政の鬱屈レベルは相当に高いです。振り切れてます。
そんな長政に対して又兵衛は、家臣として分をわきまえた対応をするのですが…。
我慢の限界を迎えた又兵衛はついに黒田家を出奔。
旧主による怒濤の奉公構コンボに悩まされながら放浪の旅を続けます。
大坂入城後、幸村との友誼や城内でのカリスマっぷりも読んでいて楽しいですね。
終盤、死の直前に又兵衛が見た青空の描写や
大坂の陣決着後に又兵衛を思う長政の様子は空虚感が漂って切ない感じ。
「晴れ上がった空と吹き抜ける風」というのが作者の又兵衛のイメージなのでしょうな。

ちなみに脇役はあまり多く出ておらず、
出てきてもさらっとした会話がある程度。
例外としては、息子の扱いに頭悩ませてる如水くらいなもんかしら。
あと、至極どうでも良いことなんですが、
アル中予備軍・多兵衛が又兵衛のこと「後藤」って呼ぶのがなんかいいなと思ってみたり。
posted by まるひげ at 00:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-12-16

icon_45_b.gif『黒田長政』読了。


今月の積読本消化1冊目。絶版御免。

ちょっとギスギスした父子関係が読みどころ。
得意げにしてると鼻ッ端を父親にブチ折られる、というのがテンプレ。
そもそも父親があんなの偉大だと色々大変だよね…って話でもある。

戦国随一の智将、黒田官兵衛の子として生まれた黒田長政。秀吉にすら畏怖されたといわれる、父の巨大な影という宿命を乗り越え、猛き勇将としての道を切り開き、関ヶ原の戦いにおいては徳川方を勝利に導いた。その後、徳川太平の世にあっては、黒田家を筑前五十二万余石の大大名にまで興隆させる。文武を兼ね備えた稀代の名将、長政の姿を生き生きと描いた、著者渾身の長編歴史小説(文庫より引用)。
石川 能弘(著)『黒田長政』

序章は関ヶ原にて長政率いる黒田勢が石田方へ鉄砲撃ちかけるところから始まり
本章はそこから時が遡って
松寿時代の長政が人質として長浜城へ送られるところから再スタート。
その後、父・官兵衛や主の秀吉のもとで戦働きを重ねた長政が
武辺・知略ともに秀でた武将として成長する様を描いております。
武一辺倒の時期から策略をもって戦況を動かすことの小気味良さに気づいて以降、
長政の生き方が定まった感じです。
そしてラストは大坂の陣終了まで。
やや唐突なシメなのが残念。
秀吉の下にあっても、家康&秀忠の下にあっても
黒田の家は外様の身であり、外様としての働きを示すことによって
御家を存続させることを固く心に戒めるところで終わってます。
将軍家と幕僚に気を使う胃の痛い日々の始まりを覚悟する
長政の姿が目に見えるようなENDでした。

以前読んだ刑部本が面白かったので期待しつつ読み始めたものの、
今作はさらさらーっと進むので正直物足りなかったです。
長政と官兵衛との関係がメインの物語となっており、
家臣や他の武将たちとの交流はあまり描かれてません。
家臣でいえば母里太兵衛、黒田一成との会話がちょろりとある程度。
そして、父子の関係が読みどころ…と言っても
それが堂々と「良好」と言えるものではないのが特徴です。
大概は長政が官兵衛に怒られたり怒られたり怒られたり…たまに褒められたり。
鞭鞭鞭鞭飴鞭鞭って感じのリズム。むちむち。
長政は父の深謀遠慮に心底感服しつつも、
したたかな世渡りっぷりに呆れたり謀略好きの性格には辟易したり
隠居後にも色々と蠢く姿にイラッとしたり。
でもなんだかんだ言って父親孝行な長政…と言えなくもない。
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2012-12-05

icon_45_b.gif『関ヶ原争乱録 廻天の掟(二) 家康の焦燥 昌幸の真意』読了。


11月の積読本消化3冊目。

昌 幸 、 こ れ は ひ ど い 。

ひとことで言ったら愉快犯の昌幸が東西両軍を引っ掻き回しまくる話です。


尾山 晴紀(著)『関ヶ原争乱録 廻天の掟(二) 家康の焦燥 昌幸の真意』

昌幸一人にここまで振り回される東西両軍もどうなんだ、という疑問はありますが
各勢力の内情を見てみれば、妥当っちゃー妥当な動きなんですよね。
毛利も前田も上杉も。
特に東西両軍…というか昌幸と三成にとってのキーパーソンとなっている毛利。
西軍のためではなく、御家安泰のために動く広家と優柔不断の輝元。
優柔不断といえば、金吾が最終決戦にて覚醒してます。

