シバリョ版が「又兵衛は又兵衛の死に場所で死ね」だったのに対し
こちらは「真田は真田の死に場所で死ね」ってとこです。
![]() | 慶長十九年(一六一四)、大坂城へ向かう異形の老人の姿があった。万石の禄と家臣を捨てても、ついに捨てきれなかった甲胄を背負い、赤柄の槍を携えていた。関ケ原の合戦で〈槍の又兵衛〉と勇名を馳せた後藤又兵衛その人だった。世に言う大坂冬・夏の陣を目前に、又兵衛の入城に豊臣方は雀躍した…。自らの信念を貫くため、河原乞食まで身を落とした又兵衛一代記(アマゾン・レビューより引用)。 麻倉 一矢(著)『一本槍疾風録−戦国の豪将・後藤又兵衛』 |
「とにかく又兵衛がかっこいい本です」
この一言で感想文終わっても差し支えないと思いつつ、以下にもうちょっと詳しく書いてみます。
いつもの麻倉作品のノリなのでとても読みやすいです。
各章の冒頭が大坂夏の陣の真っ最中で、
又兵衛が近習の長澤九兵衛に請われて己の人生を語り聞かせる、という構成をとってます。
メインは又兵衛の黒田家出奔後の長い牢人生活。
その流浪の時期に出会った人々との交流、旧主・長政との確執を通して、
侍以外の何者にもなれなかった又兵衛の生き様が描かれておりました。
そして又兵衛といえば長政ですよね。
又兵衛のことを「殺して己のものにしたいと思ってるのかもしれん」(p.244)とかって呟くから
どんだけヤンデレなのこのこ…とビクつきながら読んでたらそうでもなかった。
いわゆる「愛しさあまって憎さ百倍」というアレですな。
お互いの意地の張り合いで刺客送り送られの仲になってしまったのは
当人たちでもよくわからない複雑な感情のようです。
そんな長政と又兵衛を繋ぐ役割を果たしているのが、出雲の阿国。
又兵衛に好意を寄せるあまり、
転職の斡旋したり衣食住の世話をしたり長政こき下ろしたりと忙しい女性です。
終盤では幸村にも言い寄ってる奔放な姐さんですが、
とりあえずはヒロイン的ポジションです。ちなみに結構な肉食女子。
その他脇役として、
宮本武蔵、細川忠興、福島正則、池田輝政、松平忠輝、本阿弥光悦、名古屋山三郎など。
冒頭では秀吉や官兵衛あたりも出てきてます。
あ、幸村とは最後まで微妙に距離感がありました。
徐々に打ち解けていく二人もいいけど、ギクシャク感抜けないのもまたいいよね。