2014-03-08

icon_45_b.gif『秀吉を討て』読了。

3月も一週間が過ぎましたが、2月の積読本消化2冊目。

えーっと。
とにかく人死にすぎです。
死にもの狂いで故郷の地を守ろうとする人々の覚悟がとにかく悲壮で、結構重めの内容でした。

根来の若き忍び・林空は、総帥・根来隠形鬼に呼び出され「秀吉を討て」と命じられる。同じく指令を受けた根来の刺客忍が、次々と秀吉を襲うが、甲賀忍者・山中長俊らの鉄壁の守りに防がれていた。仲間の叡海や俊念と共に出立した林空は、家康との合戦のため進軍中の秀吉を銃撃しようとするが―(単行本帯より引用)。
武内 涼(著)『秀吉を討て』

タイトルからしてこの任務は失敗に終わるんだろうということが予想されます。
「実は最後にどんでん返しがあるかも?」とうっすら期待したんですがそれもなかったです。

ストーリーは公式あらすじのとおりで、
全国統一を目指す秀吉による紀州攻めが題材となっております。
これに抗い、民による自治を貫くために紀州の民が蜂起するという歴史エンタメ小説です。
もちろん、作者のカラーである忍者小説としての面白さも健在。
主人公が属する紀州の修験行人たちを束ねる総師・隠形鬼。
敵サイドとして秀吉を護衛するのは山中長俊率いる甲賀忍び、
秀吉とは微妙な関係の家康のそばには服部半蔵率いる伊賀忍び、
これら三つの勢力が入り乱れ、忍びたちの死闘が繰り広げられます。
緊迫感に満ち溢れた忍び同士の戦闘に加え、
戦闘員ではない人々が参加する千石堀城や太田城での籠城戦が
絶望的な戦況なので、読んでいて非常に重苦しい。

前2作との大きな違いは、より歴史小説としての比重が大きくなったこと、
そして主人公のキャラ付けですね。
これまでは割と完成された主人公というか、最初からリーダー的位置にあって
泰然と任務をこなしていくクールな上忍が主人公でした。
一方、今作の主人公、鉄砲の腕は天才的でありながら、精神的にはやや未熟。
まぁ、ひとりの青年の成長物語として読んでも良いのですが、
個人的に前2作の主人公の方が好みだったのでちょっと思い入れが浅い…。
ちなみに今作の主人公、運がとても悪い(苦笑)。

同じ根来の忍び仲間や師匠、道行く先での協力者、強力な敵役など
脇役もキャラが立っていて混乱することはありません。
初登場時に「あ、この人死にそう…」って予感したキャラが2人いたんですが、
読み終わってみたら死んだの2人どころじゃなかった。
しかも、信頼度上がったりいい感じの雰囲気になったところで死んでしまうのがなんとも…。
それにしても、根来衆ボスの隠形鬼。
半蔵ビビらせるほど最強オーラ出しときながらあんな中途半端なところで
退場しちゃったら部下に申し訳ないだろう。

敵キャラは、甲賀衆が怖いですな。
山中長俊の手際の良さと配下の女忍び・氷雨。
ヒロインまで忍びにしなくても良かったんじゃ…と思いましたが、
そういう設定にした理由が最後に語られます。
そして作者様はほんとに権力者嫌いなんですね。
秀吉、自らが百姓の出自だからこそわかる、百姓の恐ろしさ。
虐げられる者から虐げる者になってしまった人間の負の面が滲み出ておりました。

蛇足。
終盤の記述で、
紀州攻めとは「民衆の命を大事にしない中央集権専制国家」と「自由の民」の戦いだった
という一文があります(p.350)。
フランス革命に代表される近代ヨーロッパでは
自由の民(ちょっと定義が違いますが)が勝ち、日本においては国家の勝利に終わります。
これにより自由の民は貶められ、国家の力が増長していくその後の歴史を思うと
なかなか考え込んでしまう記述で印象に残りました。
posted by まるひげ at 23:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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