あ、遅くなりましたが公式あらすじを以下に。

慶長五年。中津川の戦いで勝利をおさめた西軍。
しかし、石田三成、大谷吉継の二人は、毛利家の不穏な動きに戸惑っていた。
そんななか、東軍は福島正則らを先頭に矢作川に布陣。
戦いは、最後の最後で動いた毛利軍によって、なんとか西軍の勝利となった。
福島正則など多くの武将が討死にし、岡崎城へと撤退した東軍。
失意の徳川家康のもとに、一通の書状が届く。その内容を信じれば、一気に西軍を逆転できる。
しかし、その送り主は、家康の長年の敵であり、
先の中津川の戦いで裏切った表裏比興の者・真田昌幸だった―。
東西両軍を手玉にとる昌幸。果たして彼の真意はなんなのか?
そして、混沌とする東西両軍の勝敗の行方は―。
(新書帯より引用)


…というのが2巻中盤まで。
以下、ネタバレなので畳みます。
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2012-11-30

icon_45_b.gif『小太郎の左腕』読了。


今月もあと30分で終わりだというのに、今月の積読本消化1冊目を紹介。


そうだよね、ラストはあぁなるよねー。
鼻の奥ツーンとする感じです。小道具の扱い方が小憎らしい。
どうでも良いが、不気味忍者は結構好きだったりします(笑)。

一五五六年。戦国の大名がいまだ未成熟の時代。勢力図を拡大し続ける戸沢家、児玉家の両雄は、もはや開戦を避けられない状態にあった。後に両陣営の命運を握ることになるその少年・小太郎のことなど、知る由もなかった―(単行本帯より引用)。
和田 竜(著)『小太郎の左腕』

久しぶりに和田作品を手に取りましたが、相変わらず読みやすいですね。
自らの信念を命を懸けて貫き通す武人の清々しさと物語展開のやるせなさが今作の特徴でしょう。
戦闘シーンから始まる冒頭からぐぐっと引き込まれます。
あらすじは公式のとおり…ってこれだけだとわかりづらいのでちと補足。

所領争いを繰り返していた地方領主の戸沢家と児玉家。
戸沢家の猛将・林半右衛門は戦で怪我を負ったところを、
猟師とその孫である小太郎に助けられます。
普段は「阿呆」と蔑まれる小太郎ですが、
いざ左撃ちの銃を持つと、神が宿ったかのような超人的な鉄砲の撃ち手へと変貌します。
半右衛門と小太郎の出会いが、二人のその後の運命を変えることとなり―というお話です。
「人並みになりたい」という少年の願いは叶えられるのか、
半右衛門の戦いの行方は…これは一気読みルート一択でございました。

今回も登場人物で読ませてくれます。
主人公は戸沢家の重臣・林半右衛門。
嘘や卑怯な振る舞いを嫌う、とことん真っ直ぐな武人(35)です。
サブ主人公として、神が宿るかのような鉄砲の腕を持ちながら、心根が優しすぎる少年・小太郎。
小太郎の能力が戦に利用されることを怖れ、身を隠すように生きてきた元雑賀衆の要蔵。
“好敵手”という言葉がぴったりの児玉家の勇将・花房喜兵衛。
半右衛門の養育係である老武者・藤田三十郎。
半右衛門と喜兵衛の戦場での掛け合い、
半右衛門&三十郎の漫才のような会話が微笑ましかったです。おじいちゃんかわいい。

勝つ見込みのない籠城戦から兵たちを救う将としての行動が
半右衛門という人間の根本を崩してしまうことになる展開がやりきれない。
「卑怯な真似は決してしない」という誓いを自ら破った瞬間、
その後の展開がなんとなく読めるのが残念といえば残念。
ああ、この人死ぬんだな」という予感が濃厚に。
それほど、半右衛門のひととなりや考え方が自然に読み手に伝わってきます。
いやー、和田さんってば、豪快で真っ直ぐな武人を魅力的に描くのが本当にうまい。
『のぼうの城』だと和泉&正木、『忍びの国』だと大膳みたいな。

一方、小太郎には不思議なほど感情移入できず。
小太郎の「人並みになりたい」というささやかな願いへの対価はあまりにも大きく、
心根が優しすぎるこの少年には過酷な運命となったわけですが。
それでもね、小太郎には銃を捨てずに生きる道を選んで欲しかったと思うのでありますよ。
すべてを失う原因となった異能の左腕であっても、
それごと抱えて生きていくべき、と思うのは現代人の考え方なんだろうなぁ。

あとは…
憎まれ役・戸沢図書の心情が正直よくわからなかった。
半右衛門に対する劣等感やそれによるあてつけってのは理解できますが、
配下の娘に手を出してるって擬態は、はたして必要だったろうか?

