2015-08-28

icon_45_b.gif『決戦! 大坂城』読了。

図書館レンタ本。

前作とは繋がっていないので、こちらから先に読んでも何の支障もないですな。
ちなみに、この決戦シリーズ、もうすぐ第3弾「本能寺」が刊行されるそうなので非常に楽しみです。
つか、冲方さんのあのニュースびっくりしたわ。

慶長二十年五月(一六一五年六月)。秀吉が築きし天下の名城・大坂城―。いまここに、戦国最後の大合戦が始まろうとしていた。乱世に終止符を打つのか、敗北すなわち滅亡か…(単行本より引用)。
伊東潤/(ほか著)『決戦! 大坂城』

大坂の陣を主題とした書き下ろし短編集。
今回も7名の作家による主人公たちが活躍してくださってます。
(今作は豊臣方4名、徳川方2名、商人1名)
個人的に好きだったのは木下作品と伊東作品。
前回と似たような冲方作品、
前回に続き「またどうしようもない微妙な人選んで(笑)」っていう天野作品。
目次と簡単なあらすじ&感想文は以下の通りです。

・葉室麟「鳳凰記」
・木下昌輝「日ノ本一の兵」
・富樫倫太郎「十万両を食う」
・乾緑郎「五霊戦鬼」
・天野純希「忠直の檻」
・冲方丁「黄金児」
・伊東潤「男が立たぬ」

・葉室麟「鳳凰記」(淀殿)
女の目から見た戦国末期とでも言いましょうか、
血縁による女たちの絆や朝廷をめぐる豊臣と徳川の確執などがテーマでした。
大坂の陣は豊臣家を守るための戦ではなかった
高台院との仲がギスギスしてなかったり
ヒステリー持ちじゃなかったり、
淀殿が悪く描かれていないのが好感持てます。そりゃ主人公だからね…。
個人的には、あえて豊臣の方から徳川に喧嘩をふっかけた理由とともに語られる
方広寺の鐘の銘文についての解釈が興味深かったです。


・木下昌輝「日ノ本一の兵」(真田幸村)
「日ノ本一の兵の首を獲りたい」と言って死んだ父・昌幸。
そんな父からは有力者に対する人質としての価値しか認められなかった幸村。
死の間際、父からある秘策を聞かされた幸村は
父が無しえなかった悲願を自身が成し遂げることで父を見返してやりたいと思うが…。

あーもう…この作家さんのなさることよ。
「なんでそうなっちゃうの…」とツッコミたくなる鬱的展開が繰り広げられるこの作風ですよ。
好きだなぁ木下作品。

それはともかく。
色んなコンプレックスがごっちゃまぜになった幸村がおります。
息子としても父としても武将としてもこじらせてる。
皮肉な結果となるまさかのラストが息苦しいくらいの緊迫感でした。
何故ああなってしまったのか…。
キーワード「日ノ本一の兵」が誰のことを指すのか、
ダブル?トリプル?ミーニングになっているのが上手いですね。
んでもって、‟左衛門佐”幸村の影武者である旅芝居役者の「幸村」がカッコいい。


・富樫倫太郎「十万両を食う」(近江屋伊三郎)
大坂の米商人が主人公。
商人はたくましいなぁ…というのが率直な感想です。
豊臣方へ兵糧を届けるため、大坂城へ続く地下の抜け道を通る伊三郎。
やがて兵糧を運ぶ以上に重要な仕事を課せられることになるのですが…。

カネが一番大事な商人が打った大博打。
カネ以上に価値あるものを得た近江屋のラストがさわやか。
でもやっぱり最後はカネだよね!っていう…(笑)。
地味に真田十勇士が登場したり鹿児島脱出ネタがあったりちょこちょこ楽しい。


・乾緑郎「五霊戦鬼」(水野勝成)
これもすごい作家さんの特徴が…伝奇臭ぷんぷん。
五霊鬼伝説を料理したらこうなりました、というお話。

かつて勝成が仕えていた小西行長からもらったとある丸薬。
死者を蘇らせるというこの薬をめぐる、
勝成と因縁のある怪僧・法雲、伊達お抱え忍びの黒脛巾組との三つ巴バトルです。
勝成の放浪時代の逸話や伊達勢の味方撃ちなどが
伝奇アイテムと関連づけられているのが上手いですなぁ。


・天野純希「忠直の檻」(松平忠直)
周囲に認められず居心地の悪い思いを抱えていた忠直。
口うるさい家臣、のさばる嫁、家康のあからさまなイジメで胃が痛くなりそう。
真田隊が家康の陣へ向かった際に
忠直があえて追撃しなかった時から家康の無事が伝えられるまでが
自らが徳川という大きな檻から解放されたというひとときの夢で、
忠直の心情が迫真に迫っております。
でもまぁ、終盤ではしがらみから解放されたことですし、
なんだか色々あったけど終わりよければ総てよし!って感じのラスト。


・冲方丁「黄金児」(豊臣秀頼)
秀頼の内面を冷静な筆致で詳細に描く…のですが、ちょっと描写がくどいかな、という感想。
秀頼の天才児っぷりはこれでもかと伝わって参ります。
周囲の人間より一段高いところから世界を観察してるようなイメージ。
最初の葉室作品とテーマが似ておりますね。


・伊東潤「男が立たぬ」(福島正守)
福島正則の弟・正守が主人公。
大坂の陣の直前、幕府より内密に千姫救出の密命が正守に伝えられる。
大坂城に味方として入城したからには最後まで豊臣方として戦う決意をした正守。
城内に潜む徳川の間者や正守を信用しない豊臣の重臣たちの目を盗みながら
千姫救出の手立てを探るのですが…。

ということで、千姫事件の前後を描いたお話。
とにかく構成が良いですねぇ。
徐々に秀頼に傾倒していく正守、
その正守の意志をつなぎ、やがて自らもまた譲れない信念を抱えて死んだ坂崎直盛、
そして最後に柳生宗矩の手に渡ったもの。
「死を恐れず名を惜しむ」男たちの意地の貫き方が鮮烈に印象に残ります。
posted by まるひげ at 21:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
icon_45_b.gifこの記事へのコメント
icon_45_b.gifコメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。