2012-08-26

icon_45_b.gif『本朝甲冑奇談』読了。

図書館レンタ本。

「角栄螺」と「金時よろい」が好きです。

六領の甲冑に秘められたそれぞれの逸話  井伊家赤備えの足軽鎧、朝鮮渡りの西洋甲冑、但馬の国出石に伝わる小猿の甲冑など。短篇の名手が描く珠玉の六篇からなる歴史秘話(アマゾン・レビューより引用)
東郷 隆(著)『本朝甲冑奇談』

どの短編も50ページ未満で、さらっと読めます。
最初は作者のエッセイのような語り口から始まり、
甲冑の持ち主の物語へと繋がっていく―という構成が多いです。
以下に各話のあらすじ+感想文をば。

・しぼ革
長篠の戦いで武田勝頼を破った信長は、上洛の途中、
不破の関近くの山中で「常盤御前の墓」の近くを通りかかる。
そこで気紛れに一人の乞食に財物を与えてから、信長は不思議な夢を見るようになり…。


柿崎景家誅殺と謙信の死にまつわる一編。
信長全盛期、懇意にしてきた上杉家との確執が本格化し始めた頃、
信長が謙信に贈った鎧具足が引き起こした怪異が印象的。
六編中、最も伝奇色が濃い作品です。

・モクソカンの首
朝鮮出兵中、漢城付近で田畑の検地を取り仕切っていた岡本権之丞。
戦況が激化し、全身を銀甲で覆った異形の騎馬武者が倭軍を苦しめているという。
この騎馬武者を討ち取ることを命じられた権之丞であったが…。


「モクソカン」というのは、晋州の牧使官(=市長)のことです。
主役は宇喜多秀家の家臣、岡本権之丞。
討ち取られた牧使官の甲をめぐる権之丞と一人の朝鮮人の物語。

権之丞と降伏した朝鮮の下級役人・パクの奇妙な関係が印象に残りました。
征服者と被征服者、主人と従僕、そしてお互いが命の恩人という
複雑な関係ですが、心理描写は非常に簡素なものでした。


・角栄螺
蒲生氏郷に仕えていた頃、九戸城攻めの途中で一人の蝦夷人と戦い、これを討ち取った岡左内。
氏郷と左内、そしてこの蝦夷人にはある共通点があり…。


もともとは信長召領の兜「角栄螺」。その後、氏郷 → 左内と持ち主が移ります。
ということで、主人公は岡左内。
「全裸」と「金」がキーワードの岡左内ですよ!
とにかく、岡左内が魅力的に描かれています。
主君が変わっても、最期まで氏郷の遺命を守り続けた左内。
上杉家に仕えていた頃の慶次との友情や政宗との斬り合いなど、
さらりと描かれてますがどれもかっこいい。

・小猿主水
仙石家二代目忠政の家臣・谷津主水。
主水の実父は、かつて長束正家に仕え、関ヶ原以後は付近の豪農の家に寄生する暮らしを送っていた。
あるとき、隣村との土地争いで用心棒として戦いの場に赴くこととなった主水。
途中、朽ちかけた社のなかで見つけた古ぼけた猿の面がその後の運命を左右することに…。


村争いに勝ったものの、「喧嘩停止令」により村を出された主水。
伝手を頼って大和の具足師のもとへやってきます。
ここで信州仙石家への仕官の話がもちあがり、仕官祝いにと猿の具足を贈られます。
その後、大坂の陣にて毛利勝永と衝突し、一番乗りの手柄を手にする主水。
猿の面を得てからの主水のサクセスストーリーが見所です。

・甲(かぶと)試し
刀匠・長曾禰虎徹入道興里。
加賀藩城下で名の知れた甲冑鍛冶であった虎徹は、
藩主の命で催された甲試しで卑怯な振る舞いをしたことを恥じ、逐電。
その後、修行を重ねた虎徹は、刀鍛冶として彦根藩にて再び甲試しを申し付けられることになる。
しかし、斬るべき甲はかつて自らがつくったもので…。


タイトルは虎徹の人生のターニングポイントとなった2つの出来事から。
自身の過去との対決、諸国遍歴、波乱万丈な人生を送った虎徹を描いたものです。
甲冑鍛冶から刀鍛冶への転進、修行の日々等、虎徹の逸話が多く紹介されてます。
あと、若かりし頃の由比正雪(けっこうな不審者)がちょろりと出てきます。

・金時よろい
桜田門外の変後、江戸の井伊家で屋敷奉公をしていた「鉄五郎」。
時は長州征伐前夜、臨時足軽として具足方の手伝いを命じられた鉄五郎であったが、
長州へ出陣する部隊へ組み込まれ、初めて戦場へ赴くこととなり…。


「金時よろい」というのは井伊の赤備えのことです。
幕末の騒乱の気配が感じられる一編。
下っ端兵士から見た戦場の様子が生々しいです。
鉄五郎が戦場で見た、
「波打ち際に散乱した甲冑、槍刀、旗、死傷者たちの姿がどれも赤い」というのがとてもメタファー的。
赤備えのかつての栄華とその後の衰退がなんとも物悲しい。
ラストも然り。時の流れってそんなもんさね…。
それにしても、長州w
手間のかかった嫌がらせ乙。

…以上です。
そういや、こっちも読んでみたくなりました。


東郷 隆(著)『戦国名刀伝』
posted by まるひげ at 22:29 | Comment(1) | TrackBack(0) | 時代・歴史モノ | edit | web拍手
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私は「しぼ革」が好きでした。
Posted by 船橋 at 2016年11月28日 16:15
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