…いつもの如くキャラ話に流れてしまいました。
次回作『村上海賊の娘』も楽しみです。
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2012-10-31

icon_45_b.gif『一本槍疾風録−戦国の豪将・後藤又兵衛』 読了。


今月の積読本消化1冊目。

シバリョ版が「又兵衛は又兵衛の死に場所で死ね」だったのに対し
こちらは「真田は真田の死に場所で死ね」ってとこです。


慶長十九年(一六一四)、大坂城へ向かう異形の老人の姿があった。万石の禄と家臣を捨てても、ついに捨てきれなかった甲胄を背負い、赤柄の槍を携えていた。関ケ原の合戦で〈槍の又兵衛〉と勇名を馳せた後藤又兵衛その人だった。世に言う大坂冬・夏の陣を目前に、又兵衛の入城に豊臣方は雀躍した…。自らの信念を貫くため、河原乞食まで身を落とした又兵衛一代記(アマゾン・レビューより引用)。
麻倉 一矢(著)『一本槍疾風録−戦国の豪将・後藤又兵衛』

「とにかく又兵衛がかっこいい本です」
この一言で感想文終わっても差し支えないと思いつつ、以下にもうちょっと詳しく書いてみます。

いつもの麻倉作品のノリなのでとても読みやすいです。
各章の冒頭が大坂夏の陣の真っ最中で、
又兵衛が近習の長澤九兵衛に請われて己の人生を語り聞かせる、という構成をとってます。
メインは又兵衛の黒田家出奔後の長い牢人生活。
その流浪の時期に出会った人々との交流、旧主・長政との確執を通して、
侍以外の何者にもなれなかった又兵衛の生き様が描かれておりました。

そして又兵衛といえば長政ですよね。
又兵衛のことを「殺して己のものにしたいと思ってるのかもしれん」(p.244)とかって呟くから
どんだけヤンデレなのこのこ…とビクつきながら読んでたらそうでもなかった。
いわゆる「愛しさあまって憎さ百倍」というアレですな。
お互いの意地の張り合いで刺客送り送られの仲になってしまったのは
当人たちでもよくわからない複雑な感情のようです。

そんな長政と又兵衛を繋ぐ役割を果たしているのが、出雲の阿国。
又兵衛に好意を寄せるあまり、
転職の斡旋したり衣食住の世話をしたり長政こき下ろしたりと忙しい女性です。
終盤では幸村にも言い寄ってる奔放な姐さんですが、
とりあえずはヒロイン的ポジションです。ちなみに結構な肉食女子。

その他脇役として、
宮本武蔵、細川忠興、福島正則、池田輝政、松平忠輝、本阿弥光悦、名古屋山三郎など。
冒頭では秀吉や官兵衛あたりも出てきてます。
あ、幸村とは最後まで微妙に距離感がありました。
徐々に打ち解けていく二人もいいけど、ギクシャク感抜けないのもまたいいよね。
posted by まるひげ at 00:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-09-30

icon_45_b.gif『細川三代 幽斎・三斎・忠利』読了。


今月の積読本消化1冊目。

個人的には、徳川の世になってからの忠興 → 忠利あたりの処世術の変化を
手紙の遣り取りで読み取っていく構成が面白かったです。
誤植がちょろちょろあるのが「ん?」ってなりますが…。

栄華四百年の原点。徳川政権において、外様には異例の五十四万石の地位に昇り詰め、現在まで栄華を伝える細川家とは? 文武両面に精通し、絶妙な政治力・文化力を駆使して織豊期を生き抜いた、その草創のドラマを描く(単行本帯より引用)。
春名 徹(著)『細川三代 幽斎・三斎・忠利』

どんな本かと聞かれるまでも無く、タイトルの通り
肥後細川藩初代の幽斎から忠興、忠利…と三代に亘る藩主の物語。
文化と政、そして戦の関係が複雑に融合している時代の真っ只中、
御家存続のため苦心した大名家の歴史の裏側を垣間見ることができます。
また、おまけと言っても良い終章では、
細川家と赤穂浪士、さらに桜田門外の変にまで言及しておりました。

藩主のなかでは、とりわけ幽斎に焦点が当たってます。
幽斎の章が一番ページ数が多いのはもちろんのこと、
忠興の章になっても
忠利の章になっても
ちょくちょく登場します幽斎おじいちゃん。
なんといっても、
足利家 → 信長 → 秀吉 → 家康と、主君が変わる激動の戦乱期において
抜群の政治感覚を武器に高い地位を保ち続けた幽斎の処断が見事です。
幽斎と忠興の微妙な距離感、
権力者に近付きすぎる息子を一歩引いたところから冷めた目で見る反面、
やはり父として子を想う気遣いをちらりと覗かせているところなんかも読みどころ。

戦と政で多忙な時期に比例して、
連歌を代表とする文化活動が活発になっている幽斎。
歌についての解説も多く記述されておりました。
田辺城籠城の際の古今伝授の儀は、朝廷との駆け引きが確信犯的で面白い。

