2015-01-14

icon_45_b.gif『宇喜多の捨て嫁』読了。

実は去年読了した本の感想文。

久しぶりの読書!
しかも時代小説!!
そんでもって題材が宇喜多!!!
てな感じで鼻息荒く読み進めましたが
一編読み進めるごとにしゅるしゅると萎んでいくテンション。
鬱だわー。
どれも鬱いわー。

娘の嫁ぎ先を攻め滅ぼすことも厭わず、下克上で成り上がる戦国大名・宇喜多直家。その真実の姿とは一体…。ピカレスク歴史小説の新旗手ここに誕生!!第92回オール讀物新人賞受賞作(アマゾン・レビューより引用)。
木下 昌輝(著)『宇喜多の捨て嫁』

梟雄・宇喜多直家の苦悩と人生を、直家を取り巻く人々の視点から描いた短編連作集。
全部で6編収録ですが、時系列順にはなっておりません。
ひとつの作品中で登場した要素が他の作品のなかで言及されたり
全体の構成が緻密に組み立てられているのが素晴らしい。
これがデビュー作とのことですが、すんなり物語に入っていける読みやすさでした。
文体だけではなく、作品の雰囲気にさえベテラン作家さんのようなある種の貫録が感じられます。
最終話まで読み進めると、
これまでの作品に登場したひとつひとつの要素が一枚の絵となるような、
ジグソーパズルでピースが嵌っていくような、小気味良い感覚がありますね。
最後まで読んでこの作品の構成美が見える仕様となっています。

・・・
なんだかベタ褒めな感想文になってしまいましたな(苦笑)。

「捨て嫁」という単語のインパクトと
表紙カバーのおどろおどろしさに若干怯みますが
第152回直木賞候補作ということもあり、読んでみてはどうでしょう?
ただし血は出るは膿は滲むはで大変です。暗いです。

以下、バカみたいに長い感想文ですので読み飛ばしちゃってなんら問題ありません。

・「宇喜多の捨て嫁」
直家の四女・於葉が主人公。
娘さえも捨て石、捨て駒のごとく切り捨てるため、
「宇喜多の捨て嫁」と陰口される宇喜多家との婚儀。
母や姉のように婚家に殉ずることなく己の意志で父と戦うことを
固く決意した於葉が嫁ぎ先である後藤勝基のもとへ赴くのだが…。


ここでの直家はもうすっかり病重篤なもんで臥せってばかりですが、
不気味さは十二分に発散されております。
於葉の嫁ぎ先である後藤家家臣の安東相馬がキーパーソン。
この老人がひどくクセのある人物ですがやはり直家が一枚上手。
そして於葉もまた直家に利用されていたのですが、彼女もなかなか気性激しいですな。


・「無想の抜刀術」
能家謀殺の後、直家の幼少期から母との別れまでが描かれます。
幼い直家にどこからか語りかけてくる謎の声の正体とは…。

自身に向けられた殺意に反応し、親や子でさえも躊躇なく殺す呪われた
「無想の抜刀術」を遣う直家。
この特殊能力が直家を救い、またこの技を持つがゆえに苦しめられることになります。


・「貝あわせ」
最も勢いのあった青年期の直家の物語。
主に認められ、妻子にも恵まれた直家に降りかかる苦難が次々と…。

その後の直家を形成するのに大きな影響を与えた島村観阿弥と中山備中信正。
この二人の描かれ方が非常に魅力的です。
祖父の能家を謀殺し宇喜多一族の怨敵でありながら
若き直家の才を見抜き、その成長を見守るような観阿弥と、
時に兵法を説き、人として進むべき道を諭す師のような直家の舅・中山備中。
大体の小説では、両者ともステレオタイプに描かれることが多いので
一味違った人物造形が面白い。

個人的にはこの1編が好きだなぁ。
岡平内と長船又三郎、富川平介の会話シーンで救われますね。
家中の者たちと共に絶食していたこの時期が、直家にとって一番幸せな時だったのかも。
あと、どうでも良いけど直家さま、インド料理つくっとる。おそらくはタンドリーチキン。


・「ぐひんの鼻」
直家の主・浦上宗景の昏い心の内を描いた一編。
己が他者より秀でているのは非情であること。
それをもって家臣を従わせ、これまで不可能とも言える謀の数々を成してきた宗景。
しかし、宗景を上回る非情さを持つ直家が台頭してきたことに怯え
自らの破滅を悟った宗景は、宇喜多家の瓦解を狙い、嫡男を直家の三女の婿として送り込むのだが…。


ということで次の話へ続いてます。
それはそうと、主君・浦上宗景の厭らしさよ。
もう、この一言に尽きます。
エロ的な意味ではなく、人としてこれはいかん。
宗景が直家に対して抱く歪んだ感情がなんとも…。
宗景と直家の立場が逆転することを象徴するかのようなラストがかっこよい。


・「松之丞の一太刀」
直家の三女・小梅を娶った浦上宗景の嫡男・松之丞の物語。
宇喜多家乗っ取り計画が着々と進行していくなか松之丞が選んだ道とは…。

気力体力ともに人並み以下であった松之丞が、
直家に対して恐怖と共に関心をもちます。怖いもの見たさ的な…?
一方、利己ではなく他者のために太刀をふるうことこそが真の勇だと語る直家。
直家と松之丞、色々な意味で正反対な二人がそれぞれを語る姿が印象的です。

松之丞による直家暗殺実行時は、コマ送りの映像を見るかのような緊迫感。
自身の意志とは関係なく、殺意に反応して動く直家の「無想の抜刀術」、
第三者から見た時の異様さが際立ってます。
そして、刺客の正体を知ったラストの直家の所作が良い。


・「五逆の鼓」
室津浦上家の家老の嫡男・江見河原源五郎が主人公。
鼓の名手である父の影響を受け、武士としてではなく芸の道に憧れるようになったが
厳しい母がそれを許さなかった。
ある時、主君とその子の首と引き換えに、宇喜多の城で楽士に取り立てるという
宇喜多家のからの使者の言葉に乗ってしまい…。


この「使者」つーのは忠家と剛介なんですが…
“龍ノ口の美少年刺客”こと剛介の、性格の悪さ三割増しであります。おっかねぇ。

その後、江見河原は心を閉ざし、直家の側で鼓を打つ日々を送っていたのですが、
ある日流民たちの棲む川辺へ足を向けます。
そこへは血膿にまみれた直家の夜着が流れ着いてきて…。

で、面白いのはここからです。
江見河原だけでなく、直家までも救われたようなラストがうまい。
posted by まるひげ at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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