2007-10-27

icon_45_b.gif『密謀 (下)』読了。

やっぱり見やすいなぁ、改訂版…。

秀吉の遺制を次々と破って我が物顔の家康に対抗するため、兼続は肝胆相照らす石田三成と、徳川方を東西挟撃の罠に引きこむ密約をかわした。けれども、実際に三成が挙兵し、世を挙げて関ヶ原決戦へと突入していく過程で、上杉勢は遂に参戦しなかった。なぜなのか―。著者年来の歴史上の謎に解明を与えながら、綿密な構想と壮大なスケールで描く渾身の戦国ドラマ(文庫より引用)。
藤沢 周平(著)『密謀 (下)』

下巻の内容は、
秀吉の死後、兼続が三成と天下の状況を苦慮するところから、
関ヶ原後、上杉領が減封されるところまで。

下巻では関ヶ原の折、大坂での三成挙兵を受け反転した東軍を、
「何故上杉は追撃しなかったのか」がテーマになってます。
まぁ、確かに不思議ですよね。
いくら周囲の伊達やら最上やらが不穏であったとはいえ、
謙信時代からの強力な軍とそれを率いる景勝さま&兼続が備わってるんですから、
かなり良い仕事ができたんじゃないかと。

堂々と家康に喧嘩売ったからには、とことん戦って欲しかったなぁ…と思ってしまいますのだ。
とか言ったら景勝さまに怒られそうです。
兼続も怒られてたしね!
反転した東軍の追撃を進言した兼続に対し、
「敵の弱みにつけ込むのは上杉の作法ではない」と景勝さま仰いますけど、
それって宋襄の仁っぽいんですが。
戦時ですよ景勝さまー!!

創作パートでは、
草の者の記述がちょっと半端だと思うのですよ。
静四郎と本多正信の関係もアッサリ片づいたし。
もうちょっと関係するかと思ってたのになぁ。
ラスト、静四郎とうねが結局は結ばれる、というのも自分的にはなんか嫌。
紆余曲折あって苦労した男女がついに結ばれる、というのだと良いんですが、
これだとあんまり苦労してないので…。
目の前で草の掟破られてんだから、なんとかしろよ喜六!
とか思ってしまうのは、
藤沢さんの他の作品読んでないからだって自覚はあります。

以下、無駄に長いです。ほんとに。

この作品の魅力は、なんといっても主役の兼続&景勝さまの描写ですね。
今まで読んだ数少ない上杉本のなかで一番好きだなぁ。

兼続は
上杉の家臣であることと
家康を敵とする三成と同志であることが
いつの間にか不可分になってしまってます。
そのことが、景勝さまのあの一喝があるまで読者も気づかないんですよ(あれ?自分だけ??)。

三成を通して上方の政にも明るくなった兼続にしてみれば、
謙信時代から変わらずあり続けることで、
天下の流れから取り残されつつある上杉家に危機感を抱くようになります。
秀吉の死によって上杉にかかっていた圧力がなくなったため、
景勝に天下人になってもらいたいという気持ちが無意識のうちにあったんでしょうか。

景勝さまは兼続のその態度に不安を覚えてたんでしょうね。
兼続と同じく切れ者の三成に感化されてんじゃないか、系の。
そんな描写はないンですが、きっとそう思ってたよ。

景勝にとっての挙兵は
あくまで上杉が上杉であることの証明として起ったにすぎず、
天下人という存在を嫌悪しているため、自らが上洛、という意識は露も無いわけです。

上杉が家康を出陣させ、東軍を引きつけたことで西軍への義理は果たした、という景勝と
天下の情勢に遅れまいと景勝を表舞台に乗せようとする兼続、
初めて主従の思惑が分かれた時の兼続の絶望感と
ラストの景勝さまの一言は衝撃です。
兼続だけじゃなく読者にまでショックを与えるシーンです。

「わしのつらをみろ。これが天下人のつらか」(p.318)

これに続く景勝さまの言葉で兼続、「天下人」とは何たるかを悟ったんでしょうね。
きっと憑き物が落ちたような顔だったに違いないですよ。
憑き物て…もしかしてみつ…(汗)。
この後は友として三成を気遣うのみです…さびしい…。

うーん、でもいまいち納得がいかないんですよね。
この挙兵とその後の展開は竜頭蛇尾の感が拭えません。
上杉の名を残すのであれば、豊臣に下ったように徳川に下ってても良かったのに。
まぁ、もし東軍が小山で引き返さなかったらドンパチやってたんでしょうけど。

で、ドンパチしちゃってるのが、コレ↓

中村 朋臣(著)『新上杉戦記 (一)』

こっちは、追撃してます。
そうそう、こんな展開になってもおかしくなかったよね、て感じ。
景勝さまがゴーサイン出してたらの話なんですが、
ちょっとうまく行き過ぎな印象を受けました。
そして景勝さまが饒舌で昌幸おとんが不気味ですよ。

もひとつついでにこんなのも読んでみました。

週刊 藤沢周平の世界 5/13号

なんか、ずるい(笑)。
名シーンだけピックアップしてます。
他の作家さんたちの感想も載ってます。
それにしてもこの表紙、密謀シーンなんでしょうがみったんと兼続の距離近すぎ


posted by まるひげ at 23:58 | Comment(2) | TrackBack(1) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
icon_45_b.gifこの記事へのコメント
初めまして!
家康を追撃しなかった点は、やはり惜しまれますよね。
天下人たらんとしている家康の前に、「そうはさせるか」と立ち上がったのに、
「それは上杉の作法ではない」とかなんとかいって会津に帰っちゃうなんて。
徹底的にやりあうつもりじゃなかったのかと、
兼続でなくとも詰め寄りたくなりますね。
そして景勝様に怒られる、と。(苦笑
中村朋臣さんの作品は、そこを追撃してるんですか!
ちょっと読んでみたくなりました……。
草の者に関しては、私も半端だったと同感です。
佐和山に行ったまいも、何することなく助け出されてしまいますし、
草の話は草の話で独立した作品になっていたら……とも感じました。
TBさせていただきました。
Posted by カタリーナ at 2007年11月02日 01:36
初めまして、こんばんはカタリーナさん!
お返事遅くなりまして申し訳ありません!

そうなんですよね〜。
史実に文句を言ってもどうしようもありませんが、上杉が何故追撃しなかったのか、
明確な答えが欲しいところです。
家中でも意見が分かれたろうと思うのですが、
そこのところは『密謀』では描かれてませんでしたし…。
もっと歴史勉強しなくては、と痛感しました。

中村朋臣さんの『新 上杉戦記』では、
追撃と言っても家康本陣に迫るのは後半部分なので、
それまでがちょっと退屈かもしれません。

草の者パートについて。
ストーリー展開、カタリーナさんもそう思われましたか。
良かったです、自分だけじゃなくて(笑)。
確かに、別々の話にしてた方が読み応えあったでしょうね。
まいは…佐和山に行った意味が、というかそもそもいてもいなくても大して変わらないような(汗)。
人情モノの藤沢さんに非情な忍者モノというはあまり合わないのかもしれませんね。
Posted by まるひげ at 2007年11月03日 00:21
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