戦国から泰平の世への変革期が舞台となる中盤以降、
権威も人々の価値観も大きく変わった時代に家名を維持するため
幕府に対して配慮に配慮を重ねた処置の数々は読んでいて胃が痛くなるほど。
読み切るのに結構体力が要りますが、
草創期藩主三代の事績が詳細に描かれているので勉強になりました。
posted by まるひげ at 01:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-09-29

icon_45_b.gif『レオン氏郷』読了。


図書館レンタ本。

登場人物のビジュアルがへうげキャラで脳内再生されたのには終始困った。
特に利休と政宗。
後者は徹底的に悪役でした。まぁ…氏郷主役じゃ無理もないか。

先の見えすぎた男が背負った重き十字架。
信長が惚れこみ、秀吉が畏れた武将・蒲生氏郷の知られざる生涯を描く(単行本帯より引用)。
安部 龍太郎(著)『レオン氏郷』

最近、安部作品を読んでいないのでなんとも言えませんが、
今作は人物描写が浅いという印象を受けました。
わざわざ洗礼名をタイトルにしてるので、
もっとキリシタンとしての氏郷が描かれていると思っていたのですがなぁ。
武将としてもキリシタンとしてもなんとなく中途半端な描き方になってる気がする。
あ、でもボリューム多めなわりにはさくさく読み進められますぞ。
とりあえず以下にあらすじをば。

父・賢秀に見せられた地球儀の美しさに魅了されて以来、
漠然と南蛮世界への憧れを抱くようになる幼少期の氏郷。
そんな折、圧倒的な存在感を持つ信長と織田勢の戦い方を目の当たりにした氏郷は、
天下の先に世界を見据えている信長に従うことを決意する。
信長の元で順調に出世していく氏郷だったが、
目的のためには手段を問わない信長の姿にやがて疑問を抱くようになる。
その後、信長を失い、秀吉に失望した氏郷は、絶対的な心の拠り所を求め、
キリシタンとして神への信仰に生きることを誓う。
しかし、氏郷の存在を疎んじるようになった秀吉は策謀をもって氏郷を陥れようとし…。

という展開です。
・・・・・
あらやだ、あらすじというかこれネタバレじゃないの。
中盤まではやや単調な筆致なのですが、
終盤になると氏郷と秀吉、政宗との対立で緊迫感が増し、
権謀術数のアレやコレやで面白くなる…と思ってるうちにM・D氏に毒盛られて終わり…
というバッドエンドでした。

期待したほど逸話やら小話やらが挿入されず、
信長や他の大名、臣下たちとの交流が少ないのが残念なところです。
どうでも良いが、入信を勧める右近さんがちょっと詐欺っぽくてうさんくさかった。
posted by まるひげ at 00:24 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-09-01

icon_45_b.gif『関ヶ原争乱録 廻天の掟(一) 三成の決意 吉継の疑惑』読了。


8月の積読本消化2冊目。

一番気になるのが、黒幕なわけですよ。
尾山さんは昌幸お好きらしいので
この人が美味しいとこ持っていく可能性が高いのだが。
…とはいえ、この巻でもう十分はっちゃけちゃってるしなぁ。

あと、刑部の保護者っぷりがいつもより磨きがかっているような。
二人の仲が良すぎてたまにこっ恥ずかしい。


尾山 晴紀(著)『関ヶ原争乱録 廻天の掟(一) 三成の決意 吉継の疑惑』

まずは公式あらすじをば。

慶長五年。家康討伐の軍を挙げた石田三成の元に、一通の書状が届く。
そこには、士気の上がらない西軍の現状が記されていた。
豊家安泰のために皆が団結していると信じて疑わなかった三成は、
急遽、伏見城に向かい、宇喜多秀家や吉川広家らを叱責。
三成の傲慢さに不満を抱きながらも、彼らは翌日に城を落とした。
さらに三成は、宇喜多秀家らを伊勢平定に、立花宗茂らを田辺城に向けさせ、
自身は大坂城から毛利輝元を出馬させる。三成の打つ手が全て成功するなか、
この三成らしからぬ迅速な行動に、盟友・大谷吉継は疑問を持つ―
三成の背後に誰かいるのではないか?
さらに、失地回復を目指す家康が西進を開始。果たして天下を二分する戦いの行方はいかに!?
(新書帯より引用)


以下、ネタバレ注意の感想文です。

posted by まるひげ at 01:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-08-26

icon_45_b.gif『本朝甲冑奇談』読了。


図書館レンタ本。

「角栄螺」と「金時よろい」が好きです。

六領の甲冑に秘められたそれぞれの逸話  井伊家赤備えの足軽鎧、朝鮮渡りの西洋甲冑、但馬の国出石に伝わる小猿の甲冑など。短篇の名手が描く珠玉の六篇からなる歴史秘話(アマゾン・レビューより引用)
東郷 隆(著)『本朝甲冑奇談』

どの短編も50ページ未満で、さらっと読めます。
最初は作者のエッセイのような語り口から始まり、
甲冑の持ち主の物語へと繋がっていく―という構成が多いです。
以下に各話のあらすじ+感想文をば。

・しぼ革
長篠の戦いで武田勝頼を破った信長は、上洛の途中、
不破の関近くの山中で「常盤御前の墓」の近くを通りかかる。
そこで気紛れに一人の乞食に財物を与えてから、信長は不思議な夢を見るようになり…。


柿崎景家誅殺と謙信の死にまつわる一編。
信長全盛期、懇意にしてきた上杉家との確執が本格化し始めた頃、
信長が謙信に贈った鎧具足が引き起こした怪異が印象的。
六編中、最も伝奇色が濃い作品です。

・モクソカンの首
朝鮮出兵中、漢城付近で田畑の検地を取り仕切っていた岡本権之丞。
戦況が激化し、全身を銀甲で覆った異形の騎馬武者が倭軍を苦しめているという。
この騎馬武者を討ち取ることを命じられた権之丞であったが…。


「モクソカン」というのは、晋州の牧使官(=市長)のことです。
主役は宇喜多秀家の家臣、岡本権之丞。
討ち取られた牧使官の甲をめぐる権之丞と一人の朝鮮人の物語。

権之丞と降伏した朝鮮の下級役人・パクの奇妙な関係が印象に残りました。
征服者と被征服者、主人と従僕、そしてお互いが命の恩人という
複雑な関係ですが、心理描写は非常に簡素なものでした。


・角栄螺
蒲生氏郷に仕えていた頃、九戸城攻めの途中で一人の蝦夷人と戦い、これを討ち取った岡左内。
氏郷と左内、そしてこの蝦夷人にはある共通点があり…。


もともとは信長召領の兜「角栄螺」。その後、氏郷 → 左内と持ち主が移ります。
ということで、主人公は岡左内。
「全裸」と「金」がキーワードの岡左内ですよ!
とにかく、岡左内が魅力的に描かれています。
主君が変わっても、最期まで氏郷の遺命を守り続けた左内。
上杉家に仕えていた頃の慶次との友情や政宗との斬り合いなど、
さらりと描かれてますがどれもかっこいい。

・小猿主水
仙石家二代目忠政の家臣・谷津主水。
主水の実父は、かつて長束正家に仕え、関ヶ原以後は付近の豪農の家に寄生する暮らしを送っていた。
あるとき、隣村との土地争いで用心棒として戦いの場に赴くこととなった主水。
途中、朽ちかけた社のなかで見つけた古ぼけた猿の面がその後の運命を左右することに…。


村争いに勝ったものの、「喧嘩停止令」により村を出された主水。
伝手を頼って大和の具足師のもとへやってきます。
ここで信州仙石家への仕官の話がもちあがり、仕官祝いにと猿の具足を贈られます。
その後、大坂の陣にて毛利勝永と衝突し、一番乗りの手柄を手にする主水。
猿の面を得てからの主水のサクセスストーリーが見所です。

・甲(かぶと)試し
刀匠・長曾禰虎徹入道興里。
加賀藩城下で名の知れた甲冑鍛冶であった虎徹は、
藩主の命で催された甲試しで卑怯な振る舞いをしたことを恥じ、逐電。
その後、修行を重ねた虎徹は、刀鍛冶として彦根藩にて再び甲試しを申し付けられることになる。
しかし、斬るべき甲はかつて自らがつくったもので…。


タイトルは虎徹の人生のターニングポイントとなった2つの出来事から。
自身の過去との対決、諸国遍歴、波乱万丈な人生を送った虎徹を描いたものです。
甲冑鍛冶から刀鍛冶への転進、修行の日々等、虎徹の逸話が多く紹介されてます。
あと、若かりし頃の由比正雪(けっこうな不審者)がちょろりと出てきます。

・金時よろい
桜田門外の変後、江戸の井伊家で屋敷奉公をしていた「鉄五郎」。
時は長州征伐前夜、臨時足軽として具足方の手伝いを命じられた鉄五郎であったが、
長州へ出陣する部隊へ組み込まれ、初めて戦場へ赴くこととなり…。


「金時よろい」というのは井伊の赤備えのことです。
幕末の騒乱の気配が感じられる一編。
下っ端兵士から見た戦場の様子が生々しいです。
鉄五郎が戦場で見た、
「波打ち際に散乱した甲冑、槍刀、旗、死傷者たちの姿がどれも赤い」というのがとてもメタファー的。
赤備えのかつての栄華とその後の衰退がなんとも物悲しい。
ラストも然り。時の流れってそんなもんさね…。
それにしても、長州w
手間のかかった嫌がらせ乙。

…以上です。
そういや、こっちも読んでみたくなりました。


東郷 隆(著)『戦国名刀伝』
posted by まるひげ at 22:29 | Comment(1) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-08-17

icon_45_b.gif『清須会議』読了。


図書館レンタ本。

「リアルうつけ」信雄。期待を裏切らないうつけっぷりが素敵。
恒興の小物っぷりも同様。
映像にしたらすごく輝くだろうなこのふたり。
あと、アイキャッチ的な滝川一益。

生誕50周年記念「三谷幸喜大感謝祭」のラストを飾る、満を持しての書き下ろし小説、遂に刊行! 信長亡きあとの日本の歴史を左右する五日間の攻防を「現代語訳」で綴る、笑いと驚きとドラマに満ちた、三谷印の傑作時代エンタテインメント! (アマゾン・レビューより引用)
三谷 幸喜(著)『清須会議』

とりあえず、冒頭の「信長断末魔のモノローグ」に笑ってしまいます。軽いな魔王!

舞台は本能寺の変〜信長自害から清洲会議終了まで。
具体的に言うと、信長の後継者を決定する5日間の会議の様子を描いたもの。
途中、ちょっとif的な設定も見られます。
特徴は軽妙な読み口と読了感。
時代小説として読むべきものではない類の作品ですが、
それ故に、ふだん時代小説敬遠している方にも読みやすい仕様となっております。
現代語で進むというのはもちろん、カタカナ語まで普通に使ってます。
登場人物のセリフと心の声だけで話が進むので、プロットみたいな感じですね。
舞台脚本の台本集みたいな。
映画化になるとまた違った形になるそうで、それはそれで楽しみです。

信長の後継者として信孝を擁立した勝家と信雄(のち三法師)を推す秀吉。
秀吉嫌いのお市は勝家支持に。
友誼を重んじて丹羽長秀も勝家サイドに。
しかしそんな勝家陣営へ秀吉の謀略の手が迫り…という展開になります。
それぞれを支える周りの脇役たちの入り乱れる思惑と打算、駆け引きが読みどころ。
登場人物の思惑ダダ漏れな後継者争い心理戦でありました。

勝家のとっつぁんが一番歳喰ってんのに一番純粋でした。
市に接近されたことで浮かれまくってる勝家。
根回しのよさと抜け目無さピカイチな秀吉、
情と打算の間で揺れる長秀。
終盤にはこの三者を中心に会議がまとめられていきます。
最終的には「すべて自分の思惑通り」と満足した秀吉ですが、実は…という
ちょっとひねった趣向になってます。

気になる脇役たち。
事務のスペシャリスト・前田玄以が地味に活躍してます。
あと、お市も寧(ねね)も松姫も計算高い。
女特有のしたたかさ怖いわぁ。
ちなみに、脇役のみなさまは大概がステレオタイプなので読んでて違和感なかったです。
posted by まるひげ at 02:58 | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-07-16

icon_45_b.gif『佐助を討て』読了。


図書館レンタ本。

一介の忍びの視点を通して、戦と忍びの生きる世界を描いた作品です。
…どこが読みどころかと聞かれたらちょっと困ってしまうわ。
残念ながら、自分のような落ち着きの無い読者にとっては、血湧き肉踊る成分が足りない作品でした。

真田残党VS伊賀忍者 しのびの意地を賭ける!大坂の陣後、猿飛佐助、霧隠才蔵、根津甚八たちが執拗に家康の首を狙う。家康を守る伊賀組との暗闘、激闘、死闘の数々。手に汗握る忍者活劇小説の登場!(単行本帯より引用)
犬飼 六岐(著)『佐助を討て』

内容は以下のような感じです。

豊臣を滅ぼして以降、悪夢に取り憑かれた家康は、
大坂の陣の最中に己の命を脅かした猿飛佐助の抹殺を伊賀忍びに命じる。
伊賀忍びたちは佐助の居所を突き止めるものの、何度も返り討ちに遭う始末。
しかし、主人公である数馬だけは、佐助に殺されることなく見逃される。
果たしてその理由は、そして数馬が佐助を討つことはできるのか…。


といった展開になります。

強大な敵、忍び同士での確執、裏切り者の影、幼馴染へかける想い…等
設定はとてもそそられるものがあります。
しかし、いまいち設定を活かしきれていないように感じられました。
アクションシーンはありますが、
盛り上がりに欠けるので「先が気になって仕方ない!」という感覚も無く…。
主人公たち伊賀組の標的であるはずの才蔵が姿を現し、
佐助暗殺の手助けを申し出るところなんかは
なかなか面白い展開になりそうなんですけどねぇ…。

個人的にはラスボス的位置づけの佐助の描写が少ないが故に
どんなキャラなのかがいまいち伝わらなかったところが不満です。
佐助が「人を殺すことに微塵のためらいもない」が
「赤子のように無邪気」だという人物評はあるのですが。
具体的なエピソードや展開があれば良かったのに。

人物描写と言えば、脇役がパッとしない。
数馬の同僚や年下の忍びたちも、似たり寄ったりなキャラ造詣というか。
読んでいてしばらく登場しないと「こいつ誰だったかな…」と悩むこと数度。
それでも記憶に残った人物といえば…何故か角介。
(安易にツンデレ妹キャラとか選ばないわよ!いや確かにキャラ立ってたけどさ)
老練な忍びゆえの正体不明さと、
主人公を教え導くポジションでありながら
自らの技量を試すのに進んで(気紛れで?)敵方についたところが面白いかと。
ちなみに、登場する真田十勇士の残党さまは
猿飛佐助、霧隠才蔵、晴海&伊三入道、望月六郎、根津甚八。
残りのメンバーは行方不明あるいはすでに鬼籍に入っておりました。
posted by まるひげ at 00:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-07-01

icon_45_b.gif『豊臣蒼天録(三)争乱の京都』読了。


日付が変わってしまいましたが、6月の積読本消化1冊目。

印象に残ったのは場面よりもキャラですかね。
振り返ってみるとこの作品、秀頼の成長物語がメインなのですが
忠輝の心情変化も忘れちゃいけません。


智本 光隆(著)『豊臣蒼天録(三)争乱の京都』

シリーズ完結。
自らが望んでも得られなかったものを当たり前のようにもっている
秀頼に対する幾許かの羨望と嫉妬を口にした忠輝。
家康の実子でありながら豊臣軍に身を置き、
天下人として成長していく秀頼を見ていくうちに
忠輝が当初抱いていた「天下を望む」という野望にも変化が現れます。

…とりあえず、公式あらすじを以下に。

慶長十六年五月。藤堂高虎らの寝返りにより、
第二次関ヶ原の合戦は徳川軍の勝利で終わった。
豊臣秀頼は松平忠輝を救う際に被弾し、昏睡状態のままだった。
彦根城に退いた豊臣軍は、真田幸村の進言により京都まで撤退することを決意。
無事に京都へと入った豊臣軍だったが、そこにさらなる悲報が届く。
本多正純の謀略により、大坂城が炎上。淀殿が死んだという。
退くことも進むこともできなくなり万策尽き果てたかにみえてた豊臣軍。
しかし、ここで秀頼が目覚め、京都より一歩も引かないと宣言。
古来、防御側が勝ったことの無い必敗の地で、
果たして秀頼は徳川の大軍勢を迎え撃つことができるのか!?
(新書帯より引用)

…とまぁ、ここまでが最終巻の中盤までのお話です。
以下、何気にネタバレてるのでたたみます。

posted by まるひげ at 01:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-06-20

icon_45_b.gif『ふたり、幸村』読了。


図書館レンタ本。

おそらく、山田作品初読者には敷居が高い作品ではないかと。
誰のことですか私のことですよ。

講談で真田信繁の“別名"として描かれる幸村だが、信繁とは別に、実在していた?戦乱の天正十一年。諏訪大社の雑人ににして、真田家から微禄をあてがわれ早飛脚をつとめる少年、雪王丸は、諏訪湖の御神渡りを目の当たりにしていた。激しくひび割れる氷の音は、雪王丸のその後の波瀾の人生を予感させるようであった。数奇な運命に導かれ、雪王丸は真田幸村と名乗り、戦国の世に羽ばたく。史実の間隙をつく鮮やかな筆致で描く、戦国時代エンターテインメント(単行本より引用)。
山田 正紀(著)『ふたり、幸村』

物語の核の部分をいまいち読みきれていない気がするのは、
作者の意図していた「マジックリアリズム」の手法が個人的に苦手なせいもある。
どうにも話に入り込めなかったわ…。

それはともかく。
あらすじにある「戦国時代エンターテインメント」と聞いて
想像するような内容とはかなり違っておりました。
血湧き肉踊る系の時代小説ではありませんので、これから読む方はご注意あれ。

現実と夢、過去と現在が錯綜する、非常に壮大な物語でした。
幻想的というか観念的というか…むしろSF?
大きな歴史の流れと、それを見下ろす神鷹の視点がキーポイントです。
ストーリーは、
「信繁と幸村は別の人間だった」という設定で始まり、
主人公である雪王丸(=幸村)の少年時代からその死までが描かれます。
信繁の影武者となった幸村は、
望月六郎、山本道鬼斎、真田昌幸ら“軍配師”との交流を通して
自らもまた軍配師として歴史に名を刻むことになるのですが…。
ポイントは、この幸村の英雄譚がメインではない、というところなのです。
禰津甚八、海野十郎ら真田十勇士は、作者の都合により八勇士に。
リストラされたのは入道と名のつく2名様です。
作中、人でない形で名前だけは登場してますが(笑)。

中盤以降の展開は
史実に対する作者の考察が続きます。
そもそも、戦国時代とはどのような時代であったのか?
何故、関ヶ原で真田家は西軍と東軍へ分かれたのか?
何故、関ヶ原合戦後、昌幸と信繁は九度山配流だけで済んだのか?
何故、大坂冬夏の陣に関する文献では、徳川時代以降に書かれたにもかかわらず、
敵方であるはずの大坂の武将が過大なまでに褒め上げられているのか?
これまでの解釈をバッサリ斬り、史実の背後にある謎を作者が暴くのですよ。
ある意味、ここが一番読み応えがありました。
昌幸と家康の密約なんて、パッと考えただけではあり得なさそう…
いやいやちょっと待てよ!な感じでワクワクするでねぇか。

個人的には、
若かりし頃の藤原惺窩が雪王丸に語った蝸牛の神話と、
ラストの締め方がとても良いと思います。
posted by まるひげ at 00:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-06-09

icon_45_b.gif『黒田家三代 戦国を駆け抜けた男達の野望』読了。


6月も上旬が終わろうとしているこの時に恐縮ですが、
すいません、これ先月の積読消化本です…。

作者さまの文章センスが妙にツボで、終始楽しく拝読できました。
タイトルこそ「黒田家三代」ですが、主役は長政。
「長政、大変だなぁ…」という感想です。はい。
とりわけ長政と又兵衛のギクシャクっぷりがとても美味しいわけですよ。

秀吉に恐れられた軍師・官兵衛が、礎を築いた福岡藩・黒田家。代々同じ葛藤が当主を苦しめる。才人たちが陥った深い闇が起こす、苦悩の顛末を描いた歴史長編(単行本帯より引用)。
池田 平太郎(著)『黒田家三代 戦国を駆け抜けた男達の野望』

福岡藩主・黒田家の人々とそこで起きた出来事について、
作者さま独自の視点で考察されております。
各章のボリュームも少なめ(約40ページ)、
かつ読みやすい文体なのでスムーズに読み進められるかと思います。
カテゴリとしては、歴史書と小説の中間くらいの立ち位置でしょうか。
ところどころ世界史ネタや現代の政治ネタ、
取材時のちょっとしたこぼれ話等が挿入されているのが面白いです。
たまに小説というか物語調な描写があるのですが、
そこがまた小話ながらも味があって良いのです。

ちなみに、本章は黒田家三代の統治をまとめたもので、それぞれ
第一章…官兵衛、
第二〜五章…長政、
第六章…忠之
という配分となっております。

官兵衛は秀吉に対する反骨精神に火が点き、
長政はそんな父親に手を焼く一方で、先代からの家臣たちの扱いに苦しめられ、
忠之は傲岸不遜な家老を憎み、さらには懐具合の厳しい藩運営に苦悩する…
という状態。
家臣とうまくいってないという点では、長政と忠之が共通してますな。
かの有名な黒田騒動についてがちょっと駆け足なのですが、
作者さまの視点が長政中心なので仕方ないことかと。
あとがきまでもが長政一色(笑)。

気になった点。
プロローグで曹丕と曹植の兄弟確執を題材とする「七歩詩」が登場するんですよ。
というのも、この本自体が黒田家当主と周囲との反目や確執をテーマとしているからなんでしょうね。
…でもエピローグが「黒田騒動その後〜明治」なので、
プロローグだけがなんとなく浮いているような気がする…。
posted by まるひげ at 01:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手

2012-04-28

icon_45_b.gif『赤刃』読了。


今月の積読本消化1冊目。

とりあえず「活劇」という単語が好きなら読んで損はしないかと!
なかなかに凄惨というか流血描写が多いので、苦手な方はご注意…って
活劇好きで流血苦手な人ってあんまいないか。

江戸初期、徳川家光の治世。百を超える<辻斬り>の災禍に、江戸の町は震撼していた。殺戮集団の主犯は、戦国の英雄、元津藩士の赤迫雅峰とその一党。幕府が送る刺客は次々と返り討ちにあい、老中・松平伊豆守は切り札となる<掃討使>に旗本・小留間逸次郎を任命する。赤迫対逸次郎、血塗られた闘いは連鎖し、やがて市中は戦場と化す―。無惨にして無常。これぞ、新時代の剣戟活劇! (アマゾン・レビューより引用)。
長浦 京(著)『赤刃』

江戸の町を騒がす辻斬り集団と幕府の捕り方との、血で血を洗う闘いの物語。
読了直後、「凄いもん読んだ…」というのが素直な感想です。
人情や色恋といった甘いところがひとつも見当たらない、
殺伐とした、まさに「新時代の剣戟活劇」でした。
文章のリズムが良く、しかも先が気になるので一気読み必至です。
登場人物の心理描写がほとんどなく、
その闘い方や動きで人物の思惑が察せられる点が特徴でしょうか。
実際に読んで頂かないと、この作品の血湧き肉踊る感は伝えられそうにありません。
「優れ過ぎて常軌を逸している」(p.274)とまで言われる主人公の狂気と
敵方である戦国の兵・赤迫雅峰の狂気がぶつかり合うさまを、どうぞお楽しみ下さい。

…といったところで感想文終わっても良いんですが、もう少し。
以下、ネタバレなしの読みどころ紹介です。
posted by まるひげ at 23:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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